買い物を終えてギルドホールバック。
調理台にいるのは俺とイスタカとコクリコ。
波羅はめぐめぐと自室に戻って、楼閣はドクを引っ張り出しにドクの部屋に突貫、ジャスティスは遊具の整備にトレーニングルーム。
台所にはIHクッキングヒーターとかなりでかい流し台、冷蔵庫やら電子レンジやらの家電にフライパンとか鍋とかの調理器具は壁に吊るしてある。
……ってか台所さらにデカくなってね?
《人数が増えましたので僭越ながら増築させて頂きました》
やるなお前。
IHが五口くらいあるじゃねぇか。いま寸胴にいっぱい湯を沸かしてるが、それしながら他の調理もできるじゃねぇか。
いやコレ、人数多いウチとしてはかなり助かるわ。
『……私の知っている食前の準備とかなり異なる……』
『おじちゃん、だいじょうぶ?』
台所にカルチャーショックを受けるイスタカとそれを慰めるかわいいかわいいコクリコ。
コクリコ可愛い。
もう今回、コクリコ愛でる回でよくね?
《いいから早く調理を進めてください》
いや、調理風景とか誰得だよ?誰もそんな描写求めてねぇぞ。
『ロード、お前はどこに向かって話しているんだ?』
んなこたどうでもいいだろ。
「じゃ、ささっと始めてぱぱっと終えるか。」
『コクリコもおてつだいする!』
コクリコはそんなふうに可愛らしく息巻くが、今回はそうも言ってられん。
と、いうわけでパンパン、と柏手を二つ鳴らす。
『いやロード、お前はさっきから何を──』
『(シュタッ)たいちょー呼んだ?』
『私はもう訳が分からんぞ……』
狙い通りめぐめぐがどこかから来る。
イスタカが混乱してるが、まぁ来たからいいだろ。
「めぐめぐ、コクリコと遊んでこい。」
『えー?コクリコちゃんこんなにやる気なのに?』
「それはだな……(ゴニョゴニョ)」
『あぁ……コクリコちゃんはねぇ……』
「そういう訳だ。行ってこい。」
『はーい!コクリコちゃん、行こー!』
よし、めぐめぐを丸め込んだ。
『でもおてつだい……』
「コクリコはホントにいい子だなぁ……でもねコクリコ、たまには俺に任せてくれた方が嬉しいな。」
『……うん。コクリコ、おにいちゃんがおりょうりおわるのまってるね!』
いい子すぎる……!
セナ、
『なんだァ?』
しっかり見とけよコノヤロウ!俺は見れねぇんだからな!
( ゚д゚)ハッ!そうだラジオだ!セナ、実況中継頼むわ。
『……僕は一応、悪魔なんだぞォ?対価とか──』
可愛いコクリコの活動記録
『い、いや……お前にとっても価値があるものじゃないと──』
コクリコとの活動記録は何物にも変え難いだろうが!!
『……そうだった、お前はそういう奴だったなァ……』
わかった、やってやろうじゃないかァ、とセナは言う。
よしよし、これでコクリコが危なくなったら俺とセナの二段構えセーフティーがかけられる。
コクリコとめぐめぐが遊びに行ったので、とりあえず晩メシの準備をする。
『……で、何を作るんだ?』
「ま、今日はだいたい決まってる。材料は……これだ。」
──────────────────────
材料リスト
【鶏もも肉】
【卵】
【七面鳥(生存)】
【ささみ】
【野菜諸々】
【調味料適宜】
【冷蔵庫の食材の余り】
──────────────────────
『ピュイィィィィ!!』
『マピヤ!落ち着け、マピヤ!!』
まだ生きてる七面鳥とその他もろもろの鶏肉を見てマピヤが暴れだした。
『ピュイィィィィィ!!』
「そうだぞマピヤ、コイツは今から死ぬんだ……お前の身代わりになぁ!!」
『ピュイィィィィィ!!』
『ロード!火に油を注がないでくれ!』
マピヤが先程よりも激しくバッサバッサと暴れ始めた。クソっ、ちょっと脅せば大人しくなると思ったのによォ!
