蘇れ、ヤマト   作:ザラス

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第1話 艦娘「ヤマト」の始まり

「……………」

静かだった。あまりにも静かだった。先ほどの敵を撃破して西に向かって航海を続けてもう2時間は経過しているが深海棲艦は1匹たりとも見当たらない。もちろん戦いがないのであればそれに越したことはないのだが、先ほど出会ったのが駆逐艦一隻ということがヤマトには引っかかっていた。だがレーダーの反応を調べても本当に何もいないのだ。本来であればヤマトに搭載されたコスモレーダーの索敵範囲をもってすればこの星の敵をまとめて索敵できるのだが、あいにく艦娘となったことで索敵範囲もダウンサイジングに合わせて縮小してしまったようだ。具体的には半径約50キロ。これだけの範囲内に敵が全くいないというのは安心を通り越していささか不気味でさえあった。

 

「これじゃあ埒があかないわね、偵察機を出しましょう」

結局その判断を下したのはそれからさらに30分後であった。ヤマトはカタパルトに一機の偵察機を構えた。

「コスモタイガー、発進!」

大型のレドームを備えたその機体は素早く飛び立つと水平線へとまっすぐに飛んでいった。やがて偵察機からの一報が入った。

「周囲に敵は確認できません。それから西に60キロの位置に島を確認、無人島のようです」

どうやら自分の勘は外れたようだ。それに島があるというのは朗報だった。この身体になってからは流石に長い距離を移動するのは疲れる。疲れというものを自覚した手前、状況を詳しく調べるためにも一旦その島に腰を据えたほうがいいだろう。偵察機に帰投せよと伝えるとヤマトは速度を上げて西へと向かった。航行に波動エンジンが使えないとはいえ、60キロはあっという間だ。30分もあれば到達できるだろう。途中で偵察機を回収しつつ、沈みゆく太陽を追うようにしてヤマトは島を目指した。

やがてヤマトは島にたどり着くと、まずその砂浜に艤装を下ろした。そして大きく深呼吸をした。

「地球というのは、こんなに素晴らしいところなのね」

それはヤマトの偽らざる本心だった。彼女が生まれた頃には砂浜どころか海はなかった。イスカンダルから帰還してからはずっと海底ドックに留め置かれていたし、デザリアム星に出発する前は小惑星イカルスの殺風景な風景ばかりだった。かろうじてこの青い海をきちんと眺められたのは白色彗星帝国との戦いの後、首都で修理された後に海上へと出た時だ。航海の過程で様々な星に立ち寄ったヤマトだったが、改めて自分の故郷であるこの星の美しさを肌で感じ取っていた。しばらくそうやって海を眺めていた彼女はやがてあることに気がついた。

 

「そう言えば、お腹空いたな……」

人の身体を得た以上、避けられない問題に彼女は直面した。ヤマトのデータベースには生活班の食堂のメニューがいろいろとあるし、作り方はわかる。しかしそのための材料がない。それにいくら肉体が頑丈とはいえ、さすがに食べられもしないものを食べる気にはなれない。

「お魚でも釣ろうかしら」

そう思いつくとあとは簡単である。技術班に釣竿が欲しいと伝えると(その際に技術班の妖精が落ち込んだような顔をしていたのは見なかったことにする)、かなり本格的な釣竿を作ってくれた。しかも餌を使わないことを前提としたルアーもついている。

「私たちのぶんも頼むよ?」

技術班の妖精からそう言われてしまった手前、それなりに釣らなくてはならない。ヤマトは気合を入れて少し離れた岩場へ向かい、釣りを始めた。

 

 

3時間後

 

「おお……」

ヤマトのバケツ(これも技術班に作ってもらった)には5匹の魚が取れていた。これなら妖精たちのぶんを含めても今夜の夕食にいいだろう。早速ヤマトは魚を焼くために火を起こすことにした。燃料は適当な木の枝を焚き木にし、最初の着火剤として主砲の実弾オプションで用いる火薬を少量使った。やがてパチパチという音を立てて焚き火が完成すると、釣った魚に木を突き刺して焼いていく。そして魚が焼けたら完成である。ヤマトは恐る恐る魚にかぶりついた。

「……美味しい」

食べるということ自体初めてだったが、その初めての経験はどうやらいい方向でスタートできたようだ。そして脇を見ると妖精たちが魚を少しずつ食べながらワイワイやっている。さらに近くの川から汲んできた水を濾過してくれていたらしく、飲み水を渡してくれた。これでこの航海中の心配はなさそうだ。やがてヤマトは焚き火を囲んでいる妖精たちに声をかけた。

「皆、聞いて」

妖精たちは素早くヤマトの方を見た。

「私は生まれたばかりの艦娘よ。だけど、地球の平和が脅かされている以上、それを見過ごすことはできない。力を貸して欲しいの」

ヤマトは妖精たちにそう言うと彼ら一人一人に顔を合わせた。やがて妖精たちの間から声が上がった。

「当たり前だ!」

「やるぞ!」

「戦うぞー!」

ヤマトは心の底から彼らを頼もしく思った。

「ありがとう、ありがとう、皆」

夜が更ける中、焚き火を囲むヤマトの目に光るものがあった。




「偵察機」
PS2「二重銀河の崩壊」より。正式には早期警戒仕様機。真田さんによって作られた機体。コスモタイガーⅡの複座型を改造したもので、後部の大型のレドームが外見上の特徴となっている。このレドームは緊急時にはパージすることが可能となっており、敵との戦闘もある程度こなすことが可能。レドームをパージした場合も通常の複座型とは異なる点がいくつかあり、ミサイルや増槽がオミットされている代わりに探査席にあたる後部回転銃座が三連装になっている。通常のコスモタイガーと同等のオプションとして空間照明弾、ECMポッド、高速推進ポッド、増設燃料ポッドが使用可能。もっとも空間照明弾に関してはその広い索敵範囲もあり、過剰ではないかとも思える。
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