獣物語   作:火炎放射機

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前回に引き続き、サーバルちゃんにサバンナガイドされているぼくである




サーバルみんみ 3

~~~~~~~

 

 

 

サバンナを行く道すがら、大きな木が目に入った

 

 

「おおきいでしょー サバンナにはところどころに木があるんだよ!」

 

 

サーバルちゃんの言う通り、鬱蒼とそこらじゅうに生えまくっているのではなく、まさにところどころ、そこかしこに大きな木が生えている

 

 

 

「あっそうだ!木登りができると逃げたり隠れるときべんりだよ」

 

 

 

逃げたり隠れたりというのは、さっきのセルリアンというのに遭遇したときのことだろうか

 

 

 

「ちょっとやってみない?」

 

 

「えっ?」

 

 

言うが早いか、そう言った途端

 

 

 

「みゃーみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃーー!」

 

 

ミャーミャー言いながらあっという間に大きな木を登りきってしまったサーバルちゃんだった、なんという猫

 

 

「ねっかんたんでしょ」

 

 

こんなに大きな木をまるで地を走るように登るなんて曲芸染みたことを、これまた簡単にやってのけた

 

 

「僕には簡単じゃ無さそうだ・・」

 

 

降りてきたのも早いサーバルちゃんが、さっきのより小さめで僕向けの1本を見繕ってくれたようだ

 

 

「これだったらどうかな?」

 

 

うん、これくらいなら僕でも力技で登れそうだ

 

 

「よっ、ほっ・・!」

 

 

さてと、僕もサーバルちゃんみたいにミャーミャー叫んだらササッと登りきれるのだろうか

 

 

「みゃあーみゃみゃみゃみゃみゃみゃぁー!」

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

なんて叫んで登ってる途中、サーバルちゃんも登ってきてあっという間に「みゃみゃみゃみゃー!」と追い越された

 

 

 

「いーでしょ、木登り!」

 

 

サーバルちゃんに手を引かれて登りきって、しばしサバンナの景色を一緒に見る

 

 

「・・・・」

 

 

普段自分が目にしない、居もしない大自然の中に今僕は居る、なんとも言葉にならない、只々僕はこの広がるサバンナという大自然に圧倒されていた

 

 

 

「水場はあそこだね、いこっか!」

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

また進んだ先に、サーバルちゃんのお勧めらしい水場があった

 

 

 

「みずだーー!」

 

 

水場1つにもこれまでのように喜びを見せるサーバルちゃん、急勾配な坂道を上がりきった先に、その水場はあった

 

 

サーバルちゃんは直接その水場へと口をつけて水を飲み始めた、これまでの道のりで僕も喉が渇いていたので、僕も手で掬って水を飲んだ

 

 

 

「おいしー!」

 

 

サーバルちゃんの嬉しそうな、朗らかで幸せそうなその笑顔に僕も笑みを隠せない

 

 

「あははは♪」

 

 

顔を見合わせただけで微笑んで笑ってくれる、なんて良い子なんだろう

 

 

君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる!

 

 

 

「けっこう歩いたねー」

 

 

歩いたし、滑ったり飛んだり、何かやっつけたり登ったりもした

 

 

「あ、あそこ!休憩した木陰だね!」

 

 

うっかり僕がハァハァしてしまったところだ

 

 

「けしきを見ながら水のむと、生きかえるよねー!げんきげんき♪」

 

 

「サーバルちゃんはずっと元気に見えるぞ」

 

 

「えっへへー まぁね!」

 

 

とっても「ニャン」ポーズが決まっているサーバルちゃんである

 

 

「にしても今日はすいてるなぁ~いつもばしょとりになるくらいのばしょなのに」

 

 

「そうなんだ」

 

 

「こわーいだれかでもいるのかなー?」

 

 

まいったな、周りには誰も居ないだなんて意識させちゃうサーバルちゃん、なんて魔性なんだろう

 

そんな魔性に当てられて、余りにも可愛いんだからもうそろそろ何の意味もなく抱き締めたくなってきた

 

なんて思って、何となくサーバルちゃんへと手を伸ばそうとし ーーー

 

 

 

「だぁーーれぇーー??」

 

 

 

「ってうわぁぁぁぁぁぁぁや、やったぜ!!」

 

 

 

僕は驚きながら、新たに現れたフレンズらしき女の子のプロポーションと、やや刺激的な服装に驚きと喜びの雄叫びをあげてしまった

 

 

