デジモンストーリー サイバースルゥース 続(仮)   作:オキチャン

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元々は相羽アミを主人公としたサイバースルゥースの物語を書いていた私ですが、今回は完全オリジナルです。

この物語はサイバースルゥース、ハッカーズメモリー完結後の話となります。
念のためネタバレ注意です!


第0話(上) 神は賽を投げない

あの闘いから一年、僕等は全てを賭けて戦った。

イーターに食い荒らされたデジタルワールドの最も中枢の部分。デジタルワールドのホストコンピューターであるイグドラシルが存在している場所。

そこでは世界を掛けた大規模な戦いがあった。それは選ばれし者と言われた5人の人間たち、その戦いで世界に裁定が下された。

デジモンが存在しなかった世界、そしてイーターが存在しなかった世界に書き換えられた。

世界に初めてイーターが現れた8年前からの全てを書き換えることになり、EDEN症候群になった多くの人間が8年間寝ていたことになった。

最初のEDEN症候群患者の「神代勇吾」、そして僕《相羽タクミ》も……。

 

1年前 イグドラシルコア

 

デジタルワールドの世界そのものがイーターに荒らされ、世界は崩壊寸前だった。

地面も空も空気もすべてが異形に染まった世界の中で行われた一つの戦い。

耳に響き渡る爆発音、鳴りやまない攻撃音の中で僕等は戦っていた。

末堂アケミによって本格的に動き出したマザー・イーターは最早止まらない。もう一度マザー・イータ―を攻撃し無力化するしかない。

そしてコネクトジャンプして末同を引きずり出すしかない。

 

ドルゴラモン「タクミ……本当にやるのか。」

 

タクミの最も付き合いの長いパートナーデジモンのドルモンの究極体ドルゴラモンが迫りくる大量イーターやイグドラシル_7D6の攻撃を掻い潜り後方の無数に浮かぶ地面の上にいるタクミに言った。

 

タクミ「うん、やるしかない!」

ドルゴラモン「良いんだな、これ以上コネクトジャンプを繰り返したら、お前の体はもたないかもしれないんだぞ。」

タクミ「でも僕がやらないと、こいつは止まらない…。」

ドルゴラモン「………。」

スレイヤードラモン「タクミは覚悟を決めたのだ。我等パートナーが答えずに誰が答える!!」

 

ドルゴラモンと同じくタクミのデジモンの一人であるドラコンの究極体スレイヤードラモンがドルゴラモンを叱咤する。

 

ドルゴラモン「お前に言われなくても分かっている!」

スレイヤードラモン「だったら攻撃の手を緩めるな! セントガルゴモンはタクミを乗せて我等の援護を頼む!」

タクミ「セントガルゴモン!お願い。ハイアンドロモン、ロゼモンも後方から援護を!」

セントガルゴモン「分かった。さぁタクミ、僕の肩に。」

ハイアンドロモン「障害ヲ排除シマス。」

ロゼモン「相変わらず無茶をする子なんだから……。」

タクミ「皆……ありがとう!」

 

タクミの想いに答えるようにマザー・イーターに向かって飛び出して行くデジモン達。

マザー・イーターが操るイグドラシル_7D6やイーターが群がってくるのを彼らが連携して各個撃破していく。

 

セントガルゴモン「バーストショット!」

ロゼモン「フォービドゥンテンプテイション!」

スレイヤードラモン「天竜斬破!」

ドルゴラモン「ブレイブメタル!」

 

セントガルゴモンとロゼモンがマザー・イーターへの道を塞ぐイーターを薙ぎ払い、目の前のイグドラシル_7D6をスレイヤードラモンが両断しドルゴラモンが貫いた。

マザー・イーターを守る防壁に怒涛の攻撃で穴を開け、その穴をタクミ達は通り抜けマザー・イーターの頭部を目指す。

 

アラタ「あっ、おい!」

ノキア「タクミ、まさか!?」

アラタ「バカっ! やめろって!」

ノキア「もう体がもたないって言ってたでしょ!?」

悠子「アルファモン・・・! 止めて下さい・・・! このままじゃ……! き、杏子さん!」

 

