ロリ#コンパス   作:乱数調整

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前も後ろも分からなくなっていた私に、彼らは道を示してくれた。
その道は行ったことがなかった。
こんなにも平和でこんなにも何も考えないでいられる道。
誰かがともに歩んでくれる道。
私は、なんでも一人でやろうとしていたのかもしれない。
私の重荷を共に背負ってくれた彼ら。
その彼らの重荷を、今度は私が背負う番だ。


誇り

「……ま、うすうすこうなるとは思ってたが、まさかこんだけ物量集めるとはな。」

 

「ヒーロー出してくるって思ってたけど、まさかカードキャラの方だとはねぇ……」

 

迫りくるカードキャラ達を睨みながら俺たちは愚痴をこぼす。

 

そんなこと言ったってなんにもならねぇのは知ってる。知ってるんだが文句の一つや二つくらい言いたい気分はわかって欲しい。なんたって左右と後ろ、避難路を完全に断つようにカードキャラ達が群れてるんだ。もはやアレ、カラフルな津波だぞ。

 

運が良かったのはあのタイミングで近づいてきてたのが【ジャック】だけだったところだな、まだ他のカードキャラ達は300mくらい先にいる。不意打ちであの物量が来たら普通に死ねる。

 

よくよく目を凝らして見てみるとその波の中には【リョーフキー】や【ガルガル】、【サンバール】に【ブラストアッパー】など、人型をしたキャラたちがひしめいていた。

 

「さっさとドクのところに行くのが得策だろうな。行くぞ。」

 

「ロードくん、どうもそうは言ってられないみたいだよ。」

 

楼閣が視線を投げた先にもまたカラフルな津波。そっちはさっきまでドクがいた方向で、

 

「アイツ、ここで俺たちを始末するつもりか。まぁ、危険因子は排除ってか。」

 

ドクがこの大量のカードキャラ出したことはほとんど間違いないだろう。遠くから物量が逃げ道を塞ぎながらやってくる。こいつら全員始末しないとドクのところには行けそうにないな。

 

「……なら仕方ないか。やるぞ楼閣、波羅!カードは使えねぇ、敵は膨大、勝率はひでぇ…………よし、やるぞ!」

 

『行き当たりばったりだなァ?』

 

「勝てそうな要素が見当たらないんだけどねぇ!?ロードくんもしかして私に死ねって言ってる!?」

 

『今回ばかりは、俺の後ろが安全地帯だとは言えないな。皆、俺の背中に続け!!』

 

「ボスのためなら例え地獄でも煉獄でも監獄でも牢獄でもお供します!」

 

『カミサマなんていないよ?』

 

『戦士の誇りは砕けぬ!呼吸を合わせるぞ、マピヤ!』

 

『ピュイィィィィィィ!!』

 

全員気合いは十分だ。楼閣はあんなでもちゃんと戦うし、イスタカも気合い十分だ。波羅にいたってはバーサーカーだからむしろこの状況を楽しむだろう。

 

っておいコラ波羅、なんでお前の想像の中で俺の行く先は“獄”限定なんだよ。

 

「蹴散らせめぐめぐ!ボスに近寄らせるな!!」

 

『あっはははは!!』

 

先陣を切ったのは、なんというか予想通りなわけだが波羅。【切り裂き魔ジャック】を倒した方向からくる敵を蹴散らしていく。

 

ゲームシステムが完全にイカれているらしく、めぐめぐHAの威力減衰がほぼない。

まぁそのかわりと言っちゃなんだが

 

「うーん……ロードくん、やっぱりカードは使えないや。」

 

「だよなぁ……カードって向こうの陣営だし。」

 

と言うわけだ。

 

それでもめぐめぐのHAのようにヒーローのいろんなリミッターが外れてるらしいからジャスも結構な速さで動けるし、セナのポルターガイストも物さえあればできるはずだ。

【周囲】【近距離】【連撃】【遠距離】なんでもござれなポルターガイストがCT無しで打てればあれだけの数が相手でもまぁなんとかなる。

……物さえあれば。

 

