『あっちこっち』の小説です!
原作面白いから、ちょっとでも気になったらチェックしてみよう!

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姫さまラブレター事件

「皆さん、おはようございます〜」

「おはよう、姫」

「おはよう」

下駄箱で伊御とつみきの姿を見かけた姫は、駆け寄って挨拶。二人は振り返って挨拶を返してくれる。表情に変化は無いが、これが二人なんだと姫は知っている。

「……あら?」

上履きに履き替えようと下駄箱に手を伸ばした姫は、自分の上履きの上に何かが乗っているのに気付いた。

「何でしょう、これ」

「姫、どうかした?」

「あ、つみきさん。私の下駄箱にこんなものが……」

そう言った姫の手に握られていたのは、白い便箋。手書きで『春野姫様へ』と書かれている。

「ひ、姫っち! そ、それはまさかっ⁉︎」

「いたのか、真宵」

いきなり現れた真宵に、伊御は冷静に驚く。

「あ、真宵さん、おはようございます〜」

「おはようじゃよ〜……って、そうじゃなくてぇ!」

「どうしたんですか? そんなに慌てて」

「姫っち、それが何だか分かってる……?」

「このお手紙ですか? 何でしょうね〜。私も気になります」

姫は指さされた手紙を見て、ホワホワした笑顔を浮かべる。

「まさか姫っち、気付いてない……?」

「真宵さんは、中身が分かるんですか? 凄いです〜」

「いや、それはどう見てもラブレ「待つんだ真宵!」

いつからいたのか、背後から榊が真宵の襟を引っ張った。

「グエッ⁉︎」

「今、凄い声出たわよ」

「いつもいきなりだな、お前は」

「伊御さん、私の心配もして欲しいんじゃよ……」

若干首の強度が怪しくなった真宵は、ヨロヨロと振り返る。

「榊さん、待つってどうしたんじゃよ」

榊は顔を寄せて、小声で話す。

「伊御と御庭も分かってると思うが、姫が持ってるアレは……」

「ラブレター、よね」

「俺も榊も、たまに貰うからな」

「ああ、それは間違いないだろう。だがしかし、貰ったのはあの純情天然記念物の姫だ! そんな姫がアレをラブレターだと気付いたら……」

「……噴き出すんじゃよ」

「ああ……この学校は血の海に沈むだろう……」

「いくら姫でも、そんなに鼻血は出ないだろ」

「分からないんじゃよ……何せあの姫っちじゃし……」

「じゃあどうするのよ。取り上げる訳にもいかないし、遅かれ早かれ姫も気付くわよ」

「そこが問題だ……。いかに姫に、刺激が少なくアレがラブレターだと気付かせるか……」

「やってみるしかないんじゃよ……」

ヒソヒソと密談を終わらせると、四人はキョトンとしている姫に向き直る。

「皆さん、どうかしたんですか?」

「あーいやー、そういえば姫っちって、好きな人とかいるのかなー、なんて」

「全然さり気なくないわね」

つみきの一言で一気に責任を押し付けられた真宵だったが、

「好きな人、ですか? 私は、皆さんの事が大好きですよ」

「あーやっぱり姫っちじゃあ〜」

ど天然なセリフに真宵は返り討ち。

「って、そうじゃないんじゃよ!」

寸前で、踏み止まる。

「好きの意味は、恋人的な好きの意味なんじゃよ。ほら、伊御さんとつみきさんみた「真宵」

いつの間にか真宵の背後に立っていたつみき。背後から発せられる殺気のような何かに、真宵の口が本能に従って動きを止めた。

「何を言おうとしたのかしら?」

「な、何でもないんじゃよ〜……」

「そう」

背後のプレッシャーが消える。

「こ、ここまでかと思ったんじゃよ……」

冷や汗を拭った真宵は、

「そそそ、そんな人いませんよ⁉︎」

案の定アワアワしている姫を見やった。

「これは、ますます言いづらくなったような……」

榊が気難しい顔で腕を組む。

「……あの、皆さん、どうしたんですか? この手紙が何か分かってるんですか?」

流石に態度が露骨すぎたのか、姫も友達の様子がおかしい事に気付く。

「あー……それは、自分で確かめた方がいいと思うんじゃよ……」

もはやさりげなく伝える事を諦め、

「でも落ち抜ける、自分の部屋とかで読むといいんじゃよ」

なるべく被害が少ない方法を選んだ。

のだが、

「あ、もう開けちゃいました〜」

「姫っちぃぃ⁉︎」

姫の天然には効果なし。

「えっと……“あなたの事が好きでした”って……………………ふえええええ⁉︎」

『あー……』

少し前の密談が無に帰し、一同は微妙な顔。

「そ、そんな私になんて……」

「あ、耐えた」

顔は真っ赤だが、噴き出すまではしなかった。榊はやや拍子抜けして、警戒の構えを解く。

「でも実際、姫って人気はどうなんだ?」

「まあ、喋り方は丁寧だしな」

「あ、伊御君ありがとうございます〜」

「誰にも分け隔てなく接するものね」

「そんな、つみきさん照れちゃいます〜」

「いつも笑顔だもんな」

「そ、そんな事ないですよ榊君」

「一緒にいると癒されるんじゃよ〜」

「えっと、真宵さん、そうでしょうか……」

「誰よりも優しいしな」

「い、伊御君ほどでは……」

「姫が友達で良かったわ」

「そ、それは私の方こそ……」

「ふわふわっとしてるもんなぁ」

「えっと……」

「人気なのも頷けるんじゃよ〜」

「あの……」

『姫(っち)は可愛い』

「はうぅぅぅ〜〜〜〜!」

褒められて集中砲火され、姫は目を回してしまう。

「ところで姫っち、返事はどうするのん?」

「ちょっと考えてはみますけど……多分お断りすると思いまふ」

「ありゃ、そうなん?」

「まだ私には早いといいますか……。私は見守ってるだけで充分なので……」

「見守る? 誰をだ?」

伊御は首を傾げたが、

「「な〜る〜ほ〜ど〜」」

「あによぅ」

榊と真宵はニヨニヨと視線を送る。

「姫っちの春は、まだ先って事じゃね〜」

「誰よりも春っぽい名前なのにな〜」

「な、名前は関係ないです〜!」

ドタバタと教室へ向かう三人。

さて俺もと踏み出した伊御の裾を、つみきが掴んだ。

「どうした、つみき?」

やや俯いて、小さく口を開くつみき。

「……あのね、もし、私がラブレター貰ったら、どうする?」

「んー……」

伊御は一瞬考えたが、

「つみきには幸せになって欲しいかな。つみきの幸せが、俺の幸せだよ」

つみきの頭をぽむりんして、笑顔で言った。

「そ、そう……」

はぐらかされたような、はっきり答えてくれなかったような、少しモヤモヤが残ったつみきはそっぽを向く。

「でも、」

しかし伊御は、さらに言葉を紡ぐ。

「?」

「俺の見えない所で幸せになられちゃったら、ちょっと寂しいかな」

「……そういう事言うの、ずるい」

ネコミミピコピコ。頭ぽむぽむ。

てれりこてれりこ。


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