今まで戦ってきた仲間、いや大切な友達がタクミを止めようと声を上げる。

悠子はアルファモンにタクミを止めるように頼もうとしたが、アルファモンは首を横に振り断った。

 

アルファモン「行け、電脳探偵(サイバースルゥース)、キミだけの真実を掴みとれ!」

 

アルファモンの激励の声を聞いたタクミは無言で頷き、デジモン達と共にマザー・イーターに向かって行く。

 

マザー・イーター「何故向かってくるのです? 全てが無駄とわかっているのに……何故止まらないのですか?」

タクミ「誰一人として・・・犠牲は許さない! 例え末堂さんあんたでも、もう誰も置き去りにしたくない!」

マザー・イーター「それは君のエゴです。私の納得の行く答えではありません。そして私の中に君を入れるつもりもありません。」

 

マザー・イーターの翼が腕が目が攻撃してくる中をタクミとそのデジモン達は攻撃を加えながら潜り抜けて行く。

両翼と目による弾幕をタクミを乗せたセントガルゴモンが背中のロケットブースターを全力で噴かしながら避け、スレイヤードラモン、ドルゴラモン、ロゼモン、ハイアンドロモンによる攻撃で両翼と頭部を攻撃する。

 

タクミ「そう・・・これは僕のエゴ、だからこそあんたを!」

 

マザー・イーターの頭部真上まで迫ったセントガルゴモンの肩からタクミがマザーイーターに向かって飛び降りた。

 

タクミ「「とどけぇぇぇぇ!!」」

 

空中でタクミは右腕をマザー・イーターに向け落ちていく。

 

マザー・イーター「っ!?」

 

タクミはマザー・イータ―に吸い込まれるようにコネクトジャンプを成功させた。

 

 

 

精神世界への道

 

タクミ「はぁ……はぁ……どこだ、どこにいるんだ!?」

 

末堂の精神世界へ入ったタクミ。半電脳体の身体はすでに満身創痍でいつ砕け散っても、いつ意識を失ってもおかしくない状況になっている。

だがタクミは諦めず進み続ける。

 

<まさか、私まで助けに来るとは、私の忠告を無視して、そんな惨めな姿になってまで。まさに、骨折り損ですね。私は、マザー・イーターと完全に同化しています。アラタくんや悠子さん、勇吾くんとは、違う。 私を連れ戻そうとしても無駄です。すべての世界から、悲しみが消えないというならー私は決して戻りたくありません。 このまま、消えて無くなります。>

 

タクミ「はぁ……はぁ……。」

 

<……なぜ、君たちが不幸の蔓延る世界を選ぶのか、理解が苦しみますねぇ。 君だってそうです、こんなことをして、結局はアラタ君や、君の大切な友達や家族を悲しませてしまう。おかしいですよ、全く筋が通らない。 私を助け出したところで、何が変わるというのです? 誰が、喜ぶというのですか? 私の問いに、納得のいく回答をいただけますか?>

 

タクミ「もし……悲しみのない世界が……実現したら、この世から争いという争いが亡くなると・・・思う。でもそれは世界から嬉しさとか……喜びを……消してしまうことになる。いや・・・これはただの言い訳・・・あんたに対しての答えは……。」

 

 

            もう、誰も置き去りにしたくないから

 

 

<……先程も言いましたがそれは、キミのエゴでしかありませんよ?>

 

 

            そう……これはエゴだよ…それが何か?

