『楼閣!?大丈夫か、楼閣ァ!!』
ジャスティスが倒れた楼閣に向かい叫ぶ。返事はない。
「楼閣さん……!目を……開けて、ください……!」
『楼閣さん!?わたくしはどうすれば……』
カロネとヴィオレッタも慌てる。自分たちは助けて貰ったのだ、何か返したいと思っているのだろう。
「そんなの……嫌、です……!楼閣さん……私、は……まだ……お礼さえ……言えて……ない、のに……!」
カロネは後悔する。もっと自分に決断力があれば、と。
そうであれば楼閣がこうなる前に自身で解決できていたのではないか、と。
カロネは後悔と自責に苛まれ、大粒の涙を零す。
それらは楼閣の頬に落ち、伝う。
「ダメ……だよ……?」
それに呼応するように楼閣がうっすらと目を開ける。
「できる、ことを、やった、んだから、胸を、さ?張らないと……ね?なぁに、気に、しなくて、いいさ。私、は、大丈、夫、だからさ。」
か細い声で楼閣は伝えると、彼の瞼はまた落ちる。息も荒く、とても大丈夫そうには見えない。
『楼閣、もう無理をするな!今ギルドホールに運ぶ!カロネ!手伝ってくれるか!?』
「はい……!私に、できる……ことなら……!!」
ジャスティスはすぐに行動を始める。楼閣を抱えあげ運んでいく。カロネはその後ろを着いていっていた。
恐らく、扉などを開けるためだろう。
ジャスティスはギルドホールに着き、ロードと連絡を取る。ロードは要請を受け、すぐに出てきた。
「どした、ジャス?…………楼閣?おいジャス、部屋に運んで横にしろ。キィ!病院とかねぇのか!?」
《病院はありませんが、治療担当を呼ぶことはできます》
『ユニドールナラトンデクルデショウ。ホカナラヌロウカサンノタメナラ、ネ。』
キィは手早く答え、最適解をvoidollが導き出す。voidollは心做しかため息をついているかのような返事だった。
「すぐ呼べ。点滴とかは?」
《どなたかが作れるなら》
ロードはその回答に舌打ち一発、それは諦めて気分を切り替える。
『テンテキナドガヒツヨウナノデショウカ?』
「あのヒョロい楼閣だぞ?あの低血圧の権化みたいなやつだぞ?こんだけボロボロになってりゃヘタしたら一日とか起きねぇよ。」
voidollが冷静になってそう発言をしたが、ロードの答えはなんとも酷いものだった。
これはある種の信頼なのだろうか。
【楼閣サン!ゴ無事デスカ!?】
その時、治療キットや手術セット、無菌カプセルに果ては魔術の本までありとあらゆるものを持った銀河防衛ロボがどこからか部屋に闖入する。セリフから察するに、もはや楼閣のことしか見えてはいないらしい。
「無事じゃない。今すぐ治せ。」
【言ワレナクトモ!!皆サン!一度部屋カラ出テイッテクダサイ!!】
銀河防衛ロボは一度楼閣の部屋からその場にいた全員を出す。扉が閉まる直前、何やら魔術の本を熱心に読んでいたのが見えた気がするが、本当に大丈夫なのだろうか。
「はー……ま、あとは【銀河防衛ロボ】に任せ──ん?アンタ誰?」
一息ついてやっと辺りを見渡したのか、ロードはカロネに目を止めてそう言う。
カロネは怒涛の展開についていけなかったのか目を回していた。
『……ん?あぁ、ロード。そいつはカロネだ。そいつと楼閣がちょっとした事件に巻き込まれてな……』
「へぇ……どんな?」
ロードがカロネを見据えて訊ねる。カロネは蛇に睨まれたカエルのように体を縮こまらせていた。
「えっ!?…………あ、あの……えっ、と…………」
「あー……もういい。まぁドクに聞きゃ分かるだろ。どうせネットニュースかなんかになってるだろうかあのヒキニートは見てる。」
ロードがぞんざいにそう言ってカロネの話を遮る。
「……すみ、ません…………」
「……?なんで謝った?」
「私、の……せい……なんです…………私が……ちゃんと……断れ、ない……から…………あの時──」
「もういい黙れ。」
カロネがポツポツと話し始めた時、ロードがそう言って話を無理やりに切る。
「いいから無理やり話そうとすんじゃねぇよ。起きたら楼閣から聞くから気にすんな。アンタは帰って鏡見てみろよ、ひでぇ顔だぞ?相棒は……ヴィオレッタか。おいヴィオレッタ、連れて帰って休ませろ。」
楼閣が起きたら連絡してやるよ、とロードは締めくくる。
