シンフォギアにオリーシュをぶち込んで最低系小説にする   作:逆に天才

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 シンフォギアライブ二日目行けなかったので初投稿です。

 推奨BGM:Fall(AC4)


夢の中でであったような

 人間というものは過去を積み上げてそれを記憶とし、自己を確立しながら生きる生物だ。それがない人間というものはどこか空虚の念に苛まれているとか、自らのアンデンティティーの崩壊、自己連続性の断裂による疑心暗鬼に侵されている。

 それはとても辛いことだ。自らのルーツさえ忘れ去り、最善だと自らの思い込む理想を作り上げ現実を意図的に無視する。はてしてそこに幸せは存在するのか。未来に続く道はあるのか。そのようなことを常々考える。

 なぜこんなことを考えるというと。

 

『……ス。メルクリウス聞いているのか!? もう実験の開始まで時間がない。急いで持ち場に付け』

 

「ああ、わかっているよサンジェルマン。だから大きな声を出さないでくれ。君はわからないかも知れないが僕はインカムから君の声を直接耳に叩き込まれているんだ。そこを忘れないでくれ」

 

『了解した、次からは気をつける。それよりも準備はいいか?』

 

「ああ、大丈夫だ。起動したネフシュタンの確保及び、フィーネの妨害を開始する」

 

 作戦の確認をするとサンジェルマンはすぐに通信を切ってしまった。恐らくだが、とても呆れた顔をしているだろう。彼女は昔から細かいことを一々指摘してくるが、こちらの要望を聞くことは殆ど無い。

 耳につけていたインカムを乱雑に外しそのまま投げ捨てる。すると不思議なことそれは銀色の粒子に変わっていき最後には空気に完全に溶けてしまった。

 それを見届けると暗い通路から明るいアリーナへと足を進めていく。ライブの開始を今か今かと待ちわびる熱狂渦巻くライブ直前の舞台へと。

 

 

 そこは地獄であった。さっきまで人間だったものは物言わぬ黒い塵へと変わり果て、今もその量を増やし続けていた。生きている人間もいるようだが、彼らの仲間へと変わりゆくのも時間の問題だろう。なぜ、そのような不可解な現象が、彼らの身に降り注いだのか。それは、ノイズと呼ばれる人類に対して敵対の意思を示す生命体のせいである。

 生命体と呼んだが、その実態はほとんど解明されておらず、彼らの生体の多くは謎に包まれている。しかし、判明していることもある。一つは通常兵器の類が一切効かないことだ。彼らは位相差障壁という、自らの存在を存在の異なる世界に跨がらせるという一種幽霊のような存在である。

 二つ目は、彼らは人間しか殺害しないということだ。彼らはかつて人間によって造られた兵器であり、僅かな知性なようなものを持つことが確認されている。

 彼らはごく僅かな時間、位相差障壁を解除、そして人間を巻き込み自壊するという性質を持つ。ある意味でとてもクリーンな兵器である。

 そして三つ目。それは…。

 

「うおおおおおお!」

 赤髪の少女が身の丈ほどある大槍を振り回しながらノイズへと飛びかかる。通常ならば彼女は他の人間と同じように塵へと変わるだろう。しかし、そうはならない。彼女は一方的にノイズを塵へと変えていく。人類が決して勝てない相手に対して一方的に攻撃を加える姿は都合のいいヒーローのように見える。いや、この場合はヒロインだろうか。

 三つ目、ノイズは倒せる。FG式回転装束、通称シンフォギアによって。シンフォギアを纏うと調律、ノイズの位相差障壁を中和しこちらの世界にその身を晒させることができる。これによって通常兵器による攻撃が有効打になりえるということだ。しかし、それよりもシンフォギアが放つ攻撃によりノイズは撃破されることが大多数なのであまり意識する必要はない。

 

「あの赤い髪の毛の奴が天羽奏、そしてあの青い髪の毛の奴が…」

 

 鬼気迫ると言った風にノイズを撃破する彼女のすぐ近くにその少女はいた。両手で握っている刀で天羽奏の速度に劣るものの、かなりの速さでノイズを撃破している。しかし、その視線はノイズだけでなく天羽奏にも注がれており、集中に欠けていると言ってもいい状態だった。

 

「データによると天羽奏はLiNKERの摂取によってガングニールの奏者となったといったな。このノイズの出現は予想外だったはずだ。ならば、LiNKERを摂取している可能性は低い。故にそれを危惧してあのような動きをしているのか…」

 

 彼の独り言を証明するかのようにガングニールが急激にその力を落としていく。さっきまで鎧袖一触といった様子だったが、いまやその動きは精細さを欠き数の暴力に押しつぶされそうになっている。

 不幸は重なる。逃げ遅れたのだろうか、一人の少女が偶然にも客席におり、彼女の足元が突然崩壊した。ノイズの攻撃によってなのか、ネフシュタン起動実験の際のオーバーフローしたエネルギーが原因なのかは検討も付かない。しかし、唯一言えることは客席にいた彼女は非常に不幸であり、もう助かる見込みはないということだ。

 天羽奏が小型ノイズの攻撃に耐えながら少女に逃げるよう促す。少女は急いでその場を離れようとする。しかし、天羽奏に対する攻撃が激化、大型ノイズの攻撃をなんとか受け止めるものの、融合係数の低下により、ガングニールの装甲や、アームドデバイスの表面が崩れ始める。

