『く ら い や が れぇぇぇぇぇぇ!!』
怒号とも似つかぬ声が響いた。13だ。
彼の狙う先はコクリコ、いちばん近くにいた相手だった。
「なっ……!?」
『おのれェ!』
ロードはその攻撃を予知していなかったらしく、コクリコは後方に大きく吹き飛ばされる。
ロードはわけがわからないといった具合に目を白黒させていた。
しかし、ロードがそんな状況にあったとしても戦況は変わらない。
『遊ぼぅよぉ……!』
『むぅ……!?』
「ねぇ待って嘘でしょ!?」
乃保が【Telepass】でグスタフに急襲をかける。【秘めたる力の覚醒】によって引き上げられた攻撃力を元とするその攻撃は、グスタフを一撃で屠るとまではいかずとも負荷をかけるには十分すぎる攻撃だった。
グスタフの体力が8割ほど削られる。
「乃保!」
『切る……断つ……!』
「カフカ……!」
「させないよっ!【銀ちゃん】!」
『これで凌げ!!』
その時、幼馴染の窮地を悟ったカロネが我に返る。カロネの呼びかけを受けて楼閣は少し冷静になり、いつまでも惚けている訳にはいかないと【銀河防衛ロボ】を使用する。
それを見て波羅渡も、今援護をすべきはロードではなくカフカだと分かったのか、カフカの援護に動き出した。
「めぐめぐ【クルエル】!」
『汚ぇ顔で近づくな!』
「そう来るよなぁ!?【ディーバ】」
『あたし切りたいからしっかりして欲しい』
「波羅さんありです!グスくん【花火】!」
【銀河防衛ロボ】の回復のおかげでキルを取られる前に立ち上がることが出来たグスタフを見てカフカは安定を取ろうとする。
しかし、
「させっか!」
『くらいやがれ!!』
『ぬぅ……!?』
その行動はkeyに読まれていた。
それもそうだろう。keyはPRHSと訓練をしていたのだ。
keyはタンクの持続回復を遮る訓練を。
PRHSはカード使用をキャンセルされない訓練を。
もはや人外レベルとまでレイアが称するその読み合いには、なかなか勝てるものではないだろう。
【禁忌の代償】でグスタフの体力が減少を始める。
一方その頃、波羅渡はというと引き寄せた乃保が転倒しなかったことで窮地に立たされていた。
「チィ……っ!!3秒だ!逃げろめぐめぐ!!」
『おっけーハービィー!!』
「させっかよ!【武術家】!」
『ガラじゃないから』
波羅渡はすぐに後退し、乃保の攻撃範囲から逃れようとするものの、【武術家の超速加速】によって加速した乃保に背後を取られてしまう。
「なっ……!?めぐめ──」
「遅せぇよ!乃保!」
『切る……断つ……!!』
波羅渡が驚いたような表情でめぐめぐに反撃を指示するが、遅きに失した。ガリガリとめぐめぐの体力は削れていく。
肝心の全体回復も、カロネ・楼閣両名ともまだ
「クソが…………!」
『しっかり顔、覚えたからね?』
《味方が倒されてしまいました》
勢いそのままに波羅渡とめぐめぐが戦線から離脱する。ダメージディーラーが一人消えた。
「まだだ!行くぞ乃保!」
『まだ切れるの嬉しい』
しかしレイアと乃保は止まらない。次の獲物──グスタフに向けて歩を進めだした。
ちょうどそれは、グスタフの【アンジュ】もがkeyによってキャンセルされた瞬間だった。
しかし【
『いつまでも好きにさせている訳にはいくまい!マピヤ、呼吸を合わせるぞ!』
『ピュイィィィィ!!』
イスタカ達が乃保を狙う。レイア達がグスタフに近づいていくのに合わせて背後から乃保を追っていった。
「グスくんカードない!HA諦めて下がって!」
『……仕方ない。引き上げるとしよう。』
カフカとグスタフは少し離れた場所にいた波羅渡がやられたのを見て即座に後退を決意する。
しかし乃保は【武術家の超速加速】で移動速度が上がっている。すぐに追いつかれてしまった。
「うっそもう!?」
「よっしゃ【メカ犯】!!」
『省みる返り血最高……!』
『ぬぅ、ぐっ、』
いくら耐久指数が高いとはいえ、禁忌の代償と13の攻撃で削れていた体力では乃保の高い攻撃力を媒介として放たれる【とある家庭用メカの反乱】を食らうとひとたまりもなかったようで
「あー……カロネちゃん、ごめんね……」
『やるなぁ……』
《味方が倒されてしまいました》
グスタフとカフカが戦線を離脱する。
残っているヒーローはコクリコ、イスタカ、ジャスティス、ヴィオレッタ。
ジャスティスが今回サポートに回っているのを考えるに、攻撃要因はコクリコとイスタカのみ。人数不利はひっくり返したと言ってもいいだろう。
「いったん流れ戻すよ!イスタカさん【フルーク】!!」
「読めてんだよ!」
『守らないと切れないなんておかしいよ。』
『受けてみよ!』
