ブリュンヒルデ VS ヤング・サムライジャック   作:梵葉豪豪豪

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 別作品が滞っているにもかかわらず書きました。昔構想していて今やってみました。
 テーマは「愛」です。


01 学園のサムライ

「納得行きませんわ!」

 

 授業中の教室にて立ち上がり抗議したのは、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、略してイギリスのイングランド人であり、留学生でもある金髪白人女子、セシリア・オルコットである。

 

 ここは「IS学園」の1年1組。人型機動兵器「インフィニット・ストラトス」略称「IS」の技術を学ぶために設立された国立の女子高等学校だ。国立で専門知識を学ぶ3年制の高等学校という5年制の高等専門学校とも違う従来にない特殊な学術機関となるため、わざわざ法令を立ち上げてまで設立された。

 

 その学園の1学期入学式翌日の初日において、クラス代表、つまりは学級委員長を決める場においてのハプニングである。

 多くのクラスメイトが推薦したのが、学園唯一である男子生徒、織斑一夏であったからだ。ISは特性上女性しか操縦を受け付けず、必然的にIS学園は女子高となっていた。が、つい先日男性の適合者が発見され、身元の保護の意味もあり学園に入学という形となった。

 

 その一夏が事態におたつく中、セシリアは彼を睨み、またクラスメイトに対して言い含めるように語った。

 

「あのですね、クラス代表という物は実力で決めるべきでございましょう? 目先の物珍しさで選んでしまっては皆様も後々後悔いたしますことよ!?」

 

 クラスメイトらは微妙に目を逸らして黙ってしまう。一夏が初の男性適合者というレアなケースであること、担任でありIS業界の実力者でもある織斑千冬先生の実弟でもあるという話題性などから選んだ、つまりは図星であったからだ。

 

 ここに来て担任の織斑千冬が行動に出る。多少の揉め事程度では動じない。副担任の山田真耶はおろおろするばかりだ。

 

「で、オルコット自薦、と」

「え、あの」

 

 冷静に黒板にセシリアの名前を書き込んでいく千冬。

 

「千冬姉……」

 

 一夏は姉の行動にちょっと溜飲が下がった気分になった。だがそれを見透かされたのか、セシリアに睨まれる。

 

「ともかく織斑さん、あなた自身も問題です! ヘラヘラして危機感も持たず! 授業も聞いておらず! その席を獲得するために周りの生徒はどれだけ苦労してきたと思っているのですか? あなた一人のためにどれだけの人間が苦労して犠牲になって支えているとお思いなのですか!?」

 

 セシリア自身はイギリスの代表候補生でもある。その物言いからも、本人が人並み以上の努力をして勝ち取った地位であることは大方に想像できたし、本人としても看過できないものがあった。

 

 尚この時間の前の授業において一夏が授業わかりませんとか参考書捨てましたとまでカミングアウトしていたが、その時クラスメイトの大半は内心イラッとしたことは付け加えるべきことだろう。後に一夏はクラスメイトからそう指摘されたが。

 

「……そりゃそうかもしれないけどさ……! そこまで言うこたないだろうライミー!」

 

 図星を取られて一瞬カッとなった一夏の売り言葉である。ライミーはイギリス人の蔑称であるが、そもそも公の場でそういう言葉を使っていいものではない。

 

「あなた民族単位で喧嘩を売るおつもりですか? 買いますよ?」

 

 増々目つきを鋭くし冷ややかにセシリアは一夏を見据えた。そして反骨心が人一倍強いのが一夏なのだ。

 

「おうここで引き下がっては男がす」

「双方そこまで!」

 

 一夏が最後まで啖呵を言い切る前に、凛とした男の声が教室に響いた。

 

 立ち上がったその男は、180cmの長身を持ち筋肉質のモンゴロイドであり、髪はオールバックにし後頭部上側で結わえる、いわゆる総髪にした17、8歳の年頃の少年である。本人の年齢不相応な落ち着き払った姿勢もあって、インパクトは結構持ち合わせている。少年と呼ぶよりは偉丈夫という言葉が相応しい。

 その彼が両手のひらを一夏、セシリアの方に向け、止め、のゼスチャーを保ちつつ説得を試みる。

 

