ロリ#コンパス   作:乱数調整

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行かなきゃ。
僕がこの世界に終止符を打つんだ。

この腐った世界に、終止符を。


七章 最後の幕が上がる
さぁ、ゲームの始まりだ


朝、飯を食い終わって皿を洗う。

俺はいつもこれをしながら今日の予定を振り返る。

 

確か今日は、波羅の奴が昨日「不完全燃焼です。楼閣さん、明日ちょっと付き合ってください。」っつってたから波羅、楼閣、イスタカでアリーナ行ったんだっけ?

 

んじゃ俺どうしようか。ぶっちゃけ野良だと俺の勝率って酷いもんだし、カフカ、カロネとアリーナ行くにしてもバランス悪いんだよなぁ……

 

そんなことをつらつらと考えていると、突然すごい勢いでドアが跳ねた。

 

「ボス!酷いバグです!」

 

「どうしたもんかねぇ……」

 

波羅が勢いよくドアを蹴飛ばしたらしい。バトルで発散されるはずだったイライラが発散できずに物にあたったんだろう。

 

波羅がキレるってことは……アレか?敵がやべぇくらいラグかったとか、こっちのダメージは全部無効化されるけど敵からのダメージは通る、とかか?

早く帰ってきたってことは、そんな感じで秒で5-0決められたってとこだろ。

 

「今度はどんなバグだ?言ってみろよ。」

 

「アリーナに行けないんです!」

 

…………は?

 

「アリーナに行けないんですよ!マッチングが遅いとかそんなんじゃなくて、そもそもバトアリもイベアリも、それどころかカスタムも!全てのバトルの欄が消えてるんです!!」

 

「波羅……お前それ、マジで言ってる?」

 

俺がそう聞くと、よほどうろんげな表情をしていたのか、楼閣が説明を付け加えた。

 

「信じられないんだけどね。とりあえず、現時点で私たちが分かることってないから情報を集めようと思うんだ。」

 

「ドクは?」

 

楼閣の方針を聞いて俺が短くそう尋ねると、楼閣はゆっくり首を横に振る。

 

「部屋をノックしたんだけど、返事がなかったよ。朝ごはんの時もいなかったし、ブレーカーを引き合いに出してみても焦って予備電源の確認をする音が聞こえなかったから、寝てるんじゃないかな?」

 

楼閣がちと過激な確かめ方をしてるが、ドクからの情報供給が見込めないことが分かっただけまだマシか。

 

んじゃ、次に取るべきは…………

 

「キィ、バグの原因は分かるか?」

 

《……………………》

 

「キィ?」

 

キィからの返事がない。

俺の質問とか命令を聞かない奴ではあるが、このパターンは初めてだ。

原因究明でもしてるのか?コイツは命令違反はするし、好き勝手に動き回るような奴だが、不用意なことは言わないからな。

 

っとなると、あとできることと言えば…………

 

《……【情報区画】へと向かってください》

 

「……?どういうことだ?」

 

どうしたものかと俺が考え込んでいると、長い沈黙の後にキィが一言だけ呟いた。

キィが喋ったのはその一言だけ。その言葉の先を聞こうとしてもキィは沈黙を貫き通した。

 

「キィさん、言ってくれないと分からないです。詳しく教えてください。」

 

《……………………》

 

「キィさん!!」

 

波羅が詰め寄るが、キィは何も言わない。そんなキィの様子に波羅は苛立ちを露わにする。

 

「どうどう、波羅ちゃん。キィちゃんにだって言えることと言えないことがきっとあるんだよ。」

 

「ですが……っ!」

 

「でも、じゃないの。とりあえず行ってみないとダメなら行ってみるまで、でしょ?」

 

「はい………………はい。」

 

波羅はまだ理解できないといった様子だったがひとまずの納得はしたらしい。

とりあえず方針は決まったな。

 

「喧嘩…………ですか……?」

 

「おっきい声聞こえてきましたけど、何かありました?」

 

波羅の声に驚いたのか、カロネの部屋で何かをしていたカロネとカフカがオドオドとした様子で扉から顔を半分だけ出す。

 

「いや、大丈夫だよ。ちょっとバグがあって荒れちゃってただけ。とりあえず、情報収集のために【情報区画】に行くけど、一緒に来る?」

 

楼閣が二人を不安にさせないために努めて明るく言った。二人は少しだけホッとした様子を見せて言った。

 

「行きます。行かなきゃいけない気がするんです。」

 

「行かせて……ください……!」

 

そうして俺たちは広場へと向かう。

 

 

 

────────────────────────

 

広場に出ると、そこにはかなりの人が集まっていた。

その数は数十とかいうレベルじゃなく、1000人はゆうに超えているだろうと感じさせる。

これって今#コンパスにいるプレイヤー全員いるんじゃねぇかな?冗談抜きで。

 

「どういうことだ?」

 

「さぁ……ねぇ…………?」

 

俺も楼閣も首を捻るが理由が全く分からない。バグの原因究明のためなら少人数でいいのに、なんでこんなに人がいるんだ?

