「ごちそーさまでしたっ!美味しかったです〜。」
「ご馳走様……でした……!ロードさん……お料理、上手……ですよね……」
カフカとカロネがほぼ同時に夕食を食べ終わる。キチンと手を合わせて言っているあたりに育ちの良さが伺える。
皿をシンクに運び、さて洗い物でも手伝うかとカロネが腕まくりをし、それにならいカフカも何かすることはないかと周囲を見渡す。
「おー。洗いもんはこっちでやっとくから2人で風呂入ってこい。積もる話もあるだろ。」
しかしロードはその姿勢をバッサリ切り捨てそんなことを言う。それは彼なりの気遣いだろうか。
ちなみにこの日、ロードは夕食の調理や片付けに忙殺されており、眠そうに目を擦るコクリコの風呂をヴィオレッタに任せることとなったため血の涙を流して悔しがっていたという。
「えっ、いやいや悪いですって!さすがにもう帰りますよ!」
「あ?バカかお前?」
そこまで世話になる訳にはいかないとカフカが首を横に振るが、そんなカフカを冷たい目でロードは見やる。そしてため息を一つつくと説明を始めた。
「今何時だと思ってるんだ?」
「うっ、」
「こんな夜道を一人で帰らすか?普通?」
「それとこれとは話が違いますよ!」
「鏡みてみろ、ひでぇ顔してるぞ。」
「で、ですけど……」
カフカはもにゅもにゅと口を動かすが反論が出来ずにいる。厚意を無下にする訳にもいかないが、そこまで甘えてしまうのもどうか、といった表情で俯く。
その優柔不断な態度をみてロードが最後のひと押しをする。
「ちなみにグスタフは今ジャスティスと風呂にいる。」
「なんだって。今すぐ覗きに行きます。」
「行くなバカ。真顔で何言ってんだ。」
シチュエーションとしては逆だろ普通、と言ってロードはカフカの首根っこを掴む。そしてカロネの方を向いて言う。
「とりあえず、ジャスティスとグスタフあがってくるまでコイツ頼んだ。部屋で好きに話してくるといい。」
「は、はい……」
言い終わるが早いか、ロードはカフカをぺいっとカロネに投げる。そして用は終わったとばかりに洗い物に戻った。
その様子を見て、楼閣がため息をついた。
「ロードくん、あげる物があったんじゃなかったの?」
ジト目でロードを見ながら楼閣が囁く。するとロードは呆れたような声音で楼閣に言い放つ。
「そういうのはギルマスの役目だろ。お前以外に歓迎してやる奴の適任なんているか?」
そう言ってロードは手を止めず、楼閣の方も向かない。楼閣は先程よりも深いため息をつくと諦めたように手を拭いてカロネらを引き止める。
「あー、カロネちゃん、ちょっとだけいいかな?」
「は、はい……!なんの……お話、でしょうか……?」
カロネはカフカの方をチラチラと見ながら楼閣にそう返す。カフカの件について何か怒られると思っているのだろうか。
しかし、そんな素振りなど気にもとめずに楼閣は続けた。
「そこにあるダンボール箱、私たちからのプレゼントだよ。カロネちゃんは何もしなくていいって言ってたけど、それじゃちょっと味気ないじゃん?」
中身は開けてのお楽しみだよ〜。と茶化すように微笑みながら楼閣は言う。そういうのは自分の柄では無いと思っているがゆえの茶化しだろうか。
対するカロネは頬を朱に染め、心底嬉しそうな顔で答える。
「ありがとう……ございます……!カフカ、運ぶのを……手伝ってくれる?」
「……え?あぁ、うん!いいよ手伝う!」
カフカは唐突に話を振られて困惑しつつも快諾する。
そうして二人はロードが昼間に買っていたクッションを箱ごと持ってカロネの部屋へと去っていった。カロネの足取りは、心なしか軽く見えた。
「まったくもう……そういう手はずならその予定だってあらかじめ言っておいてよね。私びっくりしたんだから。」
「いやむしろ、お前がやらなきゃ誰がやるって感じだっただろうが。矢面に立つべき奴に立ってもらっただけの話だろ……っと、これで終わりだ。」
女子組が部屋に戻ったあと、楼閣がロードを窘めるように言ったがロードは当たり前のことを言うかのようにその意見を否定する。
そして皿が洗い終わったのを口実に半ば強引にその話を断ち切った。