最悪とも言える流れを止めようと、楼閣がイスタカを乃保を後ろに回り込ませて【フルーク】を使用する。
だがレイアはそれすらも見越していたようで、【とある家庭用メカの反乱】を使用すると同時に【全天首都防壁】を連続切りしていた。
【全天首都防壁】によってイスタカの【フルーク】が防がれる。
「乃保!一旦下がれ!」
『……ちょっとだけだよ』
「イスタカさん【カノーネ】!」
『我が声を聞け!』
楼閣が乃保を逃がすまいと続けて放った【カノーネ】も、乃保が後退する事で避けられてしまう。それは読めたはずの行動であり、楼閣の失策であることは明らかだった。
「イスタカさん【イェーガー】張って後退!」
『痛みで戦士は止められぬ!承知した!』
それでもまだ勝ち筋は残っていると楼閣はイスタカに撤退を命じる。レイアも深追いしてもさしておいしくないと思ったのかkeyの方にまで下がって行った。
イスタカはロードと合流する。それを確認した楼閣はチームチャットでロードに状況の説明を求めた。
「ロードくん、なんか調子悪そうだねぇ。どうかした?」
「……たしかに倒したと思ってたんだ。なのになんで倒れてなくて回復までしてるんだよ。」
ロードは状況が飲み込めず、混乱していたらしい。楼閣が聞きたかったのは「どうしてダッシュアタックを決められなかったのか」を聞きたかったらしく、話題が逸れて少し不満げだった。
しかし、ロードはそれほど驚いたのだろうと考え、その疑問解消のための説明を始める。
「私もついさっきまで忘れてたから大きなことは言えないんだけどさ、【私が死んでも あきらめないで】……ジャンヌちゃんのアビリティだよ。覚えてる?」
「…………いや、覚えてねぇ。どんな効果だった?」
知らないと答えるロードに楼閣は呆れるでもなく、ただ無理もないと言いたげな顔で説明を続ける。
「ジャンヌちゃんが倒された時、味方の体力を全回復させるスキルだよ。たいていジャンヌちゃんは溶けないか、味方を倒されてから処理されるからほとんど死にアビリティになってるけどね。」
「チッ……そうか、野郎それで……」
悔しげにロードが言う。その声音は悔しげではあったのだが、【
楼閣はそれを確認して、再び質問を繰り返す。
「それでロードくん、なにがあったんだい?」
「あぁ、ちとテンパってて手玉に取られた。俺がフェイント入れられてなかったからだろうが【オルレン】からのバクショで満身創痍。なんとかミリで耐えて射程外に逃げれたのと【ガブ】が残ってたのは幸運だったな。」
「そっか。じゃあこれから勝ち筋探そっか……って言いたいんだけど、時間が無いみたいだねぇ。」
ロードはkeyとあった一連の戦闘を説明した。楼閣はそれを聞いて、ロードならとやかく言わずとも大丈夫だろうと感じる。
なので次の作戦を練ろうと考えていたが、どうやら時間切れらしい。楼閣の視線の先では乃保がHS【ビハインド・ザ・グラスイズ】を使用していた。
「一瞬で終わるだろうねぇ。」
「そうだな。」
カードのCTや陣形を確認しながら二人は会話する。
局面が動くか、というところで楼閣がポツリとロードに訊ねた。
「ねぇ、ロードくん」
「なんだ?手短にな。」
「楽しいかい?」
ロードは一瞬驚いたような顔をした。声だけでやり取りをしていた楼閣には見えていなかったが、ロードはそう聞かれて唇の端を歪めて言った。
「楽しくなかったわけ、ねぇだろうが。」
それが楼閣に聞こえていたかどうかなど関係ない。
ただ、思わずこぼれてしまったようなロードの本心だった。
「決着つけるぞレイア!」
「あぁ!誰のためでもなく、己が為に!」
「そう易々とは……」
「負けてやれねぇんだよ!」
keyとレイア、ロードと楼閣がそれぞれの雄叫びをあげる。
大戦の最後の幕が上がったようだ。
終わってしまう……もうすぐこの章が終わって、最終章が始まってしまう……
一抹の悲しみを覚えています、乱数調整です。
さてさて、何人かは私と同じくジャンヌのアビリティを忘れていてこの展開が読めていなかったのではないでしょうか。特にキルスプじゃないスプリンター使いとかだとジャンヌが味方にほぼほぼ来ないので、本文の理由と合わせて忘れているのではないでしょうか?
ジャンヌはジャンヌだけで集中して相手取られるのでアビリティが腐りがちですよね。デス時に発動するベホマズンはそこそこ強いと思うのですがねぇ……まぁ、環境で腐るものはポ〇モンでも第〇人格でもありますし、こればっかりは仕方ない。
次回、エンドロールは響かない
ではでは、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。