『お前は、知らなかったんだ……それでなくとも、最善の選択をお前はしたんだ。俺が、もっとしっかりしていれば……!』
「………………んぇ……?」
目が覚めると私はベットの上にいた。知らない天井……ではないか。私の部屋だ。
えっと……何してたんだっけ……?
「えっ……と、確かジャスくんとお散歩してて、カロネちゃんが囲まれてて……そうだ、カロネちゃん!」
私は焦って上体を起こす。するとすぐに砂嵐のようなノイズが視界を支配した。
あ、ダメだこれ。いつもの立ちくらみのやつだけど症状の重さがいつもの比じゃない。
猛烈な吐き気と頭痛で倒れそう。
私はすぐ後ろ向きにベットに倒れこんでしまった。なんとか左右に逸れずに元の位置に収まることは出来たけど、状態が悪いことに変わりはない。
「あー……うー…………ん、治ってきた……かな?」
ベットに伏して自問自答。正直に言うと治ってる感じはしないけど、自分にそう言い聞かせてなんとか調子を戻そうとする。
十数分してやっとベットの上に座れるようになる。
「あー……なんとか落ち着いてきたねぇ……ん?銀ちゃん?」
【ア……楼閣サン……!?気ガツカレタノデスカ!?】
ドアが少し開き、白くて光沢のある機械──銀河防衛ロボの銀ちゃんが現れる。
ってなんで銀ちゃん焦ってるのさ?
【皆サンニ知ラセナケレバ……!話ハ後デス、少シオ待チクダサイ!!】
「あ、銀ちゃん!ちょっと待っ……ぬぅ…………」
立ち上がって銀ちゃんを追いかけようとしたけど、急に動いたからかクラっとする。これはちょっと追いかけれないねぇ……
「あーもー……!なんでこんなにフラフラするのさ!」
あ、大声出したら頭に響いてまたしんどくなった。これは大人しく寝てるのが得策だねぇ。
「起きるのはしんどいけど、寝転んでても眠くはないんだよねぇ。ダルさもないし……ん?波羅ちゃん、どうしたの?」
1人で天井を眺めながらボーっとしてるとまたドアが開き、銀ちゃんと一緒に波羅ちゃんが入ってくる。
波羅ちゃんは酷い顔をしていた。
「楼閣さん、気がつかれたんですね。安心しました。」
心配したんですよ?と波羅ちゃんは困ったように笑う。心配かけてたのか、ちょっと悪いことしたねぇ。
「もうすぐボスも来ると思います……おや、噂をすれば、ですね。」
波羅ちゃんがそう言うと扉が開き、ロードくんが入ってくる。
「ロードくんごめんねぇ。心配かけ──イテッ!?」
ロードくんはツカツカと早足でこっちに来ると私にデコピンをくらわせた。その間、ずっと無言だった。
「…………ロードくん、何するのさ?」
おでこを抑えながら私はロードくんに訊ねる。ジト目のオプション付きで。
「………………」
「ロードくん?」
ロードくんは何も言わない。ただじっとこっちを見るだけ。
そんな彼を私は訝しむ。
ロードくん、どうしちゃったんだろ?
私たちは無言で見つめ合う。
「……ねぼすけ。」
しばらく経ってたらロードくんはそれだけ発言し、また早足で私の部屋を後にした。
「なんだったんだろうねぇ……?」
「きっとどんな顔で向き合えばいいのか分からないんですよ。なんと言ってもボスが楼閣さんのことを一番心配してましたから。」
すごい気迫だったんです、と波羅ちゃんは言う。どんな感じだったんだろうか?
