『招かれたって言われても、あーしはそんな自覚ないし!』
「とか言いつつちゃっかり着いてきてんじゃねぇか。」
みみみとの通信が切れた直後、ロードはろくな説明もせずに歩き出した。
きららは初めこそロードについて行こうといなかったが、不貞腐れるのをやめたらしくロードに対する文句を垂れ流しながらもついてきていた。
『そりゃそうよ!あーしはあんた達の悪事を暴くために#コンパスに侵入したんだから!』
「悪事?」
『そうよ!あんた達は人々を誘拐して働かせてるんでしょ!行方不明者がせっかく戻ってこれたのにまた幽閉するなんて何考えてるし!』
きららが怒ったような表情でロードを睨めつける。それでもロードの飄々とした態度は変わらない。
「そんじゃ、これみたらお前は超驚くんだろうな。」
『ほぇ?』
そう言いながらロードは扉を開ける。きららはロードの言った意味が分からず素っ頓狂な声を上げた。
そこに広がっていたのは──
【きらら!極秘潜入をゲリラ配信しようとして逆に捕まるとは無様だな!】
眼帯忍者が天井からミノムシ状態で逆さ吊りにされた景色だった。
「あ、ロードくん。もう一人侵入してきた子がいたから捕まえたよ。この子どうする?」
【きららどうした?俺がここにいることが疑問か?ならば答えてやろう!俺はお前が配信を始めた直後にお前より先に侵入してやったのさ!侵入経路はみみみが開けていたからな!そしてお前の先回りをしておいてやったのさ!!】
「ゆららちゃんさぁ……なんでそんなに自信満々なの?keyくんにあっさり捕まってたよね?ライバルだって言ってるきららちゃんは透明化してkeyくん達の警備すり抜けてたよ?きららちゃんに負けてるよ?ぼろ負けだよ?」
楼閣がゆららと呼ばれた忍者を見上げながらそう言う。当のゆららは逆さ吊りをされながらもドヤ顔できららを見下ろしており、マヌケな格好からは想像もつかない自信に満ちた顔をしていた。
「…………………………」
「………………?ロードくん?さっきから震えながら黙っちゃってるけどどうしたの?」
楼閣は黙りこくるロードを心配していた。ロードが黙ることなど少なかったのだ、心配するのも無理はない。
自身を心配する楼閣にロードは語りかける。
「楼閣てめぇ!俺がちょっと管理者っぽくカッコつけて扉開けたのに、なんでこのタイミングで管理室とメインルーム行きの扉を繋げやがったこのハゲ!!」
「誰がハゲだい!私まだ20代でふっさふさでしょ!?あとそんなの知らないよ!!イレギュラーが発生したらどんな状況でもすぐに呼んでって頼んだのロードくんじゃん!!」
『??????』
きららは自身のライバルであるゆららが逆さ吊りされていたり、冷静沈着な強敵だと思っていたロードが激流のような怒鳴り声をあげたり、#コンパスの管理者がロード一人ではなかったりと、様々なことが起こりすぎて目を白黒させていた。
「お前のせいできららが白けてんだろうが!どうすんだよこの空気!」
「だったら「不具合が起こったらすぐに呼べよ。」って言わなきゃ良かったじゃない!自分で蒔いた種でしょう!?」
【どうしたきらら、さっきから何も言ってこないな。いつもの元気はどうした?…………もしや、とうとうこの俺に恐れをなしたか!?そうならそうと早く言え!いや参ったなぁ。はっはっはっ!!】
「うるせぇクソ雑魚忍者!てめぇ捕まってんのになんでそんなに自信満々なんだよ!きららのゲリラ配信も見てるってなんだ!拗らせファンかお前は!!」
『うるさーーーーーーい!!』
ぎゃあぎゃあと言い合う3人に、ついにきららがキレた。
『なによ3人でわけわかんないこと話して!こっちの気持ちも考えて欲しいし!!さっきまでの威厳はどこ行ったし!』
【ふむ、確かに#コンパスの管理者だと言うなら風格というものは重要だろうな。】
『一番はアンタよゆらら!捕まったうえに逆さ吊りにされてるのになんでそんなに自信満々なのよ!意味わかんないんですけど!』
言いたいことを一息で言い切ったからか、きららは肩を上下させて息をしていた。
そんなきららの様子を見て楼閣はバツが悪そうに、ロードはもういいやめんどくせぇと言わんばかりにきららの方を見る。
ロードは楼閣にアイコンタクトひとつで指示を出す。楼閣は怪訝そうな顔をしていたがロードが顎をしゃくって先を促すと、はいはい、と言いたげに何かしらの操作をする。
その操作の後、ゆららを縛っていた縄が消え失せ、ゆららは顔面から華麗な着地を決めた。
ゆららがうらみがましい表情をロードに向けるがロードはそれを鼻で笑って話を始める。
「そんじゃ、ちょっと遅いしいろいろグダっちまったけど」
