R-TYPE M-Alternative   作:DAY

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一五話 歩兵

 

『タクシーより横浜基地司令部へ。横浜基地の表層部の物資集積所へと到着した。現在機動歩兵部隊を展開中。展開後は機動歩兵と共にBETAの掃討にあたる。機動歩兵部隊は10のユニットから構成されている。コールサインはポーン1からポーン10だ。ポーン1とポーン2は横浜基地の司令部への護衛へ回す。そちらの歩兵に撃たれないようにしてやってくれ。ポーン3と4はこちらと共にBETAの掃討にあたる。ポーン5から10まではそちらの自由に使ってくれて構わない。ゴリアテは外部に重光線級が集結しつつあるので、そちらの殲滅の実行中。』

 

 横浜基地内部表層部ではゴリアテより先行して基地内部に突入した汎用工作型R戦闘機コールサイン『タクシー』が、後部の輸送コンテナより機動歩兵部隊を展開していた。

 無論、機動歩兵と言ってもこの21世紀で運用されている強化外骨格とは全く違う。

 全高2m強の重火器を装備した人型兵器に操縦者が乗り込むというコンセプトは同じだ。しかし外見も性質も根本的に異なっているということを、香月博士を始めとした横浜基地司令部はタクシーより送られてきた彼らが運用する機動歩兵のスペックデータを見て理解せざるを得なかった。

 

 重機動歩兵M-308 ペットネーム『ストームガンナー』。

 それがタクシーが搭載している機動歩兵の正式な名称だ。

 R戦闘機のキャノピーを思わせる頭部にマッシブなボディ。更に空間戦闘に備えて機体の背部に、四方に張り出した羽型の姿勢制御ユニットを持つ大型の推進システムを装備している。

 全高3mの巨体だが状況によっては『正座』することによって脚部を折りたたみ、背部のスラスターと搭載した特殊装置で歩行せずに移動することも可能な為、高さ2.4m以下の人間用に作られた施設にも侵入可能。

 

 主武装はパワーブラスターと呼ばれる手に装備したライフル型の波動粒子砲。R戦闘機の波動砲とは比較にもならない低出力だが、代わりに連射が可能で数を撃ちこめば理論上は中型のバイド体すら撃破可能なスペックを有している。

 更に防御兵装として『シールド』と呼ばれる波動粒子によるバリアフィールドを前面に展開可能。

 このシールドは燃費の関係で瞬間的にしか展開できないようだが、個人携行レベルの武装は完全にシャットアウト。突破できるのは機動兵器クラスが装備する高出力、高初速の光学兵器や実弾兵器のみということらしい。

 だがこの兵器の最大の特徴はこのサイズでありながら、擬似的な重力制御システムを搭載していることだ。

 

 重力反転システムと呼ばれるそれは、ザイオング慣性制御システムの機能を更に限定させ、小型化させたもので、これによって自身に掛かるGの向きを自由に変えることが可能なのだ。

 その為、このストームガンナーは天井や壁を『歩く』事も可能だし、上空に向かって『落下』することで飛行することもできる。

 更にはコントロールした自由落下速度に自身に搭載されたスラスターによる推力を加え、前述したシールドを利用しての敵に対する『体当たり』がこの機体の最大の攻撃という記述を見た時、香月夕呼はこの兵器の製作者の正気を疑った。

 少なくともR戦闘機の開発者達と同じレベルの考え方をしているのは間違いない。

 これも22世紀の兵器の例にもれず戦闘能力が異常に高く、過去にエース用のカスタム機が単機で宇宙要塞を奪還した戦歴すらあるらしい。

 

 このデータを証明するかのように、タクシーの後部コンテナから次々と飛び出したストームガンナー達はBETAの群れに向かって、シールドを展開しつつ突撃。文字通り青い火の玉となった彼らは、進路上にいた小型種を蹴散らし、要撃級や突撃級にも突っ込んで直径3mの風穴を開けて沈黙させた。

 そしてその後は、天井にその逞しい脚部で『着地』すると眼下のBETA―――彼らからすれば天井に張り付いたBETAに向けて、ひたすら手にしたパワーブラスターを撃ち続ける。

