始まりは、憧れだった。
輝いていて、眩しくって、かっこよかった。
だから、その人みたいに成りたかった。頑張って、頑張って、頑張って、頑張った。
でも、決してそんな風には成れなかった。これが駄目なら、あれを。あれでも駄目ならそれを。
色々なことに手を出した。でも、何をやっても憧れの人みたいにはなれなかった。
だから、わたしは此処にいる。
時折、強い風が吹く。眼下には文明が生んだ光の筋が流れている。
ビルの屋上。わたしは、この町で一番高いそこに居た。
もう、疲れた。こんな生き方を始めて10年、自覚してから3年が経つ。何をやっても中途半端。
私は何者にも成れなかった。だから、最後くらいキッパリと終わらせようと思ったのだ。
なのに・・・なのにっ―――。
(足が、動かない...ッ。)
あと一歩踏み出せば、全部終わらせられる。なのに、どうしても足が出ない。
(だったら―――っ。)
自分でもよく分からない怒りに駆られていた。
(下が見えてるのが駄目なら、背中から落ちてやるっ。)
後ろに振り向く、視線の先にはもうこの手で開くことのない扉。
落ちようと後ろに体重をかけようとした、その時。
「おや、飛ばないのかい?」
耳元で囁かれたその声は好奇心に満ちていて、同時に、臓腑のすべてを凍り付かせるような冷たさを持っていた。
「・・・ッッ!」
気が付けば、夢中で駆け出していた。もう開けることはないと断じたドアを破るように開いて非常階段を駆け降りる。さっき視界の端に移ったのは間違いなく"異形"だった。マスコットキャラクターのように大きい、真円の目。鴉のように黒く、長い嘴。
本能が此処から逃げろと告げていた。
エレベーターを見つけたが、待っている間に追いつかれる可能性もある。
もし、よしんば乗れたとしても待ち伏せされているかもしれない。だから、エレベーターは使わない。
自身に"強化"の魔術を施す。地上まで続く野外の階段を、全速力で駆け下りた。
"異形"は一人、風が吹きさらす屋上に取り残されていた。
「ふむ...。面白がって声をかけるのではなかったな。」
「面倒だが、自分で蒔いた種だ。芽吹く前に摘んでおくとしよう。」
"異形"はそう呟くと先ほどの少女が出来なかった、しかし、しようとしていた様に背中から飛び降りた。
「ハァ...ハァ...。」
一息に階段を駆け下りて息が上がっている。10秒も経たないうちに50メートルを駆け降りた少女は未だ、人ごみの中を駆けていた。
すれ違う人に度々ぶつかる。怒声を投げられることもあったが、そんなものは耳に入って来なかった。
(見つかったら、間違いなく殺される・・・っ。)
さっきまで自ら死のうとしていたのに、一体何だと言うのか。生きることに必死になっている。
(結局、また中途半端だ。)
自己嫌悪。自己嫌悪。自己嫌悪。吐き出しそうなくらい、気持ち悪い。
気が付くと街を抜けて、目の前には寂れた神社が立っていた。
(かなり離れたし暫くは大丈夫でしょ。)
神社で休憩することにする。――――が。その判断が間違いだった。
「わざわざ人目の付かないところまで逃げてくれて助かったよ。」
背後から、あの冷ややかな声がする。
「先程、君は自ら死のうとしていた様に見えたのだが、私の検討違いだったかな?」
こいつの言うと通り、私は死のうとしていた。ただ、わたしに飛ぶ勇気がなかっただけだ。
「私は屍肉から魔力を啄むだけで良かったのだが...。見たところ、君は魔術師のようだしな。
鮮度が良ければ味も良い。では、君の
"異形"から黒い腕が伸ばされる。反射的に、私は後ろへ跳んでいた。
神社の小さい御堂に跳び入る。今度こそ逃げ場がなくなった。
「自分から逃げ場を無くすとは、愚かなことだ。」
憐れむような声の後、黒い腕が振り下ろされる。
「ッ・・・嫌ッ・・・」
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。だってまだ何もしていない。こんなの綺麗な終わりじゃない。
「わたしはッ..まだ...死にたくッ....ない!」
死の淵に、隠れていた本音が顔を出す。後ろにコケて、尻餅をついた。もう、死を回避する手段はない。
生を諦めかけたその時に、後退る右手に"何か"が触れた。
しかし、"異形"の黒腕が心臓の位置に触れる―――――。
瞬間。ブンッと無から一閃が放たれた。
前々から書きたかったやつです。
好きなものを全部ぶち込んでいきます。
ですが、きのこ節が炸裂しすぎたので改稿しました。
稚拙な文章なので読みずらかったかもしれません。
マスターは全員オリジナルキャラですが、サーヴァントは原作で出てきたのも出てくる予定です。完走できるかはわかりませんが、感想を頂けたら嬉しいです。(激ウマギャグ)
ここまで読んで頂きありがとうございました!