色々予想の斜め上を行き過ぎててほんとおもしろい。
――死んだ。間違いなく、死ぬと思っていた。
でも、わたしに突き付けられたはずの"死"は。
卒爾に咲いた"花"によって、鮮やかに刈り取られた。
(――――)
声が出なかった。突如として眼前に現れた、闇に在ってなお沈まぬ深紅。月光に濡らされた艶やかな長い黒髪。
纏う殺気は黒い"鴉"と変わりない。それなのに、いや、それだからこそ。
(綺麗...)
―――――とても、美しく思えた。
キンッ、キンッ、キンッ、キンッ。
体を起こし、御堂の中から外を覗く。
美しい女性は、わたしから"鴉"を突き飛ばしたまま"鴉"と打ち合っていた。
(何...あれ――)
打ち合っている。打ち合っている様に見えるのだが、音だけが遅れて聞こえてくる。
(音よりも速い・・・?)
ただ、わたしの思考を占拠したのは困惑だった。
異形の鴉。突如現れた私を助けた女性。音よりも速い剣戟。
いや、どちらも剣ではないのだけれど。
(一体何なのよぉ・・・)
何か、とんでもないことに巻き込まれている気がする。
最悪な死を遂げることはなかったが、死よりもひどい目に合う予感がする。
両者はもう一度間合いを取って、互いに仕掛けるタイミングを計っているのかと思うと、鎌を持った少女の体に緊張が走るのが分かった。対して"鴉"は不動のままだ。
(何か話してる・・・?)
"鴉"の嘴が開いたわけでは無い。だが、何か話しているように思えた。
すると"鴉"がバサッと羽を広げた。
反射的に身を震わせる。やはり"あれ"はこの世にいてはいけないものだ。
そして、何かを言い残して夜空に向かって飛んで行った。
(もしかして、ずっと空から私を・・・?)
そう思うと、休もうとしていたところに現れたのも納得できる。
一瞬でも逃げられたと思っていた自分が惨めに見える。
そもそもあれはわたしを追ってすらいなかったのだから。
「大丈夫だった?」
深紅の女性が鎌を携えたまま駆け寄ってくる。
「あなたが助けてくれたから大丈夫」
「そう.....。それなら、良かったわ」
それまで少し張りつめていた女性の顔にほんの少し安堵の色が浮かぶ。
そこで私は、ずっと気になっていたことを口にした。
「あなたは一体何者なの?どこから現れたの?」
わたしを助けてくれた人。せめて名前くらいは知りたいと思ったし、それに何もないところから現れたように見えたのがとても気になった。
すると、女性は少し考えるような顔を見せて、
「私は、郡 千景....。どこから来たのかは.....私にもよくわからないから、答えられないわ.....。どうやら、なにかのゲームに巻き込まれたみたい.....なのだけれど」
と、答えた。
「ゲー・・・ム?いったい何の――痛っ!」
聞き返そうとすると、右手の甲に火傷したような痛みが走った。
「なに・・・これ?」
右手の甲を見ると、何か紋章が刻まれている。
すると、千景さんが説明してくれた。
「それは、令呪と呼ばれるもので......三度だけ使える、サーヴァントに対する絶対命令権.....らしいわ。」
よく見ると、三つに分かれていることが分かった。
「らしいって...?」
「私にも、よく分からない.....。こちらに来た時に.....頭の中に勝手に流れ込んできたの.....」
サーヴァント。使用人。召使?何らかの召喚儀式に巻き込まれた?
自分の置かれている状況を把握するにはあまりにも情報が少なすぎる。
それに、何故か外に魔力が流れ出ていくのを感じる。
「千景さん。あなたがわたしの、そのサーヴァント?ってことでいいのよね。」
わたしは千景さんと令呪を交互に見る。
「....ええ、そうだと....思うけれど」
千景さんは悩ましそうに眉根を寄せる。
しかし、"ゲーム"と聞いては興味を持たずにいられない。
先の戦いを見る限り、とてもまともなゲームとは思えない。危険な魔術儀式と思ったほうがいいだろう。だが、少しだけ頬が緩む。
「OK。それじゃあまず、巻き込まれた"ゲーム"について教えてくれない?」
私の声のトーンは少しだけ上がっていた。
「.....ええっと、このゲームの名前は―――」
千景さんがゆっくりと、説明を始めようとした。
その時だった――――――。
ぐぅ~、っと情けない音が二人の間に響き渡る。
やばい。こんな真面目な話してるときにおなか鳴るとか死ぬほど恥ずかしい。
アハハ。だんだん顔が熱くなってきた。
「あぁ~~。おなか空いちゃって」
頭の後ろを撫でながら、すこし茶化すように言う。
「それなら...何処か食べに行く....?」
千景さんは以外にもまともな案を提示してくれた。実は少しだけ、「狩りに行きましょう.....」なんて言い出さないか不安だったのだ。でも――――
「いや。それは無理だと思うな。それに、その恰好のままだとちょっと目立ちすぎちゃうでしょ」
わたしがそう言うと、千景さんは自分の恰好を見て「それもそうね。」と言った。
ポケットからスマホを取り出して、時間を確認する。
「ん~。やっぱり日を跨いじゃってるか」
予想はしていたがかなり時間が経っている。
わたしは家を飛び出してきたのが、2日の22時。今はもう3日の3時前だ。
「それじゃあ.....どうするの?」
千景さんが首をかしげて尋ねてくる。
わたしは少し迷ってから。
「わたしの家に行こう」
そう、笑って口にした。
そうだ。家に向かう前に大事なことを忘れていた。
「わたしの名前は、真崎 結奈!よろしくね。千景さん!」
主人公の名前は「しんざき ゆうな」です。
大雑把に描写すると、字面だけでうまく想像できないし、逆に細かく描写しすぎると、ものすごく文量が多くなって書き切れそうにないので難しいところですね。
まあ、挿絵を入れればある程度は解決するんですけど、私の絵が下手なので人に見せられるレベルで描こうとすると一週間ぐらいかかってしまうんですよね。なので、真面目に動きのある見せ方を勉強して書きますね。