ロリ#コンパス   作:乱数調整

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いい友人を持った。
いい仲間を引いたたねぇ。
いい主人を見つけました。


深淵をあなたは望んで

「ボイちゃん!作業はもう結構です!彼らを止めてください!」

 

『リョウカイショウチ!』

 

ドクが何かを察してvoidollにそう指示を出す。振られたvoidollは手早く辺りを確認した。

voidollにはなぜドクがあんなにも焦った様子で指示を出したのかが分からなかったのだ。

 

しかし、状況を確認し、把握する。

 

『【家庭用メカ】……ハカセトワタシニハンランデモスルツモリデショウカ?』

 

【メカ犯】が【カードキャラ】達をなぎ倒し、防壁まで近づいてきていたのだ。

 

その後ろを楼閣たち一行がついてきている。道理でドクが焦るわけだとvoidollは理解した。

 

『コノママデハトメラレテシマイマスモノネ。ワタシハ、ハカセノタメニソンザイスルノデス。サイコウケッサクノチカラヲオミセシマショウ』

 

そう言うとvoidollは消えた。

 

否、voidollは単純に移動しただけだった。移動し、【メカ犯】を蹴り飛ばす。

 

【ギュギッ!?】

 

『???オカシイデスネ。ワタシノチカラナラ、テキヲステージゴトトラッシュオクリニデキルハズナノデスガ』

 

voidollは困惑していた。想定と違うできごとが起こったのだ。

それも、自分の能力の想定の、だ。

 

だが困惑する彼女を悠長に待ってくれるほど、世界は優しくないのだ。

 

「ぶれどらさんと銀ちゃんは気にせず行って!私が時間稼ぐから全天壊してね!」

 

【おうとも!】

 

【承知シマシタ】

 

手早く楼閣が指示を出し、困惑するvoidollの脇を抜けていく。

 

『シマッ……!サセマセン!』

 

「私の台詞!いっせーの!!」

 

voidollはそれに反応し、全天首都防壁に向かうぶれいずどらごんと銀河防衛ロボを止めようとするが、それを邪魔するように楼閣がハンマーを振りかぶる。横なぎに振られたハンマーの軌道、角度、接触までの時間。それら全てがvoidollには見えていた。

 

(コレナラヨケルノハタヤスイデスネ……カワシテスグニオイツキマス!)

 

回避の演算まで終え、voidollは余裕綽々でそう考える。

だが、その余裕は消え去った。

 

voidollの顔面にハンマーが直撃する。彼女の演算は間違っていなかった。楼閣のハンマーの軌道も変わってはいない。

 

ただ間違っていたのは、彼女の考えている自身の能力だけだった。

 

『パフォーマンスダウン。エラーエラーエラー。ゲンインカイセキ……ガイブカラノウリョクセイゲンニツイテノアクセスアリ……マサカ!!』

 

《そのまさかですよvoidoll》

 

キィが誰に伝えるでもなくそう言った。

彼女はなぜvoidollの能力が落ちたかを理解していた。

 

なんたって、彼女がvoidollの能力を封じた張本人なのだから。

 

(マスターが動けるようになるまで、私ができるのはvoidollを止めておくことだけですから)

 

クスリとキィが笑う。どうして自分がこうなったのかはまだ分からない。

だが、これも悪くないなとキィは思い始めていた。

 

《姉さん、楽しそうですね?》

 

デネブが楽しそうなキィに疑問を持ったのかそう訊ねる。

キィは《すみません、想像通りにことが進んでいるので》とだけ返した。

 

《あまり勝手に動かれては補助ができません》

 

《あなただって、勝手をしているじゃありませんか》

 

デネブがキィをたしなめるようにそう言ったが、キィもお互い様だと切り返す。

デネブのガトりんの件はキィにもバレているらしい。

 

《そういうところですよ!》

 

《弟を助けて何が悪いのですかね?》

 

軽口を叩きながらも二人は作業を止めない。むしろ、競うように作業効率が上がってさえいる。

 

《推し通りますよ》

 

《はい、姉さん》

 

二人は作業を続ける。

 

『シュツリョクテイカ、スキャンカイシシマス……イジョウナシ……イジョウナシ!?』

 

「よそ見するって余裕だねぇ!!」

 

キィの作業によって、voidollの能力にどんどん制限がかかっていく。機体に損傷があるわけではないのでvoidollの自己修復システムにも引っかからない。

 

自己修復を試みるその隙を楼閣がつく。voidollは不意をつかれたことで甚大なダメージを受ける。反応速度も落ちてきているらしい。

 

『カピッ!?』

 

大きく弧を描いて飛んで行ったvoidoll。だが、彼女の損傷は自己修復システムによってすぐに回復する。

 

『ワタシハサイコウケッサクナノデス。シッパイハユルサレマセン……!』

 

