「嫌です!絶対に出ませんから!」
宴の準備を終えた俺たちは最後のギルメン──ドクを部屋から出すべくドクの部屋の扉の前から呼びかけていたが、当の本人からはそんな言葉が。
「なんでだよ。ギルメンとして交友は深めておけよ。」
「そういう華やかな場は苦手なんです!だいたい僕言いましたよね?!もう宴には出ないって!」
いやお前、なんでそんなに嫌がってんだよ?頑なに断るほどのものか?
「当たり前ですよ!前回だって、あんなに熱い
まだ根に持ってんのか、それ。
お前が場を盛り下げるような恨み節をブツブツ言ってるからだろ。
完全に自業自得じゃねぇか。
楼閣も波羅もそう思っているであろう冷ややかな目を扉に向けていたが、そんなことなど意にも介さない暴走列車が一人。
「【あんなに熱いモノを無理やり突っ込む】!?なんですかその話!?kwsk!!」
「うるせぇ!関係ねぇからお前は黙ってろ!!」
カフカだ。
目をキラキラさせて口からヨダレを垂らしながら100点満点の笑みでこっちを見てくる。ウザい。
『……ロード、お前まさか…………!?』
「グスてめぇ、違ぇからな!?文句を言う口を出来たての唐揚げで塞いだだけだからな!?」
グスタフが汚物を見る目と恐怖の眼差しが7:3くらいの目でこっちを見ていた。
やめろ、そんなふうに俺を見るな。
「どんなふうにですか!?……はっ!もしかして「ワガママな口だな……俺ので塞いでやるよ」みたいな……!!ダメですよロードさん!波羅さんという人がありながら!キャー!!」
「うるせぇ黙れ!!」
なんでこいつはいつもいつも変な方向に妄想が行くんだよ!!俺はちゃんと説明してんだろうが!
「あ、あの……楼閣さん……止めた方が……」
「はっはっはっ。あそこまでタジタジなロードくんなんて見たことないよ〜」
てめぇ楼閣!笑ってんじゃねぇ!!あとカロネ!お前しか止められねぇんだからブレーキとして機能しろよ!
「ねぇカロネちゃん、面白いからもうちょっと放っておこうよ。」
「は、はぁ……」
楼閣てめぇぇぇええええ!!
そんでカロネも!「まぁそういうことなら……」みたいな曖昧な表情で頷いてんじゃねぇ!止めろ!!
「なんでですか〜!ロー×波羅が1番お似合いですけど、ロー×ドクも似合ってますよ〜!!」
だからなんなんだよこいつは!!
「おい波羅!!お前からもなんか──」
「ボスと……お似合い……!?」
「おいやめろ。嬉しそうにするのやめろ!!」
そんでカフカ!お前は見逃すものかとじっくり見るな!何も起こんねぇぞ!
「とにかく!僕は今回は絶対に出ませんから!」
ドクはそう言うとガン無視を決め始めた。
「あーあ。ドクくんが拗ねちゃったよ。めんどくさいねぇ。」
楼閣がそう愚痴をこぼすが、その通りだ。あいつは普段はなよなよしてて流されやすいくせに意地っ張りだから手に負えない。どうしろってんだよ、あんな奴。
『ロードも楼閣も、なぜあのように断る者を招こうとするのだ?放っておけばよかろうに。』
『そうだな。俺も気になっていた。ああいう輩は放っておけばいいだろう。』
イスタカとグスタフが俺たちの行動に疑問を示す。まぁ実際、軍では精神病に罹った人とかは【役立たず】とか【臆病者】として切り捨てるし、参加する意思が見えない奴をしつこく誘う理由がよくわかんないんだろ。
「楼閣、説明してやれ。」
俺が楼閣にそう言うと、楼閣はため息をついての肩を竦める。ヤレヤレ、じゃねぇんだよ。
「ドクくんはさ、いっつも部屋に引きこもって一人で作業してるんだよ。本人は強がってるけど、他の人の批判に弱いし、責任の所在を自分に求めちゃうんだよねぇ。」
だからさ、と言って楼閣は続ける。
「だから、こういう時くらい、無理やりにでも気晴らしさせてあげたいじゃん?」
楼閣は困った子供をあやすような笑顔でそう言った。
イスタカとグスタフはそれを聞いて納得したかのように頷いている。そういう経験が二人にもあるんだろうか。
「ま、でも料理も冷めちゃうし先にみんなで食べ始めちゃおうか。ゲームしながらでも、カラオケしながらでもいいよ。」
楼閣がそう言ったが、俺的にはこの発言は意外だった。
楼閣はいつも「ご飯食べる時にテレビ見たりゲームしてちゃ冷めちゃうでしょ?」と言って会話以外のことを飯の間にするのを嫌うのだ。
そんな楼閣がゲームやカラオケをしながら飯を食うと言ったんだ。天変地異の前触れか?
