「うー……!」
「いやぁ、あの子たち上手だねぇ。」
「楼閣さん!その手を!早く!離しやがれください!!」
準決勝の舞台で、【
「まさか30人を10人ずつに分けて、10秒おきに全員でイェーガー張って戦線交代するとはなぁ……」
「ガッチガチのメタ張りだねぇ。私たちが別の作戦立ててきてたらどうするつもりなのさ?ま、確かに私たちは【テレパス】とかで奇襲しないとほぼほぼ勝てないんだけど。」
といった戦線を崩壊させない工夫が敵の【
現在は両チーム共に自陣一番ポータルでヒーロースキルを溜めている。
「ま、全員でいっぺんに【テレパス】されないよりはマシか。波羅、そろそろ置いとけ。」
「チィっ!なんでこんなチマチマやんねぇといけねぇんだよ!」
そのまさかの【テレパス】に備えて先頭に立たされている
「とはいえ……マジでこれどうすっかね?カフカ、お前突っ込む?」
「嫌です!」
清々しいほどに爽やかな笑顔でカフカが遺憾の意を表明する。今まで見たことがないようないい笑顔だった。
「そんないい笑顔をするなよ。放り込みたくなるだろう?」
「鬼だ!鬼がいる!TYI-82発見!!グスくん助けて!!」
カフカがたまらずグスタフに助けを求める。こころなしか涙目だったのに楼閣は気づいていたが、言わぬが花と黙っていた。
『そんなことより、このままHAしないとそろそろ死ぬぞ。』
「そんなの勝手にやっといてよ!」
『この前の試合で勝手にやったらお前が怒ったから俺は今回はやってないんだろうが!自分の発言に責任を持て!』
「あれは敵のど真ん中でやるからだよ!」
グスタフが現在の状況を伝えるとカフカはそれに逆ギレした。
「んー……ま、向こうも牛歩とはいえ近づいてきてるし、別の作戦でもやるか。」
そんなことは些事に過ぎないと言わんばかりにロードは別の話題を振る。そんなロードを楼閣がジト目で見ていた。
「ちょっとロードくん?そんな都合のいい作戦あるわけないでしょ。今思いついた作戦なんて、どうせすぐ崩されるって。」
また変なこと言い出したよこの子、と言いたげに楼閣は愚痴を漏らす。そんな楼閣を制してロードは話を進める。
「まぁとりあえず聞け。今の段階だと、戦線を支えてる【イェーガー】が邪魔なわけだろ?」
「なんとかできるのかい?」
投げやりにも見える態度で楼閣が訊ねた。ロードの新しい作戦への信用のなさがよく伺える。
「簡単だ。毒殺すりゃいい。」
「……この子何言ってんの?ついに壊れたの?」
カロネとカフカが不思議そうな表情を浮かべる中、楼閣が悟りと呆れが半分ずつ含まれたような表情をして辛辣に言い放った。
「とりあえず聞けって言ったろ?」
「にしてもだよ。今回誰も毒カード搭載してないんだけど?毒撒けないのに毒殺するってどういう意味なのさ?」
「毒なら撒けるさ。ここはイベント特設ステージで、ここにはドクがいるんだぜ?」
ニヤリといたずらっぽくロードは笑った。
一方、そんな話を急に振られたドクは、
「分かりました。やってきます。」
驚くほど冷静だった。
「なんだいなんだい。ドクくん、いやに落ち着いてるじゃないかい。いっつもこういう時はあたふたしてるのに、どういう風の吹き回しだい?」
「いえ、こういうことも考えていたので。」
「ふぅん?まぁ、そういうことならよろしくねぇ。」
冷静なままドクは答える。珍しいこともあるものだと思ったが、楼閣はそのままロードの作戦に乗ることにした。
「それで、どういう作戦なんですか?もう二分経ちますけど……できれば早くしないと……その……」
「ぐがぎぎぎぎ……!!」
さながら狂犬病に罹った犬のように犬歯をむき出しにして唸る波羅渡を見ながらカフカが訊ねる。カフカはそんな波羅渡に控えめに言ってドン引きしていた。
「ふむ?つまりお前はこの波羅を見たくない、と?」
「正直、超怖いです!!」
いい笑顔でカフカは言った。
もっとも、それを聞いたロードは悪い笑みを浮かべていたがカフカは気づいていない。カロネは気づいたようで震え上がって、幼馴染の身を案じていた。
「だったらちょうどいい。行け、鉄砲玉一号。」
「………………はい?」
カフカの笑顔が引きつった。
だがそんなことなどお構い無しにロードがたたみかける。
