ダンガンロンパ 絶望クロスゲーム   作:ニタ

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プロローグ
プロローグ 1話 前編


充「な……なんだこれ……っ!」

 

 寝起きの第一声。

 普通起きてすぐに『なんだこれ?』などと言わない。というか、言える状況なんてあるとしたら、それはフィクション内の話だろう。

 つまり、今の状況が普通と言えなかった。

 状況を理解するのに、数分は掛かった。

 僕が目を覚ました時、見知らぬ毛布を被っていて少し戸惑った。しかし、すぐに平常を取り戻すが、起き上がろうとした瞬間、僕は毛布の事よりも戸惑った事態になった。

 僕が寝ていたのは自分の部屋でなく、見知らぬ部屋で寝ていた。

 正直寝起きだったため、これは夢だろうと思っていた。戸惑いはあったものの、覚醒はしていなかったので特に違和感なく立ち上がった。

 そして次に壁をひょいと見たとき、僕は震え上がった。さっきまでの戸惑いと違い、違和感を大いに感じていた。

 分厚い鉄板が壁に貼り付けられていた。

 その時ようやく目が覚めて、第一声を発したわけだ。

 なんだこれ?

 そこから僕は5分ぐらい立ち尽くして、ようやく動き出したのは、鉄板を確認する時だった。鉄板の厚さは10センチもあり、とても正常とは思えない。異質だった。

 僕はこの異質な状況を受け入れ難かった。けど、何もしないでは何も得られない。僕は部屋を探索するに至った。

 といっても、正直、収穫らしき収穫はなかった。部屋を隈なく、片っ端から探しまくったが、あったものといえば、『佐中(さなか) (みつる)』と名前が書かれたルームキーと、部屋の隅にある机の引き出しに工具があった。工具の使い道はよくわからなかったが、壁に貼ってあった張り紙に工具セットの事が書いてあった。要約すると『男子は工具セット。女子は裁縫セット』が常備されているらしい。それとシャワー室の事も書いてあった。女子のシャワー室は鍵が掛かるらしいが、男子の掛からないらしい。いや、中途半端だな。

 それが、僕が手に入れた収穫だ。何の役に立つのかさえも分からない。流石にここをこれ以上探索しても意味は無いだろう。

 僕は部屋から出て、強制的に周りを見渡した。

 いや、このいきなりだったので変な言い方で、語弊しかない。つまり、部屋から出てすぐ目の前には、僕と同じような扉が軒並み並んでいた。それの反射条件で見渡したのだ。

 とりあえず、左側にエントランスと(おぼ)しき所に出てみる事にした。

 道中特に何も無くまっすぐ道を進んでエントランスの真ん中に来てはみたが、意外に小奇麗で、清潔感があった。というのも、周りが真っ白な壁紙に包まれていたからそう見えただけかもしれない。

 エントランスを中心に食堂、浴場などがあった。他にも扉はあったが、遠目で調べていたのと、途中で調査を中断せざる終えない状況になったので、結局その時はわからなかった。

 しかし、その調査を中断せざる終えない状況は、僕を一息つかせてくれると同時に、息を止めるような出来事だった。

 

?「待って!」

 

 僕が少し歩こうとした瞬間、僕を呼び止める声が聞こえた。

 今まで人がいなかった状況なので、僕は反射条件で声がした方を振り向いた。そして、僕はその人物に驚愕した。

 

?「あの……」

 

 僕を呼び止めた声の主はいつの間にか近くに来ていた。何か声を掛けようとするが、少し戸惑っているようだった。人見知りな性格ではなく、語彙の欠如が原因らしいけど。

 その彼女の格好はというと、とある訓練兵団の制服を着こなし、腰に複雑そうな、アニメや漫画で見た、あの機械──立体起動装置に似ていた。しかも光沢があり、重そうだった。いや、実際重たいのだろう。

 そして黒い髪をし、東洋人顔をしている彼女の姿を、僕は幾度と無く見たことがあった。

 

ミ「……自己紹介すればいい? 私は、ミカサ・アッカーマン。友達と希望ヶ峰学園に遊びに来たのだけれど、居場所が分からず、困っている」

充「そ、そうなんだ……」

 

 驚愕した。驚愕のあまり絶句しかけたが、何とか声を出す事はできた。

 しかし、何故彼女がここに居るのか。ミカサ・アッカーマンは『進撃の巨人』というアニメもとい漫画の登場人物で、フィクションのキャラクターだった筈だ。なのに……何でだ? 何で僕の目の前に、ミカサ・アッカーマンが立っている?

