提督とはぐれ艦娘たちの日常   作:砂岩改(やや復活)

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攻勢

「さて、みんな。なぜかやる気満々だけど」

 

「あったり前だろ!久しぶりの実践だ、四年ぶりだぜ!」

 

 琵琶基地執務室に設置された机とホワイトボード、黒板には今までにないほど地図などの資料に埋め尽くされていた。

 

「アメリカ大使館経由で手に入れたメガフロートの内部構造図だ。それとこれはメガフロートと共に強奪されたアイオワのデータ」

 

「うわ、複雑ぽい」

 

「深海棲艦の上陸に備える筈だった複雑構造だ…」

 

「それがまんまと敵の手に…落ち度の塊ですね」

 

「俺が考えている方法はただ一つ。中央管制塔を占拠してメガフロートをパージさせて鉄屑に変える。それしかない」

 

 提督の言葉にその場に集まっていた全員が同意する。これ程の大きさは外部からの攻撃でバラせるわけがない。

 

「折角、割りの合わない任務が沸いて出そうなときに提督が寝てたら。引きずり出してやろうかと思ったが、やる気があって何よりだなぁ」

 

「じゃあ、ひとまず死なずに済んだかな」

 

 天龍の言葉に提督も笑顔で返す。どうやら、ここの奴らはこう言う時を待っていたらしい。まぁ、戦うために生まれてきたと教育され育ってきた奴等にとっては戦いがあるのに戦えないのはかなりの苦痛だったかもしれない。

 

「それで、艤装は来るのでありますかな?」

 

「手配は明石がしてくれている。恐らく来るはずだよ」

 

「中央管制塔のフロート管理エリアへの最短ルートはBー3の隔壁を通って中央兵器エレベーターで最新部に向かう。地下四階、その後は複雑な通路が張り巡らされてるがこれも明石が用意している端末の支持通りに動いてくれれば着くはず」

 

 やけに大きな設計図を指しながら説明する川内の言葉を漏らさないように耳を傾ける一同。そんな中、不知火が疑問をあげる。

 

「アイオワの扱いはどうしますか?」

 

「状況によるけど出来るだけ救出したい」

 

「アメリカに貸しを作る絶好の機会だしな、ほっとけねぇよ」

 

 摩耶が嬉々としながら麦茶を飲む。脳筋に見えて見るとこはしっかり見ている彼女の言葉に全員が無言の肯定をする。

 

「起動データは私が持っている。起動は私に任せて欲しい…」

 

「分かった。不知火と夕立はアイオワの救出に他の天龍、摩耶、あきつ丸、山城は中央管制塔の占拠に向かってくれ。ナビゲーションは俺と明石がする」

 

「やることは分かりましたがその後はどうするのですか?敵のど真ん中に居るのは変わりません…」

 

「そこは近辺の鎮守府、基地の艦隊に救出に向かわせる。そこいらの手回しは今、行っているところだ」

 

 正直、稲嶺は提督間の立場はあまりよろしくない。こんな基地の提督に命じられる時点でお察しだと思うが、あらかたの了承は取り付けているが少し難しい。

 

「艤装が届き次第、調整に入るが細かいセッティングは個人で行って貰うだろうね」

 

「どうやって敵の基地に行くっぽい?普通に行くっぽい?」

 

「いや、艤装次第ではあるが一つ考えがある。それは追って伝える」

 

 一瞬、嫌な予感がした山城だがそれはあえて黙っておく。周りは数年ぶりの戦闘の予感に奮い立っている。そんな彼女らになにも言わない方が身のためだと思ったのだ。

 

ーー

 

 その頃、大本営所属の工廠。三重の大型工業施設が立ち並ぶ沿岸部に封印されていた艤装を明石は後輩の夕張の元、地下の艤装管理施設から取り出していた。

 

「許可が降りたのはこれだけ、これじゃ死ねって言ってるようなものじゃない!?」

 