「アナタ、敵陣イク。ワタシ、見守ル。オーケイ?」
「いや全然良くないですよ!死にますって!!」
「大丈夫大丈夫。よっぽどのことがないと死なないって。多分。」
「そういうとこですよ!」
いつものようにぎゃあぎゃあと言い合っているが、いつもカフカに助け舟を出すグスタフは拗ねてしまったようで、カフカに助け舟を出すことなくHAで体力を回復していた。
「お前は……話聞いてたか?今回は【毒殺】するんだぞ?アレ、今回お前積んできてたろ?」
「あぁ、そういう。」
カフカは何かに気がついたようでポンと手を打った。そしてロードに質問を返す。
「いつ出ます?」
「別にいつでも。今すぐでもいいし、好きなタイミングで死にに行けよ。」
「だから言い方……まいっか。グスくん行くよ〜。」
『ふん、やっとか遅いぞ。まぁいい、絶望の始まりだ。』
うだうだと嫌そうにしながらもカフカは覚悟を決めた。グスタフはやっと暴れられるからか機嫌がなおったようで鼻を鳴らして意気揚々と立ち上がった。
「鉄砲玉一号、行きまーす!【アンジュ】【テレパス】!」
『さぁ、始めるか。……悪いな。』
少しの発動時間の後にカフカとグスタフが敵陣中央に移動する。
敵は一瞬驚いたものの、すぐに冷静になりグスタフを囲むように陣形を変化させる。
スプリンター達の襲撃に備えてロード達の方を見張る役が用意されており、作戦の周到さがよく伺える。
「ドク、準備。」
「はい。ボイちゃん、お願いします。」
『ハイ。クウカンテンイソウチ、キドウシマス。』
その短いやり取りで理解しあったのか、ドクがvoidollの【リブート・シークエンス・スタート】を発動する。
「んっ……そういやそんな設定あったねぇ。」
「お二人とも…………よく……覚えて、いましたね……」
それを見た楼閣とカロネが何かを思い出したかのように感心して言った。ふたりもどうやら何をしようとしているか分かったらしい。
「あたしは何やろうとしてるか知らないんだけど……とりあえずHS入れればいいんだよね!グスくん【旗】!」
『全開だ!!』
グスタフは敵陣形のど真ん中で【革命の旗】を使用する。周りのヒーローからスキルゲージを強引に奪い取った。
「よしよし!これで躱せる人少なくなったね!グスくん使って!」
『フゥン!…………この世界の闇を見せてやろう!』
グスタフのヒーロースキル、【グラオザーム シュメルツ】が発動する。体力を残り2割にするその必殺技は、このような総力戦ではかなりの恐怖だろう。
通常はヒーロースキルを合わせることで無効化が可能だが、その数を最小化するためにカフカは【革命の旗】を使用したのだ。
「ダメージ来るぞ!持続組はもう使っとけ!即時組はオルレン範囲から離脱!HSは温存の方向で行け!」
「「「了解!」」」
しかしそれも想定内だったのだろう、【
あっという間に窮地に陥るであろう事を理解したカフカは青ざめていた。
「ダレカタスケテー!」
「あっはっは、死ね。」
「シンプルな殺意!?ちょっとロードさん酷くないですか!?」
軽くそう言うロードにカフカは苦言を呈した。もっともそれでロードの態度が変わることはないのだが。
『3』
「くそう!この鬼畜ロリコンめ!」
「誰がロリコンだ。あと、そろそろ覚悟しとけよ。」
ロードがそう言ったタイミングでグスタフのヒーロースキルの無敵時間が切れる。
それを【
『2』
「無敵時間が終わったぞ!持続組は囲め!即時は少し離れて展開!」
「「「了解!」」」
「やだやだ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!オルレンで相打ちするにしても発動できるかすら微妙!カロネちゃん、支援ちょうだい!」
そのやり取りを見てカフカは慌てる。このままでは突破が不可能だと直感し、たまらず
『1』
「すみません……楼閣さん、に……止められてて……」
「鬼畜しか居ないのかこのギルドは!!」
花火とヴァルヴァラで何とか回復していたがそれも追いつかなくなり、みるみる減っていく相棒の体力を見てカフカは絶望する。
