部屋で寝ていて、起きたらサバンナに居て、サーバルという女の子と出会い、どうやら僕は「さっき生まれた」らしいということで、もう大抵の事では驚かない気でいたがさすがに衝撃を受けた
となると、そう
阿良々木暦、0才児の誕生である
「ひろくて見晴らしいいでしょー!」
サーバルちゃんに図書館まで案内されることになった僕は、サバンナ地方という地を歩いている
「うん、サバンナなんて初めて来た」
辺りを見ながら、自分が今まで暮らしていた場所、よく行っていた場所なんかを思い出す、自分の部屋、学校、廃墟となった学習塾跡、誰かの家、神社、等々・・・
ふと、サーバルちゃんが言っていた事も思い出す
「そういやサーバルちゃんは、ここらへんが縄張りって言ってたよな?」
「うん!そーだよ、あったかい風が気持ちいいし、いいところでしょ」
「うん、でもサバンナ地方にはサーバルちゃんだけしかいないのか?」
ジャパリパークのサバンナ地方というところで目覚めてからは、サーバルちゃんしか目に入らない、あぁいや・・決してサーバルちゃんだけをガン見しているということではない
こんな広大な自然の中で自分の縄張りを持つなんて、もしかするとサーバルちゃんはすっごーい!少女なのかもしれない
そして、そう
サーバルちゃんの他にも " フレンズ " が居るのかということも、確かめたかったというのもある、さっき他にもフレンズが居ると聞いたから僕は少し気になっていた
「まさか~、他にもいっぱいいるよ! たとえば~・・あっ」
「あそこにシマウマちゃんがいるねっ!」
「えっ!?シマウマちゃん?どこだ?シマウマちゃーん?どこなんだ?」
食い気味になって、ついテンションが上がる僕である
「どこだろう?見つからないな」
「あー、隠れちゃった」
サーバルちゃんが指差す方を見るのが遅れたのか、僕にはシマウマちゃんを捉えることは出来なかった、残念だ、サーバルちゃんをひたすら見て癒されようか
「あとはね~・・・その隣にトムソンガゼルちゃんがいるよ!」
「っなに?トムソンガゼルちゃん!?」
サーバルちゃんから視線を外して、またサーバルちゃんが指差す方を見れば
「あっ!ほんとだ、居る! 」
居た、草むらの側に女の子!!
の、後ろ姿しか見えないが、そしてこれまた、何か頭に生えていて動物のコスプレのような格好を・・・
いや、違うか、この考え方はもう捨てた方が良いな、うん、やめよう、ことここにおいて、動物の格好をしたこの子達は "フレンズ "という存在なんだと頭に叩き込もう
"コスプレをした女の子"よりも、"動物が女の子になっている"という世界だと考えた方が、ロマンがあって良いじゃないか!
僕もそのフレンズということなら、そうだ、郷に入っては郷に従え、というやつだ
この世界"ジャパリパーク"に入っては、ジャパリパークに従おう
「ほかにもいっぱいいるよ!さばんなちほーは広いから、たっくさんフレンズがいるんだ!」
「な、なんだって!!」
[興奮]
このサバンナ地方という場所でひとり目を覚ました時は、まさか、なにか良からぬ物に化かされているのかと、今までに自ら経験したことや、僕の身近な者に取り憑いた怪異の事を考え、最初は身構えたりもしたものだが
今はもう、いや、もはや安堵と期待に包まれているといっても過言じゃない
それほどまでに僕は安心して浮かれていた、もしここが危険な所だったら、僕が居てはならない場所で、良からぬ怪異に貶められているのだったら、そう、つまりそういうことだ
僕と命で繋がっている、ペアリングだとか、運命共同体だとか、言葉を並べれば並べるほどにその繋がりがどういうものか、説明するには難しい
そんな奴が僕の中にいる
[ キスショット ]
[ アセロラオリオン ]
[ ハートアンダーブレード]
そうだ、忍が出て来ないっていうことは、今現在、僕に危険は及んでいないということだろう、ペアリングが切れた感覚も無いなら、きっと僕の影の中で眠っているか、今この状況を分かっていても相応の「何か」が起こるまでは見を決め込んでいるのだろう
だから僕はウキウキでいられるというものだ
「としょかんはじゃんぐるちほーの先だから、まずはサバンナの出口までいこっか!」
「え?こんな広いサバンナの出口?かなり遠いのか?」
目に映るこの大草原の出口、と聞いて、だいぶ時間が掛かりそうな距離だと思ったが
「すぐ近くだよ、さ、いこいこ!」