近づいてくる楼閣と【全天首都防壁】を破壊しようとするぶれいずどらごんと銀河防衛ロボを睨みながらある作戦を決行する。

 

『クウカンテンイソウチ、キドウシマス!』

 

voidollのヒーロースキル【Reboot・Sequence・Start】、離れた空間同士を接続し、片方の空間からもう片方の空間へと人や物を移動させる能力だ。

 

その能力を、いつもとは逆方向でvoidollは使用した。

 

すなわち、彼女を中心とする円から【カードキャラ】たちが溢れてきたのである。

 

『ワタシノノウリョクガセイゲンサレテイルノナラ、ワタシハセントウヲカイヒスベキデス。セイゲンサレテイナイナラギャクナノデスガネ。』

 

四方を囲まれていた頃よりも多くの敵が出現した。しかも、あの時とは違って最初からかなり近くにいる。

 

楼閣の鎧は対多数との戦闘でも自身は守れるが、攻撃面では対多数が苦手な性能をしている。

これでは自分が戦っている間にロードがやられてしまう。

 

「ぶれどらさん戻って!これじゃロードくん守れな──」

 

そう考え、ぶれいずどらごんに助けを求めた楼閣だったが、その肩に手が置かれる。

 

「いや?もう十分だよ。」

 

ロードだった。

髪型や目の色が変わっていたりと見た目がかなり変わっていたが、その話し方でロードだと楼閣は確信する。

 

「もう…………ねぼすけ。」

 

「クカハッ!わりぃわりぃ。あいつけっこうしぶとくてな。でも、あいつの力は全部ぶんどってきた。こっからが本番だぜ。」

 

そう言ってロードは飛び上がった。空中に揺蕩いながらロードは小さく呟いた。

 

 

 

出てこいよ、【揺籃の悪魔たち(インフェルノ・シュリーカー)

 

地獄に落ちた悪魔たち

可哀想な悪魔たち

俺が人形(からだ)をくれてやる。好きなように使うといいさ。

だけど対価を一つだけ。

 

好きに暴れて全部壊せ!

 

 

 

楼閣にはなんと言っていたのか分からなかった。

だが、その変化は絶大だった。

 

ロードを中心に紫のモヤと笑い声が響き、しばらくロードの周りを巡った後に霧散した。

それと同時に溢れてきたカードキャラ達の何体かが奇妙な動きをしたかと思えば、カードキャラたちが同士討ちを始めた。

 

先程まで足並みを揃えていたカードキャラが唐突に始めた抑える奇妙な同士討ち。

その様子にvoidollは唖然とする。

 

「いくぞ楼閣。さっさとドクぶっ倒す。」

 

「はいな!ちなみにロードくん、アレ何?」

 

「【インフェルノ・シュリーカー】の悪魔たち。中身をなくして大量にコピーを増やしたカードキャラに取り憑かせて即席の味方にした。」

 

ロードと楼閣はその隙を狙ってドクの方へと駆け出した。

楼閣が奇妙な光景についての説明を求め、ロードがそれに答える。

 

「本当に、想像もつかないことをやらかすねぇ、ロードくんは!」

 

「お互い様だろ?」

 

二人はニヤリと笑いあう。足は止めない。ここまで協力してくれた皆を信じて、二人は走った。

 

【盟友!成し遂げたか!】

 

【楼閣サン!アト10秒デ完了シマス!!】

 

【全天首都防壁】までたどり着いた二人を出迎えたのはぶれいずどらごんと銀河防衛ロボ。二人とも全天に弾かれたのだろうか、ところどころが黒く焦げている。

 

「すまん盟友、助かった!」

 

【クカハッ!どうということは無い!】

 

「銀ちゃんありがとっ!」

 

【アナタノタメデスカラ。】

 

パリン、と防壁が割れる。その瞬間に楼閣とロードのみが突撃した。

 

「……!?早すぎる!もう一枚展開して──」

 

「遅せぇよ。」

 

【全天首都防壁】が破られたことに気づき、すぐさま対処しようとしたドクだったが、ロードはその前にドクのすぐ側まで来ていた。

 

ロードは軽くドクを指で突いた。それだけだというのにドクは大きくのけぞり、数メートルの距離を飛ぶ。

数メートル先に叩きつけられ、ドクは肺の中の空気を無理やり吐き出させられ、苦しそうに呻いた。

 

「やっぱり、かなり変わってんだよなぁ……殴れねぇや。」

 

「僕を殺す気ですか!?あなたがたを殺そうとした僕を!!だけど遅いです!遅きに失した!もう崩壊はオートで進むようにしています!ファイアウォールも取り払いました!あなたはヒーローではなかった!コクリコットの兄でも、なんでもない偽物だ!!」

 

自身の変化に戸惑うロードに、突き飛ばされて錯乱したドクが叫び散らす。作業しようとする度にロードが横槍を入れるだろうからそれはもうできないが、できなくても問題ないとドクは叫ぶ。

