ロリ#コンパス   作:乱数調整

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と言ったな。

あ れ は 冗 談 だ

まだ続けるというずるい終わりをしたんです、このくらいはさせてくださいな。


感傷 この世界と生き方と
守護霊


これは、ロードことアランたちがゲームと現実を繋げる少し前の物語。

 

「終わっっっっっっったァ〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

「ロードくん、お疲れ様ぁ……すごい疲れたぁ……」

 

「お疲れ様です。」

 

#コンパスに留まった孤独者たちがデスマーチを終え、別々の場所でそう呟いた。

生活区域とステージは完全に復旧し、ファイアウォールなどのシステムも完全な状態に戻すことができた。

ヒーローも今は復旧し、カードキャラたちとそれぞれの暮らしをしている。

 

「……けど、まっさかファイアウォールとかウイルスがそのまんまの形で見えるとは思ってなかったがな。」

 

そびえ立つ大きな壁──ファイアウォールの上である一点を見ながらアランが言った。

 

アランの視線の先にあったのはコクリコとその家族の感動の再会。彼女らは#コンパスで行われていること、起こったことについては何も知らない。

 

【コクリコ!無事だったのかい?】

 

【本当に、本当に心配したのよ……!大丈夫?怖い思いをしなかった?】

 

『お兄ちゃんが一緒だったから、寂しくなかったよ!』

 

【そうなのかい?】

 

【いや……どうだったかな?】

 

親子と兄妹の感動の再会をアランは遠くから見下ろしていた。

 

「ロードくん、隣、いいかい?」

 

「楼閣か。お前、訊ねる気ねぇだろ。」

 

そんな黄昏れるアランの隣で声がした。楼閣だった。

許可を貰う前に隣に座った楼閣を見てアランはそう返す。楼閣はえへへ、と少しはにかみつつも退く気はないようでそこに腰を下ろした。

 

「コクリコちゃん、嬉しそうだねぇ。」

 

「そうだな。」

 

「本当に、もう会わない気なのかい?」

 

「……あぁ。俺が行ったら、コクリコが混乱しちまうからな。」

 

酷く言葉足らずな会話だった。けれど、二人はそれで通じあっていたのだ。

幻影ではない、本物の兄がいるのだから偽物はもういらない、あると邪魔になるだけだとアランは伝える。

 

その返答に納得してないのか納得したのか分からないような声音で楼閣は「ふぅん」とだけ返し、別の話を始める。

 

「ところでさ、セナくんは結局なんだったんだろうね?」

 

楼閣がアランに訊ねた。

周りには誰もおらず、アランの秘めた想いが──それがどんなものであれ──誰かに知られる恐れもない。だからこそ楼閣はこの質問をしたのだろうか。

 

「何って、アイツは悪魔だろ。」

 

「いや、そうなんだけどさ。」

 

楼閣は苦笑して続ける。

 

「ほら、セナくんって悪魔で、ロードくんはいわば悪魔と契約したわけでしょ?それだけでロードくんも最終的には悪魔になっちゃったっておかしくないかい?だったら、セナくんって何者?」

 

「あぁ、それについてはだいたいの予想はついてる。」

 

アランは楼閣の方を見ず、どこか遠くを見たままそう答えた。その様子を特別気にすることなく楼閣はアランの顔を覗き込みながらその先を促す。

 

「それは?」

 

「【レイニーデビル】」

 

ぽつりとアランが呟いた。アランはそれを進んで詳しく話したくは無さそうだったが、楼閣が首を傾げているのを見てその先を進めた。

 

「願い主の望みをその人の願っていない方法で叶える悪魔だ。例えば会社で「部長になりたい」と願ったとする。するとその会社の上層部が事故なり引き抜きなりでどんどん居なくなって、会社が傾き、繰り上げでそいつが部長になった、とかいう都市伝説がある。コクリコの場合「家族とずっと一緒にいたい」って願ったんだろうよ。それで家族が全滅だ。」

 