まぁでも、例のアレよりはマシだったはずだよねぇ。だって私、幼女じゃないし。
【シカシ、本当ニ気ガツカレテヨカッタデス。私モ心配シテイマシタヨ、楼閣サン。】
ホッとした表情で銀ちゃんも言う。
「銀ちゃんもごめんねぇ、心配かけちゃって。わざわざ来てくれてありがとうねぇ。」
私はそう言って銀ちゃんの頭を撫でる。
【カピッ!?子供扱イシナイデクダサイ……】
銀ちゃんは恥ずかしそうに頬を染める。でもまんざらでもなさそうだからもっと撫でよう。うりうり。
【デスカラヤメテクダサイ///】
「もうもう!心配して来てくれて可愛いねぇ!」
照れる銀ちゃんにそう言うと、銀ちゃんはなぜかキョトンとした顔をして言った。
【……?楼閣サン、私ハ貴方ノパートナーダト言イマセンデシタッケ?私ハ貴方ノ危機トアレバドコカラデモ、ドンナ時デモ駆ケツケテ貴方ヲ助ケマスヨ?】
「……そっか。」
さも当然のように銀ちゃんは言う。さすがにどこでもどんな時でもは言い過ぎにしても、その言葉はありがたい。
私は人に恵まれてる。
「あ、そうだ波羅ちゃん、私、どのくらい寝てたのかな?」
ひとしきり銀ちゃんを撫でてから私は波羅ちゃんに訊ねる。
すると波羅ちゃんは指を二本立てた。
「二時間かい?それは心配──」
「いえ」【イエ】
私が心配かけたことを謝ろうとした時、波羅ちゃんと銀ちゃんが同時に私の答えを否定する。
その先は銀ちゃんが波羅ちゃんに発言を譲り、波羅ちゃんは衝撃の一言を放った。
「
【頭ヲ5針ト額ヲ7針縫イ、血液モカナリ失ッテイマシタカラ無理モアリマセン……イツ目覚メルカ私ニモ分カラナカッタノデス……】
なんと、私はそんなに寝てたのか。
波羅ちゃんの顔色が悪いのってもしかして…………
「……まぁ、あまり寝付けなかったので。」
それは悪いことをしたねぇ……
「いえ、楼閣さんが謝ることではありませんよ。それより、もう立てますか?立てそうにないなら肩を貸しますが……」
「?支えてもらわないとちょっと厳しいかもだけど……どうして?」
「食事ですよ。食べて血液を作れるようにしないといけませんから。ボスも今日は焼肉だって言ってました。」
お肉かぁ……脂はちょっと重たいねぇ……
【ソレヲ見越シテロードサンハ赤身ヲ多目ニシテイマシタヨ。】
ん……ロードくんの謎の優しさが怖い。
「ははは、確かに普段はぞんざいですもんね。」
「笑い事じゃあ、ないんだけどね。」
そんな小言を垂れつつ、波羅ちゃんに肩を貸してもらって立ち上がる。
途中銀ちゃんが【私ガ抱エテ行ッテモ良カッタノデスガ……】とか言ってたけど聞かなかったことにする。
だって恥ずかしいもん。
【デハ私ハコノ辺リデ失礼シマス。】
「うん。銀ちゃんわざわざありがとうねぇ。」
そう言うと銀ちゃんは空気に溶けるように消えていった。
波羅ちゃんに肩を貸してもらいながらリビングに行くと、ロードくんがもう鉄板と具材を用意して待っていた。用意が早いねぇ。
「……ん、来たか楼閣。ジャス、ちびっこ組を呼んできてくれるか?」
『あぁ、承知した。』
ロードくんがジャスくんにそう言う。ジャスくんは私の方を向かない。顔すら見せない。
「……私が無理したから嫌われちゃったかな?」
「そんなことはないです。ただ……これは口止めされているのでちょっと。」
気になるけど無理強いする訳にはいかない。ジャスくんが話したいタイミングで話せばいいんだ、そんなことは。
相棒だもん、その辺は信用しないと。
そんな話をしながら私は着席する。そのタイミングでめぐめぐちゃんとコクリコちゃんも入室してきた。
『焼き肉〜!』
『おにくー!』
2人とも目をキラキラさせていた。やっぱりまだまだ子供なんだよねぇ、可愛い。
「ちゃんと野菜も食えよー……ってジャスはどした?」
『おっきいおじちゃんは『あとでたべる』って言ってたよ!』
『めぐめぐたちが全部食べちゃうよって言ったんだけど、大尉はそれでもいいって言ってた!』
「…………なるほどな。分かった、二人ともありがとう。」
『ほめてほめて〜!』
ロードくんが本当に嬉しそうにコクリコちゃんの頭を撫でる。クールぶった言動をするくせに顔だけは緩みまくってるんでよねぇ、あの子。
きっと頭の中ではすごい勢いで賛辞を述べているに違いないよ。
「あ?なんだ楼閣?ニヤニヤしてキモいぞ。」
「なんでもなーい。」
ロードくんがこっちを見てそんなことを言う。勘のいい子は嫌いだよ。
とりあえずロードくんはそれを流して手早くお肉や野菜を焼いていく。焼けるにはまだまだ時間がかかりそう。
『それ!そのお肉めぐめぐのっ!』
『コクリコもおにくっ!おにくたべたい!』
「落ち着け。まだ焼けてねぇから腹壊すぞ?おいコラめぐめぐ!焼けてないのを取ろうとするな!ったく……もうちょい落ち着けよお前ら…………」
