提督とはぐれ艦娘たちの日常   作:砂岩改(やや復活)

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油断

「おぉ、怖い怖い。瞬殺だったでありますな」

 

 リ級に着いていたチ級から刀を引き抜き、青い血らしきものを拭うあきつ丸。エレベーターの電源は生きていたようでじゅんちょうに向かっている。

 

「エレベーターを止められたら厄介じゃない?」

 

「確かに、でも設計図でも見たがあんなに複雑な階段郡を降りきれるかわからねぇ。おとなしくエレベーターにしといた方がいい」

 

 山城の懸念はもっともだが摩耶の言う通り、ここで迷っては意味がない。ここですら敵がワラワラいるのだ。階段なんか使ってたら進めなくなる可能性もある。

 

「ちっ、もう無理か…」

 

 摩耶は悪態をつきながら使い物にならなくなったショットガンを一丁、捨てる。その間にエレベーターが到着し、全員が警戒しながら入る。

 

「疲れるわ…」

 

 山城はドラムマガジンを二丁とも投棄、懐から予備弾層を装着する。

 

「お前、どこにしまってんだよ…」

 

「陸奥が見たらひっくり返りそうだな」

 

 誘爆上等な場所に火薬を満載していた山城を見て摩耶と天龍が笑うと今度は裾から箱状の物体が落ちる。

 

「「っ!」」

 

 時限起爆式、対深海用重地雷。

 

「てめぇ。そんなもん、すぐ落ちるところにしまってるんじゃねぇ!」

 

「え、こんな火薬を満載して三点着地してたでありますか!?」

 

 怖くなってきた摩耶、あきつ丸、天龍はエレベーターの壁に張り付く。艤装にも自分の身にも火薬を満載して、完全に動く火薬庫と化した山城は何をしているかのような目で三人を見る。

 

「いや、その反応はおかしいからな!俺たちがおかしいみたいな反応は違ぇよ!」

 

「備えあれば憂いなし…」

 

「やかましいわ!」 

 

 勢いで山城の頭を叩く摩耶。すると第二の重地雷が姿を表す。

 

「「「ぎゃぁぁぁぁ!」」」

 

 こんなものが起爆すればエレベーターにいる自分達は文字通り、木っ端微塵になる。三人が悲鳴を上げるなかエレベーターの扉が開き、山城が二つとも信管を抜いて蹴り飛ばす。

 

「気を付けなさい」

 

 その言葉と共に二つの重地雷が起爆し、深海の肉片がエレベーターの壁に張り付く。けっこうな量が青い血と共に付着し、待ち受けていたほとんどの部隊を吹き飛ばした。

 

「さらっと使うな。エレベーター歪んでるじゃねぇか!」

 

 突っ込みを入れながらエレベーターが出る摩耶。だが戦場を何年も離れていた彼女はやはり鈍っていたのだろう。横合いから強力な攻撃を受けて吹き飛ばされる。

 

「摩耶!」

 

「フフ…キタンダァ……?ヘーエ…キタンダァ…」

 

 砲撃、しかもかなりの威力を誇っている攻撃。続けて天龍を狙うが素早い動作で砲弾を切り裂き、なんとか生き延びる。

 

「あ…くそ。油断した」

 

「生きてるでありますな。それにしてもこんな対空と縁のない場所に良く居たでありますな」

 

 普通なら地上エリアで対空を張っていればこっちも全員無事だとは思わなかったが。確かに、なぜここにいるのか…。

 

「山城、お前は残れ。俺が相手する、お前たち二人は先に急げ」

 

「了解」

 

「了解であります。動けるでありますか?」

 

「舐めるな、ビックリしただけだ」

 

(たった二人で私の相手を…。あのヲ級といい私を舐めやがって…)

 

「コロス、ミナゴロシダ!」

 

俺を(ロートル)なめるなよ」

 

ーー

 

「ぐっ!」

 

「ガングート!」

 

 横須賀最終防衛ライン。ガングートは倉庫の壁に激突するとうめき声を上げる。

 

「貴方たちには分からない。全てを恨む私のことなんて」

 

「くそっ、空母だと思って油断した」

 

 ガングートの目の前に現れたのはサラトガ。闇に落ちた彼女は空母にあらず、彼女のへし折れた甲板はその姿に相応しい巨大な大砲と化していた。

 

「同士、無理しないで。」

 

「バカ言うな。もう上陸されているのだぞ!」

 

 文字通り、数の暴力によって押し込まれた彼女たちは敵の上陸を許してしまう。 

 

「こんなものが世界中にまわれば世界は滅ぶ!」

 

《非戦闘妖精、退避いそげ!》

 

《駄目だ。総員退避、急げ!》

 

 

「この横須賀が…」

 

 艦娘の間に合わなかった沿岸地区は既に火の海と化し横須賀基地も各所から黒煙が上がっている。

 

 佐世保とは違い、比較的平和だった横須賀からは信じられない光景だった。

 

「千歳お姉!」

 

「っ!」

 

 爆炎の中から現れたのは駆逐水鬼。彼女は千歳の攻撃を正面から受けるが怯まずに首を掴む。千代田も応戦するが機銃程度じゃどうにもならない。

 

「下がりな、千代田ぁ」

 

「隼鷹さん!」 

 

「ハハハハハ…! ヤミノナカデ……シズメェ!」

 