この白い部屋には何も無い。ヒーローと俺たちとカードキャラだけだからまずポルターガイストに使える物がない。

なら倒れた敵とかナタデココを使えばいいと思ったが、敵は倒されるたびにナタデココすら残さず消えてく徹底ぶり。アイツ俺スナイプかよざけんな。

 

タイマンなら俺たちも通常だけで戦えんことはないが、こうも数が多いとどうしようもない。ただでさえコクリコは小さくて体力がない。囲まれたら死ぬしかないだろう。

 

「うん、ごめん死んだわ。」

 

「ロードくん諦めはやっ!?」

 

楼閣が苦言を呈してくるが、いやだってお前、無理なもんは無理だろ。

 

「ちょっとちょっと!波羅ちゃんはすごい頑張ってるよ!ほらほらあれ見て……」

 

「めぐめぐ!投下まだか!」

 

『うーんと……あっ!きたきた!!こっちこっち〜!あはは!奥の手出しちゃうぞ!』

 

楼閣が波羅の方を見て絶句する。理由は簡単、アイツ普通にガトりんMr.2出してやがった。

 

しかも三台も。

 

「ねぇロードくん、ガトりんって三台同時いけたっけ?」

 

「いや無理。」

 

「ということは?」

 

俺と楼閣はしばらく二人で固まった。ボケっとしてる楼閣の顔は珍しいと同時になんかウケる。

まぁ、向こうもそう思ってるだろうが。

 

それから楼閣は水を得た魚のように元気に叫び出す。

 

「ジャスくん【ユニバーサルブリッツ】!」

 

『言うと思って座標入力は完了済みだ!ってぇぇぇぇい!!』

 

赤い光が天から降り注ぐ。ただ、その光はいつものように五本ではなく、ただ一本のかなり太い光の柱だった。

 

カードキャラたちはその赤い光にのまれると同時に消えてなくなる。

 

『あまりばらけさせると威力が下がるからな。敵が消えた方から脱出するぞ!』

 

ジャスティスのその言葉の通り、その赤い光が消えた跡地にはドクのいた側にいた敵が綺麗にいなくなっていた。こうやって見るとマジでやべぇ威力してんな、【ユニバーサルブリッツ】

 

ジャスティスが吹き飛ばした方向に、なにやら作業をしているドクが見えた。

 

「ジャスくんナイス!みんな!こんなところさっさとおさらばしちゃうよ!」

 

そう言って楼閣がドクの方へと駆け出す。

 

が、ドクもそう甘くはないらしい。

 

『……っ!?楼閣下がれ!テヤァ!!』

 

【………………】

 

空から爆弾が降ってきた。俺たちが驚いて空を見上げるとそこには大きな飛行船、【フルーク・ツォイク】が浮かんでいた。

それも一隻や二隻ではない。かなりの数が俺たちを悠然と見下ろしていた。

 

大量の爆弾が投下され、ガトりんを壊し、俺たちに危害を加えようとする。

俺と楼閣はそれをなんとか躱し、波羅はイスタカが矢を放って迎撃してる……あの矢、威力やべぇな。

 

避けてる間に波羅たちとだいぶ分断されたが、なんとか躱しきった……!!

 

「陸空どっちも制圧してるぞってか?」

 

「あっっっぶないねぇ……!ジャスくん、助かったよ……」

 

『まだ終わっていないぞ!総員散れ!』

 

俺と楼閣が一息ついているとジャスティスがそう号令をかける。

その号令の直後、俺と楼閣とセナとジャスティスが固まっていた場所にレーザーが落ちる。

 

「っぶねぇな!」

 

「っわぁ!?」

 

『テヤァ!』

 

『チィッ!』

 

突然降ってきたレーザー、【オールレンジアタック】が俺たちを釘付けにする。

なんとか横っ跳びで避けはするもののジャスティスに声をかけられてなかったらやられてたかもな……

 

「ボス!」

 

『無事か!?』

 

「こっちは大丈夫!!まったく……息つく暇もないねぇ……」

 

波羅とイスタカが安否を訊ねてくる。その質問に楼閣は素早く答えた後、こころなしか上がった息でそう悪態をつく。そんな楼閣をジャスティスが窘める。

 