 まるで疑問が疑問を呼ぶようで気味が悪かった。

 

ミ「私の友達……私と同じような恰好をしているのだけれど、見てない?」

充「い、いや……今起きたばかりで、何も状況が分かってないんだ……」

ミ「……? 貴方もなの?」

充「う……うん……」

 

 もう何を喋っていいのか分からない。混乱しすぎて、彼女の質問の意味さえも訳が分からないんだぜ!

 

ミ「……貴方の名前は、なんて言うの?」

充「佐中……充だよ……」

 

 何を喋っていいか分からな過ぎて、もう内気な少年みたいな感じだった。僕はそこまで内気になった覚えは無い。が、状況の把握が追いつかないというのか、理解不能になっていた。

 なので、僕はなるべくミカサの事を気にしないように、心掛けるようにした。これ以上頭が混乱すると、パンクしすぎもいいとこだった。

 

ミ「何だか顔色が悪い」

充「あ、ああ……別に何もないよ。ただ状況が飲み込めてないだけだから」

ミ「そう。でも、私もよく分かっていない。突然、変な部屋で目が覚めて、そしたら、貴方がいて……」

充「……なんだろうね、ここ」

 

 少し平静に落ち着いてきたので、僕は冷静に答えた。

 いや、本当に冷静に答えただけだ。頭が冷静である事実はない。頭が冷えて静かなんて、死んでしまうじゃないか。……いや、僕は一体何を言っているんだ?

 どうやら平静は取り戻しても、冷静にまでは行かなかった。

 そんな冷静ならぬ平静の脳内を必死に搾り出しながら、僕はミカサに訊きたいことを思い出す。

 

充「あのさ……さっき、希望ヶ峰学園に遊びに来たって言ってたけど……」

 

 僕の記憶の限りだと、確か希望ヶ峰学園は部外者を容易く入れるような場所じゃ無い筈だ。警備も厚く硬く万全を期し、百獣の王を前に警備員は微動だにせず追い払ったと聞くほどだ。……いや、嘘っぽいにも程があるけど、信憑性は皆無だけど、しかしながらそんな噂が流れる程という事は、希望ヶ峰学園には容易に侵入する事や、そもそも出入りする事さえ難しいという事だ。

 それに遊びに来たと言う理由で入らせてくれるとは、正直到底思えないのだ。天下の希望ヶ峰学園が、そんな簡単なわけが無い。

 と思ってはいたが、それは簡単に覆された。

 

ミ「希望ヶ峰学園からの招待状が届いていた。それで、遊びに来た」

 

 そういうと、ミカサは内ポケットからクシャクシャになった紙を取り出す。

 そこには書かれていたのは、こんな文面だった。

 

『ミカサ・アッカーマン殿   今回は希望ヶ峰学園への旅行切符を手に取って頂き、誠に有難う御座います。アッカーマン殿の待遇としましては、我が希望ヶ峰学園全力を持って、おもてなしする所存です。どうぞ、4月4日に希望ヶ峰学園へのお越しをお待ちしております。   学園長 ○○』

 

 呆気なく見せられて僕は驚いたが、しかし、僕が驚いたのは、ある言葉だった。

 

充「()()()()()()()()()()()()……?」

 

 どういうことだ? 希望ヶ峰学園はいつから旅行会社兼旅行先になったんだ?