両親の離婚、兄の結婚、事故死、誘拐。家族が別れる要因はさまざまだ。それらの可能性を無くして願いを叶えようと思っても、今の状態が永遠に続くことはありえない。

もしそんなことが出来るとするならばそれは、死体となることで家族が別れる要因を全てなくしてしまう以外には、なかったんだろう、とアランは自論を述べた。

 

「でもさ?セナくんはコクリコちゃんの事が好きなんでしょ?だったらそんな方法で願いを叶えなくないかい?」

 

「仕方ないだろ。」

 

楼閣のその反論を強引とも取れる方法で跳ね除け、アランは続ける。

 

「都市伝説、外談口説、道聴塗説。そういうこの世の理を外れた存在ってのは少なからず噂ってものに影響される。アイツはそんなことしたくはなくてもそれ以外の振る舞いが出来ず、望まなくてもそうなっちまったんだろうさ。」

 

どこかかの悪魔を憐れむようにアランは囁く。楼閣はどこか納得がいかないといった表情をしていた。

それを知ってか知らずか、「それに」と前置きを付けてアランはその先を話し始めた。

 

「それに、レイニーデビルは、一説には猿に──享楽殺人鬼に殺された子供がなったって話もある。その怨みによって生まれたんだとしたら、殺すことしか方法を知らなかったのかもな。」

 

憐れな奴だよ、とアランは小さく呟いた。

 

「でもさ、」

 

楼閣はアランの話を切り、元の話を進める。

 

「でも、それならなんでロードくんは悪魔になったんだい?コクリコちゃんを見るに、雨降りの悪魔(レイニーデビル)に関わったら悪魔になっちゃうってわけじゃないんでしょ?」

 

「さぁな。」

 

自嘲気味にアランは言った。視線はまだ、ここではないどこか遠くを見たままだった。

 

本当は、自分が悪魔になった理由など分かりきっているくせに。

 

悪魔と遊べば悪魔になる(devils make devil and devil)

 

そう言ってはじめてアランは楼閣の方に向き直り、困ったように笑いながら言う。

 

「寂しかったんじゃないか?」

 

なぁ、セナ?とアランは何もない空間に向けて語りかける。すると、先程まで何もなかった空間に、突如少年が現れた。

 

「えっと……キミ、誰だい?新しいヒーローか何か?キィちゃん、こんなデバックあったっけ?バグ?」

 

「は?バカなのお前?」

 

《会話の流れから察してください》

 

『度し難い、とはこういう時に使うんだろうな。』

 

少年を見た楼閣が何事かと訊ねると、その場にいた少年とアラン、それにどこからか現れたキィに呆れられた。

 

「ちょっと酷くない!?私この子と会ったことないんだけど!?」

 

『会話の流れでなぜ察しない。』

 

「うわっ、この子生意気!」

 

楼閣と少年が漫才を始めたが、それを素早く制すようにアランが割ってはいる。

 

「誰も何も、そいつセナじゃん。」

 

「…………え?」

 

「だからセナだよ。同意を求めた時に出てきた時点で察しろよ。」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

楼閣が絶叫した。うるさかった。

 

「うるさい。」

 

「いやだってさ!セナくんってだいたいロードくんと頭の中で話してたじゃん!たまに口に出てるから今回もそれかと思ってたよ!」

 

「まった、たまに口に出てた?」

 

「それにセナくんって紫のモヤだったじゃん?それがこうなるとは思えないよ!」

 

「待て楼閣、たまに口に出てた?」

 

アランの質問を華麗にスルーしながら楼閣は驚いた理由を説明する。

キィもセナもアランの叫びをスルーしていた。

 

『それで?なんで僕を呼び出したんだ?嫌味でも言う気か?』

 

「違ぇわ。俺の事なんだと思ってるんだ。お前にやって欲しいことがあってな。」

 

アランは「口に出してたのか……」と落ち込みながらもセナの質問に答える。

 

『じゃあなんだ?お前に力を取られて悪魔じゃなくなった僕に用なんてないだろう?』

 

「そこだよ」

 