全くもう……ところ構わずこんなに羽散らしやがって……
「……そういえばマピヤ、お前のその羽、暖かそうだな?」
『ピュイ?!』
「そんなにところ構わず撒き散らすくらい余ってるんだ……毟って布団作っても問題ないよなぁ?」
『ピッ!?』
「死んでも生き返るもんなぁ?なら羽は毟り放題だなぁ!?」
『ピュイっピュイ?!』
マピヤの羽はマピヤが死んでも消えない。バトルで知った。
「大人しく出来ないような駄鳥はそのくらいの有効活用しても問題ないよなぁ?(暗黒微笑)」
『ピッ、ピュイ!』
そう言い終わるやいなや、マピヤは俺がマピヤ用に用意した止まり木に一直線に向かい、そこで大人しくし始めた。
( ゚д゚)、ペッ 命拾いしたな。
『ロード、早く始めないと時間がなくなってしまうぞ。コクリコは寝るのが早いのだろう?ならば早く作らなければならない。』
ま、それは正しいな。
『夕餉を作るのは我ら二人だ。宴をやる気でいるのならかなり急がねばなるまい。』
「その通りだな。んじゃ、ちゃちゃっと始めていくか。」
さぁて、来週のサザ──じゃなくて、今日の晩メシは?
【七面鳥のオーブンソテー】
【親子丼】
【ささみのシーザーサラダ】
ご覧の三品です。
まぁ、確定枠がこれなだけだから唐揚げとか南蛮とか適宜追加していくことになるだろうけどな。
「イスタカ、お前、鳥は捌けるよな?」
『任せておけ。』
「よし。んじゃ七面鳥は捌いておいてくれ。血抜きと内蔵は任せたぞ。細かく分けたりはしなくていい。」
『あぁ、任された。』
よしよし。んじゃ俺は親子丼の出汁取りながらスープも作っていくか。ミートローフみたいなスープは子供ウケも良さそうだしな。
「ってわけで、波羅はサラダ用の野菜とささみの調理を任せる。」
『……ロード、波羅は──』
「ご心配なく、もう始めてますよ。」
「おう、そのままよろしく。」
『もう私はお前たちが分からんぞ……』
安心しろ、俺も分からん。
だって俺がなんかしようとすると毎回当然のようにいるんだもんよ。
いる前提で話を進めるのが得策だって最近気づいた。
「波羅はアタマオカシイから気にする方がどうかしてると俺は思っている。」
『あ、あぁ……』
「それよりも早く七面鳥捌いてくれ。それの準備が一番時間かかるんだから。」
それだけはさっさとしてくれねぇと困るんだよな。二回オーブンに入れないといかんから時間がものっそいかかる。
捌いたあとのを買うよりも安かったからって生きてんのを買うんじゃなかったな……
『あぁ、ならいくぞ。』
そう言ってイスタカは手に持った
それを七面鳥の首めがけて振り下ろそうと──
「待って下さい!!」
──した時に波羅がそれを止めた。
『なんだ波羅?早めに捌くのだろう?』
「どうした波羅?血が見たいからお前がやりたいのか?」
「いやボスの中での僕はどんな戦闘狂なんですか?」
そうだな……姫ジャンゴリカとバーバリアンを足して二で掛けたくらいだな。
……アレ?割と正しくね?
「ま、んなこたどうでもいい。そうじゃねぇならどうしたんだ?」
「ボス、危険性はある程度排除しなければいけないと僕は思うんです。」
いやお前、言ってる意味がわからんぞ。
「いやですから、鳥って首を落とした
「………………は?」
「い、いえ!ボスがイスタカは手馴れているから、鳥が暴れても押さえていられるだろうという考えはよく分かるんです!しかし、万が一押さえられなかった場合、血の飛び散った部屋にコクリコさんを入れられないでしょう?ですから──」
え、鳥って首切っても動くの!?え、マジで!?