「これ以上の口争いは双方益にならぬでござる。ここは両者引いて頂けぬか?」

 

 静かな、そしてしっかりした声である。

 世間的には一夏と並ぶ初の男性新入生として入学してきた彼である。そう、男性の適合者は二人なのだ。クラスメイトがその偉丈夫の偉丈夫ぶりにざわめく。

 

「何ですのあな……いやそうですわね……」

 

 熱し過ぎた自分を恥じ、セシリアはその場を引いた。一夏はただぽかんとしていた。

 

 この様相を顎に手を当てつつニヤニヤして眺めていた千冬は、クラスに向かって敢えて提案してみた。

 

「こういうものは、つまるところ実際にぶつかり合って決着を付ければいいということだな。IS学園だけにISで」

「千冬殿?」

 

 男が、何を企んでいるって目を千冬に向け訝しむ。プロのセシリアと、ISに試験で乗っただけの素人の一夏を戦わせようというのである。大人と子供レベルの差になってしまう。

 

「織斑先生だジャック。そういう訳で織斑一夏、セシリア・オルコット、ジャック・ラマールの3名はISで試合してその結果でクラス代表を決めてもらう。織斑、覚悟を決めろよ?」

 

 矛先を向けられた一夏は、事態の推移に驚くと同時に別のことに気が向いていた。先程の男、ジャックについてである。

 

「え、ジャックさんも入んの!?」

「推薦はあっただろう?」

 

 呆れつつも千冬はチョークにて後ろ手に黒板をトントンと叩く。確かに一夏と並んでジャックの名前が書かれてあった。要するに一夏が緊張していて話を聞いていなかったのだ。

 

「ちふ……織斑先生、何を企んでおられる?」

 

 ジャックが片眉を上げ千冬に問い質してみる。とはいえその表情は苦笑いだ。ジャックとしては意図を何となく察したためである。一方で、察しのいい人が見れば、ファーストネームで呼び合う間柄であることに気付くだろう。

 

「いや何、この機会だ、今後のためにもお前の剣士としての実力はアピールしておくべきだと思ってな。お前らに言っておくが、こいつ、物凄く強いぞ?」

 

 クラス中がざわめいた。何せISの世界でも最強に列する女、通称ブリュンヒルデに認められた腕を持つ男だというのだ。

 

 前の席に座っていた剣道少女、篠ノ之箒は「剣士」という言葉に反応した。成程見れば彼の机の傍らには、長物が収納された袋が立てかけてある。自分と同じ木刀を持ち歩いているのだろうと察し、またその体格と佇まいから強者であろうと予感を覚え、一種の憧れを抱いた。もしその袋に納まっている物が真剣であると知ったらまた違った感想を抱いたであろう。

 

「あなた一体……?」

 

 セシリアの問に彼はただ一言、

 

「ただのジャックでござるよ」

 

 

「ジャックさーん」

 

 夕食時の食堂にて、夕食のトレイを持ったジャックに向かって、手を振り快活に声を掛けたのは、1年4組の更識簪である。青みがかった髪を持ち、眼鏡を掛けている子だ。女子高にも拘わらず男の名前を呼ぶ声に周囲がぎょっとする。

 

「簪殿」

 

 彼女、更識簪の向かいにジャックが着席する。彼女の夕食はラザニア、一方のジャックはサバ煮定食であった。東洋人のジャックは和食が好きである。日本ではよく口にする。

 同年代でも背が低い部類の簪と相対すると、あまりの身長差に周囲から見た違和感はなかなかのものがある。尤も、当人たちは気にしないが。

 

 簪がしみじみと、しかし笑顔で語りかける。

 

「思ったより学園内では会う機会ないものですね」

「そうは言っても同じ学び舎の中でござる、こうして会う機会も増えるでござろう」

 

 クラスが違うとなかなか難しいものがある。とはいえジャックの言う通り、会う機会は幾らでもあるだろう。

 

「寮部屋も一緒だと良かったんですけどね」

「簪殿の姉上が黙っていないでござるよ?」

「ですよねー」

 

 ジャックは本日2度目の苦笑いである。二人部屋が基本の寮においてジャックのみが一人部屋になる。特に配慮だの陰謀だのがあった訳ではなく、単純に人数で割った結果である。

