R-TYPE M-Alternative   作:DAY

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Opening

 20世紀末―――人類は滅びの瀬戸際に立たされていた。

 外宇宙からやって来た異星を起源とする侵略者BETAによって。

 だが人類は多大な犠牲を払いながらも、佐渡島のハイヴを攻略。

 敗戦を繰り返すだけの人類にようやく反抗作戦という希望の光が灯ったその時だった。

 

 

 『彼ら』が空を突き破って現れたのは。

 

 

 ◆   ◆

 

 ――国連軍横浜基地 香月夕呼のラボ――

 

 

 

「白銀、いい加減覚悟は決まった?いい加減ウジウジされていると、いざという時頼れないのよね」

 

「夕呼先生……。因果導体なんてもんになって、世界を救うなんて使命を背負わされた教え子を慰めてやろうって気はないんですか?」

 

 横浜の魔女、香月夕呼と向かい合うのは1人の青年だった。彼の顔には深い疲労がにじみ出ている。

 それも当然、元は平和な世界からやって来た彼は、つい先日恩師を目の前でBETAに食い殺され、精神的に追い詰められて元の世界に逃げこむも、自分の存在が原因で平和だった世界に更なる不幸をまき散らしてしまったのだ。

 

 そしてそれらの出来事は、全て眼前の横浜の魔女の掌の上だったというのだからたまらない。

 獅子は我が子を鍛えるために千尋の谷へと突き落とすというが、この魔女の場合は崖下に放り込んだだけでは飽きたらず、更に崖下に爆薬を放り込んで止めを刺すような所業をする。

 だがそれでも尚、白銀武という男は這い上がってきた。

 そしてようやく立ち上がってきた彼の前に立ちふさがるのは、崖下にいたほうがマシだったと思わせるほどの困難と激戦。破綻した作戦をその場しのぎで繋ぎ直し、仲間を次々と失いながらも、ようやく日本の喉元に突きつけられたBETAの剣である佐渡島のハイヴを破壊することができた。

 更に精神が不安定になりつつある鑑純夏の状態をいち早く見抜き、メンタルケアをした時は、あの朴念仁がよくも、と彼女をして驚いたぐらいだ。

 その件が片付くまでに最低でも数日は必要だと思っていたので、予定を前倒しできそうなのは嬉しい誤算ではある。

 

 これら一連の件に対しては本人の前では言わないだろうが―――香月夕呼は純粋に褒めてやってもいいと思っていた。

 表立って本人に伝えることは早々ないだろうが。

 その感情を押し隠しながら、彼女はいつも通り憎まれ口を飛ばす。

 

「はん、面白い冗談言うわね。この後に及んでまだ文句言うようなら作戦から外してやろうと思ってたけど」

 

「冗談じゃないですよ。ここまできて今更蚊帳の外なんて絶対にごめんです。……これ以上純夏をほったらかすのも……逃げるのも……」

 

「へえ、ようやくいっぱしの男の顔になってきたじゃない。これなら鑑のほうも任せられそうね。それでこれからの私達のやることなんだけど、鑑はやはり先日の佐渡島ハイヴの戦闘のせいで異常な負担が掛かってたことが原因なのは間違いないみたい。あんたとの恋愛関係のもつれもその原因の一つね。あんたが本格的に鑑一本で絞ることを決意したせいで、この辺の負担もなんとかなりそうよ。意外と覚悟決めるの早かったわね?」

 

「覚悟ってわけじゃないですけど……俺はもう純夏から目を離さないって決めただけです。だからこそあいつの真意が早く掴めたんだと思います」

 

「惚れた相手だからこそ自分のことを知られたくない―――危険から遠ざけたい。ま、当然の女心よね。鈍いあんたのことだから、どうせその辺のことを理解するだけで数日ぐらいかかると思ってたけど」

 

「実際そうなるところだったなのは否定できませんよ。ただ見かねた小隊の仲間達の助言からその辺にいち早く気づけただけで……」

 

「……訂正するわ。あんたってやっぱり朴念仁のままね。大して変わってないじゃない」

 

「褒めるんだか、怒るんだかどっちかにしてくださいよ!?」

 

 次の瞬間、その言葉を遮るかのように基地全体に独特なアラームが鳴り響く。

 

「なんだこれ――!敵襲!?」

 

「いえ、違うわ!このタイプの警報は―――大気圏外で何かが起きている!?」

 

 それが地球にとって、BETAに続く2つ目の外宇宙からの来訪者を告げる合図だった。

 ただし彼らは厳密な意味ではBETAと違い、異星起源種というわけではなかったのだが、それを今の時点の人類が知る由はない。

 

 続いてラボへ通信が入る。

 それは香月夕呼の副官であるイリーナ・ピアティフからのものだった。

 素早く主である香月夕呼が出るが、常に冷静な彼女にしては珍しく焦ったようなやり取りをしていた。

 

「一体何が起きたの!? ……え? 衛星軌道上に人工物と思われる大質量の物体が出現したですって? 大きさは……30km!?  しかもここの基地からでも視認できるって……ちょっと白銀!?」

 

 その言葉を聞いた白銀武は反射的に走りだしていた。

 

「先生! 俺ちょっとこの目で確かめてきます! すぐに戻るんで!」

 

 思わず止めようとする香月だが、既に彼はドアの外へと飛び出していた。まさか部下からの連絡を無視してまで止めに行く訳にもいかず、彼女は頭を抱えた。

 

 全く、こんな風に反射的に動くようでは何も成長していないではないか。

 

「白銀、あんたね……! ああもう、なんでもないわよ、こっちのこと! とにかく今から司令部に行くわ! 情報をそれまでにまとめておいて!」

 

 咄嗟に部下に八つ当たりしそうになるのをなんとか堪え、彼女は矢継ぎ早に指示を出す。

 それがBETAに続く、第二、そして第三のこの地球への客人を来訪を告げる事件の開幕だった。

 もっとも彼らはBETA以上に危険であり、そしてより地球人に近い存在だったのだが。





本作は佐渡島ハイヴ戦後に武ちゃんが純夏を速攻でアフターケアして口説き落とし、数日だけ佐渡島ハイヴ陥落から横浜基地襲撃まで余裕ができたような設定になってます。

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