《事実ですよ》
マジかよ。全く知らんかったぞ……
いや、普通死んだら動かんだろ……それどころか走り回るのかよ……
波羅がいなくてコクリコがいたらマジでトラウマもんの記憶じゃねぇか。
「──ですから、ここは一度殺してから、心臓が止まらないうちに首を切り落として血抜きをしましょう!」
「聞いたかイスタカ、危険因子は排除だ。」
『承知した。』
そう言うとイスタカは七面鳥の首をひねって折る。
うっわ、めちゃくちゃ暴れるじゃねぇか。この調子で走り回られたら部屋中血だらけだぞ……
今回ばかりは波羅に感謝だな。
イスタカは七面鳥が暴れなくなってから流れるように首を切り落とした。
おぉ……しばらくは心臓動いてんのか。一定間隔で血がドバドバ出てきてるぞ。
何気に俺は鳥を捌くのを見るのが初めてだからそれに見入っていると、珍しく真剣な表情をした波羅が近づいてきた。
「なんか用か?」
「ボス、【縊り殺す】って響き、すごく綺麗ですよね。【絞め殺す】とか【刺し殺す】とかみたいに【殺す】に付属品っぽさがなくて、一つで一単語っぽさがあると言いますか、【殺す】付属系の単語として、使ってて一番違和感がないですよね。」
うん、俺もうお前がなんなのかわからん。
「んじゃ、羽根毟り終わったらそこの寸胴にぶち込んどいてくれ。間違えても手前の2つの鍋に入れるんじゃないぞ。」
『心得た。』
「波羅、そっち出来たら揚げ物用に油を準備しといてくれ。南蛮も作るからタルタルもよろしく。」
「承知しました。」
こうして次々に料理を完成させていく。
七面鳥は腹に果物なり香草なり詰めて二度焼きしたから手間はかかったが、まぁ美味そうだしいいだろ。
今日の食卓は
【ささみのシーザーサラダ】
【醤油ベースの唐揚げ】
【チキン南蛮】
【親子丼】
【鶏がらスープ】
【七面鳥の香草焼き】
……調子に乗って作りすぎたか?
ま、余ったら明日の朝なり昼なりに食べりゃいい。
サラダは栄養素を意識、唐揚げ、南蛮はちびっ子組意識でスープは本日の汁物、親子丼はジャスティススナイプ。
親子丼はジャスティスの他に食べるやつがいるとは思ってない。ま、余る前提で鍋に入れっぱだしな。
「やっほーロードくん。どんな塩梅だい?」
そう考えながら皿の配膳をしていると、扉から楼閣がひょっこり出てきてそう尋ねる。
「お、楼閣か。こっちはもう出来上がったぞ。そっちはどうだ?」
「うん、バッチリだよ〜。」
「……楼閣さん酷いです。」
にっこり笑顔でこころなしかツヤツヤしている楼閣とは裏腹に、ゲッソリとやつれたドクが出てきた。
「……いや、何があったよ?」
「それがですね……楼閣さんってば酷いんですよ
「おーい、ドクくん〜?
「知ってます。速報上がってるので。」
「えー?つれないねぇ。まぁ、これからパーティーやるって話だからさ、ドクくんもおいでよ。」
「いえ、もう少し続けるのでお先に始めておいてください。」
「………………」
「………………」
「そういえば、ここのブレーカーってどこにあったっけ?」
「…………はい?」
「あー、あったあった。ここだここ。万が一の停電には備えが必要だよねぇ。」
「………………!!まさか?!」
「おおっと〜手が滑っ──」
「(ガシッ)すぐに行くのでそれだけはやめてください。」
という感じで、楼閣さんがブレーカーを落とそうとしたのでしぶしぶ……」
「えー?アレハジコダヨー。」
楼閣お前、そういうとこ急に鬼だよな。
「えーそう〜?じゃあドクくんが引きこもってるのと
「うん、お前はこのままでいい。止まるんじゃねぇぞ。」
「酷いです!?」
いやぁ、アレは悲しい事故だった。
「事後処理までされました!?」
『ロード、どんな具合だ?そろそろ出来ている頃合かと思ってチビたちを連れてきたぞ。』
『めぐめぐお腹ペコペコ〜……』
『コクリコもー!』
ジャスティス、いいセンスだ。ちょうど波羅に呼びに行かせようと思ってたところだ。
『それは何よりだ。』
「お前ら、席に着け!」
「ロードくん、テンション高いねぇ。」
まぁな。マピヤ見た時から食おうと思ってた鶏肉をふんだんに使ってるから、まぁ俺が楽しみにはしてる。
『ピュイ!?』
マピヤ、なんだその目は?
お前は死んだらナタデココだから肉が食えねぇんだよ。
『こうやって大勢でひとつの卓を囲むのは、久しぶりだ。』
イスタカもそんなセリフ。
ただ、これが歓迎になるんだったら良かった。
さぁさ、宴を始めよう。
宴を始めさせろよ!!ロードも波羅ちゃんも楼閣もネタをぶち込みすぎでしょうがよ!!
……失礼、つい荒ぶってしまいました、乱数調整です。
宴でやりたいことがあるから宴回をわざわざ入れているのに、【
ロードはロリコンだし、波羅ちゃんはサイコパスなのでほぼ諦めていましたが……楼閣、お前に裏切られるとは思ってもみなかったよ。(天の声:うん、書いてるのお前だけどな?)
次回(こそ)!宴が始まる
ではでは、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。