ひぐらしのなく頃に クロスSS 〜人呼ばし編〜 作:がとーショコラ
風都。
その町はかつて、巨大な悪の組織によってガイアメモリと呼ばれる物が撒かれ、涙を流していた。
しかし、その涙を拭う一つのスカーフを持ち、その悪に立ち向かった戦士がいた。
彼はその風貌から、風都市民にこう呼ばれていた。
『仮面ライダー』
ひぐらしのなく頃に クロスSS
〜人呼ばし編〜
「…………何じゃこりゃぁぁぁぁ! ?」
俺、左翔太郎が猫探しという依頼を終え、事務所に帰って来た時の第一声がこれだ。
何故こんな声をあげたかって?
ハードボイルドにキマっていたはずの建物内がまるで殺人現場のように至る所に赤黒い血糊のような物がくっついていたからさ。
そりゃ、こんなもの見たら誰だって叫ぶ。
「やぁ、翔太郎。遅かったね」
呑気な声と共に部屋の奥から俺の相棒、フィリップが出てきた。
「おい、フィリップ!何だよコレ!?メチャクチャじゃねーか!」
「済まないね翔太郎。だが、君は知っているかい!?この本を!!」
そう言って相棒はある本を俺に見せてきた。
『ひぐらしのなく頃に』と書かれた表紙を目にし、俺は今朝見た広告を思い出した。
「『ひぐらしのなく頃に』ってお前、実際に起こった事件を基に作られたっていう」
「そうさ!僕も然程興味は唆られなかったんだけど、亜樹ちゃんに頼まれて買ってきたんだ。簡単に解けると思ったんだが、謎が全然解けない!こんなにゾクゾクする事は久しぶりだ!」
「で、それとこの状況。何が関係あるんだ?」
「簡単さ。クライマックスのシーンにある殺人現場を再現してみたんだ。そうすれば何か分かると思ってね」
「成る程って、アホかーーーー!んな事して分かるかーーーー!」
突っ込む俺に対しフィリップはまだ何かを考えているようで意に介さない。
「このシーンで前原圭一は轢かれそうになる、と証言している。これが事実だとすれば彼が狙われてるのは明白だな………」
そんな事を呟きながらフィリップは黒マジックを手に持って壁に何かを書き出し始めた。
それで漸く気付いたが、事務所の壁のそこら中に何かしら書き殴った形跡があり、血糊の現場を含めてかなりカオスな状況になっている事が分かった。
「あのなぁフィリップ。そんなに分からないなら『地球の本棚』に行って答えを見ればいいだろ」
そう諭す俺に対し、フィリップは呆れたように
「いいかい、翔太郎。ミステリーと言うものは自分で答えを見つけるからこそ意味があるんだ。それを答えを最初から見るなんて」
と言った。
「おいフィリップ。それってまさか」
「亜樹ちゃんの受け売りさ」
「亜樹子ぉぉぉぉぉぉぉ!!」
怒りの頂点に達した俺の声が事務所内に虚しく響く。
亜樹子を探してウロウロするが姿は見当たらなかった。だが、俺の机の上に一枚、不自然に置かれた紙を見つけた。
『翔太郎君へ
ちょっとした用事でしばらく大阪に帰るね!
いい?フィリップ君が変な物にハマらないようにしっかり見ててよ?事務所を汚したらダメだからね!
