「おっしゃ、お前ら食べながら聞け。」
自分の分を作り終え、席に座るやいなやロードが着席している皆に向かってそう言う。朝食は皆がパンケーキという可愛らしいものだった。
「むあ?まむめむま?もーもまんまもむまにまめむまむて。」
『カフカ、確かにロードは食いながら聞けとは言っていたが食いながら話すな。行儀が悪いぞ。』
「?なんでしょうか……?」
それを聞いて、聞いたとおりに食べながら聞こうとそのまま発言をするカフカをグスタフが諌め、カロネが不思議そうな顔をして小首を傾げた。
コクリコはロードに蜂蜜がベッタリとついた口をナプキンで拭かれており、それを見てめぐめぐは波羅渡に拭いてもらおうと口の周りに蜂蜜を付けていた。
「こういうのはギルマスの役回りなんだが……だよな、お前はそういう奴だ…………ギルドについての相談だ。」
ロードは話しながらチラリと楼閣の方を見るが、悪戯っぽく微笑んで首を振る楼閣を見て諦めたらしく、いつもの様にため息をついて話し始める。
ロードの左手はコクリコの口元を拭き終わったらしく『えへへ〜♡』と笑うコクリコの頭を撫でていた。
ちなみに、同じようにして波羅渡に口元を拭いてもらおうとしていためぐめぐの口はヴィオレッタに拭かれた。
「ギルドについての相談?」
「??もう少し……詳しく、お願いします……」
カフカとカロネが同じように首をかしげて詳しい説明を求める。
するとロードはいつかのぶれどらの絵が描かれているホワイトボードをどこからともなく持ってきた。あの絵まだ残ってたのか。
「とりあえず議題は、ここに書いてある4つだ。」
そう言うとロードはホワイトボードを裏返す。
──────────────────────
第一回【
・新規加入に伴う施設増築について
・ギルメンの部屋割りについて
・今回の宴について
・俺の俺による俺のための超個人的な相談
──────────────────────
「結構多いですね。」
「ほら、ロードくんって変なとこ真面目で、なんでも全部やりたい欲張りさんだから。」
「おい楼閣!この議題については昨晩お前と決めた内容だろうが!」
カフカの零したつぶやきに楼閣がレスする。ロードは楼閣の返答の内容が気に食わないらしく噛み付いていた。
話が大幅に横筋にそれ始める。
「えっ……欲張りでなんでもヤりたがる……!?なんですかその話kwsk!!」
が、そんなことなど知らないとばかりに暴走する少女が一人。もちろんカフカだ。彼女はロードの話も横筋も本筋も盛大に無視して我が道をゆく。
「おいバカ楼閣!お前のせいでまたこいつがおかしくなっただろ!」
「え〜…………私、いくらなんでもここまで酷いとは思ってなかったよ……」
キレるロードとカフカにかなり引いている楼閣。二人ともカフカから若干距離をとる。
その間もカフカの妄想は暴走を続ける。
「いったいダレとナニをやりたがるんですかロードさんは!!波羅さんですか?楼閣さんですか?あ、ジャスティスはダメですよ!ジャス×楼は正義ですから!」
止まらないカフカの暴走に割ってはいる者、否、唯一割り込める者が現れた。
「カフカ?」
カロネだった。
目だけが笑っていない笑顔で静かにそう言うと、カフカはビクッと震え、すぐにしょぼしょぼと萎れて静かになった。
「なぁ楼閣、俺ずっと前にチョロっと見たプリキュア舐めてたわ。【笑顔は世界を救う】って嘘だと思ってたんだが、マジなんだな。明日からプリキュア見よっと。」
「ロードくん、それ多分意味合い違うよ?だからプリキュア見ても無駄だと思うよ?」
それを見ていたロードと楼閣はある種の感動を覚えた。
ロードに至っては趣味嗜好が歪んでしまいそうにさえなっていた。
『その件についてはカフカが全面的に悪かったが、早く話を進めてくれ。』
『そうですわね。決めてしまわないといけないことは早く決めてしまいましょう。』
グスタフとヴィオレッタからそんな声が上がる。
ちなみにジャスティスはもう慣れた、何を言っても無駄だと言わんばかりに別の遊具の設計をしており、めぐめぐは蜂蜜の再チャレンジを始めている。
コクリコにいたっては『おにいちゃんだっこ〜!!』とロードにだっこをせがみ、抱えられている。
【
「よし、じゃあ続けるぞ。」
「えっ、その格好で続けるの?下ろすなりなんなりしようよ。」
コクリコを抱えて説明を続けるロードに楼閣が説明を求めるが盛大に無視される。
ロードは話を進める。
「まず、だ。
「記念か──」
「却下。お前いつもそれだな。他のを頼む。」
ロードは片手を挙げて挙手による発言を促す。先程のようにおかしな発言を防ぐためだろうか。すると楼閣が手を挙げた。
「ん、楼閣なんだ?」
「ちょっと思うんだけど、どんな施設があるかを把握してないと発言のしようがないよね?キィちゃんとかに出してもらおうよ。」
「あぁ、確かにそうか。おいキィ、頼めるか?」
《仕方がないですね》
楼閣のもっともな発言をロードは肯定し、素早く行動をする。もっとも、それを頼まれたキィは少し呆れたような素振りを見せたが。
────────────────
・会議室・書庫・収納スペース・ロビー