 そして、その破片が勢い良く飛び散り、逃げようとしていた少女の胸に突き刺さったのだ。

 

「ミッションは失敗だな。フィーネの思惑通り計画はすすんだのだろうし、ネフシュタンは暴走し手がつけられない状態。サンジェルマンがカンカンだな。まあ、それはいいとして、カリオストロの延々とした弄りやプレラーティーの小言の方が厄介だな」

 

 ちらりと視線を向けると天羽奏が少女に向かって何かを叫んでいた。少女の方は意識もほとんどないのかそれを上の空で聞いている。

 

(無駄なことを。他人の心配をしている場合か、自分の心配をしないと…)

 

 そこまで考えて、自らも似たような考えをしていることに気がついた。いかなるものも使用し、時として自らの肉親すらも切り捨てることが基本とされる錬金術師としては甘く、まだまだ未熟だということがよくわかった。 

 セーフハウスに向け進路を取ろうとした時、偶然にも天羽奏の表情が目に入る。その顔はなぜだか誇らしげであり、何か決意を瞳の奥に宿していた。

 その表情を目にした途端胸が何かに締め付けられたようにきつくなった。それどころか、呼吸も段々と辛くなり、頭痛すらしてくる始末だ。

 人間というものは過去を積み上げそれを記憶とし、自己を確立する。そのことについて偉そうに持論を述べたが、本来そのような立場でないことはわかっていた。なぜなら、自分自身の記憶がスッポリと抜け落ちているからである。

 それでも唯一残っている記憶、と言うか風景がある。

 白色の怪物。歌う少女。崩れ落ちる天井。そして、千切れた左腕。

 恐らく。いや、確実に彼女を救うことはできなったのであろう。激痛の記憶を最後に彼女の姿は崩れ落ちた天井の中に消えていったからだ。

 怪我も回復し、自らの足で歩けるようになった頃に、サンジェルマンが元いた施設の状況を教えてくれ。その施設は全壊しており、なおかつ火災の延焼によってすべて焼け落ちてしまっていたらしい。

 普通の人間ならそのことに対して泣きわめいていただろう。しかし、僕の心に飛来したのは果てしない空虚のみだった。自らの大事なパーツをそこなってしまったかのような考えが僕の中を席巻したのだ。だからだろうか、サンジェルマンの甘言に対して、詐欺同然だと思っていても乗ってしまったのは。

 気がつくと空中へと自らの身は跳び出していた。頭の中は比較的冷静だが、体中が燃えてるかのように熱い。身体の芯から溢れ出る抑えきれない衝動が無意識に身体を躍動させる。

 慣性の法則と体重、そして力の限り打ち付けた拳は、大型ノイズのみならず近くにいた小型すらも巻き込み、爆弾が落とされたような音を発しながら炸裂した。

 

「一体、何が! 何なんだお前!」

 

 天羽奏の切羽詰まった声がモウモウと立ち込める砂埃の向こうから響いてくる。それに対して、抱いた心情は何故か安心した心持ちだった。

 普段ならこのような感情は抱かない。むしろ他人が自爆することに対して嘲笑するぐらいだからだ。ならばなぜこのような心持ちになるのか…。答えは一つしかないだろう!

 砂埃が晴れていき、天羽奏ともう一人、風鳴翼の姿を視界に捉える。二人共緊張した面持ちだが、目立つ外傷はなく安心していいだろう。

 

「もう一度聞くぞ、お前は一体なんなんだ」

 

天羽奏が訪ねてくる。ことの次第によっては今すぐお前を倒す。彼女の目はそう語っていた。風鳴翼も同じような思いだろう。だが、彼女の方は多少腰が引けているが。

ノイズが空気を読まずに襲ってくる。しかし、攻撃のタイミングがわかってさえいれば恐ろしくはなく、むしろカウンターがしやすいので逆にありがたい。基礎的な錬金術を叩き込んでやり、塵に還す。それを見た彼女たちは僕に対しての警戒度を一段階上げたようだ。

 

「誰だ、と聞かれたら良い錬金術師、そう答えるほかない。そして、天羽奏君に…」

 

 ゴクリと、目の前の二人が息を呑む音が聞こえる。静まり返る世界。空気を読み離れた所で待機するノイズ。壁際で大量出血している少女。少女…。あ、忘れてた。まあ大丈夫だろう。もしもの時は錬金術を使えばいいだけだ。

 

「君に心を奪われた迷える子羊だ!」

 

 決まった。かつてカリオストロに気まぐれに教わった、婦女子を口説く方法がこのような所で役に立つとは。天羽奏が気の抜けた顔をしているがそれもまたキュートだ。

 そんな彼女に対して背を向けノイズへ向かって駆け出す。拳で、足で、錬金術でノイズを塵に還していく。こんな軽い気持ちで戦ったのは初めてだ。もう何も怖くない!恐らくこれが愛の力なのだろう。なぜそこで愛!と聞かれてもうまく答えを出すことはできないが、まあそういうことだ。

 そんなことを考えながらノイズを屠っていく。恋はいつでもハリケーンなのだ!高笑いを上げながらそんなことを考える。

 サンジェルマンに対してどのように報告するか。また、件の少女に対する治療をどうするかで頭を抱えるのはまた別の話。

 

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