『………………はっ!』
「お、気がついたか?」
私は目を覚ます。今までの戦いが、あの戦いでの死が夢だったかのようだ。
しかしここは……
『……知らない天井だ。』
「テンプレかよ。」
『その声は……ロードか?』
ロードの声に私が反応すると、ロードが応えた。
「あぁ、そうだぞ。ってかあの中でよく俺の名前分かったな。わざわざ敵の名前まで覚えてるなんて、あの状況でそうそうできる事でもないだろ。」
む……そう言われてみればそうか。なぜ私はこの者達の名前を覚えていたのだろうか?
……これもまた、運命か。
『……!!マピヤ!マピヤはどこだ!?』
「あぁ、マピヤなら──」
『まさか食ったのか!?』
「食わねぇよ!……食えなかったから諦めた。」
そ、そうか……ひとまずマピヤは無事に……ってロードお前、マピヤを食うつもりだったのか。
とりあえずマピヤの無事を知り、安堵した私は新たな疑問を見つける。
『……?なぜ私はここにいる?私は死んだはずではないのか?』
「あぁ、まずはその説明からだな。」
ロードが私に懇切丁寧に説明を始めた。
この世界が元はただの電子遊戯であったこと。
この世界での死は次の世界に行くことではなく、この世界に戻ってくること。
この世界から出る方法は、今現在分かっていないこと。
『なるほど……まさに終わりのない悪夢、と言ったところか。』
ロードの話が一通り終わり、私がそう呟くと、ロードがキョトンとした表情をした。
『……?どうかしたか?』
「いや、【ルチアーノ】と同じことを言うんだな、と思ってな。」
ほら、あの柩背負ったオッサンだよ。とロードは言う。
いつぞやに攻めてきた者たちが全員そのような格好をしていたが、その中の一人だろうか?
「その全員だぞ。」
『なんだと!?』
「言ってなかったか?
そうなのか……にしても私はその疑問を口に出していなかったというのに、なぜロードは分かったんだ?読心術でも心得ているのか?
「んなもん心得た覚えはないがな。」
また読まれた……だと……!?
もしや私は考えたことがそのまま口に出てるんじゃないだろうか。
『そういえば、マピヤはどうなっている?』
「あぁ、それなら──」
「マピヤなら奥でコクリコちゃんと一緒にいるよ?」
「なんだと!?」
私がそう訊ねると楼閣が部屋に入りつつそう言った。
その言葉を受け、ロードが過剰に反応していたが。
「なぁにロードくん?マピヤは大人しいみたいだったから大丈夫だと思うんだけどねぇ。」
「なに悠長に構えてやがる!あんなケダモノとうちの可愛い
マピヤをケダモノ扱いか……
「こうしちゃいられねぇ。すぐに移動するぞ楼閣!!」
そう言うとロードは全速力で部屋を飛び出した。
『楼閣、行ってしまったぞ。急いで追わなければ!』
「あー、いつも通りだから大丈夫だよ〜。」
これでいつも通りなのか……しかし、放っておいてはマピヤが危ない。私も急ぐとしよう。
私が急いでロードを追うと、部屋では白い少女がマピヤに話しかけていた。
『トリさんだ!』
『ピュイ?』
『トリさんはどこからきたの?』
『ピュイ、ピュイ!』
マピヤが首を振って応える。
『わからないの?』
『ピュイ!』
マピヤが首肯する。
「なんだこの可愛すぎる子は。なぁセナ、俺死ぬ。コクリコが可愛すぎて余裕で死ねる。」
ふむ、あの白い少女が『コクリコ』というのか。
コクリコがマピヤに楽しそうに質問をする。
あの姿……村の祈祷師の娘に似ているな。病弱だが外の世界に興味が尽きないあの子に似ている。
『【トリさん】ではない。マピヤだ。』
『??おじちゃんだぁれ?』
『私は【イスタカ】、誇り高きティワロロ族の戦士だ。』
懐かしさとマピヤのためについ話しかけてしまったが、予想外の方向からの質問が来た。やはり子供は読み切れん。
……私は【おじちゃん】と言われるほどに老けただろうか……?