・教悔室・和室・ゲストルーム・書斎
・茶室・シアタールーム
────────────────
《この辺りになります》
「……ん?キィちゃん、【温泉】があるってベガちゃんに聞いたんだけど、実はないの?」
キィが設備拡張の具体案を出すとそれに違和感を覚えたのか楼閣が質問を返す。
《いえ、【大型冷蔵室】や【分子調理室】などの明らかに必要ではなさそうなものは省いており、【温泉】はその中のひとつです》
「あぁ、そうなの。私的には温泉いいなぁって思ってたから欲しいんだけど……みんなはどうかな?」
キィはたんたんと説明し、それを受けて楼閣が皆に提案をする。
「えー……あたしは書斎とか欲しいんですけど……」
「カフカ……?どんな本を入れるつもりですか……?」
「え!?べ、別に普通の本ダヨ〜……チョットダケ」
『大きなお風呂!楽しみだわ。』
『疲れを癒すのは必要な事だな。』
「いいんじゃないですか?」
各々がそれぞれの意見を述べる。大体のメンバーから肯定的な意見が上がる。珍しいことにロードは何も言わなかった。
「……波羅ちゃん、ロードくんが怖いよ。いつも欣喜雀躍で否定してくるロードくんが否定してこないよ。」
「ボ、ボス!もしかして何か悪い病気なのでは!?」
「お前らは人をなんだと思ってるんだよ!」
楼閣がその事に
それに納得がいかなかったのかロードは怒鳴り返す。
「YESロリータNOタッチを地で行く少年。」
「オーケー分かったぶっ殺す。」
ロードが殺気立つ。しかしコクリコは抱えたまま下ろさない。
「それはいいんだけどさロードくん、じゃあなんでロードくんは今回否定しなかったのさ?」
「あぁ、それはな、人数が増えて風呂の時間の調整が面倒だなと思ってな。デカい風呂があれば時間を気にせずに入れるだろ?」
「なるほど、そう見れば実用性も兼ねてるわけだねぇ。」
即否定しなかったロードの理由に楼閣は納得する。昨夜話していたとおり、ロードは自分で色々と考えていたらしい。
「そんじゃ、楼閣の言うように風呂でいいな?キィ、詳しくはどんな種類の風呂があるんだ?」
ロードがキィに向かってそう訊ねる。キィはしれっと聞き返す。
《どのような種類をお望みでしょうか?》
「ふぅん……その口ぶりだと、お前またいろいろ勝手するんだろ?」
《お褒めに預かり光栄です》
「褒めてねぇわ。」
キィの口ぶりにピンと来たロードが皮肉混じりに返すとキィはなぜか照れた。
ロードは仕方がないと諦め、続ける。
「んじゃ、種類は発案者の楼閣が決めてくれ。どうせガスも電気もタダなんだ。思いっきり豪華にするといい。」
まぁそうさせてもらうよぉ。と楼閣は慣れた口振りで返す。唐突に振られるのに慣れたのだろう。
この口ぶりのせいで他にも色々と無茶ぶりをされるようになったのは、また別の話。
ロードは次の議題へと移る。
「んじゃ、次は部屋割りだな。」
こちらはすんなりと決まった。
まずは男女別で分け、幼馴染のカフカとカロネは同室に。めぐめぐはヴィオレッタが責任を持って見ると言い同室。
ジャスティスはハンモックで寝ると言ったのでグスタフが一人部屋と相成った。
ちなみにコクリコについては
「俺とコクリコは同室として──」
という一言からロードが話題を初め、その後も1度たりとも譲らなかったため波羅渡と楼閣が同室、コクリコとロードが同室という形で決着がついた。
議題は粛々と次へ移る。
「んじゃ次。今回の宴……ってか歓迎パーティーについてだな。こっちは主催に任せるわ。」
そう言ってロードは楼閣を指し、半ば強引にバトンを渡す。
「えっ、私?」
もっとも、バトンを渡された楼閣はかなり戸惑っていたが。
楼閣はロードをジト目で睨めつけるが、ロードはすでにコクリコと対話を始めており、楼閣のことなどアウトオブ眼中、知らぬ存ぜぬを地で突き進んでいた。
楼閣はうーんと少し考え込んでから諦めたように話を始める。
「カロネちゃんの時はやらなかったけど、歓迎会、今回はやろうと思うんだ。」
そんな何気ない一言から楼閣は話を切り出す。あまり堅苦しい雰囲気にするのは好きではないのだろう。
しかし、それをノータイムで否定する者がいた。
「ちょっ、そんな大層なことしなくても構いませんって!」
カフカだった。一応彼女も自らのやらかしたことに引け目を感じていたのかその申し出を断る。
すると、それに対する回答を予め考えていたかのように楼閣はスラスラと発言する。
「気にしなくていいよ。この前【宴会場】を増築したんだけど、今のところ完全に腐ってるんだよねぇ。使う機会がそうそうあるものでもないし、こんな時くらい使わせてよ。」
「そ、そうは言っても悪いですし……」
「それにさ、【
少し腹黒楼閣の一面を滲ませながら楼閣は言う。
「まだ、人が、いたんですか……」
「男の人ですか?女の人ですか?」
「男の子だよ。」
「\パン/ヨッシャwwwキタァァァァァァァアアアアアwwwwwwwwwww(高い声で)ウワヤッタァァァァァァアアアアアア」
カロネが少なからず驚き、カフカはその性別を訊ねる。
楼閣が男だと答えるとカフカのテンションは青天井。もはや不治の病なのではないか?