 

 

タクミ「どんな人間にだって心はある……自己中心的な考え方なんて誰もが持ってる。僕にだって……そしてあんたにも、だからこれは僕の自己満足……エゴなんだ。」

 

<恐ろしいですね…… 私、混乱しています。イグドラシルの演算処理能力をもってしても、そのような回答は導き出せない。 や… やや? やややややや……!? そうですか! そうでしたか! ピンときました! わかりましたよ、私にも!>

 

タクミ「?」

 

<神は賽を投げない! まさに君たちは"賽そのもの"だったのです!意志を持つサイコロ相手に、掛けなど成立するでしょうか! なるほど… なるほど! このようにして、多次元宇宙が生じ時間軸は無数に分岐する・・・! 無駄、無価値、無意味 "ゆらぎ"と定義されていたものは所詮、観測者の主観に過ぎなかった!理解した… そう認識する単一時点で、可能性は統合され…!? ん?>

 

タクミ「??」

 

<待って下さい、待って下さい、さすがにそれは論理の飛躍ではないでしょうか・・・?>

 

タクミ「はぁ……はあ……。」

 

タクミの体の消耗は末同が離している間にも消耗して行く。半電脳体の限界が近いのか、身体中にノイズが走っている。

 

<おや、いけませんねぇ。君にここで消えてもらっては困ります。>

 

末堂「君は私の新理論を証明する大切な"サイコロ"なのですから。名づけて…「賽を投げる神の投げる賽をつくる神の存在を導く理論」! この理論を証明するために私やイーターは消えなければならない! 存在が、あまりにも特異的ですからねぇ。世界に影響する力が強くなりすぎて、正しい結果を導き出せません。や、イーターにおいては"本来の役割"に戻るだけですが。」

 

タクミ「本来の・・・役割・・・?」

 

末堂「ええ、私たちが創り出した電脳世界に影響受ける以前の、あるべき姿に。そもそも、彼らは人間世界やデジタルワールドを含む「無数のパラレルワールドを束ねる高次元、言わば触れられない、触れてはいけない領域に属する存在です。その高次元で、我々には到底、想像も及ばない、所謂「大いなる意志」「神々の御業」と呼ばれるような壮大でとてつもないシステムの一部に組み込まれている。」

タクミ「つまり…摂理の一部……?。」

末堂「摂理・・・? そう摂理! その一部が我々の次元において、我々の情報に触れたことであのような形態と特質を持って、実体化してしまった。のちの顛末はかくのごとしです。このような作用が偶然が必然化・・・結論はまさしく、神のみぞ知る。イグドラシルの演算処理機能で回答を試みましたが、まだ演算しきれていない状態で回答は得られませんでした。ともあれ、イグドラシルに協力を要請して私と接続しているイーターをすべて「初期化」します。」

 

タクミ「そんなことが……!?」

 

末堂「彼らを各次元から消し去ることはできませんし。また、そうする理由もない。君たちの未来に、同様の事象が繰り返される可能性は、8192の20乗分の1の確率です。ですが安心してください。私の計算では、それが起こるころには君たちは宇宙に存在していない。なので、君たちは好きなように生きて、死んで、また生まれ、私の理論が正しいことを証明してください。君に選択権は与えませよ? これは私のエゴなのですから。」

 

 

そう言って彼は次元の中へ去って行った。僕は彼の言ったことの全てを理解することはできなかった。

でも……彼の言葉は僕の頭から離れることはなかった。この後世界は今の姿に書き換えられた。デジモンやイーターが存在しなかった世界。

デジモンは存在しなかったと言うと語弊があるかもしれない、彼らはゲームのキャラクターとして存在している。なぜそうなったかは分からないけど……。

それでもすべてが終わったと思っていた……。僕等がマザー・イーターと戦っているときと同時期に人間世界でもある闘いがあった。それがある禍根を残しているなんて僕等は知る由もなかった。

 

次回 第0話(下) もう一つの戦い




いかがでしたか、かなり久々の執筆ですので荒い点が多いと思います。

今回の小説執筆しようと思った理由はサイスル本編に少し伏線があったような気がしたこと、そしてハカメモでエリカちゃん救われなさ過ぎる(泣)と思ったことですね。

世界観が私好みだったという本音の理由もありますけどね。

さてデジモンの小説をしリースとして出すのはサイバースルゥースex+に続いて2作品目です。あっちは現在休止しております。理由は執筆当時すごく忙しかったこと、そして私自身どういう構成で制作していくか忘れてしまっていることですね。機会があればあちらも執筆したいとは考えているんですけどね。



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