確かにカロネの表情はやつれていて、とても見ていたいものではなかった。
「で、でも……」
『カロネさん、この方の言う通りですわ。ここは一度帰って休みましょう……ね?』
ヴィオレッタがカロネを労わるように後ろから両肩に手を置いて諭す。カロネはヴィオレッタの方を見ずに俯いたまま小さく頷く。
前髪に隠れて表情はよく見えなかったが、その唇は強く引き結ばれていた。
『ではわたくし達はこれで失礼致します。カロネさん、行きましょう?』
ヴィオレッタがそっと背中を押してカロネは【
「…………ボス、報復の準備なら出来てます。」
どこからともなく波羅渡が現れる。いつものような緩い表情はなく、その眼光は研ぎ澄まされた刃物のように鋭かった。
「まだいい。今回は武力で解決することじゃない。それに、まだ先にやることがあるよな?」
「……Yes,Sir.」
そう言うとロードは楼閣の部屋の前から別の場所へと移動する。
その場所は、よく楼閣が例の脅し文句を言っていた
「ドク、言いたいことは分かるな?」
ドクの部屋の前だった。
ロードは扉越しにドクに話しかける。
「もちろん。速報の写真からギルドは特定しました。【
ドクはこの短い時間で情報を的確に集め、解析まで済ませていた。ロードの質問には淀みなく答えていく。
「事件の詳細は後の説明でしますが……申請はとりあえず
少ない情報だけで彼らはやり取りをする。まるで相手が何を聞きたいのか分かっているかのように。
「いや、7割でいい。」
しかしロードはそれを否定する。
「…………その心は?」
「この例は初めてのパターンだ。
「…………建前は分かりました。本音は?」
「ウチのギルマスに手ぇ出してんだ、当たり前だろ?」
「…………」
波羅渡はロードの後ろに控えていた。
ドクはドア越しにロードと話していた。
2人とも、ロードの顔は見えていない。
しかし、2人とも思った。
(コクリコさんの時とは違う……抑えてはいますが徹底的に追い詰める、そんな気迫を感じます……)
(…………僕に怒っていたのとは次元が違います。)
ロードが見たことがないくらいキレている、と。
「……ボス、質問よろしいでしょうか?」
「なんだ?」
ロードは振り返らない。
波羅渡は怯まずに続ける。
「6割、7割とはなんのことでしょうか?」
「…………あぁ、それか。経済制裁だ。」
「経済制裁?」
波羅渡がロードのセリフをオウム返しする。
「相手ギルドの収支と貯蓄の7割を差し押さえる。」
ロードはキッパリとそう言う。
「……なぜそのようなことを?」
「そのギルドをバラす、もしくは弱体化させるためだ。」
「と、言いますと?」
波羅渡は一向に振り向かないロードに向かって詳しい説明を求める。
「金の切れ目が縁の切れ目。ギルドから抜けることはできないが、ギルドの資産として全員の資金を集めてるところが多い。一部メンバーのせいでそれがかなり持っていかれるとすれば、メンバー同士がギスギスするだろ?そしたらギルドは空中分解する。」
簡単な方法だ、とロードは締めくくる。
驚くほど冷静に、締めくくる。
波羅渡は静かに背筋を震わせた。抑揚のない声で静かに、だが当然のように言うロードの冷徹さに。
【終ワリマシタヨ。】
ちょうどその時、銀河防衛ロボが処置を終わらせて部屋から出てきた。
「……どんな感じだ?」
【頭ヲ5針ト額ヲ7針縫イマシタ。今ソチラハ安定シテイマス。容態ニツイテハ安定シテシテイマスガ心拍ト呼吸ガ弱イデス……イツ目覚メルカハ……】
銀河防衛ロボはそっと目を伏せる。それだけでそこにいた面々の表情が暗くなる。
「…………俺たちにできるのは、ちびっこ組に悟らせないこと、だな。コクリコとめぐめぐには刺激が強いだろ。頭が裂けてんだ。」
ロードがそう言って、その場は解散となった。
各々が部屋に戻る足取りは、重かった。
燃え尽き症候群?はて、なんのことでしょうか?乱数調整です。
なんかかけましたねぇ……なんででしょうか?
時間が取れれば乗ってきますねぇ……なんででしょうか?
そして楼閣回なのに楼閣の扱いが雑だし、裏話的な立ち位置の話ですみませんねぇ……
楼閣、早く戻ってこい。
ではでは、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。