 着弾と同時に炸裂し、小爆発を起こすパワーブラスターは連射可能な榴弾砲のようなもので、小型種なら一撃で撃破、大型種でも数発を撃ちこめば着弾時の爆発で組織をズタズタにして機能停止させることができる。

 弾数の制限も今のところないようで、彼らは天井からそれを機関銃のように景気良くBETA達に向かって撃ちこんでいる。

 

 この物資集積所で戦闘をしていたBETA群は自らの仲間の死骸を盾にして、巧みに戦術機に近寄り攻撃していたが、その戦術が有効なのはあくまで水平方向から攻撃を仕掛けてくる戦術機相手だけだ。

 文字通り自分の頭上から撃たれては、仲間の死骸を盾にしても何の意味もない。それどころかこちらの攻撃も届かない。

 戦車級なら壁から登って天井を歩くことも可能だが、あくまで力で壁や天井に張り付いているだけで、その速度は遅く、壁を登っている最中にストームガンナーに感づかれて真っ先に撃ち殺されていた。

 壊れたスプリンクラーのように天井から亜光速の粒子弾をばら撒き続けるストームガンナー達に、更にタクシーの電磁投射砲の支援射撃まで加わって物資集積所のBETAは瞬く間にその数を減らしていく。

 同時に外部からのBETAの流入もいつの間にか止まっていた。

 その事に気がついた香月夕呼は外の光景を映すようにオペレーターに命じるが、そこには更に想像を絶した光景が映っていた。

 

 

 ◆  ◆

 

 

 無数のBETAが粒子弾幕の嵐に薙ぎ払われていく。

 当初、それを見た香月は、あの旧町田市でBETAの挽き肉の山を作り上げていた緑色のR戦闘機がこちらにも来たのかと思ったが、よく見ると弾幕の質が全く違うことに気がついた。

 あのR戦闘機は一度に大量の弾幕を発射していたが、こちらで乱射される弾幕はあれほどの連射力と威力は無い。代わりに間断無く、無尽蔵に、まるで螺旋を描くかのように全周囲に無差別に撒き散らしている。

 これの弾幕の一発の威力はさほどでもないようで、頑丈な突撃級や要塞級などは弾幕の斉射を食らっても耐える場合が多い。だが、それはあくまで一斉射や二斉射に限る。尽きることのない弾幕の嵐は確実に甲殻を穿ち、胴体に食い込み、やがて彼らを挽き肉へと変えていくのだ。

 

 そしてその弾幕の発生源はR戦闘機ではない。ウニのように脈動する無数の棘を貼り付け、その棘の僅かな隙間からオレンジ色の光を放つ独特な形状を持つフォースだ。

 そのフォースを一目見て、それがこの横浜基地にやってきた2機のRの片割れ、TP-2H "POW ARMOR II(パウ・アーマー改)" コールサイン『ゴリアテ』の装備するニードルフォースであると香月夕呼は気がついた。

 

「フォースの母機がいるはずよ! ゴリアテを探しなさい!」

 

 彼女の命令にしたがって、オペレーター達が慌てて基地外部の生きているカメラを操作する。

 基地外部のカメラにはフォースの弾幕で薙ぎ払われるBETA以外にも、衛星軌道上からの砲撃と思われる光の柱によって旧横浜市ごと消し飛ばされていくBETAの群れも映りこんで、まさしく地上は地獄絵図のような状況になっている。その為目視による捜索は困難を極めたが、シューティングスターから送られてくるR戦闘機の位置情報を元に一人のオペレーターが目標を発見した。

 

「見つけました! メインゲート上です!」

 

 充填処理されたメインゲートを破壊しようと群がっていたBETAはそれに既に掃討された後のようで、いつの間にかメインゲート前は無数のBETAの死骸で埋め尽くされていた。

 

