おはようございます!カワイイボクが強風のなか、遅刻もせずに出勤してきましたよ!いや~やっぱりボクは何をするにも完璧ですね…って、あれ?小梅さんだけですか?
うん…おはよう幸子ちゃん。みんな遅延とかで遅れてるみたい…。
まったく、他のアイドルたちもですがプロデューサーまで遅れるなんてボクの担当失格ですね!それにしても、今日の風は本当に凄いですよね、髪のセット大丈夫でしょうか…。
うん、大丈夫、いつも通りの幸子ちゃん、だと思うよ…私も、大丈夫、かな…?
うーん、そうですね…あ、ちょっと前髪が乱れてますね。もうちょっと、こうやって、こんな感じですかね!
あ、ありがとう幸子ちゃん…。自分じゃ、あんまり確認できない、から…。
あー、たしかに小梅さんが手鏡を持ち歩いてるイメージがないですね。ダメですよ!アイドルたるもの、ボクみたいに常にかわいくなくちゃ!特に小梅さんなんて、前髪が長いんですから!
うん、そうだね…。ちょっと、考えてみようかな…手鏡…。
あれ、そういえば小梅さんって、どうして右前髪だけそんなに伸ばしてるんですか?ボクみたいに左右均等にしたらもっとかわいくなりますよ?
あ、これは…ちょっと、昔に、色々あって…。
色々?あ、すいません…聞いたらまずかったですかね…?
ううん、大丈夫…うん、みんなが来るまで、ちょっと話しても、大丈夫…?
わあ、ありがとうございます!是非おねがいしますね!
あれは、わたしが小学、4年生くらいのときかな…?まだ、前髪がそんなに長くないとき…
クラスで、都市伝説を話すのが、流行ってたの…。そのなかで、友だちが話してくれたのが、幸子ちゃんは知ってるかな…『鏡の前で、お辞儀をして、横をみてはいけない』って…。
都市伝説だと、おばけを召喚する、儀式なんていわれてたの…。わたしも、それでちょっとだけ、興味があって、玄関のすぐ右側にある、姿見の前に、立ったりしてみたんだけど…実際にやる勇気はなかったんだ…。
それで、しばらくして都市伝説のブームは過ぎて…ほとんど忘れてた時にね、いつも通りに玄関の段差に、座って紐を結んでたんだけど…ふと、その話を思い出したの…
そういえば私、今鏡の前でお辞儀してる、ってね…。それで、ほとんど無意識に、右にある姿見を覗いたら…
いるの、姿見の中の私の前に、影みたいに、真っ黒で人型のなにかが…。
その瞬間は、もう、動けずにいたんだけど…急に、足から腰くらいまで見えてた、その何かが、私の顔を、のぞき込むように、中腰にしてきたの…。そのときは、もう本能で、逃げなきゃって…
気づいたら、玄関を飛び出してた…。
それからは、もう何があっても、玄関の姿見がみえないように、右目を隠してるんだ…。
…ふふ、どうだった…?
っっっっっあーもう!こ、怖いに決まってるじゃないですか!!急に怖い話するのはやめてください!いくらカワイイボクでも怒りますよ!!
ふふふ…ありがとう、自信作なんだ…この話…。
よっと、いや~今日の風は一段とすげぇなあ。お、幸子に小梅は来てるのか。
雨はいいけど、風は、苦手だな、フヒッ。
あ、プロデューサーさん、輝子さん!ひどいんですよ、小梅さんが!またボクを怖がらせて──!!
ふふ…ちょっと、お手洗い行ってくるね…。
(…手鏡、かぁ…。たしかに、アイドルなのに、持ち歩かないのは…おかしい、かも…でも…)
この子がいるのに、覗く気にはならない…よね…。