楼閣はここでもため息をついて皿の泡を流す。楼閣が最後の皿を流し終える頃には、ロードはどこかへ行ってしまっていた。
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少女たち二人は部屋に戻り、ダンボール箱を開けた。
中身のクッションにカロネは目を輝かせ、カフカはクッションの上を飛んだり跳ねたりとやりたい放題だった。
その後グスタフたちと入れ替わりで風呂に入り、カフカがまたもはしゃぎ倒したことでロードに説教をくらって風呂のガスを止められていた。
仕方がないので風呂からあがり、ベットの上でしばらくの間ガールズトークに興じていた。
しばらく話したあと、カフカが眠たそうな目をしていたのをカロネが目敏く見つけ、2人で眠ることにした。
カフカが疲れていたのは、いつもと異なる環境で気を張っていたからだろうか。
「ねぇ、かやちゃん。」
「……なぁに、妃奈乃?」
横になってしばらくした後、カフカがカロネに話しかける。それはネット上の友人としてではなく、幼馴染として悩みを聞いてもらおうとしているような態度だった。
「あたし、このギルドに入れてもらえなかったらどうしよう。」
カフカが小さくそう零す。その声音は少し震えていた。
カロネはそんな友人の様子に眉をひそめつつも彼女を慰めるように告げる。
「……その時は、ほかのギルドを探しましょう?他にも行きたいところがあるって言ってたでしょう?」
「嘘だよ。」
カロネはそう告げることで彼女の不安を取り除こうとした。
しかし、カフカはいつか話した自分の言葉を否定する。
自分が行きたいギルドの一番が決まったという言葉を、否定する。
横向きに寝ているのでカロネにはカフカの顔こそ見えないが、彼女にはその背中が今まで見てきたどの後ろ姿よりも小さく見えた。
「あたしはさ、こんな趣味だから。加入した後にそれを知られて、失望されたくなかったんだよ。だから、最初からあたしを全面に押し出してたんだ。」
今回はちょっとはしゃぎすぎた感はあるけどね、とカフカは言う。
自分の趣味は少数派だと、一部の人からは敬遠されている趣味だとわかっているからこそ、一度加入したら抜けることが出来ない今、そこを1番に知って欲しかったのだろう。
カフカの独白は終わらない。
「でもさ、そうしたらみんなが言うんだ、私は気持ち悪い、異端だって。あたしはただ、ありのままのあたしを受け入れて欲しかっただけなんだ。失望させるつもりも、失望して欲しくもなかったのに、いつもそうなっちゃったんだ。」
少し鼻声になりながらカフカは話す。これまで自分が言われていたことを思い出し、気持ちが沈み、考えは悪い方向にばかり進んでしまう。
カフカの言葉はだんだんと消え入りそうになりながらも、カフカは必死で言葉を紡ぐ。
「だけどさ、誘ってきた人達はあたしを見てくれてない。気づいたんだ。みんなが見てたのは【
カロネは黙って話を聞き続ける。
彼女は思ってもみなかった。自分の太陽がそんな困難を抱えていることを。
「ねぇ、かやちゃん。このギルドに入れなかったら、あたしはどうしたらいいのかな……!」
「………………」
少し鼻声になりながらカフカがそう聞く。カロネはその背中を擦ることしかできなかった。
すぐ側で大丈夫だと言ってあげる
それだけの事が、どうしてもできなかった。
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「あー……今日は一段と疲れた……」
夜も深け、コクリコを寝かしつけた後に風呂に入ったロードがあがってきた頃、楼閣が神妙な顔で机に座っていた。
グスタフとヴィオレッタはトレーニングルームのハンモックで、ジャスティスは楼閣の部屋のベットから肩などを豪快にはみ出しながら寝ている。
ロードが風呂からあがったのに気がついた楼閣がロードに話しかける。
「ロードくん、ちょっといいかな?」
「なんだ?」
楼閣は、とりあえず座ろっか、と言ってロードを机へと誘導する。
着席後、何かを言おうとする楼閣を遮ってロードが口を開いた。
「それで、話ってなんだ?カフカのことか?」
「……そこまでわかっちゃってるんだ。」