 

ミ「訓練兵の友達と会話していた時、ぶっきら棒な子から『こんなの落ちてたぞ』って渡されたの」

充「……心当たりとかは?」

ミ「ない。その子や他の子にも訊いてみたけど、ちんぷんかんぷんだった」

 

 ちんぷんかんぷんって……えらく可愛らしい言い方だな。萌えてしまうじゃないか。と、妄想に(ふけ)っている場合ではない。

 

充「雑誌の懸賞とか、夢遊病でいつの間にか申請書を送っていたとかは?」

ミ「いや、私は夢遊病ではない上、申請書を書いていたとしても覚えている訳が無い。しかし、それ以外では一切、本当に心当たりがない」

充「よく学園に来たいと思ったね……」

ミ「エレンが行きたいって言ったから」

 

 結局はミカサはエレンなのか……罪作りな男だな、エレンは…………あれ? でもそれって……

 

充「その、エレンも来ていたり……?」

ミ「ええ。同じく招待状を貰った」

 

 何だこの気持ちは。凄く楽しくなってきたぞ!

 しかし、それは今は押さえておかないといけない。変にテンション揚げたら、変な奴に思われかねない。

 というか、この間で僕はどれだけ感情の起伏が激しいんだ。

 

ミ「……そういえば、どうして学園長の名前が、消えているんだろう」

充「あ、そういえばそうだよね」

 

 あの○○の意味を言うのを忘れていたが、あれはつまり、読めないということだ。

 漢字が読めない、というわけでなく、物理的に読めなくなっていた。まるで、分からない様にするために、わざと消したかのように擦られていた。

 

充「まあ、学園長の名前なんて考えても分からないし、気にする必要も無いと思うよ」

ミ「でも、私が始め──何でもない」

充「?」

 

 何かを言いかけていたが、途中で言葉をやめた。どうしたんだろう?

 

ミ「そういえば、私達以外の人に中々出会わない」

充「そうだよね。あの部屋の並んだ廊下も、結構数があったし、誰かと出くわしてもおかしくは無いとおも──」

?「おーい!」

 

 すると、突如その廊下の方から声が上がった。その声の主は除々に近づいてきた。

 恰好は、黒い色のパーカーとブルーのジーパンという、何だか見た目からして凄く暗そうなイメージだった。

 しかし、その声の主は、暗そうなイメージとはかけ離れた、由緒ある、鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼に襲われた、ある少年を思い浮かんだ。

 

?「あの、あなた達は……この建物の関係者だったりする?」

 

 その振る舞いは、明るい感じは、確かにあの少年に似ていた。酷似と言って良いほど。いや、それは彼に失礼だ。

 

ミ「違うけど……貴方は?」

暦「ああ。僕は阿良々木暦。普通のどこにでもいる高校生だよ」

 

 そんな自己紹介と声質と身長からして、確実に彼は阿良々木暦だった。

 

暦「……少し不名誉な事を言われた気がするけど、今の際は置いといて……、じゃああんた達もあの部屋訳の分からない部屋から目が覚めたのか?」

充「そうだよ……あの、僕は佐中充って言うんだ」

 

 タイミングはおかしかったけど、今言わないと、多分僕の名前を知らぬまま話が進んでしまうんじゃないか、という観念に囚われて、僕は自己紹介をした。

 それに続くように、ミカサも自己紹介をする。

 

ミ「私はミカサ・アッカーマン。友達と逸れてしまって探しているの。心当たりとかない?」

暦「ちょちょ、待って。そんないきなり言われても整理できないって」

ミ「ごめんなさい……」

 

 ミカサは悲しそうな表情を浮かべ、肩を落としていた。

 

暦「あ、ごめん……そんなつもりは……そう落ち込まないで」

充「…………」

 

 阿良々木君は、自分より何センチか高い身長の女性に顔を上げながら宥めていた。

 少しおかしな絵で笑いそうになったけど。

 

暦「それでさ、ミカサさん……だっけ」

ミ「うん」

暦「僕はさっき起きたばかりで、正直誰とも会ってなくて……」

ミ「そう……チビのくせに使えない」

暦「なんだとぅ!? どういう意味だこの野郎!」

 

 いや、そのまんまの意味だと思うけど。

 

暦「僕はチビじゃない! 身長が小さいだけだ!」

ミ「それをチビと言うんだと思う」

暦「揚げた足を取るな!」

ミ「自覚できているなら揚げなければいい」

暦「言った瞬間にあ、しまったって思ったんだよ!」

ミ「間抜け」

暦「言うなぁぁ!」

 