 それはBETAの血と肉の絨毯で舗装されたメインゲートの上に、その特徴的な二本足で立っていた。

 重装甲に覆われた黒く丸い機体。赤い眼球じみた巨大な球状キャノピー。そして二本足の間にある電磁投射砲。特に印象に残る球状のキャノピーは、見る者にまるで機械仕掛けの光線級のようなイメージを与える。

 そして機体正面には例のごとく青い光が集束し、炸裂する瞬間を待ちわびるかのように大きく輝いている。

 

 TP-2H "POW ARMOR II(パウ・アーマー改)" コールサイン『ゴリアテ』、波動砲発射準備完了。

 

 ゴリアテは脚部の力を用いてメインゲートから大きく空へと跳躍する。生き残った光線級からの無数のレーザーが放たれるが、スラスターを噴射してゴリアテは更に加速し強引に回避。そのままゴリアテは一瞬で上空1000m程の高度に達すると、最後に生き残っているBETAの群れに向けて集束した波動粒子を開放した。

 

 波動粒子による青い光が炸裂し―――炸裂と同時にゴリアテの眼前から突如現れた無数の怪物の群れが、雪崩を打って地上のBETAの群れへと躍りかかった。

 この余りの異様な光景には、そろそろ異常に慣れつつあった司令部も戸惑いのざわめきに包まれる。

 

「……なんなんだ、 あれは!?」

 

 そうパウル・ラダビノッド司令官が叫んでしまうのも無理もない話だった。

 彼の狼狽ぶりに副司令である香月は逆に幾らかの冷静さを取り戻した。

 そして司令官やほかの人員達に言い聞かせるように、シューティングスターから送られてきたデータにあったTP-2H "POW ARMOR II(パウ・アーマー改)"の波動砲の仕組みを呟く。

 

「バイド砲。限りなくバイド粒子に近い性質の波動粒子を光学的に集束させて放つ波動砲。砲撃がバイド体の形状をしていることに対するメリットは特に無し。とのことですが……」

 

 そこで改めてモニターを見る。

 そこには蒼い光で構成された様々な怪物達―――全長十数メートルの大百足、四足歩行する異形の獣、頭頂部が異様に後部に伸びた胎児のような化け物―――が、地上のBETA達に襲いかかっている様子が映されている。

 青く発光し、体内まで透過しているように見える彼らは、もう怪物というよりは生者を求めて彷徨う悪霊と表現したほうがいい。

 

「どう見てもあれ、自我を持って敵を襲っていますわね」

 

「うむ。すごく生き生きとしておる。BETAよりもよほど怪物らしい」

 

 司令官と副司令は揃って感想を述べ、オペレーター達も頷いた。

 実際バイド砲によって射出された光学バイド体は喜々としてBETAに襲いかかり、その波動粒子で構成された肉体を接触させることで、標的を消滅させていく。

 相手を消滅させることで自身を構成する波動粒子も減衰していくようで、敵を消滅させる度に光学バイド体はその身を小さくしていくが、光学バイド体の群れはお構いなしに次々とBETAの群れに飛び込んでいき、最終的に自分たちの消滅と引き換えに残った全てのBETA達を消滅させることに成功した。

 これで地上のBETAの大半はほぼ全滅したことになる。

 

 それを見届けた空中のゴリアテは身を翻すと、汚染母艦級がレーザーによって横浜基地に開けた大穴に向かって落下の軌道を変更する。大きく脚を広げたその姿は、まるで空のダイビングを楽しんでいるのかのような優雅さがあった。

 そこで落下中のゴリアテから司令部へと通信が入った。

 

『ゴリアテより横浜基地へ。これで地上で暴れていた光線級は全て片付けた。これより横浜基地に突入し、残ったバイド体の排除を開始する』

 

 

 ◆  ◆

 

 

「遠慮すんじゃねえ! たっぷりと食らいやがれ!」

 

 横浜基地の地下では未だ戦闘が続いていた。

 力を失い地下へと沈んでいった汚染母艦級と入れ替わるように、新たな汚染母艦級が地下から上昇してきた為だ。

 絶望的な状況だが、幸いな事が一つだけあった。90番格納庫でヴァルキリーズの別働隊が一度交戦し、汚染母艦級の性能や戦術をヴァルキリーズのトップエースである、速瀬中尉と白銀少尉に伝えられた事だ。