『どこだよ』

 

セナが皮肉をたっぷり込めてそういうと、まさにそこだと言いたげな表情でアランが返した。セナは訳が分からないといった表情を浮かべる。

 

「お前、悪魔としての力はないけど、怪異としての力は残ってるだろ?」

 

『……何故それを知っている。』

 

セナは表情を一転させ、胡乱気な表情でアランを見つめる。アランは当然のことのように言い放つ。

 

「お前から分捕ったけど、それでもお前、消えなかったからな。消えたっぽく見せるために色々と小細工してくれたが、分からんわけねぇだろ。」

 

アランのその言葉にセナはうなだれる。頭を抱えて悩むその姿は、容姿と相まって小さな子供のようだった。

 

『分かった分かった。それで、僕に何をして欲しいんだ?』

 

「ま、それは後でな……お、コクリコたちも話が終わったらしいぞ。用意した家に入ってくわ。なんの疑問もないらしいな。いやー、記憶にある自宅そっくりそのまま作れるって、ホント#コンパスの記録システムは便利だな。」

 

うし行くか、と言ってアランはファイアウォールから飛び降りる。セナはそれに後ろから続き、楼閣は飛べないのでアランへの文句を言いながら点検用階段から急いで降りていった。

 

家の前まで来ると、アランはセナに頼み事をする。

 

「セナ、とりあえずコクリコの兄ちゃん呼んできてくれ。できるだけ早く来るように、かつ誰も一緒に来ないように。」

 

『贅沢な注文だな。いいよ。なんとかしてきてやる。』

 

そう言ってセナはブランシュ家に入っていった。

2分後、可哀想なくらい顔を真っ青にしたコクリコの兄が飛び出してきた。

 

『連れてきたぞ。』

 

「おいお前何吹き込んだ。」

 

アランが訊ねるがセナはどこ吹く風と無視をする。アランはため息をひとつつくとできるだけ警戒されないようにと気をつけながら話しかけた。

 

「どうもはじめまして。」

 

【ヒッ……!爪は!爪を剥ぐのは勘弁してください!】

 

「おいセナ、てめぇマジでなに吹き込んだ。」

 

異常な怯え方をするコクリコ兄。アランはセナが何をやらかしたのかとても気になった。

 

『何って、早く連れてこいって言うから『ついてこい。逆らえばお前の爪を肉ごと剥ぐ』と脅してついてこさせただけだが?』

 

「間違いなくお前のせいだよ!!」

 

セナとアランが喧嘩を始める。そんな二人を見てコクリコ兄が困惑していた。

 

「怖い思いさせちゃってごめんねぇ。ロードくんは変な子だけど、そんなことはしないから安心してね。」

 

【は、はぁ……】

 

その一言と楼閣から溢れる母性オーラで安心したのか、コクリコ兄はいくばくかの冷静さを取り戻す。

それを目ざとく見つけてアランがセナとの喧嘩を一時休戦にした。

 

「はぁ……全くお前は……んで、本題に入ろうか。お前、今、なんかおかしいと思うことないか?」

 

【えっと……その……】

 

「いい。なんでも言ってみろ。」

 

アランの後押しで決心がついたのか、アランが何かしらの能力を使ったのか、コクリコ兄は胸に秘めていた疑問をぶつける。

 

【えっと……コクリコと僕は、長いこと離れ離れだったんです。母とも、父とも離れていて、二人の言うことを聞く限り、コクリコは二人と一緒にいなかった。なのに、】

 

「お前とずっと一緒にいたと言っている、そうだな?」

 

アランがそう補足するとコクリコ兄は電流が流れたかのように驚き、アランを見つめた。

 

【どうしてそれを?】

 

「簡単な話だ。それは俺だったからさ。俺がコクリコとずっといたんだ。」

 

アランは話を続ける。コクリコ兄は詳しい説明を、と目で訴えかけた。

 

「コクリコは小さい。家族と離れ離れになったことが受け入れられなかった。だから、赤の他人の俺に兄貴であるお前の姿を重ねていたのさ。本人はそれに気づいていない。だから、お前と一緒にいたと思い込んでるのさ。」