『おじちゃんはイスタカっていうの?』
『そうだ。』
『トリさんは【マピヤ】っていうの?』
『ピュイィィィ!!』
『マピヤはそうだと言っている。』
この少女、バトルの時とはまるで異なるな……人が変わったかのようだ。
しかしロード、そんなに真剣な眼差しでこちらを凝視しないでくれ、少し怖いぞ。
『イスタカおじちゃんとマピヤはおともだちなの?』
『ピュイ!』
『む……友ではなく家族のようなものだな。私はマピヤに命を救われたのだ。』
『へぇ〜。マピヤはすっごいんだねぇ。』
それにしてもコクリコは反応が大きいな。あの子と同じように、あまり外に出たことがないのだろうか。
『じゃあコクリコのおともだちもしょうかいするね!』
コクリコは嬉しそうな表情をして手に持っていたぬいぐるみをこちらに向けてくる。
『この子、テディラビっていうの。かわいいでしょ?』
『ピュイィィィィィィ!!』
『なっ!?どうしたマピヤ!?』
その瞬間、マピヤがコクリコのテディラビとやらに攻撃を仕掛けた。マピヤの表情には焦りが浮かんでいる。
いつも冷静なマピヤがここまで反応するなど、未だかつて無かっただろう。
『ピュイ、ピュイィィィィィィ!!』
『やー!マピヤどうしてイジワルするの!うぇぇぇぇ!』
『マピヤ、落ち着け!マピ──』
ぞわり
私の背中に悪寒が走る。
これは……闇の精霊の気配!それも、他の属性の精霊を引き合いに出したとしても出会ったこともないほどの巨大な──
『マピヤ、一度戻れ!!』
『ピュイ!……ピュイ!?』
「マピヤ?」
先程まで後ろにいたはずのロードが、いつの間にかマピヤを捉えていた。
その手はマピヤを縊り殺そうとしているにも関わらず、その顔には笑顔が張り付いていた。
「なぁ、マピヤ?お前は鳥だから本能のままに行動することがあるかもしれねぇ。だけどな?それが急にコクリコを泣かせてもいい理由にならないことくらい分かるよなァ?」
マピヤは首を締められていて何も言えず、何も叫べず、ただただもがくだけだった。
先程の気配は消えず、どころか威圧感が増している。
そこに楼閣が割り込んだ。
「はいはーい、ロードくん、そこまでだよ〜。」
「ア゛ァ?なんでだよ楼閣ァ?」
「コクリコちゃんを慰めたげないとでしょ?」
『うぇぇぇぇ!』
見るとコクリコはまだ泣いていた。
しかし、そう言ったところであのロードが止まるわけが──
「はっ!?そうだった!コクリコ!!」
止まった。
ロードが止まると同時に闇の精霊の気配も霧散する。
『ピュイィィィ!』
『マピヤ!無事か!?』
『ピュイィィィ!!』
『そうか……それは良かった……』
ひとまずマピヤの無事に安堵する。
そしてマピヤに再度尋ねた。
『マピヤ、何がいたんだ?』
『ピュイ!ピュイィ!!』
『ふむ?あのぬいぐるみから闇の精霊の気配がした、だと?』
マピヤはごく僅かな気配でさえも察知することが出来る。私には分からなかったが、あのぬいぐるみからただならぬ気配を感じたのだろう。
「ダメだよ〜マピヤ。急に攻撃なんてしたら。」
そこに楼閣が割って入る。楼閣は窘めるように人差し指でマピヤの額を、コツンとつついた。
『しかし楼閣、マピヤにもただならぬ理由が──』
「その理屈がロードくんにも通じればいいんだけどねぇ……ほら、彼ってロリコンだから。」
楼閣がなんでもないようにこちらにそう言う。
『だが、私とて闇の精霊の気配を放っておく訳にはいかないのだ。』
「闇の精霊……?あぁ、セナくんのことかな?」
『【セナ】?』
「うん。たまにロードくんの話に出てくるでしょ?誰かと話してるみたいな独り言を言ったりさ。」
む……そういえば私にも覚えがあるぞ。
「セナくんは悪魔だからさ、まぁ、その闇の精霊っていうのと気配が似てるんでしょ。」
そうか、楼閣には事前知識があったからそこまで慌てなかったのか。
だが、
『……お前たちは異常だよ。』
あの殺気の中で飄々と止めに入ることのできた楼閣も、ロードの行動を狂信するような表情で見ていた波羅も、異常でしかない。
人として何かを忘れてしまった者のようにしか、見えない。
「……うん?何か言ったかい?」
『…………いや、いい。』
「ふぅん?言いたくないならいいけど。」
じゃ、さっさとロードくんとこに行こっか。と楼閣は言う。曰く、どんな理由があったにせよ、泣かせてしまったからには謝らなければいけないそうだ。
『……マピヤ、行くか。』
『ピュイ。』
私はイスタカ
マピヤに救われ、ティワロロ族となり、この世界で
今日から元の世界に戻るまで、このギルドの一員となった。
こういう何かがおかしい日常回は大好きです、乱数調整です。
さて、今回はスラスラ書けはしたんですけど、場面の繋ぎに少し手間取ってこれだけかかりました。
とか言ってるけど、「手間取ったから別に追加してもいいでしょ!あのシーンにこのシーン……」と蛇足を繰り返した結果、本来行きたかったシーンに行くことなく、無駄に一話増えただけになりました!
というか、場合によっては二話無駄に増えるかも知れません!!
……一つ質問なんですけど、最新話の栞が四つで、更新から一時間も経たないうちにそのうち二つが更新後の話に行ってるんですけど、なんでそんなに早いんですかね?
メールで通知されるのかな?それともたまたま?
謎は深まるばかり……
ではでは、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。