そう前置きをして誰かを待ってからロードは言った。
「《ようこそ、#コンパスへ》」
ロードとキィが声を合わせてそう言うが早いか、ロードの後ろにおびただしい量の画面が現れる。
それらは一つひとつが違う映像を映していた。
《世界中のプレイヤーが、あなたを待っています》
ある画面はのどかなリゾートの風景を、
ある画面はライブステージの風景を、
ある画面は立体交差のある風景を、
ある画面はとある広場の風景を、
ある画面は辺りが白い風景を、
それらのどの画面を見てみても、誰かが絶えず戦っていた。
人対人で戦う者、
人対異形で戦う者、
あるものは楽器を演奏し、
あるものは毒を撒き散らし、
あるものは狂気と共に舞い、
あるものは鎌を振り回し、
あるものは楽しそうに切り刻み、
あるものは味方を癒し、
あるものは死者に思いを馳せ、
あるものは歴史の遺物と戦い、
あるものはだるそうに参戦し、
あるものは味方を応援し、
あるものはイタズラを試し、
あるものは花火を打ち上げ、
あるものは理想を追い求め、
あるものは主のために動き、
あるものは退屈を紛らわせ、
そしてあるものは、英雄を夢見た少年に付き従う。
その画面の中の誰もが目を輝かせ、楽しそうにしていた。
その光景を目の当たりにした侵入者たちは一様に唖然とし、画面に釘付けになっていた。
『すごい……』
きららの口から感嘆の声が漏れる。
その感動にたたみかけるようにロードが説明を始める。
「……たしかに、#コンパスは過去に誘拐なり拉致監禁なり言われてもしょうがねぇことをした。けど、それは前の管理者の絶望から生まれたもんだ。」
【ほう?今は違う、と?】
「あぁ。ここにいる奴らはみんな、俺の呼び掛けに応えて、自ら望んでここに来た。ディープウェブやとある権力からの攻撃がひっきりなしに飛んでくるこの世界に、ただ一人、実在するかどうかすら怪しい
ゆららの質問にロードが苦笑しながら答える。
それからロードは2人を見つめて言い放つ。
「これが、今の#コンパスだ。悪事があったか?」
『で、でもまだ分かんないわよ!あんたらがウソついてるだけかもしれないし!』
「だったら、話してみるといい。」
きららがロードに噛み付くが、ロードはそれを軽く流す。その直後、虚空から6人の人が現れた。
「ふぃー疲れたぁ……アランお前、あんなむちゃくちゃなオーダーすんなよな……」
『吐きそ……ヴォエ』
「全く……何時間戦わせんだよ……ま、ボーナス期待してるぞ。」
『これで明日も切れる?』
「ジャンヌヂャンガダリナイ……フー…………スーハースーハースーハー!!」
『ひゃっ!?PRHSさん離れてください!誰か!助けてください!助けて!たす……けて……』
ギルド【
情報のセキュリティ強化やサーバーへの攻撃に対する迎撃などの依頼を貼り出して、ギルド単位での受諾・達成の出来高制で給料を出しているらしい。
なお、副業は自由なため、戦いが苦手な者はファイアウォールの点検や作曲などで稼いでいるらしい。
今ネットではシーンガーソングライターのカロネが大人気だ。
「おうご苦労さん。結構大変だったろ。元々【
「マジか……奴らとうとうそこまでやるか…………とまぁそれはいいとして、だ。こいつらなに?」
【
「あぁ、こいつは新しくヒーローとして入ってもらおうと考えてる輝龍院きららと、なぜか着いてきた拗らせファンのゆららだ。」
【おい誰が拗らせファンだ。】
ゆららが苦言を呈するが、その発言をまるっと無視してkeyは話を進める。
「へぇ……強いのか?」
『舐めんなよ。』
【同感だ。】
keyがロードにそう聞くと、怒りを顕にきららとゆららが返す。2人はkeyを鋭く睨みつけた。
対するkeyはカラカラと笑って2人の殺気をいなす。その姿からはかなりの余裕が垣間見えた。
「あーあ、まぁた焚き付けやがって。毎度毎度、俺ら巻き込むなよギルマス。」
「あははー……keyってそういうところあるよね。」
それを見た【
「毎回おかしな方向に行っちゃうねぇ。ねぇ、どうするロードくん?」
「……ほんっと、俺の考えてたこととは別の方向に進むな。」
《ヒーローの能力を知るには共に戦うのが一番では?気にせずとも三バカなら上手くやりますよ》
その場にいた【
ロードが予想だにしない方向に、歯車は回った。
お久しぶりです……乱数調整です。
リアルが修羅場です……加えてきらら回が1話増えました……なぜ……?
元気に投稿できたらいいなぁと思いながら次の話を書いてます。
次回は早く投稿できるといいな……
ではでは、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。