僕らは体育館前に来ていた。
そこには、賞状や置物などがあり、高価なものだとすぐに判断できた。
その先のドアが体育館の入り口らしく、先ほど体育館前にいたメカ沢君が教えてくれた。
充「それじゃ、行くよ……」
僕は声を出してからドアの取っ手に手をかけ、少々重たい扉を開ける。
開けたら、そこには先に来ていた人たちと、どこからどう見ても、どこにでもある、普通の体育館だった。
上「ほ、本当に大丈夫なのか……?」
?「うぷぷぷぷ! 皆よく集まってくれましたー!」
全員に向けて発せられた、モニターの時と同じ声の主は、舞台の真ん中の演台から聞こえた。
みんな一斉に演台の方へ見ると、突然、演台から何かが飛び出す。
それは、シロクロのクマのヌイグルミだった。
メ「な、なんだありゃぁ!?」
上「いきなりなんだよ!?」
皆動揺を隠せずどよめき始める。
?「うぷぷ。皆戸惑いすぎだよ」
そんな声が、そのヌイグルミから発せられる。
暦「ぬ、ヌイグルミが喋ったぁ!?」
?「失礼な! 僕はヌイグルミじゃないぞ!」
そう言うとヌイグルミは立ち上がる。
エ「な……あいつ立ったぞ!」
ミ「エレン落ち着いて。あれは生き物じゃない」
?「生物としての否定!? ガーン!」
ヌイグルミは肩を落とす。
?「もう……現実に見た想像以上のモノを見るとすぐに現実逃避なんて……まったく、ユニークな人の集まりだよ……」
魔「お前も大概ユニークだと思うぜ」
?「わかったよ。自己紹介でしょ? 君達は好きそうだもんね、自己紹介!」
そしてヌイグルミは右足を少し斜めにして、右腕をまげて腰に当てる。
モ「ボクはモノクマ! この学園の……学園長なのだぁ!」
霊「学園長?」
モ「そ。学園長。希望ヶ峰学園の一番エラい人だよ。えへん!」
そう言うと、そのモノクマと言われる生物はふんぞり返る。
そんな中、冷静に霊夢は対応する。
霊「あんたの目的はなんなの?」
モ「んもう! そんな急かさないでよ。ボクだって順を追って説明しさ」
霊「じゃあさっさと説明してよ。めんどくさいのはお断りしたいの」
モ「もー、淡白な子だな……では、これから入学式を執り行いたいと思います。オマエラ、きをつけ! れい! おはようございます!」
黒・翼「おはようございます!」
暦「いや、律儀に礼をしなくても……」
モ「それでは、これからモノクマ学園長より、学園の説明を致します!」
モノクマは演台から降りて、舞台の上に立ち、歩き始める。
モ「オマエラ、入学おめでとうございます。君達は光栄なことに希望ヶ峰学園に選ばれた生徒達なのです」
ア「え、学園に選ばれたって……?」
モ「もう……質問すると説明が滞っちゃうでしょ! でも生徒の為に疑問を解いて上げるのが学園長の役目だからね。教えてあげるよ。
君達は希望ヶ峰学園からの手紙を貰ったはずだよね」
充「え、僕貰ってないけど……」
モ「君は忘れてたの。ごめんに!」
充「え、ちょ──」
モ「でね、その用紙は学園の入学届けであったんだ」
黒「そうだったのか。だから入学届けを書いた覚えが無かったのか……」
モ「そういうこと。君達全員は、未来の希望に選ばれた生徒なんだ」
ミ「でも、私達はそんな旨の説明なかった」
モ「それも謝罪しておかないとね。入学届けとして送ったんだけど、間違えて友達用のを送っちゃったんだ!」
そうするとモノクマは歩みをやめて、僕たちに指を指す。
モ「そういう訳で、そんな君達は学園の生徒であり、君達はここで一生を共同生活してもらうことになるのです!」
暦「え、ちょ……え?」
いきなりの宣言に戸惑う。え、一生ここで共同生活……?