「ボスが食えと言うのなら生でも!」
「うるせぇ波羅!ちょっと黙ってろ!」
「Sir,Yes,Sir!!」
はっはー、ちびっこ組は元気だねぇ。私二日も寝込んでたのになんにも言ってこないよ。
ま、この感じだとそれはどうせロードくんが箝口令でも敷いてるんだろうけど。
「それじゃあ私はタマネギでも──」
タマネギを取ろうとした箸をロードくんが箸でペシッと叩き落とす。
「ちょっとロードくん?」
「おい楼閣お前、何しようとした?」
「何ってタマネギ食べようかなぁって。」
私がそう答えるとロードくんは大きなため息をつきながら呆れたような顔で私に言う。
「焼き肉してんだから肉を食え肉を。野菜なんざ食わなくていい。野菜が食いたいなら焼き野菜をしろ。」
「いやでもタマネギ美味しいし……」
「肉を食え。」
すごい圧力でロードくんが言ってくる。ついでにお皿にお肉乗せられてるし……あ、波羅ちゃんまで加勢し始めた。
「いや、でもバランスってあるじゃない?」
「知らん。焼き肉の時に野菜を食べるバカがどこにいる?」
訳わかんないくらい強情だねぇ……
『お肉〜!』
『おにく〜!』
「野菜を食え。」
めぐめぐちゃんが新たなお肉を取ろうとした時、その腕を掻い潜ってロードくんがめぐめぐちゃんのお皿に野菜をたくさん入れた。
「コクリコ、お野菜も食べよっか?」
『うん!』
コクリコちゃんには甘いロードくん。左手でコクリコちゃんの頭を撫でる。『えへへ〜。』と嬉しそうにするコクリコちゃん。
ちなみにロードくんの右手は箸を持ってお肉を取ろうとするめぐめぐちゃんと戦っている。あ、今めぐめぐちゃんが諦めて野菜食べた。
「………………」
「………………」
ロードくんと目が合う。お互いに無言だった。
「じゃあ私も野菜を──」
「肉を食え。」
「いやおかしくないかい!?なんで私だけお肉多いのさ!?野菜も食べようよ!?」
「うっせぇ!いいから黙って肉食ってろ!」
「じゃあなんで野菜も焼いてるのさ!?」
「変なところに目ぇ付けてんじゃねぇ!お前は今は肉だけ食ってりゃいいんだよ!大丈夫だ、肉はこれでもかってくらい買ってるから!」
「にしても!にしてもだよ!この量はおかしくない!?めぐめぐちゃんがすごい目で見てくるんだけど!?」
何あのめぐめぐちゃんの目!私に両親でも殺されたの!?
「…………気にすんな!」
ロードくんが元気にサムズアップ。腹立つしなんにも解決してないよねぇ!?
「気にすんな!」
「ド腐れ外道だねぇ!?」
もうこうなったら絶対にロードくんは意見を変えないから諦めて食べるけどさ。
『たいちょー!めぐめぐもリーダーみたいにお肉いっぱい食べたい〜!』
「野菜も食べるならな。」
『ぶー……』
そんな感じでつつがなく食事は進む。
めぐめぐちゃんに恨めしそうに見られながら、食事は進む。食が進むわけないじゃない、こんな食事……
『いっぱい食べた〜』
『もぅたべられないよぉ〜……』
ちびっこ組、ノックダウン。
なんかいつもより食べる量少なくないかい?
「いえいえ、楼閣さんの食べてる量が多くなってるんですよ。いつもの三倍くらいです。」
え、私そんなに食べてる?
普通、こういう時って胃が収縮してるから食べる量って減るもんなんじゃないのかい?
「さあな。身体が危機感を覚えてるのかもしれねぇぞ。食えるだけ食っとけ。」
「まぁ、それでも今はいいかな。結構脂がキツいしねぇ。」
そう言ってお皿をシンクに運ぶ。
「あー、楼閣。波羅とやっとくからお前は休んどけ。病み上がりだろ、お前。」
スポンジを手に取ったところでロードくんに止められる。まぁ、休ませてもらえるんなら休ませてもらおうかな。
よし、ここはお言葉に甘えちゃおう。
「それじゃ、部屋に戻ってるね。なんかごめんねぇ、2人とも。」
「気にするな」「お気になさらずに」
2人からそんな快い返事が帰ってくる。
そして部屋に戻ろうと廊下を進んでいた時
ピンポーン♪
玄関のベルが鳴った。
も、燃え尽き症候群とは……?不思議な感覚に戸惑っています、乱数調整です。
なぁんでこんなにスラスラ書けるんでしょうねぇ……全く分かりません……
アレか?カロネが好きな感じの性格のキャラだからか?乱数の無口萌えゆえの大暴走か?
それとも次の章のキャラが早く書きたいからか……?
うーむ、全く分かりません……もう何も……分からない……!
起きた!楼閣が起きた!わぁいわぁい!(天:いや、書いてるのお前(ry)
そして焼き肉!肉を食らう楼閣!肉だけを食わせるロード!焼き肉バンザイ!
次回、訪問者
ではでは、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。