『楼閣……まったくお前は自分の危機に鈍すぎるぞ…………カロネを助けた日からは特にそうだ。』

 

「うーん……そうなのかねぇ?まぁ、肝に銘じておくよ。」

 

いつものように飄々とした様子で楼閣が言う。ジャスティスに心配をかけたくないんだろう。

まったく、コイツはいつまで経ってもむっつりだな。

 

別れていた波羅達と合流して冷静さは取り戻したものの、【フルーク】にかなり時間を使わされて、正面、ドク側の敵が完全復活してるし、他の敵ももうすぐ近くにいた。

 

「どうするよ、コレ?」

 

「今からもっかいはキツくないかい?」

 

「時間ねぇってのに……!!」

 

俺たちはいいアイデアを募るが、そんなものが出ていたならとっくにやっている。

ジリジリと敵が近づいてきて、もう猶予はほとんどない。

 

空中の【フルーク】と【オールレンジアタック】は同士討ちを警戒して攻撃を仕掛けて来ねぇし、もしかしてコレ、詰んでる?

 

そう俺が最後の覚悟を決めかけた時、アイツは動いた。

 

『畳み掛けるはワキンヤン!死を運ぶはマタンツォ!!』

 

イスタカだ。

 

イスタカは燼滅の矢を放ち正面の敵を一網打尽にする。

さらに天高く放たれた矢は【フルーク】の高度を超えていたらしく、【フルーク】をもスクラップにして敵陣へと降らせた。

押しつぶされたカードキャラ達が消えていく。

 

「イスタカさん?」

 

(ほう)けるな!!』

 

イスタカの行動に驚いた楼閣が声をかけるがイスタカはそれを一喝する。

 

『お前たちの成すべきことは、ここでこやつらと戯れることか!?違うだろう、お前たちのギルドメンバーに一喝を入れるためだろう!!』

 

イスタカは覚悟を決めた目で【カードキャラ】達を睨む。その目はこっちを見ていなかった。

 

『なら、行け!!私がこやつらを通しはせん!お前たちの背負う重荷を、今度は私が背負う番だ!!』

 

イスタカのその目は戦士の目だった。

イスタカは折れぬ誇りを持っていた。

 

だったら、

 

「すまん、任せる!」

 

「お願いね!」

 

「さっさと終わらせてやるよ!!」

 

俺たちがそれを信じないでどうする?

 

もう、振り返らない。

 

「行くぞ。あのバカ一発ぶん殴る!」

 

さぁ、最終決戦だ。




『数が多いな……』

イスタカは一人、三方からくる敵と対峙していた。
その数は倒しても倒しても減ることはなく、燼滅の矢でどうにか耐えられている程度でしかなかった。
それでもイスタカは止まるわけにはいかなかったのだ。

彼の戦士の矜持がそれを許さなかった。

『たたみかけるはワキンヤン、放つは我が燼滅の矢!』

もう何度目かも分からないほど放った燼滅の矢、終わりの見えない敵。遠くからはおそらくロード達のものであろう戦闘の音も聞こえてきている。ここが踏ん張りどころだろう。

それなのに、彼の矢はもう尽きてしまった。

『…………矢が尽きたか……すまないマピヤ』

『ピュイィィ……』

イスタカはもう限界だと伝えるようにマピヤにそう語りかける。マピヤもかなり元気がなくなっているのか、鳴き声には覇気が感じられなかった。

イスタカは心が折れたのかまっすぐ前を見据えていた視線を地に落とす。

その先にあったものに彼は驚いた。もう会えないと思っていたから、もうどこにもいないと思っていたから。

彼は目にしたのだ、彼の友人、イシュティニケの槍が地に刺さっているのを。

『……そうか、お前たちもここにいたのか。』

イスタカは小さく呟いた。

『なら、私も諦めてはいられないな。彼らに怒られてしまう。』

イスタカは微笑みながらその槍を拾う。

『いくぞ。あいつらに追いつかせはしない!!』

イスタカは気力を振り絞り、もう一度立ち上がる。
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