「それじゃやる方向で行くけど、何か食べたいものとかある?」
いちいち反応していては身が持たないと言わんばかりに楼閣はカフカを無視して話を進める。楼閣はスルースキルを手に入れた。
「あ、あたし揚げ物が食べたいです!」
『めぐめぐはお肉っ!お肉食べたいっ!』
『俺は、何か辛いものがいい。生きてるって感じがするからな。』
『デザートなどもいいですわね。わたくしがお作り致します。』
カフカやヒーローたちが次々に意見を出していく。そんな中カロネは、自分の要望を言っても良いものかと考え込んでいた。
そこに楼閣が助け舟を出す。
「カロネちゃんは?何か食べたいものない?」
「えっ……私は……」
そう言うとカロネは伏し目がちに黙りこくる。それを見て楼閣は続ける。
「ホントはさ、カロネちゃんの時もやってあげたかったんだ、歓迎会。カロネちゃんの居場所はここにあるんだって知って欲しかったからね。」
無理強いは良くないって諦めたけどね。と楼閣は苦笑する。そして続ける。
「だからさ、今回の歓迎会はカロネちゃんも主役なんだよ?なんでも好きな物を言っていい。ワガママだって構わない。さぁ、何が欲しい?」
「楼閣、それ言っても作るの俺なんだけどな?」
楼閣は優しくそう訊ねる。するとロードから冷たい指摘が飛んできた。
「お前、自分が作るから〜みたいなこと言ってるけど、作るの俺だぞこんちくしょう。」
「いやだって、ロードくんなら作ってくれるじゃん?」
「俺は態度の問題だっつってんだよ!」
あはは〜、ロードくんが怒った〜。と楼閣は相変わらず飄々とそれを躱す。それを見てカロネはオロオロしていた。
ロードはこれ以上何を言っても無駄だと思ったのか、楼閣への追求を止めてカロネに向き直る。
「んで?何が食いたいんだ?」
「えっ……でも……悪い、ですし……」
「うっせぇ。遠慮しぃは好かれねぇぞ。どうせ言うだけタダだ。」
ロードはカロネの遠慮をピシャリと却下する。ぶっきらぼうだが要望を言いやすい雰囲気を作り出す。
「では……チーズフォンデュ、を、食べてみたい……です……」
「よし、できる限りやってやるよ。」
ロードは笑顔でそう言った。カロネが自分の要望を言えたのを言祝いているのかもしれない。
カロネも心做しか頬が緩んでいるように見えた。
「はいはーい、それじゃ歓迎会についてはこのくらいにしとこっか。最後、ロードくんの個人的な相談を──」
「いや、それはまた今度にする。」
楼閣が再び司会をロードに譲ろうとした時、ロードが遮って会議を締めようとする。
「ん?どうして?」
「何でもだ。雰囲気とかいろいろあるだろ。ま、晩メシの時にでも言うわ。それまでは解散。」
「ふぅん……まぁいいけど。」
それじゃ、今日も一日頑張っていこー。と楼閣は気の抜けた挨拶をすると、その場はお開きになった。
少し遅くなりました。乱数調整です。
さてさて今回は、施設拡張と部屋割りとかいう面倒な設定を先に終わらせてしまおうという回でした!(天:その設定作ったのお前だけどな?)
なかなかいいセリフが思いつかずににっちもさっちも行ってなかったんですけど、いやぁ、とりあえず終わってよかった!
次回、宴の前に
ではでは、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。