蘇れ、ヤマト   作:ザラス

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以前ここである小説を書いていた者です。温めていたアイデアをどうしても形にしたくなり、再び筆を執った愚か者です。どうか暖かく見守っていただけたら幸いです。


プロローグ ヤマトの目覚め

無限に広がる大海原。この大きく広い海に、数多の生命の営みが満ち溢れていた。人間は、様々な形でこの海と付き合いながら生きて来た。

 

しかし、この海の深淵から、人類の生存を脅かす存在が現れた。

 

深海棲艦。

 

彼らはその存在が確認されるや否や瞬く間にこの地球上の海を制圧した。その結果シーレーンは破壊され、人類の営みは大きく停滞することとなった。

 

しかし、希望はあった。時を同じくして現れた、かつての戦争の軍艦の記憶と力を宿した少女、艦娘である。深海棲艦と艦娘の戦いにより、なんとか人類は生存することが可能であった。

 

 

そして今。この戦いにイレギュラーな形で参加することとなる存在があった。

 

 

 

暗い。そして静かすぎる。あれから何年の時が過ぎたのだろう。私を覚えている存在は誰もいないのだろうか。いや、それだけではない。

 

 

……私は、誰?

 

 

悪魔。徒花。必要とされなくなった。違う!違う!違う!私は、私は!

 

 

「ん……」

周りを見る。海だ。見渡す限りの海だ。それ以前に、私はなぜ身体があるのだろう。いや、この表現は正確ではない。私はなぜ、人間の女性の身体となっているのだろう?自分の背中にはかつての装備がデフォルメされたように背負わされている。

 

「あ……」

少しぼんやりしている間にこの世界の情報が流れ込んで来た。深海棲艦、艦娘。つまり私は艦娘なのだ。

そして艤装からひょっこりと顔を覗かせたのは「妖精さん」だ。黄色い服を来た妖精さんだった。話してみようかと思ったのもつかの間、妖精さんは緊迫した面持ちで言った。

「ヤマトさん!2時の方向に敵影確認!」

その報告にはっとして2時の方向を向く。確かに敵、駆逐艦らしき艦影が確認できる。続いてオレンジの服の妖精さんから報告が伝えられる。

「補助エンジン、エネルギー充填100%!回路よし!始動シリンダー準備よろし!」

それは、私が最初の航海に旅立った時のさらに前。地下に埋まった状態で聞いたあの言葉だった。私は力の限り叫んだ。

「総員配置につけ!補助エンジン始動5秒前!砲雷撃戦用意!」

その言葉をきっかけに、少しずつ補助エンジンが唸りを上げていくのがよくわかる。

「第一主砲!手動砲撃スイッチオン!コントロールを回して!」

第一主砲の照準が、私の目の前に現れたディスプレイに表示された。あとは照準を合わせて……

 

「発射!」

 

その瞬間、聞き慣れたあの音と共に放たれた緑色の砲撃は一撃で敵駆逐艦を粉砕した。

 

「やった……」

 

なぜだろう。ここに来るまでに何度も撃った砲撃のはずなのに。なぜか初めて敵を撃った時のことがそのまま思い出された。そしてそれが艦娘として初めて撃ったからなのかはわからなかった。

 

そして耳をすませば、妖精さん達の喜ぶ声が聞こえてきた。おそらく彼らも不安だったのだろう。しかし私は気を引き締めて全員に告げた。

「各部門の責任者、全員集まって」

その言葉に複数人の妖精さんがひょこひょこと出てきた。全員服の色が違う。先ほどの黄色とオレンジ色に加え、赤、青、黒の服の妖精さんがいた。しかしそこにいなければならないはずの緑色の服を着た妖精さんがいない。私は疑問に思って尋ねた。

「ちょっと待って、航海班は?」

妖精さん達は顔を見合わせ、やがて赤の妖精さんが代表して答えた。

「ヤマトさんが動けるのに、航海班も何もないでしょう。ヤマトさん1人で航海班は全てできますから、大丈夫です」

なるほどそうだ。確かに動くのは自分でできる。だから航海班はいないのか。

「ありがとう。それから状況を教えて。通信班、現在位置と索敵は?」

黄色の服の妖精さんはスラスラと答えた。

「現在位置は太平洋上、赤道付近です」

続いて赤い服の妖精さんに視線を移す。

「戦闘班、使用可能な武器の状況は?」

「ショックカノン以外は弾薬がないので現在使用不可です」

「えっ、それはまずいわ。技術班、各種弾薬の補充をお願い」

青い服の妖精さんはぶっきらぼうに言った。

「了解、直ちに生産を始めよう」

そして今度はやたらとドヤ顔で決めている黒い服の妖精さんに語りかける。

「航空隊、出撃準備は?」

「いつでもオーケー!」

威勢良く答えてくれた。ありがとう。そして最後に、これが1番の懸案事項だ。

「機関長、補助エンジンはともかく、波動エンジンは使えないかしら?」

「武器の管制には使用できますが、航行に回すだけの出力が出せません。波動砲も同じです」

「むう……」

つまりワープと波動砲という二つの戦略的機能が使えないのだ。

「まぁ、いいか。どちらの機能もこの地球で使うことはないでしょう」

恒星間航行の必須要素であるワープと、星をも破壊する波動砲。波動砲は言わずもがな、ワープも短距離ワープの方がリスクが大きいことを考えると使えなくても問題はないだろう。

「よくわかったわ。ありがとう。総員解散!」

その言葉をきっかけに妖精さん達は再び艤装へと戻っていった。

私はとりあえず、この海を西へと向かうことにした。

 

 




どうも、ありがとうございます。あとがきでは話ごとに出てくるテレビや劇場版とは特にゲームで異なるヤマトの設定を説明していこうと思います。

「手動砲撃」
PS版「遥かなる星イスカンダル」より。第一艦橋の戦闘指揮席から武装を直接コントロールして攻撃を行うこと。最優先ルートのため多少の無茶や融通も利く。一度にコントロールできる武装は一つだけだが射撃管制を各砲塔に任せた時と異なりエネルギーの消費が少ないというメリットがある。余談だが実際のゲームでの手動砲撃というシステムは照準を合わせている間は時間が止まるため、リアルタイムシミュレーションゲームを謳っているこの作品の中で事実上無限連射が可能というとんでもなくイかれたシステムである。

「ワープは短距離の方がリスクが大きい」
PS版「さらば」より。もともとワープは空間歪曲を利用して行うものであり、短距離のワープ、つまり小ワープはその駆動タイミングを無理やりずらすことで行う。このために出力にひずみが出てしまい、そのひずみが波動エンジンに負担をかけてしまうため、波動エンジンに一定の損傷を起こしてしまう。またワープアウトのタイミングを算出しにくいため、ワープアウト直後にフル出力でブレーキをかけなくてはならない。そのため火器管制用を含む全ての波動エネルギーが一瞬で空になり、再度充填されるまでの間ヤマトは何もできなくなってしまう。そのため万が一にも敵の真っ只中にワープアウトしてしまうと無防備のまま袋叩きにされてしまう。これらの点から通常の恒星間ワープよりも小ワープの方がずっとリスクが大きい。ゲーム中では都合のためか50%ほどエネルギーが残った状態でワープアウトすることになる。むしろプレーヤーがワープで1番気をつけなければならないのはイベントの発生による強制ワープアウトの方である……。
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