 

その説明を聞いて、納得は出来ないがその話が本当だとすれば一応の辻褄は合うとコクリコ兄は頷いた。そして、アランの真意に踏み込もうとする。

 

【なるほど……それで、僕にどうしろと?】

 

「察しがよくて助かる。とはいえ、お前に何かしてもらうようなことはねぇよ。お前は今まで通り、コクリコと過ごして口裏を合わせてもらえればそれでいい。」

 

そう言われてコクリコ兄は少し心配そうな顔をする。コクリコの記憶には自分ではない自分がいるのにうまく口裏を合わせられるかが心配だという表情だった。

 

「心配ねぇさ。空白分の記憶については、埋める方法があるからな。」

 

【……おみとおしですか。そして、それは?】

 

「守護霊にお前に取り憑いてもらう。俺とずっと一緒にいた守護霊だ。記憶はそいつに聞いとけばあらかた何とかなる。」

 

『【守護霊?】』

 

コクリコ兄とセナが二人して首を傾げる。楼閣は何かを察したのか、あちゃーと言いたげな表情をしていた。

 

「セナ、お前だよ。」

 

『僕か!?』

 

【えぇ!?】

 

セナとコクリコ兄が同時に驚く。その態度にアランは呆れたように言う。

 

「なんでそんなに驚いてんだよ?お前がこいつに取り憑いたら、囁き女将で口裏を合わせつつ、お前はコクリコを近くで見続けられる。お前的にもオイシイ話だろうが。」

 

【待ってください!僕は嫌ですよ!この人怖いですし!】

 

「それは諦めろ。コクリコが全てを思い出してもいいなら良いが、トラウマになりえる記憶もある。最悪、今度は俺を探してまた行方不明になることも考えられる。それでもいいのか?」

 

【それは……】

 

反論をしようとしたコクリコ兄をアランが丸め込む。口は悪いが起こりかねないことをアランは言っていた。

だからコクリコ兄も何も言えない。

 

「どうする?口裏を合わせるか、真実を貫き通すか。」

 

コクリコ兄は考える。どちらが妹にとって、両親にとって良い選択になりうるのかを。

そして決断する。

 

【お願いします。】

 

「よし。それじゃセナ。あとは任せた。報告とかはいらねぇから、そいつと仲良くな。」

 

そう言ってアランは去っていこうとする。その背中にコクリコ兄が問いかけた。

 

【すみません!……あの、お名前をお伺いしても?】

 

「アラン。アラン・スミシーだ。」

 

【……なるほど、名乗る気はないのですね。】

 

「まぁな。それじゃ、任せたぞ。」

 

そう言ってアランはふっと消えた。彼の悪魔の力だろう。

楼閣は空気を読んで気づかれないように去っていった。

 

「キィ」

 

《なんでしょうか》

 

「最下層のファイアウォール、一番壁から三番壁を開けてくれ。」

 

《どうしてです?》

 

「ちょっと、気分転換だな」

 

その夜、

 

アランは楼閣と波羅渡との約束の地に戻ってこなかった。

#コンパスのセキュリティの最下層から憂さ晴らしをするような破壊音が響いてきたという。




どうも乱数調整です!
最終回詐欺はいかがだったでしょうか?

本編は終了ですがSS自体は終わりませんよ!ここからが本番です!
ここからは時系列もぐっちゃぐちゃ、整合性なんか気にしない話が書けるので、コラボキャラや新キャラ、チェリーパイなどいろいろ出せます!

これは前から決めていた章になってます。
初めは普通の【間章】
次に小話扱いの【閑章】
そしてコクリコを失ったロードこと本作主人公アランのその後を描いた【感傷】

“カンショウ”系列三つの小話章、それぞれお楽しみいただければ幸いです。

次回は懐かしのあの話、その次は設定や没ネタをお送りしようかと考えています。

次回、ありうべからぬ今を見よ

ではでは、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。
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