下心からバイト始めました   作:沖縄の苦い野菜

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今回の主要登場人物はタイトル通り。
サブタイトル、ふざけているわけではないです。いえ、本当にふざけてないんです!

また、感想新たに3件の方、1件の評価、ありがとうございます!
嬉しすぎてアドレナリンがドバドバ溢れすぎて更新途切れ知らずになっており候ふ。

それでは、本編をどうぞ!



あみまみまみあみあみまみ?

「ねぇねぇ。レン兄ちゃんってさー」

 

 サイドテールを小さく揺らしながら、双海姉妹のうち一人はテーブルに頬杖をついて楽しそうに口を開く。対面に座る連太郎は呆れたように、話している方の少女に片目、話さずニコニコと何か企んでいそうな顔の少女をもう片目で捉えていた。

 

「全ッ然、モテないよねー」

「藪から棒に何だ。モテないのは事実だが」

「デリカシーないからじゃないかなー?」

 

 鬼の首を取った、と言わんばかりに笑みを深くするパイナップルヘアの双海が追撃を仕掛ける。双子の彼女たちは瓜二つ、息ピッタリに連太郎をからかっていた。連太郎も、言わんとしていることが、桜守歌織との件であると理解しているのか、眉間にしわを寄せて溜息を吐く。

 

「いや、確かにあれは自分が全般的に悪いけど。弁明の余地ないけど」

「レン兄ちゃん。もしかして、この期に及んで言いわけかね?」

「こっちは調べがついているんだ。自白したらどうかね?」

 

 これを聞いて、連太郎は口を閉じて腕を組み、黙秘の姿勢を取った。絶対に口は割らんぞ、と威圧的な態勢に入った彼を見て、双海姉妹はますます笑みを深くする。

 

「亜美―、レン兄ちゃん黙っちゃったねー」

 

 パイナップルヘアの双海がもう一人、亜美と呼ぶ少女に話しかける。亜美と呼ばれたサイドテールの双海は、悪巧みする小僧のような笑みを浮かべて。

 

「そうだね真美―。どうしよっか?」

 

 と、パイナップルヘアの双海を真美と呼び、今後の行動方針を画策する。

 

 しかし、それは明らかにおかしい光景であった。

 

 何故なら、基本的に双海亜美とはパイナップルヘアの方である。そして基本的に双海真美はサイドテールの方である。つまり、彼女たちはお互いの名前を逆に呼んでいるように見えるのだ。それは普通に考えれば、入れ替わってイタズラを慣行しているのだと、そう考えられる。入れ替わり事件というのは、日常茶飯事の光景なのだ。

 

「……お前ら、自白してるぞ」

「なになに? 兄ちゃんが自白するって?」

「おー、待ってましたっ! そうこなくっちゃ!」

「――とでも言うと思ったか?」

 

 テンション上がった二人に水を差すように、連太郎の鋭い一言が盛り上がった雰囲気を引き裂いた。彼女たちは「なんのこと?」とお互いに顔を見合わせて首を傾げてみせる。

 

「お前ら、入れ替わってないだろ?」

 

 双海姉妹はお互いにもう一度顔を見合わせて、ニシシッ、としてやった、といった風に笑って見せる。

 

「レン兄ちゃん、亜美が自白してあげたって言うのに、自分は自白しないつもりかね?」

 

 パイナップルヘアの双海が最初に口を開き。

 

「真美もレン兄ちゃんがかわいそうになったから、今日くらい自白してあげたのに、サービス悪いと真美は思うなー」

 

 サイドテールの双海が続いて口を開く。

 

 今度はパイナップルヘアの双海が亜美と名乗り、サイドテールの双海が真美と名乗った。常人なら、この時点で何がなんだかわけがわからなくなる。そもそも基本的にどっちの双海が亜美で、真美だっけ、と。

 

 基本的に、パイナップルヘアが亜美である。サイドテールが真美である。

 

 面倒なのは、無自覚を装ってパイナップルを真美、サイドテールを亜美とお互いに呼んだこと。そしてその後、指摘されてからパイナップルを亜美、サイドテールを真美とお互いに呼んだこと。この二点が、妙にややこしいプロセスを経てしまったことだ。

 

「そうだな。確かに今、お前たちは自白したけど。……てか、こっちは何自白すりゃいいわけ?」

「亜美―、レン兄ちゃんが冷たいよー」

「真美―、レン兄ちゃんが塩対応だよー」

 

 今度はサイドテールを亜美と呼び、パイナップルを真美と呼ぶ。嘆く様に口をそろえた彼女たちは、そのまま息も継がず。

 

「真美――」

「亜美――」

 

 そこからマシンガントークが始まった。お互いがお互いの名前をごっちゃに呼び合い、更には髪を解いてその場でお互いがお互いを追うように円を描いて歩き出す。

 

「亜美―、レン兄ちゃんって、つむつむ(白石紬)に対してズバズバっと物言うよねー」

「真美―、レン兄ちゃんって、このみん(馬場このみ)にメイワクかけすぎだと思うんだよねー」

「真美―、レン兄ちゃんって、めぐちん(所恵美)と仲良すぎると思うんだよねー」

「亜美―、レン兄ちゃんって、まつり姫(徳川まつり)に対して騎士様ロールしてるよねー」

「真美―、レン兄ちゃんって、朋花様(天空橋朋花)に対して騎士様ロールしてるよねー」

「亜美―、レン兄ちゃんって、茜ちん(野々原茜)からやけに心配されてるよねー」

「真美―、レン兄ちゃんって、ぷぅちゃん(ジュリア)にエコヒイキしてるよねー」

「亜美―、レン兄ちゃんって、麗花お姉ちゃん(北上麗花)のことゼッタイに苦手だよねー」

「真美―、レン兄ちゃんって、しほりん(北沢志保)のことがお気に入りじゃないかって思うんだよねー」

「亜美―、レン兄ちゃんって、真美のこと好きなんじゃないかって思うんだよねー」

「真美―、レン兄ちゃんって、亜美のこと好きなんじゃないかって思うんだよねー」

「亜美―、レン兄ちゃんって、真美のことゼッタイに大好きだよねー」

「真美―、レン兄ちゃんって、亜美のことゼッタイに大好きだよねー」

 

