提督とはぐれ艦娘たちの日常   作:砂岩改(やや復活)

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終戦

 

「ふぅ…」

 

 致命傷とも言える傷などいくらでもある。すでに海の上でなら沈んでいた事だろう。だが日向の思考はひどくクリアで冷静なものだった。

 

「………」

 

 対して深海刀棲姫は彼女の挙動を見逃さないと気配を全て日向に全神経を注ぎ込む。

 

(日向…)

 

 鳳翔の手際よい処置を受けていた稲嶺はその戦いを静かに見つめる。

 

「………」

 

「……」

 

 先程までの騒ぎが嘘のように静まり返る。その静かさが日向を磨きあげる。全てのエネルギーを剣を振るうのに必要な場所に送り込む。その時、彼女は呼吸すら忘れ敵を見つめる。

 

 日向は大上段、対して刀棲姫は脇に構えて大きく体を捻る。最大の攻撃と最大の迎撃。両者の図式が決定し、賽は投げられる。

 

(っ!)

 

(取った!)

 

 刀棲姫は日向の気の起こりを完全に察知し剣を振るう。他の艦娘すら残像を認識できる程の剣速。両者は背中合わせに立ち、沈黙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一拍置いて日向の刀が半ばで折れ、同時に彼女の右腕の肘からしたがボトリと落ちる。

 

「悔しいなぁ…腕一本か…」

 

「お前を倒すためなら腕一本程度、惜しくもない…」

 

「次は負けない…次があればな……」

 

「それはお前次第だな…」

 

「あぁ…」

 

 刀棲姫は頭から股をまっぷたつに切り裂かれており体が左右にお互いにズレ始めると静かに肉塊となるのだった。

 

ーーーー

 

「アイツが…死んだ…」

 

「ヲ級さま…」

 

 刀棲姫配下の深海軍団はすぐに彼女の死を感じた。離島も刀棲姫も失った深海艦隊は完全に指揮官を失い混乱をきたす。その混乱を見逃さない艦娘たちは一気に攻勢を強める。

 

《全軍撤退!各艦、沖縄まで撤退しろ!》

 

 イ級などの駆逐艦たちが撤退を始め、人形の巡洋艦や戦艦棲艦たちが援護のために弾幕を張る。

 

《撤退しろ!はやく!》

 

 ネ級の声も虚しく、次々と味方が撃破されていく。傷ついたル級を守るために深海鶴棲姫が援護するが赤城の爆撃に巻き込まれ沈む。

 

「オノレェぇぇぇ!」

 

 最期まで援護に徹する鶴棲姫も接近していた瑞鶴と大鳳の艦載機にやられ削られていく。

 

「うるさいわね。静かにしていなさい…」

 

「カガァ……」

 

 戦艦加賀の砲が直撃。撤退の要であった鶴棲姫の轟沈によって掃討戦が展開される。

 

「なに!?」

 

 なんとか後方まで撤退したサラトガだったがそこで艦載機の奇襲を受ける。

 

「あれは…F6F-5とTBM-3D」

 

 アメリカ合衆国の艦載機、それを見た瞬間、彼女は正体を一瞬で察した。

 

「サラトガぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 偽装空母サラトガ轟沈。

 

「任務完了…」

 

「よかったんですか?」

 

「そうね、私の怨念だから私が終わらせないと…」

 

 ガンビアベイは悲しそうに佇むサラトガMK-2の背中を見ながら口を紡ぐ。大使館から知らせを受けて待ち構えていた彼女はサラトガを撃つためだけにここまで足を運んだのだ。

 

「それに我が国の汚点は消し去らなければならないしね…」

 

《ヲ級さま…サラトガ……。くそ、くそくそ!》

 

「クソォォォォ!」

 

 こうして深海棲艦たちによる二度目の日本侵攻は終わりを告げたのだった。

 

ーーーー

 

「負傷者を早く!」

 

「バイタル低下、誰でもいいから来て!」

 