 

 二人のエースは縦穴で新たな汚染母艦級を迎え撃つ。

 迫り来る触手の群れを、縦横無尽の三次元機動で回避。そして白銀少尉に至っては、挑発するように温存していた跳躍ユニットまで使って、汚染母艦級の頭の周りを飛び回る。

 まるで自分にたかる蝿のようなその機動に、汚染母艦級の忍耐が切れたのだろう。

 白銀機を食い殺そうと―――或いはレーザーで焼き殺そうとして大きくその口を開けた。

 

「皆、今だ!」

 

 その言葉と共に90番格納庫で機を伺っていたA-01隊員達が、手持ちの誘爆爆弾を汚染母艦級の口内に次々と投擲する。

 高い出力を出すことが可能になった電磁伸縮炭素帯により、不知火改の腕力もまた引き上げられており、豪速球のような速度で爆弾は汚染母艦級の体内に着弾し、炸裂した。

 体内から6発分の爆弾による高熱のエネルギーで焼かれた汚染母艦級は、反射的に口を閉じてしまった。その結果、体内で荒れ狂う爆発に内側から完全にローストされ、最初の個体と同じく力を失い地下へと沈んでいった。

 

「やったぁ! 流石です、たけるさん!」

 

 初戦より容易く二体目を撃破できたことに対して珠瀬壬姫が歓声を上げる。

 実際、速瀬機と白銀機が敵を撹乱しなければ、こうも簡単に口腔内部に誘爆爆弾を投げ込むことはできなかっただろう。

 だが。

 

「気を抜くな珠瀬! バイド係数はまだ下がってない!」

 

 気を緩めかけた部下に宗像中尉が叱責を行う。

 彼女は反射的にひゃい! と小さく返事をし、そして自機のバイド係数測定器を見て再び顔を青ざめた。

 

「これって……」

 

「三体目が来るよ! 珠瀬、誘爆爆弾の準備をして!」

 

 それが何を意味するか完全に理解するより早く、同期である鎧衣が警告を飛ばす。

 そして彼女の警告と共に再び地震のような振動が、横浜基地を襲い始めていた。

 

「畜生! あいつらは後何体いるんだよ!? 誘爆爆弾が無くなったらもう勝てねえぞ!」

 

「白銀! あんた誘爆爆弾は後何発残ってる!?」

 

 速瀬中尉の問に白銀は自機に残された誘爆爆弾の数を数えようとして―――顔を引きつらせた。

 

「……もう全部使っちゃいました!」

 

「じゃあ、ここは私が囮になる! あんたは一旦90番格納庫に降りて、味方から爆弾を受け取って来なさい!」

 

「了解! くそっシューティングスターからの援軍はまだなのか!?」

 

「現在浸透したBETAに司令部方面が襲われて大混乱よ! あいつらはそっちのBETAを優先して排除してる! 向こうが片付いたらこっちに来るからそれまで時間を稼ぐわよ!」

 

「……了解!」

 

 そうこうしている間にも新たな汚染母艦級が登ってきた。この個体は白銀機と速瀬機を脅威と見たのか、90番格納庫を無視して一気に縦穴を登ってきて、2機に攻撃を仕掛けてきた。

 迫り来る無数の触手を電磁投射砲と長刀でなぎ払いながら、白銀機は狭い縦穴を暴れまわる汚染母艦級の巨体の脇を掠めるように降下、半壊した90番格納庫へと飛び込む。

 

 90番格納庫もまた汚染母艦級の開けた穴を通って無数のBETAが侵入しつつあった。

 大半が縦穴を登ってきた通常の小型種だが、背後にXG-70dを抱える彼女達としては放置できるものでもなくヴァルキリーズと斯衛小隊はそちらの始末にかかりきりになっている。

 飛び込むと同時に目についた戦車級を電磁投射砲でなぎ払いながら、白銀はその場の指揮官である宗像美冴に通信を繋いだ。

 

