提督とはぐれ艦娘たちの日常   作:砂岩改(やや復活)

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陥落

《ついに、ついに佐世保を落としたわ!》

 

 心底楽しそうに笑う離島棲鬼。彼女の目には現場に派遣された深海棲艦から送られた視界が共有されている。その様子を見て自分のたてた作戦の成功にご満悦だった。

 

《援軍が来たようだけど大勢は変わらない。九州は頂いたわよ》

 

 5年前の借りをついに取り戻した彼女の笑いは止まらなかった。

 

ーー

 

「佐世保隊の撤退を援護します。金剛、援護を…」

 

「OK!行くねー加賀!」

 

 この世界で唯一無二の存在。戦艦加賀は連装砲を構えると襲ってくる深海棲艦たちに浴びせる。金剛と二人で火線を張る。

 

「仕留めます…」

 

 二人の砲撃の前に出てきたのはチ級たち。彼女らは頑丈に作られたボードを盾にするとその盾を利用して他の深海棲艦たちも火線を張ってくる。

 

「鎧袖一触よ」

 

 敵が攻め上がってくるのを加賀は冷静に対処する。第1射で盾を剃らさせすぐさま第二射で本体を仕留める。

 

「殿は勤めます。お早く」

 

「すまないな、鳳翔」

 

「いえ」

 

「五航戦…」

 

「なに?」

 

 戦艦加賀は空母加賀に背負われていた瑞鶴を横目で見ると高速修復材を渡す。

 

「使いなさい」

 

「…ありがとう」

 

「助かったわ、戦艦の…」

 

「気にしないで、空母の…」

 

 お互いの加賀は互いに目を合わせるとすぐにそれぞれの任務へと戻っていく。それを後ろから見ていた赤城は静かに微笑む。

 

「加賀さん」

 

「赤城さん。どうしたのですか?」

 

 空母の加賀が去った後。戦艦加賀の背中を守るように構える赤城。

 

「良かったですね」

 

「…そうですね」

 

 加賀は瑞鶴の元気な姿を見て内心ホッとしていた。そのその事を知っているのは加賀本人と赤城ぐらいだろう。

 

「五航戦は私だと気づかないでしょうね」

 

「まぁ、艦娘のモデルチェンジなんて本来ではあり得ませんからね」

 

 そらそうだろうと笑う赤城。その様子に加賀は少しだけ不満そうな顔をするがすぐに戻す。

 

「突っ込みます。援護を…」

 

「分かりました!」

 

 加賀は体勢を低くすると一気に駆ける。

 

《来るぞ、撃て!》

 

 加賀はその分厚い装甲で砲撃を受けながら勢いを落とさずにそのまま突撃する。加賀の10門の砲が火を吹き次々と深海棲艦が撃墜されていく。

 

「邪魔よ…」

 

 近くにいたツ級を殺るとそれを盾にしながら主砲と副砲を撃ち放つ。副砲の絶え間ない攻撃に気圧されダメージを受けるタ級、それを庇うようにタ級の前に出た戦艦棲姫は艤装を全面に押し出しながら突撃する。

 

「ギャァ!」

 

 待っていましたとばかりに主砲で戦艦棲姫の艤装を吹き飛ばす。だが本体だけでも戦艦棲姫は強力な深海棲艦だ。彼女はフルパワーで腕を振り上げると加賀に襲いかかる。

 

「無駄よ…」

 

 盾にしていたツ級を捨てた加賀は腰に掛けていた刀を抜刀。戦艦棲姫の右腕、左腕と斬り飛ばす。

 

《がぁ!?》

 

《化け物が!》

 

 一瞬で戦闘不能にされた戦艦棲姫を援護するために加賀に集中砲火をする深海棲艦。だが加賀は高々と飛び上がり砲弾を回避。

 

《どこに!?》

 

《バカ、上だ!》

 

 タ級は必死に上空にいる加賀に当てようとするが当たらずに接近を許してしまう。

 

《なに!?》

 

 加賀はタ級の両肩に着地と同時に主砲を放ちタ級を撃破。タ級と主砲弾の爆発で加速した彼女は迎撃のために杖を向けていたヲ級に迫る。

 

《!?》

 

 迎撃する暇もなくヲ級は加賀にタックルされ倉庫の壁に激突。そのまま気絶する。

 

「っ!」

 

 そんな加賀に敵からの砲撃が雨のように降り注ぐ。

 

「まったく、一人で突っ込まないでよ!」

 

「羨ましいな。その姿勢は!」

 

 若葉は迫ってきた砲弾の3分の1を撃ち落とし、村雨は錨を高速回転させて防御する。

 

「時間は稼げました。我々も撤退します!」

 

「「「了解!」」」

 

 鳳翔の言葉と共に赤城や加賀たちは順次撤退。赤城の飛行隊が煙幕を派手に撒きながら撤退していくのだった。

 

 こうして九州絶対防衛ラインである佐世保、鹿屋の陥落にて九州は深海棲艦の支配下に置かれることになる。九州を拠点としていた艦娘たちの働きで民間人のほとんどを救出。その後、艦娘たちは中国地方、四国の基地や鎮守府に身を寄せることになった。

 

ーーーー

 

「随分と手痛くやられたな…」

 

《ヲ級さま…》

 