 勝利を納めた呉鎮守府。だが勝利と呼ぶにはあまりにも被害が多く。凄惨な光景を産み出す結果となった。

 大怪我をした艦娘たちが次々と運び込まれるが物資も人手も足りずにただ死に際で持ちこたえるしかない艦娘たちがそこらじゅうに転がっていた。

 

「状況は?」

 

「バケツも既に使いきってるし、修復包帯も底が見えています。このままじゃ多くの子達が死んでしまいます」

 

 あまりもの光景に青波は息を飲むがそうは言ってられない。大鳳によればここの物資もほとんど残っていない。

 

「伊勢はどうした?」

 

「山城の元に…もう駄目だそうです……」

 

「…そうか」

 

ーーーー

 

「しっかりしろ山城!」

 

「死ぬなんて許しませんよ!」

 

「山城……」

 

 全身の至るところから血を吹き出している山城は完全に虫の息であった。呼吸の音さえもカヒューという音が伴い命の灯火は後少しだけであった。

 不知火たちも必死に血を止めようとするが手の隙間からも勢いよく血が吹き出している。あきつ丸は明石に視線を移すが残念ながら手立てがないと静かに目をつぶる。

 

「てい…とく……」

 

「山城!」

 

 なんとか止血で命を長らえた稲嶺は山城の血まみれになった頭を優しく撫でてやる。もう彼女には腕がない、

 

「ひゅ…が……いせ…」

 

 日向と伊勢も静かに血まみれの頬に手を添える。薄れゆく意識でありながらも山城は力強い瞳を向ける。言葉はもう紡げない、だからこそ眼で語る。後を頼むと、そう彼女は告げていた。

 

「当たり前じゃない」

 

「なら私は何のために生き返ったんだ、当然だろう?」

 

「カヒュー、カヒュ…」

 

 バケツさえあれば助かった命だ。だがバケツ以外で彼女を助ける手段はなく、ここにはそれがない。

 

(提督…やっぱり日向に取られるのは癪だわ。本当に私は不幸なのね…)

 

 こうして山城は静かに生命活動を停止させる。だがその死に顔は実に満足そうな笑みを浮かべて…。

 

「伊勢、彼女は琵琶に持って帰るよ。そこで埋葬する」

 

「山城も貴方の側なら満足するでしょう」

 

「また生き残っちまった…俺はいつも見送る側だ…」

 

 摩耶に支えられて見送った天龍は静かに山城を見つめる。

 

「……」

 

「山城はかつての同僚でした」

 

「大鳳」

 

「強いくせに自分を貶めて、努力を忘れない人でした」

 

 琵琶メンバーが見送っている背中を見つめていた飛龍に大鳳は歩み寄る。

 

「愛する人に見送られたのです。良い最後だったでしょう…」

 

「蒼龍もそうだった。笑顔で死んだ、でも残される者は堪らないわ」

 

「そうですね。生きている方が辛いばかり、我々には寿命と呼べるものは存在しませんから。私たちは余計に背負い込まなければなりません」

 

「この死が山城にとって最高の死に方であったと思いたい」

 

「そうですね」

 

 深海棲艦の第二次大侵攻による被害は前回を大幅に上回ることになる。それでも民間人の被害がほぼ皆無であったのは一重に彼女たちの奮闘があったからだと言える。

 

 





ひとまずストーリーはここで終了です。

 こう言う小説を書くと艦娘たちの数の多さに改めて舌を巻かされます。艦娘多すぎ…。
 当初はパトレイバーみたいな感じでやっていこうと思ったんですが脱線してシリアスな感じのやつに仕上がりました。(これはこれで良いと思います。個人的に)
 当初の目的であるカッコいい艦娘たちと言うものを書けたので良かったです。私の推しはもちろん、日向と山城です。(本当は殺すつもりはなかった…)
次はちゃんと題名通り、日常を扱った短編でも書いていこうと思います。
では、最期までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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