メ「どういうことだ、おい……調子乗ってんじゃねぇぞゴルァ!」
モ「うぷぷ……それが学園の方針だからね。君達が来たということは、それを認めたということなんだよ? それに歯向かうのはおかしいと思うなぁ」
メ「こんのやろぅ……!」
そうすると、メカ沢君は足を一つ踏み入れたと思った矢先、フレディが止めに入った。
メ「…………お前がそう言うなら、わかったよ……」
どうやら落ち着いたみたいだったが、一体メカ沢君とフレディの間に何があったのかは、誰もわからないが、必死の止めだったのだろうとは、わかった。
モ「ふぅ……収まったようだね。それじゃ話を続けるけど……何を話してたんだっけ?」
霊「一生ここで暮らせって言ったのよ」
モ「そうだったね。君達には、この学園で一生暮らしてもらいます! これは世界の希望の為でもあるのです。しかし、そんな生活は嫌だという人もいるでしょう。そんな人の為に、学園長自らが新たなルールを設けました!」
ア「ルール……?」
モ「その新たなルールとは……
エ「なんだよその規則ってのは!」
モ「殺すことだよ」
エ「え……」
モノクマの言葉は、皆を一瞬で黙らすことになった。
その自然な口調から出された、殺すという、ワード。
モ「殴殺撲殺刺殺絞殺惨殺銃殺暗殺撲殺虐殺毒殺射殺圧殺悩殺……殺し方は問いません! とにかく殺せばいいのです!」
上「な、なにを言っているんだ……?」
モ「そのまんまだよ。人を殺せば良いんだよ。そしたら君達は晴れて卒業。君達は晴れて希望ヶ峰学園の生徒として社会に進出するんだ!」
そう言うと、モノクマの真横が突如爆発する。
魔「殺す殺すって、物騒なやつだな。霊夢だってそんなこと言わないぜ?」
霊「どういう意味よ、それ」
暦「な、なんだ一体……?」
魔「私の魔法だよ。なんたって私は、普通の魔法使いだからな」
そんな頓珍漢なことを言い出す。は? 魔法使い? もう何が何だかわからない。頭が付いていけない。何なんだ……何なんだこれ……?
モ「うぷぷ……流石普通の魔法使いさんだね。僕も帽子を脱ぐ程尊敬するよ」
魔「私は帽子は脱がないぜ。なんせ尊敬してないからな」
モ「でも霧雨さん。無闇にボクに攻撃するのは校則違反だよ?」
魔「私はルールに縛られない人間だぜ?」
モ「のんのん! ボクが言いたいのは、校則違反を犯すと、それ相応の体罰を与えるってことだよ!」
ドゴォォォォォン!!
そんな爆発音が、魔理沙の真後ろから鳴り響く。
魔「うわぁ、なんだぁ!?」
火薬と焦げ臭いにおいが充満し始める。
僕は生まれて初めて爆発なんてものを体験した。そんなの、テレビだけでしか見たことがなかったから。
モ「どう? 僕の爆発の威力は……興奮して、ドキドキしちゃうよねぇ……ハァハァ」
エ「な、なんなんだよ今のは……」
暦「今ので殺そうとしたのか……」
モ「僕が体罰を下すのは、あくまで校則違反者だけだよ。今のは予行ってやつだよ」
暦「それで怪我なんかしたらどうすんだよッ!」
モ「は? 何を言ってるの? 校則違反者が罰則を受けるのは当然のことだよ」
暦「だからって、爆発までするのかよ!」
モ「だから予行だって言ってるじゃないか。聞き分けが悪いなぁ、阿良々木君は……」
暦「……くッ!」
阿良々木君は悔しそうな顔で一歩引き下がる。
モ「というわけで、話を戻すと、もし校則違反を犯せば、先ほどとは違い、確実に当てますので、気をつけてくださいね。そして皆さんお待ちかね、電子生徒手帳ー!」
充「電子生徒手帳……?」
モ「この手帳、すごい優れものでね、なんと、10トンまでならどんなに負荷を掛けようが絶対壊れません! しかも完全防水という、今の時代ではとても珍しい機械なのです! ここにさっき言っていた校則と、そのほかの校則が載ってるから、ちゃんと目を通すようにね。ルールを知らなかったってのは許さないからね。そんなのが許されるのは、小学生までだよ!」
そういうとモノクマは、皆に一人ずつ、電子生徒手帳を配る。
配り終えると、モノクマは舞台の上に再び登る。
モ「ちゃんと皆に配ったからね。それは、学園を過す上で必需品となるので、決してなくさないように。なくしても、再発行するのに時間がかかるからね。そして最後に──校則違反は絶対に許されざる行為はしないようにね。社会でも法律がないと平和は成立しないのと一緒! だから、校則を破ったものには厳重な罰を与えることになるからね。それじゃ、入学式をこれにて終了いたします!」
そういうとモノクマは演台の奥に入って、それ以降、モノクマは姿を見せなかった。
魔「……なんだって言うんだ、ありゃ……」
霊「わからないわ。私たちには到底理解できない者ではあるんだろうけど」
エ「一生……ここで暮らせって言ってたな……」
ア「そして、卒業したくば誰かを殺すこと……」
上「そ、そんな馬鹿げた話があるか! そんな奇怪なことをするやつなんて……」
十「嘘か本当かの話ではない。それを信じる奴がいるかどうかだ……」
僕らはその言葉に、背筋を凍らした。
モノクマが言っていた、本当の意味について……。
僕らはこの学園で生活していかなければならない。しかし、この生活が嫌ならば、殺人をしろと言った。その殺人を、誰か犯すのだろうか。
みんなは全員を警戒し合い、中には敵意さえも感じ取れた。
僕らは、互いに、一人一人見渡した。
これから起きるんじゃないか、そんな未来予想図を。
ダンガンロンパ プロローグ「絶望ミステリー」