 そこまで言い終えると、双海姉妹はお互いの席につき、髪を結んでみせた。パイナップルとサイドテール。さっきと席の並びも変わらず、いやらしい笑みを浮かべ、口をそろえて言った。

 

『さぁどっちが亜美真美!?』

「……いや、さっきのやる意味あったの?」

 

 テンションマックスの双海姉妹に対して、連太郎は頭を押さえて呆れたように呟いた。

 

「てか、最後の何? 催眠術? それとも洗脳音声?」

「やだなー、レン兄ちゃんったら。ちょっとしたトリックだよー」

「そうだよー。レン兄ちゃん、ちょっとジイシキカジョウ、ってやつ?」

「……頭が痛い」

 

 連太郎の頭には今も双海姉妹の声が脳内再生されている。あまりに同じような音声を聞きすぎたせいで、エコーがかかり頭の中で反芻される。彼は双海姉妹の行動に頭を抱えていたのではなく、本当に頭痛に苛まれていた。

 

「あり? ちょっとやりすぎちゃった?」

「あれ? レン兄ちゃんはゼッタイオンカンってやつで、亜美と真美見分けてたわけじゃないの?」

「……もってねぇよ、そんな便利なモノ」

 

 吐き捨てるように呟くと、彼は机の上に突っ伏した。そして怠そうに「あぁぁぁ」と低い声で唸り始める。双海姉妹は顔を見合わせると、肩を竦めて「やれやれ」といった様子で首を振る。

 

「亜美の超キュートなボイスをこんなに聴けて、レン兄ちゃんは幸せ者だと思うわけですよ」

 

 サイドテールの双海が得意げな顔で言うと。

 

「真美の超可愛さあふれるボイスをこんなに聴けるなんて。このこの~、幸せ者め~」

 

 追従するように、パイナップルの双海がこれまたドヤ顔で言ってのける。

 

「お前ら、最初から変わってねえじゃん……」

 

 心底疲れたように言ってのける連太郎に、双海姉妹は気にした風もなく。

 

「レン兄ちゃんはダメダメですな~」

「美少女姉妹双海亜美真美は、日々成長しているのですぞ」

 

 芝居がかった口調。得意そうな顔。年相応に輝く淡紅色の瞳。まさに鏡写し、生き写しのような双子の姉妹。

 

 連太郎は気怠そうに顔を上げて、二人を見た。

 

「……確かに、真美のサイドテールの結び方が雑だな。亜美はいつものパイナップルになってない」

「おっと、それってつまり~?」

「どっちが亜美で、どっちが真美か、わかったと?」

「まだしらばっくれる気か」

 

 一つ小さく溜息を吐くと、連太郎は席から立ち上がり、二人に近づいた。

 

「お前が亜美」

 

 パイナップル頭の上に右手を置くと、「わしゃわしゃ」と雑に撫でながら言い。

 

「お前が真美」

 

 サイドテール、ポニーテール、どちらか分からないような髪をこさえた頭の上に左手を置くと、こちらも雑に撫でながらそう答える。

 

「結び方雑にして、同じ位置に座って。騙そうと悪知恵働かせたんだろうが」

 

 彼は二人の頭から手を離すと、そのまま部屋の出口に向かった。

 

「根本から違うだろうが。俺も、プロデューサーも、おじさんも、間違えやしねぇよ」

 

 そう言い残すと、連太郎は部屋から出て行ってしまった。

 

 残された双海姉妹はもう一度顔を見合わせて、撫でられた頭を触り。

 

「もう~、レン兄ちゃんなでるの雑だよ!」

「女の子の扱いわかってないよ! これだからモテないんだよ!」

 

 と、恨み言を叫びながら乱れた髪を直し始める。その過程で結んだ髪を解き、また結び直すと。

 

「……というか、亜美的には最後の台詞、クサすぎると思うんだよね」

 

 先ほど雑なパイナップルヘアから変わり、丁寧に結ばれたパイナップルヘアを揺らして、双海亜美が意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「真美的には、さっきのネタにして、レン兄ちゃんをイジれると思うのですよ」

 

 先ほどの雑なサイドだかポニーだかわからない髪型から変わり、丁寧に結ばれたサイドテールを揺らして、双海真美が心底楽しそうに笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、次はどうする?」

「いやいや、その前にレン兄ちゃんの名言(笑)をみんなに伝えようよ!」

「いいねいいね!」

 

 二人は駆け足で部屋から出ると、誰かと遭遇しないかと部屋を回り続ける。そして誰かを見つければ、さっきの言葉を面白おかしく伝えて回り、その日一日の大きな話のネタにするのであった。

 

 




亜美真美のマシンガントーク中に、簡単な叙述トリックを使っております。誰が何と名乗っているか、ていう本当に簡単なものなので、暇つぶし程度に見つけていただければと思います。

……亜美真美の口調で割と簡単に見えて難しいので、若干出しきれていないところありますが、今の私の限界がこれです。お許しを……。

それでは、感想、コメント、ご指摘などなど、お待ちしております。

※双海真美の本当の髪型の記述「ポニーテール」を「サイドテール」に修正。マジでミスしてごめんなさい……。

追記:時系列は歌織さんがプロデューサーから手紙を受け取る日と同日です。
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