ピョンピョンと跳ねるように飛び進む、とってもかわいいサーバルちゃんが言うのだから、僕は信じるしかない
もちろん、なんで僕がここに居るのだろうか、という不思議な疑問は残るが、今は深く考えなくても良さそうだと思えるくらいに、すぐ目の前で道案内をしてくれるサーバルちゃんが、僕を安心させてくれている
~~~~~~
さて、少し進んだ先には、崖があった
「・・えぇっと、行き止まりか」
と言って、隣に居るサーバルちゃんを見た矢先
サーバルちゃんはぴょーん、ぴょーんと、いとも簡単にこの崖を、スキップ感覚で降りていった
僕はちょっと驚いていた
「はやくはやく~!」
「えぇ!?そんなノリでいけちゃうのか?」
「いけるいける!だいじょーぶだよ!」
「よーし・・・僕も男だ!」
サーバルちゃんのように、まず少し下のせり出した岩へと飛び降りて・・
──が
「ぅぅうぅわああぁぁぁぁぁぁぁ!」
[ 落 ]
ザザザザーー! ドッ
うまく着地できず、ザザーっと勢いよく滑りながら落ちた僕だった
「わー!だいじょーぶ!?」
「いってて・・うん、大丈夫だ」
まぁその、ぼくがフレンズになっていたとしても、吸血鬼でなくなっているわけではなさそうだから、ちょっとした打ち身くらいなら直ぐに治るだろう
なによりサーバルちゃんを心配させるわけにはいかないからな、うん
~~~~~~
さて、崖のつぎは池か
と思ったら、サーバルちゃんはまた
「えっ、やっ」
ぴょんぴょーん、と間にある岩を足場にして飛び越えて行った
サーバルちゃんの身体能力の高さは計り知れない、といっても、まだ出会ったばかりだから知らないのも当然か
にしても、跳ぶにしては先の岩までちょっと距離がある
だが、僕の吸血鬼としての能力を使えれば違うのだろう
よし、一応の確認としてやっておこう、決して僕がサーバルちゃんに良いところを見せて、また「すっごーい!」と喜んでもらうためだなんて考えたりはしてないんだ
うん、忍との繋がりは感じられる、が、もし僕の勝手の思い込みなだけだったらいけないからな!
すっごーい僕を見てもらおうなんて
すっごーい!とはしゃいで貰おうなんて、そんな調子に乗ったことは考えちゃいないんだ
そう、さっきみたいに失敗してサーバルちゃんを心配させちゃいけないからな
そう、これはただの確認だ
タタタタタタタ
「ーーっ!!」バッ
~~~タッ
ひとっ跳びでサーバルちゃんのところまでいって、よし
やっぱり僕は残念ながら・・とはもう今となっては考えなくなってきたが、人間ではないみたいだ
「うーわぁー!!すっごーい!1回のジャンプでこっちまで飛んできちゃうなんて!」
うん!これが見たかった!
はしゃいでくれるサーバルちゃんに、僕の心はトキメキ to night ミ☆ だった
「最初に会ったときのかりごっこのときもすごかったし、コヨミお兄ちゃんってもしかして、私と同じねこかのフレンズだったりするのかなー!?」
[ 猫 ]
僕はそうじゃなさそうだが、羽川だったらフレンズになればもしかしたらそうなるのだろうか
「そうだといーな!いーなー!」
腕をブンブン振ってピョンピョン跳ね、サーバルちゃんが僕を見ながら楽しそうにしている
「うん、そうだといいな」
僕がサーバルちゃんのような種類の仲間のフレンズじゃないと、たとえ分かっていても、サーバルちゃんが願うなら "そうだといいな" と思えてしまう
そう、可愛いは正義だ
~~~~~
さて、また歩いて行っていると
ピョコン
[ 怪 ]
岩の影から、もうここへ来てから何度目になるだろうか、これまたよくわからない、物体Xが現れた
「えっ、なんだこれ?」
適当に「物体X」なんて思ったが、これはなんだ?一つ目の、ふにょふにょしてそうな生き物、というか生き物なのだろうか?
「これもフレンズの一種なのか?にしては何か違いすぎるか、ここのマスコットキャラか?」
なんて呟きながら、屈んでそれを見た、その時
「あっ、だめ!それはセルリアンだよ!逃げてー!」
[ セルリアン ]
それまで快活で朗らかな声色で話していたサーバルちゃんの、真剣な大声が僕を焦らせた
「えっ・・?セル?、っとと」
僕はその物体 " セルリアン " から急いで離れようと立ち上がろうとして、そのまま後ろへ尻もちを突くように倒れた
そのセルリアンがフヨフヨと弾みながら寄ってくる
僕はすぐ立ち上がって体勢を整えーーー
「うみゃみゃみゃみゃみゃーー!!」
サーバルちゃんの手が、光って唸った
「えーーい!!」
バシィ!!