 ヲ級の部隊は佐世保に到着した頃には戦闘は終了し撃破された同胞たちが次々と運ばれていく。残存艦に補給をするためだ、そんな中、軽巡棲姫がヲ級の元に駆け寄ってきた。

 

「泊地は逝ったな…」

 

《はい、これだけが潜水部隊にて回収されました》

 

「そうか…」

 

 泊地が持っていたはずのライフルの様なもの。それを受け取ったヲ級は後ろに控えていた重装ネ級に渡す。

 

「私が使えるようにしてくれ」

 

《了解しました》

 

「さて、日本を切り崩すぞ…次は呉だ…」

 

 楽しみに呟くヲ級は無傷なはずの腸をなでるのだった。

 

ーー

 

「艤装の回収はしっかりとね!」

 

「重傷者を最優先に、高速修復材を全部使っても良いってよ!」

 

 佐世保主力隊は無事に呉に到着。それまでに幾度もなく深海棲艦たちの追撃を退けてきた彼女たちは満身創痍だった。怪我こそ比較的に少ないが精神的疲労が目立っている。

 

 叢雲たちは高速修復材を頭からぶっかけられるとそのまま医務室のベットで寝かせられる。

 

「いでででででで!」

 

「うわぁ…」

 

 高速修復材を頭からぶっかけられた瑞鶴は右腕が急に生えてくる感覚に身悶える。その様子を周りの艦娘たちは同情の目線で見る。ある程度、経験を積んでいる艦娘たちなら一度は経験しているものだ。あれはそうとう痛い。

 

「凄い、戦艦の加賀さんだ!」

 

「初めて見るな」

 

「あれが元帥の部隊か…」

 

 悶えている瑞鶴をよそ目に戦艦加賀も注目を集めていた。いままで知らなかった存在に全員が興味深々だ。

 

「お待ちしておりました元帥、神楽座少将」

 

「緊張しなくていいよ青波大佐」

 

「おまんの航空隊で助かった。礼を言う」

 

「はっ、光栄です」

 

 元帥と千代音を迎えた青波は先程、作られた対策室に案内する。

 

「戦力を出来るだけ集めるんじゃ。敵が本土攻撃の態勢を整える前に九州を奪還せにゃならん」

 

「現在は大本営から出撃した爆撃隊が九州を爆撃中です。横須賀、舞鶴ともに艦隊を出撃準備中です。その他の基地も参謀が襲撃命令を下しました」

 

 現在、参謀が大本営を取り仕切っている。ここで彼の活躍が認められれば無事に元帥の地位は彼のものになるだろう。

 各基地は準備が整い次第、呉を中心に集結。四国、中国地方の基地に配備される。

 

「先程、送られてきた書類です。この呉には指定の基地の部隊が集結します」

 

「ん、琵琶基地。彼らも参加するのか…」

 

 元帥の言葉に扉の近くに控えていた伊勢が反応する。それを見て青波は本の少しだけ表情を曇らせるのだった。

 

ーー

 

「おいおい、ちょっと待てよ。夕立の話が本当なら…」

 

「あぁ、俺の仮説が的中することになる」

 

「これはこれは、流石に笑えんでありますな」

 

 夕立の過去を耳にしたメンバーは唖然としその内容に耳を疑う。

 

「おそらく、神楽座少将も気づいてる。でも口にしない、あくまで仮説に過ぎないからだ」

 

「なるほど。それが本当なら佐世保が堕ちたのも納得がいきます」

 

「まぁ、向こうを甘く見すぎてたってことだ」

 

 驚く摩耶、あきつ丸に対し不知火、川内は落ち着きながらこの状況を理解する。そんな時、大本営からの命令書が琵琶基地に送られてくる。

 

「お、反撃のための命令書か?」

 

 天龍は嬉々として命令書を読む。するとその表情はあまり良いものではない方向に変わる。

 

「おい、提督」

 

「ん?」

 

 予想通り、大反抗作戦のための命令書ではあったがその集結ポイント。呉と表記された文を見た稲嶺は思わず口をつむぐ。

 

「提督、もしかして…」

 

「参謀め、俺に何をさせたいんだ?」

 

 その表情で察した山城は命令書を奪い取るとビリビリに破り捨てる。

 

「え、あ?」

 

「うん、気にしない方が身のためだよ」

 

 状況を理解できていない飛龍を明石は同情の思いで肩を叩く。

 

「そろそろ向き合えって言ってるんだよ。なぁ、提督。日向に会いに行こうぜ…」

 

「お膳立ては充分と言うわけか…」

 

 




各艦娘の練度

伝説級 150オーバー No.1シリーズの天龍、叢雲、暁。元帥の鳳翔など

歴戦級 110オーバー 呉の伊勢、佐世保の瑞鶴、戦艦加賀、琵琶基地メンバーなど

エース級 90オーバー 長門、陸奥、大和、武蔵、元帥直属隊など

 この作品の練度設定

 99を越えるために特に指輪は必要としない。指輪は限度値を越えるための最短ルートではあるがある程度の経験を積めば自然と100越えは可能である。だが並みの艦娘では限度は越えられない。

 なのでケッコンカッコカリと言っても実質的に提督にとって特別な艦娘たちに送られる傾向がある。



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