このままでは【グラオザーム シュメルツ】のダメージが入ったのを確認し、【オールレンジアタック】で何人かを道ずれにする前に自らが倒されてしまうだろうとカフカは気づいてしまった。
「あーもー!ロードさんの鬼!鬼畜!ついでに──」
「そういう前に少しでも耐久してください。」
『アナタラシクナイデスヨ、カフカサン。』
カフカがロードに対するあらんばかりの罵詈雑言を言い始めた所に、闖入者が現れた。
線が細くて気弱そうな男と、白の光沢が美しい機械だった。
「なっ!?【
「無駄ですよ。ボイちゃん!」
『GO!ヨコクハシマシタヨ。』
【
かなりの戦力を削られた【
「はっ!リス地に送っただけで勝ったつもりか!お前らを倒してから合流すりゃ──」
余裕綽々でリーダーはそう言うが、そこまで言った直後に無慈悲な宣告が頭に響いた。
《味方が倒されてしまいました》《味方が倒されてしまいました》《味方が倒されてしまいました》《味方が倒されてしまいました》《味方が倒されてしまいました》《味方が倒されてしまいました》《味方が倒されてしまいました》《味方が倒されてしまいました》《味方が倒されてしまいました》《味方が倒されてしまいました》《味方が倒されてしまいました》《味方が倒されてしまいました》
無感情かつ無慈悲に響いたそれは【
「な……にが、起こっ……!?」
「何を今更?ここは
驚く【
そこでやっとリーダーが原因に気がついた。
(そういや……ルールにあったな……!)
「クソッタレ!総員!リス地に毒ダメが入ってる!アイツらはそれでやられた!」
「正解です。」
リーダーがギルドメンバー達にその事実を知らせる。しかし、それを聞いてなおドクは無表情で彼らを見ていた。
そして続ける。
「で、それが何か?」
「グスくん【オルレン】!」
『ブワァ!』
《味方が倒されてしまいました》
なぜ味方が倒されたのかが分からなかった彼らは、数瞬の間思考が止まってしまった。その間にカフカが回復を済ませ、攻勢に出たのだ。
完全に虚をつかれた攻勢で【
「クソっ!対応が後手に回りすぎてる!とりあえずダメカと回復を──」
「てめぇらだけで楽しみやがって!後で殺すぞ!!めぐめぐ!」
『おっけーハービィ!触れたきゃお菓子を持ってきな!!』
ドクが走り出してから数秒後、楼閣の拘束から解き放たれた
いくら近づいていても気づかれていないことに腹をたてていたのか、かなり機嫌が悪いらしい。
ダメージカットカードと回復カードを連続切りしていた敵の一部を綺麗に絡めとる。
ダウンを取ったところをそのままヒーローアクションで削りきり、波羅渡は次の獲物を探し始めた。
それを遠くで見ているだけの3人がいた。
「ま、結局私たちの攻めってワンパターンなんだよねぇ。」
「たしかにな。結局やってることと言えば【敵の虚をつく】【そのまま押しきる】ってだけだからな。」
「その虚をつくのが難しいんだけどねぇ。」
からからと楼閣は笑う。何はともあれ上手くいったと言っているかのようだった。
もっともロードは虚をつける確信があったらしく何事でもないように話していたが。
その2人のやり取りを見て、カロネは素朴な疑問をぶつけることにした。
「ですけど……上手くいって……良かった、ですね……」
「まぁ、八割削れば行けると思ったからな。」
「ですけど……毒ダメージ、って……どのくらいか……分かりませんでしたし……」
「ん、たしかにそうか。まぁいけたからいいだろ。」
そう言ってロードは話を切りあげる。カフカは確かにそうかと思いながらも、毒ダメージの多さに少し疑問を残していた。
《バトルが終わりました》
投稿完了しました。乱数調整です。
さてさて通勤通学も復活し、移動時間ができたので私の執筆時間もできました!いやはや、ラストスパートは楽しいものですね。
この章も残すところバトル一つですからねぇ。バトルの中身は全然出来てないから苦しいところなんですけどね。
最終章は(なぜか)全話細かい内容まで決まってるので、乱数が酷く忙しくなったり(今も大概忙しいですけど)セリフ回しに苦悩しない限りは早くお届けできると思います。楽しみです。
次回、因縁
ではでは、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。