パッカーン
物体X、セルリアンは小気味良い音を鳴らして砕け散ったのだった
「あれはセルリアンっていうだよ、ちょっと危ないから気をつけてね!」
どうやら僕は、また恥ずかしい所を見せてしまったようだ
こういうときは大体格好付かないんだよなぁとは思うところがある
「危ないやつだったのか、ありがとうサーバルちゃん、助けてくれて」
「えへへ、どーいたしまして!」
「でもあれくらいのサイズなら、自慢の爪でやっつけちゃうよ!」
頼もしげに、エッヘンするサーバルちゃん
セルリアンか、まさかフレンズと敵対(?)しているような存在がいたなんて驚いた、どうやらジャパリパークというのは、ただ心地の良い世界というだけでは無いようだ
少し考えれば確かに、まるで怪異が形を成したような見た目をしていた気がする、直接叩いて倒せるという実態のある存在みたいだから、怪異そのものでもなさそうだとも思う
だが気を付けた方がいい存在のようだから用心しておこう
~~~~~~
さらに歩いて行って、すこし休憩することにした僕とサーバルちゃん
「ここでちょっときゅーけー!」
パタッ
「たいよーがいちばんあつい時間は、下手にうごいちゃだめだからねー」
サーバルちゃんは地面の上にポテっと寝そべって、僕は木を背もたれにして休んだ
僕も同感だ、今でこそ克服した体だが、この日差しは吸血鬼にとって天敵なんだろう、もし僕が「成り立て」の頃だったらあっという間に灰になっていそうな、そんな日差しだ
「あとで水も飲もーね、こっちもおすすめの場所があるんだー」
今一休みしている、この大きな木もサーバルちゃんのおすすめの場所みたいだ、サーバルちゃんの縄張りの広さはすっごーいのかもしれない
「あーあ、鳥のフレンズならヒョイっと飛んでいけるのになー」
鳥のフレンズ?鳥にもフレンズが居るのか、この世界で、僕はまだ何も分かっていない
「フレンズって、もっと色々居るのか?このサバンナだけじゃなく、他にも」
「いるよ!私よりも強くて怖くて、おっきい猫科の子もたっくさん!」
どうやらサーバルちゃんは、自分が猫科の動物ということを分かっているみたいだった、僕は不思議とそこに感心した、だが、大きな猫科と聞くと、獰猛な動物が頭をよぎる
「え、そのフレンズには・・出会ったら襲われたりしないのか?」
「そんなこと~」
ないよな、フレンズ同士なら仲良くできーー
「たまーに、きげんがわるいときだけだよ」
「・・そうか」
そうなったとき、かつて、八九寺に噛みつかれた時のように、殴って気絶させてしまうようなことは、このジャパリパークという世界のフレンズに対してできそうにない、ならばその時は甘んじて噛みつかれよう
「あっ、でもさっきのセルリアンには注意だよ」
先ほど遭遇した、サーバルちゃんにやっつけられた奴を思い出す
「ほんとはこのへんにはあんまり居ないはずなんだけどー」
「さっきのサーバルちゃん、なんか凄かったな、手が光ってたみたいだけど」
サーバルちゃんにはとある師匠がいて、修行の結果、明鏡止水の境地に至っているのかもしれない!
なんて、そう、まさに漫画やアニメの主人公みたいだ、僕にも必殺技の1つや2つくらいあったりしないものだろうか、何かとやられ役になりがちな僕である
「フレンズの技だよ!また出てきたら私にまかせて!」
頼もしいサーバルちゃんに僕は笑みを隠せない、すると突然
「あれ?コヨミおにいちゃん、あんまりハァハァしないんだね」
「え?」
「あんまりハァハァしてないね!」
「まぁ、うん、そうだね、僕がサーバルちゃんにハァハァなんてしていたらイケないんじゃないかな?いや、ちょっと待った、でもそれはサーバルちゃんに魅力が無いなんてことはないんだよ、ただ決して僕に幼女趣味があるなんてことがないだけで、大切な事だから二度言うけれど、僕がハァハァしていないからといってサーバルちゃんに魅力が無いなんてことは決して思っちゃいないんだ、なんなら君の魅力へのアンサーとして僕は今すぐ君を抱き締めたって構わな」
「んーと、よくわかんないや!」
「けっこう歩いたのに、もう疲れてないんだね!」
「うん、そうだね」
危ない危ない、学生紳士である僕としたことが、疲れてないか心配してくれたサーバルちゃんの純粋な言葉に惑わされてしまった、きっとこのサバンナの太陽の日差しに当てられてしまったんだな、ふう、まったく僕らしくない
「私、コヨミおにーちゃんのすごいところ、だんだんわかってきたよ!」
なんだろう、とっても嬉しいぞ!
僕も、サーバルちゃんの事を分かってきていると思う
「コヨミおにーちゃんはきっと素敵な動物だよ!楽しみだね!」
目眩がしそうな言葉に、僕はうっかり惚れ込んでしまいそうだった、いや、惚れるという点では、もう出会った瞬間からそうなっていた僕である
あれこれと心配せずいられるのも、一人じゃないからだろう、僕は至って前向きで居られた
前向きで居られるなら、あちこち見たり振り返る必要なんてないだろう、ならば僕は身を任せよう、このジャパリパークという世界に