「……宗像中尉! 例の誘爆爆弾はありますか! こっちはもう品切れなんです!」

 

「こちらも小型種の掃討にも使ったからな、こちらの連中のものは全員含めて残りあと6つだ!」

 

「……たったそれだけですか!?」

 

 それだけあれば確かに今暴れている汚染母艦級は倒せるだろう。

 だが、汚染母艦級一体を倒すのに最低でもあの誘爆爆弾は6つは必要になる。

 もしこれで敵が打ち止めなら後は電磁投射砲だけでどうにかなるが、さらなる敵の増援が来たら―――

 

(いや、今はそんな事を言ってる場合じゃねえ! まずは今暴れてる汚染母艦級を倒さねえと一人で囮をしている速瀬中尉がやばいんだ!)

 

「どうもあいつはお前と中尉にお熱なようだ! 格納庫の掃除は私達に任せてありったけの誘爆爆弾を持っていけ!」

 

「ありがとうございます!」

 

 仲間達から次々とグリップ付きの誘爆爆弾が投げられてくる。

 それを白銀機は見事にキャッチし、腰や大腿部のグレネード収納用のアタッチメントに取り付けてく。これで準備は万全だ。

 

「こっちは任せろ! 速瀬中尉を頼んだぞ! それと御剣少尉!」

 

「はっ!」

 

「白銀の護衛につけ! この中ではお前が一番白銀の動きについて行ける!」

 

「了解しました!」

 

 そのやり取りに慌てたのは当の白銀だ。

 

「え……! でも宗像中尉」

 

「反論は無しだ白銀。お前に誘爆爆弾を全て渡すんだ。万が一にもお前がやられたらそれで終わりになるんだからな」

 

「安心するがよい。奴の攻撃パターンは下から観察していたから、十全に対応できるつもりだ。それともそなた、私に背中を任せるのは不安か?」

 

 そうとまで言われたら白銀も反論は出来ない。元々条件反射的に言い返していたようなものだからだ。

 

「……いや。お前が後ろ守ってくれるなら、心強いさ、じゃあ行くぞ冥夜! 遅れるんじゃねえぞ!」

 

「ふっ、言うな。そちらこそ遅れるでないぞ!」

 

 そして2機の不知火改は格納庫に空いた大穴から跳躍ユニットと強化された脚部のパワーを使って、一気に縦穴を登っていく。

 狭い縦穴の中でその巨体をうねらせる汚染母艦級を躱しながらのその作業は難易度の高いものだが、なんとか2機は汚染母艦級の先端部付近まで登ることができた。

 先端部の上空では速瀬機が、かろうじて汚染母艦級の触手の群れを捌いていた。

 何しろ触手は撃ちぬいても切り落としても、その度に新しく生えてくるのだ。いくら不知火改でもこの縦穴の中でその無限ともいうべき攻撃を捌ききれていたのは驚嘆に値する。

 

「……っ! ようやく来たわね、遅いわよ! 後で……」

 

「腕立て百回ですね! やってやりますよ!」

 

 速瀬中尉からの言葉を遮り、白銀は更に機体を加速させる。

 

「冥夜ぁ! 今から突っ込む! 俺に迫ってくる触手はそっちに任せた!」

 

「任せるがいい!」

 

 白銀は背後の彼女が答えを聞くと同時に汚染母艦級へと突っ込んでいく。

 それに気がついたのか、相手も触手の一部をこちらに送り込んできた。

 彼の機体は誘爆爆弾の握り棒であるグリップ部分を戦術機の指に挟みこむように持ち、右手に3つ、左手に3つと計6つの誘爆爆弾を保持している。

 その為手が塞がり、電磁投射砲も長刀も使えない。背面の兵装担架に予備兵装の突撃銃があるが、これでは触手を一撃で撃ち落とすことが出来ないため、気休め程度の存在だ。

 もし背後の冥夜機が自分に向かってくる触手を仕留め損ねたら、白銀機はあっという間にやられるだろう。

 だが冥夜がいる限り、そうならないという確かな信頼が彼にはあった。

 