そして、ロードが一番言われたくないであろうと考えていた、彼の最大限の罵詈雑言を、ぶつける。

 

どうなってもいい、隙が作れるかもしれないならそれに賭けるというドクのその姿勢は手負いの獣のような、触れればどちらもが傷つきそうな姿勢だった。

 

「んなもん当たり前だろうが。」

 

しかし、ロードは呆れた顔をして言った。

 

「……はい?」

 

「当たり前だって言ったんだ、耳遠いのか?」

 

「だって……だってあなたは、ずっとコクリコットの兄として行動し、片時も離れることなく、コクリコットのこととなると我を忘れていたじゃありませんか!!」

 

ドクの錯乱が激しさを増す。

ロードの今までの行動から、彼が必死にコクリコットの兄になろうとし、コクリコットの兄であると本気で自負しているように見えたから。だからドクは彼の心の一番柔らかい所を突いたと思っていたのに、それを否定された。

 

「そもそも、コクリコは俺を見てないんだよ。俺の中の兄の幻影を見てるんだ。アニメと人だよ。そもそもの視点が違うんだ、交わるわけが無い。しかも、取り憑いた悪魔を野放しにしてるんだぜ?そんなの、実の兄貴のすることじゃねぇ。」

 

「なら……ならどうして!」

 

「簡単だ。あの子の兄を見つけるため。そのために、この世界を諦める訳にはいかねぇんだよ。俺は偽物だ。代替品だよ。最初からそれだけは決まってたんだ。」

 

「どうしてそこまで、一途になれたんですか……」

 

「俺のプレイヤーネームはアラン。アラン・スミシー。The alias manのアナグラム。要するに、ただの偽物さ」

 

そこまで聞いてドクは悟る。初めからこの男は【コクリコの兄】という役を演じていただけなのだと。コクリコが消えると言った時に彼が見せた怒りはコクリコを愛するがゆえのものではなく、コクリコの本物が損なわれるからこその怒りだったのだと。

 

《姉さん!準備出来ました!》

 

《マスター、システム内に幽閉された“人”を送り返す準備ができました》

 

ロードの返答を聞いてドクの体から力が抜けた時、デネブとキィがそう言った。

 

「準備がいいな。なんでそこまで早くできた?」

 

《このバカの脱出装置の適用範囲を広げました》

 

しれっとキィがそう言い放つ。バカとは誰のことか、聞くまでもない。

 

「了解。ありがとな。」

 

《まだこれからですよ》

 

ロードが感謝を伝えるとキィはそんな返答をした。ロードはそれに小さく「そうだな」とだけ返す。

 

「ボス!こちらにいらっしゃったのですね!」

 

そこに波羅渡が合流する。ドクを抑えたことで新たに敵が現れることもなくなり、継続戦闘の必要がなくなったのだ。

 

「おぉ波羅。こっちも今終わったところだ。帰れるぞ、向こうに。」

 

「そうですか!ならばご一緒します!」

 

波羅が揺れる尻尾の幻影が見えるほど嬉しそうにロードにそう言った。

 

「すまんな、そいつはできねぇんだ。」

 

ロードが悲しそうに笑いながら波羅渡にそう言う。

 

「知ってます。知った上で、ご一緒しますと言っているんです。」

 

しかしそれを波羅渡は優しい笑みを浮かべながら受容する。ロードはそれに驚きながらも波羅渡に訊ねる。

 

「どうなっても知らねぇぞ。帰れねぇだけじゃなく、冗談抜きで死ぬかもしれねぇ。むしろそっちの可能性の方が高ぇ。それでも?」

 

「えぇ、それでも。」

 

波羅渡は強い目をしていた。だからロードも、頷いた。

 

「デネブ、キィ、頼むぞ」

 

《もう外してます》

 

《かしこまりました》

 

そうしてキィは脱出装置を起動する。少しずつ消えていくドクが、最後に【孤独者達の宴(ロンリネス)】の3人に訊ねた。

 

「どうしてあなた達は、そこまで強くなれるんですか?」

 

「コクリコのためだ。」

 

「ジャスくんとの誓いのために。」

 

「全てはボスのために。」

 

三人はその問いに即答した。迷いはなかった。

 

ドクは完全に消えた。きっと他のプレイヤーも元の世界に戻っていることだろう。

それを見届けてからロードは明るく振る舞い、言った。

 

「さ、お前ら。復旧作業だ!今夜はデスマだぞ!」

 

「しかも命をかけた、ね。全く、ロードくんと関わってるとロクなことがないねぇ!」

 

「ボスがやると仰るなら、僕はどこまでも──そこが例え地獄だろうと──ついて行きますよ。」

 

《この世界はあなたのものです》

 

かくして孤独者たちは、この世界に留まり続ける。




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