 そんな寸劇はそこで終了した。

 

ミ「……今のは冗談。ごめんなさい。思った事を口にして」

暦「ああ。反省してくれるのは嬉しいが、一言多いな」

ミ「混乱してて……少し気持ちが安らいだ。貴方のおかげ」

暦「またもや嬉しい事を言ってくれてるけど、前の文脈からして完全に踏み台にされた感があるんだけど……」

 

 延長戦が続くかと思われた寸劇だが、僕はなにやら、食堂から匂いが漂ってくるのがわかって、寸劇に水を指す事になった。

 

充「ねぇ……何か、カレーの匂いがしない?」

暦「カレー? ……本当だ。微かに匂うな……あの部屋からか?」

 

 と、阿良々木君は食堂の方へ目を向けて言った。

 

ミ「カレー……? カレーって何?」

暦「ん? カレー知らないのか?」

ミ「知らない。聞いたことの無い言葉」

充「カレーってのはね、色んな具材を入れて煮込んだ、辛い食べ物だよ」

暦「特に二日経ったカレーは絶妙な美味さを引き出すから、二日目のカレーがやっぱりお勧めだな」

ミ「是非とも食べてみたい……」

 

 目がキラキラしていた。今まで見たことの無い表情だ。いや、見たことのある表情があったらあったで怖いけどさ。

 でも、アニメで知るミカサより凄く人間味が出ていて、凄く新鮮でもあった。

 

充「食堂へ行ってみる?」

 

 僕は軽い気持ちで言ってみたが、ミカサはそれ以上の光力で目が輝き、猛獣とも思える程の鋭く、嬉しそうな眼光を僕に向けながらこう言った。

 

ミ「行く! 今すぐ行く!」

 

 こんなに食い意地張った子だったのか、ミカサ……?

 すると、食堂の方からこっちまで届くぐらいの張った声が響いた。

 

?「おーい! アルミーン! じゃが芋切ってくれ!」

?「うーん! 分かったよー!」

ミ「え……アルミン……?」

 

 男の声は、アルミンと名前を呼び仕事をさせていた。

 そしてアルミンの名前と声を聞いて、ミカサ少し戸惑っているが、仄かに笑みも零れていた。

 

暦「知り合い……でもいるのか?」

ミ「分からない……でも、名前と声が似ていた。恐らく私の幼馴染で間違いない」

暦「じゃあ行ってみようぜ。どうやら、他の人もいるみたいだし」

充「そうだね。じゃあミカサ。アルミンを見つけたからって暴れないようにね。自制を聞かせて、なるべく冷静に動こう。あんまりみんなが困るような事態は避けたいからね」

ミ「分かった。善処する」

暦「何だか……えらく手懐けてるな……」

 

 そんな言葉を無視して、僕らは食堂へ入っていった。

 ぺったんこ。ぺったんこ。ぺったんこ。ぺったんこ。ぺったんこ。ぺったんこ。ぺったんこ。ぺったんこ。ぺったんこ。ぺったんこ。

 ぺったんこ。

 そんな効果音が鳴ってる感じに、その人は餅つきをしていた。いや、していたけれど、何でしていたかは分からない。

 それを解明するには、食堂に入る瞬間を描写したほうが分かるかもしれない。

 僕らが食堂へ入った瞬間、またやアルミンに声を掛けていた男の声が上がった。

 

?「おいフレディ! 餅つきもいいけど、水も小まめに入れろ!」

 

 そんな怒鳴り声が響いたのは、食堂の奥にある厨房からだった。

 

暦「……あそこで何かしてるらしいな」

ミ「アルミンも、そこにいる」

充「で、でも……仕事中らしいし、邪魔になるかも……」

暦「こんな状況だぞ? 話を聞いた方が情報は得られる。今四の五の言ってる場合じゃない」

ミ「その通り。私たちは立ち向かうべきだ」

暦「いや、そこまで大層なもんでも無いと思うが……」

 

 僕らは各々決意を胸に、厨房へと入っていった。

 そこには、焜炉(こんろ)でフライパンを持ちながら料理をしているツンツン頭の男と、台所に金髪の少年が包丁をトントン立たせながらじゃが芋を感じの良い大きさに切っていた。