「あ!じゃあ私あれやりたいです!みん〇のリ〇ム天国!」
いの一番に挙手したのはカフカだった。選んだゲームはみんなお馴染みの【み〇天】
リズムに合わせてポーズを決めたりシャトルを打ち返したりするゲームだ。
「お?お前にしては珍しく普通のゲームじゃねぇか。意外だな。」
「意外ってなんですか!私がどんなゲームをしようって言うと思ってたんですか!?」
「BLゲー」
「うっ……マ、マッサカー。イイマセンヨソンナコト。」
語るに落ちたな。
「ちなみに、何をやるつもりなんだ?」
「【合唱】です!ほらあの「あーー「あーー「あーー」」」「みんなで」「「「ンア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」」」って部分がいいと思うんですよねぇ!愚腐腐……!みんなでナニをしてるんでしょうねぇ……!」
うん、意味がわからないね。
「カ、カフカちゃん、それは二人プレイまでしか出来ないからやめとこうね?最低でも4人で出来るやつにしよっか。」
「そうだな。なら【マ〇オカート】とかがいいんじゃないか?準備してくるわ。」
楼閣がいい感じに助け舟を出てきたおかげで方向転換に成功した。
それに【マ〇カ】ならハンドル操作もあるからやりやすいだろ。ヴィオレッタとかグスタフ、ジャスティスあたりも馴染みやすく、コクリコとめぐめぐは若いからすぐに順応できる。イスタカだけは無理。
『ふむ……車を運転するシュミレーションゲーム、ですか……面白そうですわね!』
『ふん、俺がお前たちに絶望を見せてやろう。』
『皆、俺に続け!』
ドクの説得を諦め、隣の宴会場に俺たちはガヤガヤと移動を始めた。
「それじゃ、カロネ、カフカの加入を祝って、乾杯。」
俺がそう音頭を取ると、皆一様に「乾杯」と言ってグラスをぶつけ合う。最初は話を交えて楽しい食事をしていた。
途中で腹一杯になったカロネが「皆さん、今日作った曲なんですけど……聞いて貰えますか?」と言ってゴリゴリのロック曲を歌ったり、カフカが暴走したりしていた。
そして今は、【マ〇カ】をしている。
『ロード、邪魔だ!そこを退け!』
「うるせぇ!コクリコの覇道は誰にも譲らん!」
「ボス、援護します。」
『ハンコックさん、わたくし達も協力しませんか?なんとしてもこのお二人を抜き去るとしましょう。』
『ふんっ!つまらん児戯だな。』
「グスくん、いい加減操作覚えよ?」
「なんか……ゲームの趣旨が、変わってる……気が……?」
「あっはっは。面白いから放っておこうよ。」
『ふむ……この鉄の塊の中に入ってぶつけ合って戦う
『…………イスタカ、やってみるか?』
「あー!グスくん出来ないからって人に投げちゃダメだよ!」
「いい加減にしてください!うるさいですよ!」
宴会場のドクの部屋側のドアを勢いよく開けてドクが出てきた。俺たちはレースを中断してドクを見る。ちなみにコクリコだけは大きな音で驚かないようにセナに耳を塞がせた。
俺は波羅と素早く行動を開始する。
「今だ波羅!あれが獲物だ!」
「Sir.Yes,Sir!」
「ちょっ!?なんですか急に!?」
波羅の一瞬の行動にドクはなすすべもなく組み伏せられる。
「グハッ!?そ、そうか、その組み合わせは想定外だった!」
『おいカフカ!大丈夫か?!急に鼻血を噴いて倒れた……新種のウイルスかなにかか!?』
…………オーケー、俺は何も聞かなかった。
「何するんですか!」
「メシだ。ちゃんと食えってこの前言っただろ?」
「いつもちゃんと頂いてます!ボイちゃん!助けてください!」
『……モウシワケアリマセン。』
「……ボイちゃん?」
ボイドはドクに頭を下げて助けることを拒否する。
不思議そうにボイドを見るドクに俺はわけを話す。
「今回の件な?ボイドが心配してたんだよ。お前はいつもメシを流し込むように食ってすぐに作業に戻るから、ちゃんと休めてるのか心配だってな。」
休憩や気晴らしは誰にとっても必要なものだ。誰もがそんなものを必要としていないなら誰も五月病にはならないし鬱にもならない。
あいつだからいけるだろ、好きだから大丈夫だってのは一種の圧力になるから、定期的に引きずり出して強引にでも気晴らしさせんといかんだろ。
それがストレスになるって言われちゃどうしようもないが、籠るのを諦めさせたあとは基本自由だから多分大丈夫……だと思いたい。逆効果?それはよく聞こえないから却下する。
『モウシワケアリマセン。デスガ、ワタシハドウシテモアナタガシンパイダッタノデス……』
「そうでしたか……心配かけてすみません、ボイちゃん。」
皆さんも、ここまでしてもらってすみませんでした。とドクは総員に頭を下げる。
『気にするな。さ、お前の席はそこだ。』
ジャスティスに誘われ、ドクは着席する。
ここからが宴の本番だ。全員揃って楽しもう。
なぁに、夜はまだまだこれからだ。
再び投稿です。乱数調整です。
正直、遊んでいるだけの回ですね、ハイ。書きたいネタも結構消費出来ましたし、楽しい回でした。
ちなみに今回でこの章は終わりです。締まりませんね。
次回、新章突入
ではでは、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。