可愛くて、美人で、「大人」な女性で、竜君のお嫁さんの亜樹子より♡』
「……………亜樹子ぉぉぉぉぉぉぉ!!」
再び俺の叫び声が虚しく事務所内に響いた。
その日の夜。
フィリップはもう推理に飽きたのか早々に寝てしまった。
悲惨な事務所内を片付け終えた俺はというと………。
「うぅ。レナちゃんって娘、スッゲーいい娘なのにこんな過去があったのか………。苦労したんだな………」
「うおっ!?圭一の奴、いくら怖いからって手料理振る舞おうとする女の子にその対応は無いだろ。ハードボイルドじゃねぇなぁ。……豚骨しょうが味って美味しいのか?今度食ってみよ」
「やめろ圭一!レナちゃんと魅音ちゃんにそんなことするな!ヤメロォぉぉぉぉぉぉぉ!………ってもう朝かよ!!」
相棒から借りた本にドップリとハマり、朝まで読み耽っていた。
「にしても、この雛見沢って所、どっかで聞いた事あるんだよなぁ」
それからその日は特に依頼もなく、マッタリした1日を過ごしていた。
「なあ、フィリップ。雛見沢ってどっかで聞いた事あるか?」
「あの本以外でかい?何度もニュースでやってたじゃないか」
「ああ。それとは別な何処かで聞いた事あるんだよなぁ」
「事件が起こるよりも前にかい?」
「ああ。何だったかなぁ」
「となると、君が鳴海荘吉の弟子になる前に聞いたか、それとも弟子の時に聞いたかで変わってくると思うけど
「ん、ちょっと待てよフィリップ。今何てった?」
「だから、君が鳴海荘吉の弟子になる前か後かによって変わるって」
「それだ」
「え?」
「そうだ、おやっさんから聞いたんだ。雛見沢ってワード」
その時、俺の脳内には、当時の光景が思い浮かんでいた。
それは、おやっさんと依頼達成の記念に外食に行った時だった。
珍しくおやっさんが自分の過去の事を話してくれた。
それも、失敗した過去を。
会話の内容はこうだ。
『翔太郎。俺は過去にたった一度だけ、依頼を達成できなかった事がある。』
『おやっさんが?』
『雛見沢村、知ってるか?』
『確か、毒ガスが充満して滅んだ村でしたよね?よくテレビでやってた………』
『俺はな、あの事件が起こる3日前、依頼のついでに雛見沢に行ったんだ』
『えぇ!マジっすか!?』
『マジだ。その時に一人の女の子に出会った。古手梨花って言ってな、綺麗な長髪の少女だったよ』
『はぁ』
『その娘がな、こう言ったんだ。未来が分かる、自分はもうすぐ死ぬんだってな』
『え、自分が死ぬ未来が分かるって』
『普通は簡単には信じないだろう?俺もそうだった。彼女にそんな事を簡単に言ってはいけないって諭した。だが、彼女は次の瞬間、とても悲しそうな、絶望したような目をして何処かへ行ってしまった。そして3日後、あの事件が起きた』
『そんな………』
『翔太郎、俺はな……………………………なんだ。その時は…………』
「いけね、肝心なところが思い出せねぇ」
だが、おやっさんなら何かしら資料を遺してくれてるはずだ。
俺の勘がそう訴えていた。
そこで過去の依頼の資料を漁りに漁った。
そして、1時間が過ぎた頃
「…………見つけた。これがおやっさんが雛見沢について調べた資料」
その表紙には『HINAMIZAWA REPORT』と書かれていた。
「フィリップ、『地球の本棚』に入ってくれ」
資料を一通り読み終えた俺は地下に戻っていたフィリップに声をかけた。
「いいけど、どうしたんだい翔太郎?」
「雛見沢の事件についてもっと詳しく知りたい。これは………」
「これは?」
「おやっさんが俺に、いや、俺たちに遺した依頼だ」
「………分かった。検索を始めよう」
そう言ってフィリップは『地球の本棚』へと入っていった。
『知りたい項目は“雛見沢事件の真実”。キーワードは』
「一つ目は“雛見沢”、二つ目は“オヤシロ様”、三つ目は“鬼隠し”」
『“hinamizawa”と“oyashirosama”と“onikakushi”だけでは絞り込めない。他に何か無いのかい?』
「………………」
『翔太郎?』
「追加キーワードは、“東京”だ」
『“tokyo”………1冊に絞れた。けど、これは…………』
「ん?どうした?フィリップ」