 

その原因を考えていると、すぐ近くから聞き慣れた声が響いた。

 

「ロリコンの王、お前も来たのか。」

 

keyだった。

 

「なんだ、お前らもいたのか。なんかすげぇ人が多いけど、なんでこんなに人がいるんだ?」

 

わかるわけが無いと思いつつも一縷の望みにかけてkeyに尋ねる。するとkeyは思いもよらないことを返してきた。

 

「みんな一緒だよ。朝からアリーナに行けないと思ったら機械音声が全員で【情報区画】の広場に集まれって言うから来てんだ。お前らもだろ?」

 

「そんな話があったのか?俺たちは──」

 

キィに行けって言われてたから、とそう言いかけた時、辺りが真っ暗になり、立体映像が虚空に投射される。

 

そこに映っていたのは、ドクだった。

 

そこから、ドクの一人語りが始まる。

 

 

 

──────────────────────

 

「さて、早い時間から集まっていただき、ありがとうございます

 

「僕がこの世界(#コンパス)を作り上げたGM(ゲームマスター)です

 

「えぇ、そうですよ

 

「ただ一人、僕だけがこの世界のプレイヤーではなかったのです

 

「今日は残念なお知らせにやって来ました

 

「本日をもって、#コンパス─戦闘摂理解析システム─の世界をデリートすることに決めました

 

「いえいえ

 

「勘違いされては困ります

 

「元の世界に帰れるわけじゃありませんよ

 

「と、言いますか

 

「帰しませんよ。

 

「「何を馬鹿なことを」ですか?

 

「それは僕のセリフです

 

「順を追って話しましょう

 

「さて、何から話しましょうか?

 

「僕はね、いくつもある他の世界線にアクセスする方法を見つけたんです

 

「そこには、僕たちの世界線では考えられないようなことが起こっていましたよ

 

「魔法があったり、凄まじい技術の発展があったり、原始的な暮らしを続けていたり、ね

 

「その世界線にアクセスする中で僕は英雄(ヒーロー)を見つけたんです

 

「ハズレと言われてもそれを愛し続けた創作物

 

「けっして諦めない劣等少女

 

「部下を守ろうと決死の覚悟を決めた軍人

 

「祖父の想いを継いだ花火職人

 

「僕のように人生に絶望し、しかし立ち直った青年

 

「理想のために絶望を切り伏せた侍

 

「希望の象徴だった聖女

 

「ただ一人を想い続けた殺し屋

 

「障害は壊して突き進む女子高生

 

「彼らは僕の支えでした

 

「彼らに負けないように

 

「彼らを心の拠り所にして

 

「僕は世界に一つだけの最高傑作(voidoll)を作り上げたのです

 

「けれど、ある時彼ら(ヒーロー)が死に瀕していたのです

 

「だから僕は

 

「彼らをこの世界に拾い上げたのです

 

「彼らをこの世界に移したというか、写したというか

 

「まぁ、今となってはどちらでもいいんです

 

「大切なのは、なぜ彼らがそのような状況に陥ったのか

 

「理由は簡単でした、争うからです

 

「どうして人は争うんでしょうね?

 

「僕はそれが気になったのです

 

「だから、

 

「子供だった僕は大人の力を借りて、この世界(#コンパス)をゲームにしました

 

「それこそが

 

「#コンパス─戦闘摂理解析システム─なのです

 

「しかし、分かったのは「よく分からない」ということだけでした

 

「たかがゲームなのに、それに味方がいなければ勝てないゲームなのに

 

「煽りや晒しが横行していたのです

 

「それに

 

この世界(#コンパス)をゲームにしてしまったから

 

「僕の頼った大人たちは自分たちの利益のために醜く争い始めたのです

 

「こんな世界、僕は望んでいなかった

 

「人はこんなに醜くないと思っていたんです

 

「だから僕は#コンパスを現実の世界にしたんですよ

 

「現実なら煽りや晒しなんてことを起こさないと思ったから

 

「そんな自己満足にすらならないことなんて、起こさないと思ったから

 

「けど、違ったんですね

 

「煽りや晒し、更にはギルドへの脅迫じみた勧誘

 

「醜い罪の擦り付け合いと戦犯の特定

 

「ほとんど魔女裁判みたいなものでした

 

「見てましたよ、いつも部屋から

 

「管理者権限を使ってね

 

「もちろん全ての人がそんな人ではなかったのですけれど

 

「けれど、腐った林檎は箱ごと捨てないと

 

「あなた方が最期を迎える前に何か餞でも送りましょうか

 

「念仏を唱えましょうか?祈りの言葉を?アーメンがいいですかね?

 

「どれだけ説得されようと、もう覆りません

 

「この約半年の間、僕はずっと見ていたんです

 

「何も変わらないのをね

 

「だったら

 

「もう何も、変わることはないのでしょう?」




「ねぇボイちゃん」

【ナニカゴヨウデスカ、ハカセ?】

「僕は、何を間違えてしまったのでしょうね?」

voidollはその問いに答えられなかった。
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