楼閣は困ったようにはにかむ。そんな雰囲気を誤魔化すような表情をした楼閣にロードは言った。
「まぁな。お前の考えてることはだいたい分かるよ。それに、
「そっか……」
なんとも言えない空気が流れる。どちらもなにも語らず、ただただ見つめ合う。
その空気を破ったのは、楼閣からだった。
「カフカちゃん、なんだけどさ。あの子、どうしようね?」
「…………ま、そこだよな。もう申請は来てるのか?」
「……うん、来てるよ。」
ポツポツと二人が話し始める。楼閣はどう伝えたものかと必死に考えていて、ロードはそれを待っていた。
「まぁ、問題が多いからな、アイツ。カロネの時は押し切られて考える暇もなかったけど、考えねぇわけにはいかねぇからな。」
「…………やっぱり、厳しいんだ。」
楼閣の表情が沈む。なんとも形容し難いその表情は、今まで見たことがないほど暗く見えた。
しかしロードはそんなことなど意にも介さないかのように話を続ける。
「まぁ、そりゃな。部屋割りとかも決めねぇといけねぇし、ヒーローと別部屋にするかとか、風呂の順番とか時間をどうするかとか、増築する施設は何がいいかも含めれば、結構な数の問題があるだろ。」
「…………へ?」
楼閣が不思議そうな顔をしてロードの方を見る。するとロードは狼狽しているかのような表情を見せた。
「あ?なんだ違うのか?じゃあやっぱめぐめぐと波羅も部屋変えた方がいいとかか?でも俺、ヴィオレッタとめぐめぐを同室にするのは反対だぞ?」
「い、いや……そうじゃなくてね?」
楼閣があたふたしながらなんとか言葉を紡ぐ。
「ロードくん、カフカちゃんをギルドに入れたげるつもりなの?」
楼閣は思っていた。カフカの元気が空回りしていると。何かによって追い詰められているからこそ、あのように空回りしてしまっているのではないかと。
だったら、カロネという友人がいるギルドに入れば、カフカの元気が少しは戻るのではないかと。
ゆえに楼閣は考えていた。ロードはあれだけカフカをギルドに入れないと連呼していたのだから、きっとカフカをギルドに入れることには反対なのだろうと。
そして、ロードをどのように言いくるめてカフカをギルドに入れようかと。
だからこそロードから出てきたその言葉は、楼閣を困惑させた。
ロードはため息をついて諭すように楼閣に語りかける。
「…………楼閣お前、ギルド紹介文忘れたのか?【キミが望むのであれば、私たちはキミを救おう。】とか言ってたのはどこのどいつだ?むしろお前は、俺をどうにかして丸め込もうとする方だと思ってたぞ?」
「い、いや、もちろん私も歓迎するつもりだったけどさ、ロードくんめちゃくちゃ反対してたじゃん?」
ロードが少し呆れながら楼閣に言う。楼閣はその展開についていけなくなりつつも、疑問を投げかけた。
ロードは当たり前の事のようにそれに答える。
「まぁ、あのままなら俺も入れる気はなかったさ……でもカロネが、あのBL機関車のブレーキがいるんだ。アイツが止めるなら別に問題ないだろ。あいつらは
それに、と言ってロードは続ける。
「あんなひでぇ顔してる奴を、ほっぽり出すわけにはいかねぇだろ。」
不機嫌そうな顔でロードは楼閣に言い放つ。冷たいような物言いだが、彼はこんなふうにしか言えないのだと楼閣は知っている。
「はっはは!!」
楼閣が笑う。勝手にあたふたして、言葉を選んで、そのようなことをしていたのがバカらしいとでも言いた気に。
そして楼閣は、楽しそうにロードに言う。
「ロードくんも、むっつりだよねぇ。」
「うるせぇ、言ってろ。」
太陽が沈んだ夜。
けれど、太陽はまた昇るのだ。
また長くなってしまいましたすみません。乱数調整です。
しんみりした回は書いてて楽しいですけど内容が面白くないですし書きにくいです(天:いや知らんわ)
ネタをブッパできる回は次いつ来るのやら……
そういえば、【
書いてて楽しそうなのに加えて勢いでゴリ押してる感じがいいですね。コクリコも可愛い。
……ちょっと待て、最近コクリコの可愛い回が無くはないか?
次回、頭を冷やして戻ってこい
ではでは、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。