『この本、読めないんだ。何か鍵が掛かっている。ダメだ、どうしても開かない。翔太郎、他にキーワードは無いのかい?』
「…………いや、無い」
『そんな』
フィリップはそう言うと、地球の本棚から帰ってきた。
「これじゃあ気になって夜も眠れない!」
「ん?でもお前、昨日はさっさと寝たじゃないか」
「昨日?あぁ、何だか凄く眠くてね。仕方なく寝たんだ」
「へぇ、珍しいな。一度のめり込んだら簡単には戻ってこないお前がそうなるなんて」
「で、どうするんだい?キーワードが分からなきゃ事件の真相が分からないよ?」
それを聞いた俺は、ある決断をした。
「分かった。それじゃあ俺が今から雛見沢に行ってくる。最後のキーワードが無いか、探してくる」
「本気かい翔太郎?風都から碌に出たことの無い君が行くのは危険だと思うが」
「でもそうしなきゃ分からないだろ?なぁに、死ぬ訳じゃないんだ。危なかったらさっさと帰ってくるさ。あ、あとガジェット全部借りてくぜ。何があるか分かんねーからな」
その決断が、俺の人生にとてつもなく大きな影響を与えた。
後に、フィリップや亜樹子、照井やサンタちゃんにウォッチャマン、クイーンにエリザベス、マッキーや刃さんなど、風都の皆と永遠に別れる事を覚悟しなければならなくなる日が来るなんて、その時の俺には分かっていなかった。
「ふー、ここが雛見沢への入り口か。こっから見た感じ、かなり廃れてるな」
それは、まさしく廃村だった。
「さすがにもう毒ガスはねぇよな?心配だから一応こいつに任せるか」
そう思って俺は擬似メモリをバットショットを雛見沢に飛ばした。
それから暫くして帰ってきたバットショットが撮った写真を見た。
「村の中も思った以上に廃れてるな。建物もほとんど倒壊してて何が何だか分かんねーな」
そう言いながら何枚も写真を見る。
「ん?これは確か、古手神社だったよな?なんか、人影っぽいのが写ってるような………。ハハ、まさか」
内心ではドキドキしながら次の写真を見た。
「これは………祭具殿か?ん?これにもやっぱ写ってる………」
そう。写真には巫女服を着た、角を生やしたような少女が写っていた。
「ここここここここここれって、ししししししししし心霊写真!?」
バットショットを放り出しそうになり、なんとかそれを抑えると体が震えだした。
「あ、新手のドーパントか?いや、それは無いよな。ガイアメモリがここまで普及してるって話、聞いたことねぇし。てことは本当に幽霊か?」
そこから俺は暫く考えた。
ビビって帰るのか、それとも真実を調べるために危険を犯して祭具殿に行ってみるのか。
「よし、行くか」
最悪の事態を想定して、いつでも変身できるように準備してから俺は祭具殿を目指した。
息をなるべく止めて、スタッグフォンに登録された『風都くんマーチ ロングver』を最大ボリュームで流しながら。
(ここが、祭具殿)
村に入って5分。
息継ぎをせずに目的地まで行く事ができた。
俺は入り口に近付き、周りに何も無いことを確認してからドアを押した。
予想外にもドアは軽く開き、中に入る事が出来た。
(ここにあのお化けだかドーパントだかがいる可能性があるってこったな。頼むから出てくるなよぉ〜)
そう思いつつ調査をしていると、一つの光るビー玉を見つけた。
(何だ、コレ?)
不思議に思った俺はそれを拾い上げ、マジマジと見つめた。
次の瞬間…………。
「なっ!一体なんだ!?」
それが強く光り出し
「フィリップ、変身………」
変身する前に俺の身体を包み込んだ。
『ひぐらしのなく頃には』
「つまり君は、事件が起こる前、1983年6月以前の雛見沢にいるって事かい?」
「みー、翔太郎はロリコンなのですよ」
「惨劇なんて、この俺が止めてやるよ」
「フハハハハ!この前原圭一の前にひれ伏すがよい!!」
これで決まりだ。
P.S.時代設定を少し。
1983年 6月 雛見沢事件発生
1990年 赤坂、大石に出会う。
1999年 鳴海荘吉、スカルになる。
2008 ビギンズナイト
2009 WのTV放送での内容
2010 フィリップ 消滅
2011 フィリップ帰還
2012 『ひぐらしのなく頃に』出版
2作のわらじで大変ですが、楽しいので頑張ります!
応援、よろしくお願いします!!