ルーンファクトリー3 シアレンスのマーメイド   作:アセンブル

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第4話 金欠

第4話

 

マイスはあることに頭を悩ませていた。

 

「どうしよう、お金がない…」

 

シアから提供してもらった500Gのうち残っているのは200G。

 

そして、メインの資金源である作物が育つまでに数日はかかる。

 

意図して使ったわけではなく、ペルシャにお風呂入ることを勧められ断れなかったのだ。

 

あのキラキラした目をして勧められたら心が強い人でない限り断ることはできないだろう。

 

シアにまたお金を支給してもらうか、しかしそんなことをお願いすると『マイスさんって金銭管理ができない人なんですね…』と言われかねない。

 

…想像しただけで心が折れそうになる。

 

せめて誰かにご飯をご馳走してもらわないとやっていけない気がする、申し訳ない気もするが。

 

なにせこの家には調理器具もない。

 

節約のために自炊しようにも調理器具がないのでどうしようもない。

 

「釣竿と調理器具があればなんとかなるんだけどなあ…」

 

明日釣堀経営してるカルロスさんと飲食店経営してるグルテンさんに相談してみよう。

 

そう思い、その日は床に就いたのであった。

 

 

 

−翌日−

 

「さすがにトイハーブとさくらカブはまだできてないよなあ」

 

水をあげつつマイスは軽くため息をつく。

 

できてないものは仕方ない、早く大きくなってくれることを祈りつつマイスは畑をあとにした。

 

 

 

「おお!?釣りに興味が出てきたか兄弟!」

 

カルロスさんに相談したところものすごく目をキラキラさせて喜んでくれた。

 

動機が動機なだけに申し訳ない。

 

「ただあいにくタダであげれるような釣竿がなくてなあ…」

 

とカルロスさんが腕を組み難しそうな顔をしてると妹のイオンさんがドヤ顔で話に入ってきた。

 

「仕方ない、イオンさんが迷えるお魚にお恵みを与えよう…ジャジャーン!」

 

と得意げに掲げられたのは少しボロボロの釣竿だった。

 

「おお!?妹よ、それは幼い頃から使ってた思い出の釣竿ではないのか!?」

 

「いいのお兄様、わたしには…わたしには御神木の釣竿があるから…!」

 

「さすが我が妹だ!お兄ちゃん涙が止まらないぞ、ううううう」

 

そんなこんなでボロの釣竿をもらうことができた。

 

「頑張ってね、マイスくん!いつか美味しい魚料理ご馳走してね!」

 

小麦色に焼けた彼女のウインクにどきりとしてしまったのは秘密だ。

 

 

 

「なるほど、調理器具ですか…」

 

と少し難しい顔をするグルテンさん。

 

「あと払いでもなんとかなりませんか…?」

 

「申し訳ありません…こちらも商売として行っているもので一度それを許してしまうと他のお客様にもあと払いを許すことになってしまうので」

 

グルテンさんがそう言うのも無理はない。引っ越してきたばかりの知り合って間もない人間に調理器具をタダで譲るだろうか、いや譲らない。

 

あと払いにするとしてもまだ自分はグルテンさんに信用してもらえるようなことは何一つしていない。

 

ここは潔く諦めよう、焚き火で焼き魚というのも悪くないかもしれない。

 

そんなことを思っていると

 

「あれ?マイスくんどうしたの?」

 

食堂の2階の居住スペースからショコラが下りてくる。年上らしいのだがその小柄な容姿から年下にしか見えない。

 

ショコラにお金がないこと、食費を抑えるためにも調理器具が欲しいことを伝えた。

 

「つまり食に困ってるってことだよね?」

 

マイスが頷くとショコラが2階の居住スペースに手招きして「ちょっと待ってて」と手際よく料理を始める。

 

油を敷いてあらかじめストックされてるお米や野菜、卵を炒めるショコラのあまりの手際の良さにマイスは目を見張った。

 

さすが料理人の娘なだけはある。

 

「ショコラ特製チャーハンのできあがり!」

 

あっという間に料理を終え、マイスの目の前にチャーハンが用意されていた。

 

「すごいですね、ショコラさんって料理できるんですね」

 

と素直に感心しているとショコラは照れくさそうに笑う。

 

「一応料理人の娘だしね。作るよりも食べる方が好きなんだけど、コストを安く抑えてたくさん食べるにはやっぱり自分で作った方がいいんだよね」

 

「本当に食べることが好きなんですね、ぱっと見そんな風に見えないですけど」

 

と言うとショコラにジト目で睨まれる。

 

「それって私の見た目が幼いわりにってことかな?」

 

地雷を踏んでしまったようだ。

 

「いや、そんなことは…細身の体なのにいっぱい食べるから意外だなぁって…ってあれ?」

 

またもジト目で睨まれる。

 

「それって私のむ…いや、なんでもない」

 

「きっと悪気はないんだよね…」と小声で呟いてる、またなにか地雷を踏んでしまったのだろうか。

 

「そんなことより早く食べて!お腹空いてるんでしょ!」

 

とショコラ特製チャーハンを目の前に押し付けてくる。

 

「では遠慮なくいただきます」

 

ショコラに勧められるままチャーハンに手をつける。

 

口の中に入れるとお米一粒一粒に味がしっかり染み渡っていてとても美味しい。

 

塩胡椒の塩梅もよく、卵も多すぎず少なすぎずという絶妙なバランスでチャーハンの味を引き立たせている。

 

「ショコラさん、美味しいですよこれ!」

 

お世辞抜きで美味しい、さすが料理人の娘だ。

 

「そ、そんなに喜んでもらえると思わなかったから照れちゃうなあ、あはは」

 