 無数の触手が白銀機へと銃弾の如き勢いで撃ち込まれ―――そしてその全てが背後の冥夜機と速瀬機の援護射撃が全て叩き落とす。

 業を煮やしたのか、汚染母艦級は白銀機に向かって体当たりをするが、白銀機は背後の壁を強化された脚部で蹴って更に跳躍し回避。そのまま汚染母艦級の頭上を取る。

 汚染母艦級が白銀機を見上げ、巨大な口を開く。その口腔内部では巨大な複眼がレーザー発射準備を終えて白く発光していた。管制ユニット内部にレーザー警報が鳴り響く。

 だがそれは白銀にとっては好都合だった。

 

「高級品だ! しっかり味わえ!」

 

 その叫びと共に、彼は全力で誘爆爆弾を汚染母艦級の口腔内部へと投擲した。

 砲弾じみた速度で誘爆爆弾が怪物の口の中へ飛び込み、爆発。

 連続的に重低音が鳴り響き、その都度、濃緑色の閃光が瞬く。

 発射寸前のレーザーも暴発したのか、予想以上の大爆発が起こり、汚染母艦級の先端部が丸ごと消し飛んだ。

 

 

「やった……!」

 

 その光景を見た白銀は、呟いた。彼は衝撃で機体のバランスを崩しながらも、咄嗟に長刀を壁に打ち込み、なんとか墜落を免れていた。

 見ると御剣機も同じようにして落下を免れている。速瀬機は、縦穴に開いた通路に退避していた。

 汚染母艦級は身悶えして、そのまま先の様に落下していくと思われたその時だった。

 

「こいつ! まだ生きてるのか!?」

 

 先端部が吹き飛んだ汚染母艦級が再び動き始めたのだ。

 発射寸前のレーザーが暴発したせいか、それとも複数の誘爆爆弾のエネルギーの火力が一点に集中しすぎて、体内全てにエネルギーが浸透しなかったのか。

 

(不味い……! もう爆弾はねえぞ! 後はS-11を使うしか……でも機体からS-11を取り外す暇なんてこいつがくれるわけがない!)

 

 頭部を無くした汚染母艦級はもう触手やレーザーによる攻撃を諦めて、別の攻撃方法をすることにしたらしい。

 すなわち、その巨体を活かした体当たりだ。この狭い縦穴をでいつまで避けきれるか―――白銀が冷や汗をたらしながらそう思ったその時だった。

 彼の機体の側面を何かが高速で通り過ぎ、先端部が無くなり開きっぱなしの汚染母艦級の体内へと飛び込んでいく。

 辛うじてそれを輪郭を捉えた白銀は変なものでも見たような感覚を覚えた。

 

(なんだありゃ……? トゲ付き鉄球?)

 

 だが、実際はそんな生易しいものではなかった。

 汚染母艦級の体内に入ったそれが一瞬輝いたかと思うと、凄まじい勢いで光り輝く弾幕を全周囲に撒き散らし始めたのだ。

 幸いそれらは、意図してか、それとも偶然か、自分たちには飛んで来なかったが、体内でそんなものを撒き散らされる汚染母艦級としてはたまったものではない。

 口が消し飛び、そもそも発声器官もないため、悲鳴すらあげられないそれは、全身をのたうち回らせることで、見事に苦しみを表現していた。

 

「な、なんだぁ!?」

 

「タケル、あれは……!」

 

「白銀、御剣、上!」

 

 驚愕する白銀と御剣だが、そこに速瀬機からの悲鳴じみた警告が飛び込んでくる。

 反射的に頭上を見上げた二人の視界に飛び込んだ物は、青白く輝く無数の異形の群れだった。

 

 

 

 

 

 

 




パウアーマーたんカワイイヤッター!
バイド砲の設定はオリジナルですが、ゲームだとなんか手とかしゃかしゃか動いてるし絶対あいつらなんかやばいですよね。

あと機動歩兵はアイレムのFCソフト重力装甲メタルストームから特別出演
ちなみに火の玉になっての体当たりはGアタックです。
こいつはファイナルでも出して欲しかった…
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