 いつの間にか駆逐水鬼の目の前に来ていた隼鷹を空いていた左手で殴る彼女だが駆逐水鬼の視界は反転し地面に叩きつけられた。

 

《いったい何が…》

 

「がはっ…はぁはぁ」

 

 駆逐水鬼の拘束を間逃れた千歳は地面に頭を埋める彼女の姿を信じられないとばかりに見つめる。

 

「装甲薄いからさ。痛いのはちょっと厳しいかなぁ」

 

「合気道…」

 

「いやぁ、地下の謹慎室から出されたと思ったら、こんなことになってるなんて知りませんでした。すいません」

 

 そこに駆けつけたのは比叡。彼女は地下の謹慎室で化学兵器の密造の疑いで1週間の謹慎処分が下されていたのだ。倒れている駆逐水鬼にさらっと主砲で止めを刺す。

 

「まさか、酒を取りに行くと言って比叡さんを出していたんですか!?」

 

「いやぁ。提督に言われたときはビックリしたよ。比叡。地下でぐっすりだったもん」

 

「完全に慢心してました。これからは気合い入れ直して行きます!」

 

 比叡らの参戦もあったが多勢に無勢。奮戦しているが数で押し込まれる。妖精たちが次々と逃げていく中、稲嶺はまだ工廠にいた。

 

「提督、私たちも逃げないと!」

 

「いや、もう来た…」

 

「え!?」

 

 刀を抜き、構える稲嶺。当然、これで勝てるなんてさらさら思ってはいないが無抵抗で死ぬのは嫌だ。工廠の壁を突き破り、姿を表したイ級。明石は搭載していた15.5cm三連装副砲で撃破する。

 

「ここまで来ているなんて…」

 

「どちらにしろ。ここが落ちれば俺たちは終わりだ」

 

 再び、激しさを増す雨風に曝されながら稲嶺はメガフロートのある方向に目を向ける。

 

ーー

 

「ぽいぽいぽいぃ!」

 

「あった!」

 

 その頃、別ルートから侵入していた川内たちは高速化をつけられ、管が身体中から生えているアイオアを発見した。

 

「早くしてください。こっちも弾薬が心もとないんです」

 

「わかってる。感情封鎖モードになってるか…」

 

 艦娘は大幅な改装などが行われる際。感情封鎖モードに移行する。文字通り、感情を0にして改装の間だけ物言わぬ存在とするモード。

 

 それが現在、アイオアに施されており。その解除は本国ではないと無理だ。

 

「緊急起動モードに移行。兵器使用は自由」

 

 緊急起動モードは感情封鎖時に無理矢理起動して戦闘を行うモードの事だ。その場合、艦娘は物言わぬ兵器と化す。本来なら艦娘を侮辱する行為なので行わないが今回は仕方がない。

 

「………」

 

 ゆっくりと目を開けるアイオア。彼女が砲を前方に向けると夕立たちは戦闘態勢に入るがそれは杞憂だったようで彼女らの後方にいた敵駆逐たちを吹き飛ばした。

 

「心苦しいですが…大丈夫のようですね」

 

「早く、天龍さんたちと合流するっぽい」

 

「わかってる」

 

 無事にアイオアの起動に成功した一行はすぐさま、反転し地下へと向かう。

 

ーー

 

「やけに固い装甲だな!」

 

 天龍は飛び上がると間合いを一気に詰めて防空棲姫に斬りかかる。赤々と熱せられた刃はいくら屈強な装甲だろうが切り裂く。咄嗟に下がった防空であったが砲身を一つ、持っていかれる。

 

「っ!」

 

 天龍の接近戦におののく防空にすかさず山城の砲撃が突き刺さる。天龍の剣もそうだが山城の砲もかなり厄介だ。しかも天龍を巻き込むことを考えていない近距離砲撃、厄介すぎる。

 

「あっぶねぇ、あっぶねぇ…」

 

 条件は同じはずなのに天龍だけは服にススが乗ったぐらいで無傷。頭に血が登りかけていた防空は一旦、落ち着いて相手を見据える。

 

 実力があると言っても所詮は天龍(ロートル)山城(失敗作)。完成体である自分に勝てるわけがない。 

 

「ブザマニ沈メテヤル」

 

 防空棲姫は不敵に笑うと自身の砲を向け、攻撃を開始するのだった。

 

ーー

 

「ここがコントロールルームでありますな」

 

「さっさと解体しよう。姉貴が心配だ」

 

 無事にコントロールルームにたどり着いたあきつ丸と摩耶、二人は天龍たちを心配しながら解体のためにコンピューターを操作する。

 

「分かってるで…っ!」

 

 その瞬間、誰もいない部屋から殺気が漏れる。あきつ丸は咄嗟に刀を抜き、切り裂く。

 

「あきつ丸!」

 

「ぐっ!」

 

 あきつ丸の左腕が空を飛び赤い血を撒き散らしながら床に落ちる。

 

「良くここまで来たな。だが…これまでだ」

 

 真っ黒な剣を持って現れたのはヲ級。

 

「言葉を…」

 

「さぁ、ここが貴様らの墓場だ…」

 

 血をボタボタと垂れ流すあきつ丸の傷口を押さえながら摩耶はこれまで見たことのないヲ級を睨み付けるのだった。

 

 

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