 そして、台所から離れた、冷蔵庫の手前にウスを置いて(きね)で餅つきをしている大男がいた。

 大男は僕らが居る事に気付いたのか、ふと、僕らの方へ視線を向けた。その後、僕らに会釈をして、再び餅つきを開始した。

 僕らはその大男を見た瞬間、こう思った。

 

充・暦・ミ「(フ──フレディだッ!)」

 

 僕はもう色々驚いた。何に驚いたかって、フレディということに驚いた。

 もう完全にフレディだった。フレディ以外でも何者でもなかった。夢のフレディだった。フレディ、参ッ! 上ッ!! だった。

 畏敬のフレディは、そこにいた。

 いや、そうじゃない! 僕らはフレディを探しに来たんじゃない!

 と僕らは何なのかも不明な葛藤に頭を巡らせている中、一人だけおかしな行動を取った。というと、嫌な言い方になるけど、その行動は、実に当たり前の行動だ。

 当然の行動。

 

ミ「アルミンッ!」

 

 ミカサは声を張り上げるて、台所の金髪の少年──ミカサと同じ制服を纏い、包丁片手に持っていた少年は呼ばれた事に気付き、包丁をまな板に置き振り向いた。

 少年は──アルミンは、一瞬何が起きたか分からず、固まっていた。

 ミカサはアルミンの肩に手を置いて、もう一度話しかける。

 

ミ「アルミン……無事だった?」

ア「み、ミカサ……? ミカサじゃないか! 僕は大丈夫だよ!」

 

 二人の顔には、朗らかな笑顔が映っていた。

 

ア「ミカサ……ミカサこそ、大丈夫だった?」

ミ「私は平気。ここで何をしていたの?」

ア「ああ。実は、そこの上条さんと料理をしていてね」

 

 そう言って、ツンツン頭の人を手で示した。

 それに気付いたツンツン頭──上条さんはフライパンから手を離し、火を止めてから、アルミンらの方へ向く。

 

上「よっす。その子はアルミンの友達か?」

ア「うん。ミカサって言うんだ」

ミ「始めまして。ミカサ・アッカーマンです」

上「こちらこそ。俺は上条当麻だ」

 

 そういってから、ミカサは上条さんの頭へ目をやる──というより、髪の毛に目をやっていた。

 

ミ「……トゲトゲだ」

上「…………」

 

 上条さんの顔が少し引きつった。

 

ミ「アルミン。大丈夫だった? 本当に何もない?」

上「流石の上条さんも怒っちゃいますよ!?」

 

 あれはわざとなのか。それとも素なのか。どちらにしても、上条さんの怒る道は変わらない。

 

上「ったく……」

暦「すみません……うちのバカが暴走してしまって……あ、僕は阿良々木暦です」

充「どうしても暴走する癖があって、手が付けられない猛獣なんです……ついでに僕の名前は佐中充です」

ミ「ついでに私の特技は肉を削ぎ落とす事です」

ア「お、落ち着いてミカサ! 剣を了って!」

 

 冗談を冗談と受け止めてくれなかったようで、立体起動装置からアルミンが剣と言っていた超硬質ブレードを抜き出し、僕らに今にも襲い掛かろうとしていたが、アルミンが必死で止めていた。

 いや、他人事みたいに言っているけど、僕らが悪いんだけどね。

 しかし、どう収束つけようか、僕らは思案していると、フレディがミカサとアルミンの間に立ち入った。

 そこで何が起きているか、さっぱり分からない。だけど少なくともミカサは落ち着いていた。暴れるような音はしなかった。

 そしてフレディがそこから去り、冷蔵庫の前に置いてあった座布団に座る。

 …………ん?

