提督とはぐれ艦娘たちの日常   作:砂岩改(やや復活)

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書きたいから書いただけ、特に何も考えずに書きました。
続くかどうかは分からない。


プロローグ

ゴォー。

 

 耳に届く断続的な爆音に嫌気を覚えながらも念入りに装備を点検する。背中や腕、そして腰に取り付けた機器の面倒を見てやるのもめんどくさいが仕事だ。

 

『横須賀第一、及び第二艦隊による敵艦隊誘因に成功』

 

こう言った存在として産まれてきたが機械の扱いと言うのはどうもよく分からない。精密機器なんてものは尚更だ、そんなものを押し付けられた鬱陶しさは今は不思議とない。

 

『長距離砲撃の効果を認めず。外部からの攻撃はやはり効果はないようです』

 

 血の鉄臭い香りやむせかえるような硝煙の臭いもないが気分が高揚している。

 戦闘狂かと問われれば肯定も出来るし否定も出来る。別に戦闘が好きなわけではないし自ら首を突っ込むと言うこともない。むしろ向こうから来ると言うのが正しいだろう。

 

『敵対空兵器の存在は不明。目標周辺に空母艦隊を確認』

 

 だが長いこと戦闘に浸かっていれば慣れもする。俺様にとって戦場は刺激を与えてくれる場所などではなく。慣れ親しんだ実家のようなものだった。

 

『空母による妨害は間に合わない。作戦に支障なし、作戦を続行する』

 

 これが戦闘狂?それともただの不幸な"艦娘"か?

 

「天龍…時間よ」

 

「あぁ…」

 

 左目に眼帯を着けた女性はその名を呼ばれ閉じられた右目をゆっくりと開ける。瞳を開けた瞬間に視界を覆うのは無機質な鉄の塊の集合体。その気になればその重量で自身を押し潰せそうな艤装を背負った山城はぶっきらぼうに言葉を続ける。

 

「全く、不幸だわ」

 

「そう嘆くなよ。もうやるしかねぇんだからよ」

 

 不幸なのは否定しない、だがいつかは来ると思っていた。なぜならこの天龍様は戦場に一方的に愛されてしまったのだから。

 

『作戦遂行地点に到着。後部ハッチオープン』

 

「うわっ、さみぃ…」

 

 吹き込む冷気に体を震わせるのは摩耶、彼女は手にしていたショットガンを抱き枕のように抱え込み寒さに耐える。

 

『これからHALO降下を行う。怪我と病気に気を付けてね』

 

「ぽい!」

 

「……」

 

 無線機から流れてくる上官の言葉に反応したのは夕立と川内。川内は静かに頷くと爆音と黒煙が渦巻く地上を見つめる。

 

「作戦開始」

 

「行くぜ!」

 

 高度10、000mからの自由落下、真っ先に飛び降りたのは天龍。

 目指すは鋼鉄の大地、人間では耐えられない寒さと低気圧の中をその女性たちは身に付けた武装と己の体のみで落下する。

 

 それぞれ自身と共に顕現した武装に加え、対深海用の追加装備をしょい込み真っ黒な空を落下し続ける6つの影。

 

『こちら04、目標を認める』

 

 ロケットランチャーを左肩に乗せながら降下目標を見つめる不知火は手持ちの高度計が300になるのを目安にパラシュートを開く。

 

「死にたいのですか、貴方は」

 

「全くもって不幸ね」

 

 対空放火の弾が山城のパラシュートを破壊。完全に自由落下と化した自身の身を省みつつ体勢変更、巨大な砲を落下地点に放ち身を地面にめり込ませながらも三点着地を成し遂げる。

 

「でもまだマシかしら」

 

「さらりと頭のおかしいことを、まるで漫画でありますなぁ」

 

 背後から迫るチ級の首を切り落としたあきつ丸は自身の愛刀から滴る青い血を振り払う。そう言うあきつ丸も先程、綺麗な五点着地を決めたばかりであった。

 

「みなさん、重力の法則ぐらいは守って欲しいのですが」

 

 十分に減速しパラシュートをパージした不知火は手持ちの火器を唸らせながら言葉を漏らす。

 

「まぁ、ここはそういうところだからな」

 

 不敵な笑みを浮かべた天龍は夕立と川内を伴いながら姿を表す。するとその場の雰囲気がさらに引き締まる。

 

「さぁ、行くぜ!」

 

 天龍の掛け声と共に一斉に動き出す艦娘たち。

 彼女らは海軍不要人材の島流し、海軍の孤島と言われている窓際基地。琵琶基地所属の見捨てられた艦娘たち、これはそんな基地に流された艦娘と提督の物語である。

 

 

 


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