 

 

 ジャックが食堂から寮へと戻る道すがら、屋外の廊下にてある女子生徒と鉢合わせになる。彼女は壁に寄りかかって腕組みをしていた。ジャックに対し睨みがちの視線を送る。

 

「ジャック、学校はどう?」

「こういう平和も悪くないでござるよ」

 

 彼女は更識楯無、2年生でであり生徒会長、そして学外では代々続く隠密の家系の当主である。同時に簪の姉でもある。

 

「あなた、本当に何者かしら? うちの父が伊達や酔狂で拾ったようなようなものだけど、知らないまま今に至るのはね」

「拾っていただいた点は本当に感謝しているでござる」

 

 曇るところなくそう感謝の辞を述べたジャックに対して、楯無は溜息を吐いて応えた。結局は自分が聞きたいことは答えてもらえない。

 

 先代の第16代当主、彼女の父が戦場にいたジャックに惚れ込み保護したのが数年前、更にISに適性があることが発覚し、更識家が後ろ盾となる形で秘密裏に政府と協議や調査を進めていた。ところが新しい適合者の男性、つまりは一夏の存在が公に発覚したため、敢えて「2名の男性適合者が発見された」と公表に至っている。

 現当主の彼女にしてみれば正体の知れない胡散臭い少年とどうしても映ってしまう。何せジャック・ラマールという名前自体明らかに一族の者に会ったその場で考えた偽名にしか思えない。

 

 本音のところを言えば、妹が彼に懐いているのが気に食わない、という関係者一同が苦笑いするような面があるのは否めないが。

 

「話せるときがきたら、いずれ」

 

 ジャック自身は打ち明けずに済めばそれで良いと考えている。それを見透かしたのか楯無は、

 

「……まぁ、いいわ。いずれ、必ずよ」

 

 そう言い残して後ろ手に手を振って去っていった。

 

 彼、ジャックはかつて古代において、この世の絶対悪「アク」と戦っていた。だが「アク」により遥か未来に飛ばされ、既に「アク」による絶対支配が成された世界においても各地を放浪し戦い続けた。

 だが「アク」を追い詰めたところで、今度は過去に飛ばされてしまった。しかも無力な幼い子供に若返らせられて。無力なままのたれ死ねと。

 だがそれも10年も前のことである。世界中を放浪し鍛え直し、「アク」の手掛かりを求め奴の配下である魔物を倒していった。そして幼い子供は逞しい少年になった。

 そうして放浪していた頃にジャックは千冬と間見えている。

 

 そういった事情があり、更識家に魔物が潜り込んでいないとは限らないという慎重さがあってそういった話は切り出していない。そもそも自身の過去をおおっぴらに語る趣味はない。この姉妹が魔物に取り憑かれていない点に関しては保証できるが。

 

 ジャックの背後から、黒い何かが横切ろうとしていた。男のジャックには目もくれず、その先にいる女の楯無を狙っている風であった。

 追い越す瞬間、ジャックが腰に下げた「魔剣」が一閃、その「アク」の魔物は自覚することなく真っ二つになって絶命した。

 

 これで学園を狙った魔物は粗方斬り伏せた。最後に残った木っ端の侵入を許したのは、単純にジャックの取りこぼしと、各所に設置した魔除けの配置に穴があったためである。

 

 今夜はもう一度見回りをしなければならないらしい。

 




・ジャック
 当初はオリ主によるチャンバラバトルを考えていた。でも煮詰める内これジャックじゃんってなったのでいっそジャックにした。どうも自分の理想のサムライ像はジャックらしい。モンゴロイド系というくだりは原作のビジュアルから独自に勘案した。

・千冬
 寮の部屋割りについて当初ジャックを自分の寮長室に同居させようと言い出していたウーマン。彼がまめに掃除をする人なので。

・セシリア
 噛ませ属性を除いたキャラとして描いた。例のあのシーンにおいてセシリアが言いたいことの本質はこういう部分なのだと思ったのでこうした。

・楯無
 現時点で微妙にイモ引いてる人。この作品のメインヒロインは千冬だけに。

 次回は即セシリアバトル。
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