本当に照れてる、かわいい。

 

そして、マイスがチャーハンを無事完食するとショコラが思いついたように

 

「提案なんだけどさ、私が調理器具いくつかあげる代わりに私の料理の味見をしてくれない?」

 

と、なんて素晴らしいアイデアなんだ!とばかりに満面の笑みで提案する。

 

「え、それ僕にメリットしかないじゃないですか…?」

 

「ううん!だって弟のラスクは少食で当てにならないしお父さんに気軽に味見させるわけにはいかないしマリオンは魔法の注射器で物理的に刺してくるしで気軽に味見お願いできる人なんていないんだよ!」

 

「それは…大変ですね」

 

主に注射刺してくる人が。

 

「わかりました。ショコラさんさえよければぜひ」

 

「よかった!で、調理器具なんだけど…マイスくんって料理できる?」

 

「実はその…経験ないです」

 

「じゃあ初心者用に素手料理と包丁料理ができる調理器具あげるね」

 

ショコラから素手料理と包丁料理に必要な調理器具をもらった。

 

使い込まれているものもあるが、ちゃんと手入れは行き届いてるためまだまだ現役で使える。

 

さすがは料理人の家庭だ。

 

「じゃあ味見してほしいときは声かけるからその時はよろしくね!」

 

「はい、ありがとうございます。とても助かります。」

 

なんとか食事の問題はひとまず解決した。

 

レストランを出た頃にはもう日が暮れかけていた。

 

「さすがに今日は温泉行けないよなあ」

 

と手一杯に調理器具を抱えつつ旅館を眺める。

 

未だに手持ちには200Gしかないのだ、行ったところで門前払いだろう。

 

すると向かい側の道からさくやがやってきた。

 

「あれ?マイスはんどしたん?そんなぎょうさん調理器具持って」

 

「ああ、さくやさん。ちょっと節約がてら料理しようと思ってショコラのところに相談に行ってて譲ってもらったんですよ」

 

「なるほど、つまりお金がなくて困ってると」

 

「ま、まあそうですね」

 

人から言われるとグサリとくるものがある。

 

「それならモンスター倒しまくって収集品で儲ければええやん!マイスくんはお金が入ってきて私は仕入れ先が増える!完璧な計算や!」

 

といつのまにかそろばんを出して、目をキラキラかつ舌を横にペロリと出して計算してる。

 

これが商売人の顔か…目がお金になってる。

 

でも、

 

「なるほど、収集品を納めれば収入が入るんですね!」

 

「そやでー!まあ微々たる収入のもんもあるけど雑草なんかそこらへんの草を出荷するよりは全然マシや!入手困難な収集品出荷した時には作物出荷するよりいい時もあるんやで。これはもうやるしかないやろ?」

 

たしかに作物の出荷だけでは明らかに収入が足りない。

 

これから畑をより良くしていくためにも資金は必要だ。

 

「そうですね、ぼく頑張ってみます!ありがとうございます!」

 

明日はモンスターを倒しにプリベラの森に行こう、そう決意してその場をあとにした。

 

 

 

「ありがとうございましたー!」

 

これで今日の営業は終了だ。

 

今日もたくさんのお客さんが温泉に来てくれたのでいつもより気分がいい。

 

けど、

 

「マイスくん、今日来なかったなあ」

 

昨日の温泉は気に入ってもらえなかったのだろうか、そう思うと少し不安になる。

 

もしかしたら数日おきに来るのかもしれない、そういうお客さんもたくさんいると自分に言い聞かせる。

 

閉める作業をある程度終わらせたところでさくやが機嫌よさそうにそろばんを弾(はじ)いていることに気づく。

 

「どうしたの?そんなご機嫌でそろばん弾いて」

 

そろばんの手を止めず商売人のままさくやは答える。

 

「いやな、新たな収集品の仕入れ先が増えそうやねん。マイスはんお金に困ってるみたいやから一生懸命収集品を集めてたくさん納めてくれる思ったらその先の商売が楽しみで仕方なくて」

 

「あれ、マイスくんお金に困ってるの?」

 

「ん?まあ記憶喪失で自分の名前しか覚えてなくて、しかも急遽この村に住むことになったからひょっとしたらお金もっとらんかったかもしれんなあ…。でもシアちゃんが最初に面倒見はったっていうから気持ち程度にはお金もらったんやと思うよ」

 

「ふ〜ん、そうなんだ…」

 

あれ、昨日マイスくんからしっかり300G回収したような…

 

で、今日温泉に来てないっていうのはもしかして…

 

マイスくんがいまお金なくて困ってるの、わたしのせい…?

 

もしそれが本当だとしたら…

 

「今度強引に温泉誘ったこと謝らなきゃ…」

 

厚意で誘ったつもりが裏目に出てしまったことに少し落ち込みつつ寝室に戻るペルシャだった。




お久しぶりです、アセンブルです。

まさかここまで遅くなるとは思ってませんでした…

というのも、月に2回ほど手を加えていってはいたものの、どう展開するべきかと色々悩んだりしてたら5ヶ月くらい経ってたんですかね…?

今回はなかなかペルシャを出すことができず「ペルシャメインの小説なんだからペルシャ出さないと…!」といつもより長く書いたのも遅くなった原因です(苦笑)

それでもまあ他の方に比べると短いんですけどね(^_^;)

まだ拙い文章なのでこれからどんどん書いて練習していこうと思うので温かい目で見守ってあげてくださいm(_ _)m

早く書いて欲しい!と尻を叩きたい方はTwitterの@delphi7021まで連絡してください。

小説のことは小っ恥ずかしくてなんにも呟いていませんがよければフォローしてやってください(笑)

それでは、また次のお話で!!

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