「そう言われても明石先輩。艤装の許可だけで精一杯ですよ!」

 

「艤装課の主任がなにいってるのよ!」

 

 ここ周辺の工廠などはすべて叱られている夕張が監督している。そんな彼女が普通に怒鳴り散らされているのを妖精たちは物珍しそうに見ていた。

 

「航行用の艤装だけなしなんてバカな話がある!これじゃあ、海上戦闘が出来ない!ただの浮き砲台よ!」

 

「すいません!」

 

 サングラス越しに睨み付けられている夕張も申し訳なさそうに謝り続ける。そんな彼女を怒鳴っても仕方がないので腹を立てながら明石は電話で提督と連絡を取る。

 

「なるほど、それでは脱出が困難になるね」

 

「どうしましょうか?」

 

 事の顛末を聞き届けた提督は少し考えるように沈黙するが仕方なしと考え言葉を発する。

 

 「救出部隊に頼るしかないか。でも艤装だけは手にいられたんだ。仕方ないけどそれで良しとしよう。それとちょっと電報を打って欲しいんだけど」

 

「え…分かりました」

 

「あのタヌキジジイめ…」

 

 どうやら本格的にこちらを潰したいらしい。なにが人道派だクソヤロウ。

 提督は悪態を着きながら受話器を下ろすと一息着く。久々にみんなが活気に溢れている。この流れを失うのはとても惜しい、絶対に作戦を成功させなければならない。

 

ーー

 

 提督が執務室で悪態をついていた頃。あきつ丸たちは隣の部屋で作戦会議を続けていた。

 

「で、アイオワのどこが新しくなったんだよ?」

 

「これじゃないですか?」

 

 アイオワの設計図を見ながら話す天龍。すると不知火がなにか二つ、見慣れないものが着いているのを見つける。

 

4連装装甲ボックスランチャー×2基

 

「「「「トマホークじゃねぇか!」」」」

 

 流石にこんな化け物。敵に回ったら一たまりもない、アイオワの救出は少し考えなければ。

 

「それは名前はあれだがただの無誘導ロケット砲だ」

 

「「「ほっ…」」」

 

「紛らわしいわ!」

 

 川内の説明にアイオワの設計図を投げ飛ばす摩耶。一応、それは国家機密なのだが彼女には関係ない。

 

「こんなアイオワがこれから出てくるのか?」

 

「いや、今回の件が切っ掛けに敵に解析され主力とされてはかなり危険だからと。装備は就役時の装備に統一するそうだ、ハープーンが敵の手に渡れば私たちは終わりだからな」

 

「これでよくも悪くも俺たちは進化できねぇって訳か」

 

「そうでありますなぁ」

 

 流れるような手つきでタバコを着けようとしたあきつ丸だったがジッポの火を川内の指で潰され阻止させる。

 

「別室でやれ」

 

「了解であります…」

 

 基本的に怖いもの知らずなあきつ丸だが川内は苦手な人種の一人だった。すでに天龍もガムを噛んでタバコを我慢している。

 

「でも敵はどこから来るっぽい?」

 

「それが問題なんですよね」

 

 夕立と不知火の疑問に全員が黙り込む。言ってみればそれが最大の不安要素なのだ。

 

ーー

 

「これは…不味いわね」

 

「どうしますか?」

 

「提督に報告。偵察隊を出して全容把握に努めて」

 

「分かりました」

 

 叢雲の指示で偵察隊を飛ばした加賀はゆっくりと後退する。

 

 沖縄に駐留していた深海棲艦の大艦隊が行動を開始。佐世保、呉鎮守府は直ちに警戒レベルを引き上げ即応態勢に移行。日本中に緊張が走る。

 

「もうすぐ嵐が来るわ…」

 

「伊勢…」

 

「嵐は好きだわ。空を見なくて済むから…」

 

 実質的な睨み合い状態になった状況。そんな中、超大型台風が日本に上陸するのだった。

 

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