 ここに居る全員が首を傾げた事だろう。何故、座布団がここに? ではなく。何故、ここに茶道セットが置いてあるに疑問を持った筈だ。

 そう。茶道セットが何故か準備されていた。

 (なつめ)茶筅(ちゃせん)茶杓(ちゃしゃく)、茶碗に、僕からの位置では見えなかったが、茶巾(ちゃきん)もあった。

 そしてそれ全部が御盆の上に乗っており、奥には鉄瓶もあった。

 僕は中学校の頃、茶道をやっていたから道具の名称も、これから何をしようとしているかも分かる。

 本格的すぎる……

 いやいや、何でそこまでの準備を、いつの間に仕上げたんだ? そして、どこから道具を用意した。そしてよく見つけたな。どうして今やるんだ。一体何で茶道を始めようとするんだ。

 そんな疑念が蔓延り混乱しかけていたが、そんな事もお構いなしにフレディは始めるが、工程を説明すると結構長くなるので割愛。

 なんだかんだで点て終えたお茶をフレディは自分で飲み、そして御盆に戻す。

 

充・ア・ミ・上・暦「…………」

 

 フレディは僕らの視線に気付いて、軽く会釈をしてから、茶筅通しやら何やらを終えて、片付けに入った。

 

充・ア・ミ・上・暦「(礼儀正しい……!)」

 

 僕らは終始驚いていたが、いつまでも驚いてはいられなかったので、とりあえず話を戻した。

 

充「あー、ごめんねミカサ。変な事言っちゃって……」

暦「僕も悪かった。謝るよ」

ミ「大丈夫。気にしない。もう冗談だとわかってるから」

 

 どうやらさっきまでは気付いてなかったらしい。

 

暦「それで上条さん達は、どうしてここで料理なんかを?」

上「ああ……実は廊下にあった個室で目が覚めてな。探索しようと思って外に出てみたら、フレディとアルミンに会ってさ、状況を語り合っている時に、アルミンが『他に人が居た時のために料理で元気付けよう』って話してな、それで厨房に来てたんだ」

ミ「アルミンは優しい」

ア「そ、そんなことないよ。僕は提案しただけだしさ……、料理は上条君にまかせっきりだし、僕は何もしてないよ」

上「謙虚だな、アルミンは」

ミ「提案する事に、意味がある」

 

 そんなフォローがアルミンにまぶされる。

 

充「カレーを作っていたのは、そういう理由なのか」

上「ああ。食材とかも充実してるっぽいし、十分作れるからな」

暦「そういえば、上条さん。僕ら以外に誰か見かけたりとかしませんでした?」

上「ん……? いや、俺は見てないな」

ア「僕もかな。恐らく、フレディも一緒だと思うよ」

充「え、どうしてそんな事が分かるの?」

ア「彼は気が利く性格だからね」

 

 アルミンがそういうと、僕らはフレディを見た。フレディはあたふたしたが、何かを隠すかのように餅つきを再開した。

 

ア「もう、シャイだな、フレディは」

上「アルミンとフレディの間に何があったんだ……?」

ア「もしかして、今の話からすると、君達も、僕達以外であった人はいないってこと?」

充「うん。そうなるかな」

ア「そっか……あ、それじゃあさ、エントランスの門の向こう側はどうだろう?」

暦「ああ。確かにまだ行ってはいなかったな」

ミ「アルミンの言うことに間違いはない」

ア「そう言われると気恥ずかしいけど……うん。可能性はあると思うよ」

暦「そうか。それじゃ門の向こう側へ行ってみるか」

上「俺も行くぞ」

暦「いや、上条さんはここでカレーを作っといてください。僕らが探しに行くんで」

上「そうか? ならありがたいけど。あー、あと敬語はやめてくれ。何となく嫌なんだ」

暦「わかった。これからヨロシク。かみやん」

上「いや、ラフになり過ぎる気もするけど……少し驚きです」

 

 そして僕と阿良々木君とミカサは厨房を後にした。

 

充「皆の話を聞いているとさ、この施設の関係者って、全然見当たらないよね」

暦「まあ、深く探して無いのが理由かもしれないけれど……それに、いやにこの施設って整頓されてるよな。個室にしても、エントランスにしても」

ミ「少し前まで誰かがいたのかもしれない」

充「……まあ、今考えても仕方ないか。向こう側に行けば分かるかもしれない」

暦「そうだな。それじゃ行くか」

ミ「待っててエレン。絶対に見つけるから」

 

 僕らは食堂を後にして、エントランスの門扉を開けて、次なるステージへと進んだ。

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