仕方がない、何故なら僕は思春期真っ盛りの、健全な高校生の男の子なのだから

 

 

 

「失礼、水浴びをしてましたのー」

 

 

「あ、カバ!」

 

 

どうやらこのフレンズの女の子、というよりは"お姉さん"と思わしきフレンズは、カバのフレンズだったようである

 

 

「珍しいわねサーバル、この辺まで遊びに来るなんて」

 

 

「これから図書館まで行くんだ!お水を飲んで行こうと思って」

 

 

このお姉さんはどうやらサーバルちゃんと顔見知りのようだ、なんというか、うん、決していやらしい目で見てるわけじゃないんだけど、僕の高校生の男の子的な部分をくすぐって仕方がない

 

 

 

 

 

       [厭]

 

 

 

 

 

「今日はフレンズがすくないねー?」

 

 

「今日はセルリアンが多いから、皆あまり出歩かないのですわ」

 

 

"セルリアン"ここまで来る途中に遭遇した変な物体はフレンズたちにとって、隠れるか戦うかという、どちらにしても危険な存在なのだろう

 

 

「ゲートにもちょっと大きいのが居るそうよ、気を付けるんですのよ?」

 

 

「じゃあ、わたしがやっつけちゃうよー!」

 

 

自信たっぷりなサーバルちゃん、それにしても、生まれたばかりらしい僕はフレンズ会話に入れないで居た

 

 

 

「サーバルがですのー?心配ですわ~」

 

 

「だいじょうぶだよ、さっきもやっつけたもん!」

 

 

「どうせ小さいやつでしょう?」

 

 

「な なんでわかったのー?」

 

 

正直なサーバルちゃんである、何となく二人の間柄が伺える

 

 

「ところでー」

 

唐突に、カバのお姉さんフレンズの視線が僕の方へと向いた

 

 

「その子はどちら様?」

 

 

「こよみおにーちゃんだよ!」

 

 

「こよみ・・?聞いたことない動物ですわねぇ」

 

 

「なまえはさっききいたの、でも何の動物かわかんないんだって」

 

 

さて僕という人間は、吸血鬼・・の倦属は、果たしてこの世界に置いてはなんのフレンズなのだろうかと少し思ったが、しかし僕自身は人間だと信じている

 

だが、この世界のフレンズは"人間"と聞いても分かるのだろうか?動物が謎のサンドスターの力でフレンズになるとして、およそ人間がフレンズになったところで分からなさそうではある

 

 

 

「それで としょかんに行ったらいいんじゃないかなーって」

 

 

しかし今の僕は、サーバルちゃんにジャパリパークを案内してもらいたいし、一緒に居たいのでそういうのは別に今は分からなくても良いと思った

 

 

「こよみおにーちゃんがなんのどうぶつかわかったりしない?」

 

 

「んー・・」

 

 

 

 

 

 

      [問]

 

 

 

 

 

 

「あなた、泳げまして?」

 

 

僕が何のフレンズかを見抜くための質問だろうか、泳げないということはないが、特段得意だということでもない

 

 

「まぁ、それなりには」

 

 

 

「空は飛べるんですの?」

 

 

そらをとぶ、かぁ、そんなポケットのモンスター的な技が僕に使えるなんてことはない、いつだったか斧乃木ちゃんの" アンリミテッド・ルールブック "というので「飛んだ」ことはあるが

 

 

まぁ僕のことだ、ギャグパートになれば出来るかもしれない

 

 

「その気になればもしかしたらできるかもしれない!」

 

 

いつだってロマンティックを忘れない僕としては、つい見栄を張ってしまったと言える

 

 

 

「んー、じゃあ 足が速いとか?」

 

 

流されてしまった、どうやらこのカバのお姉さんには僕というキャラクター性を見透かされてしまったようである

 

 

「心にピンときて捕まえる対象がいれば・・」

 

 

いつだって八九寺を見つけた時の僕は公道最速伝説だ

 

 

「あなたよくわからない変な子ねぇ~?」

 

 

どうやら僕は変な子らしく、ちょっと困られてしまった

 

 

「そ、そんなことないよ!」

 

 

サーバルちゃんが僕を肯定してくれた、この子から出される言葉はどれもポジティブでたまらない

 

 

 

「ふふっ、まぁサーバルみたく足も速いし、鼻も耳も良いのにおっちょこちょいでぜーんぶ台無しになってる子も居ることですし」

 

 

そうなのか、全くサーバルちゃんは可愛いな!

 

 

「気にする事ないですわ」

 

 

「ひどいよー」

 

 

「私も泳げませんしねぇ」

 

 

「えっ?そうだったのー?!」

 

 

へぇ、カバって泳げないのか?水の中に居たのなら泳げるものだと思ったんだが、そうじゃないのか、動物の事で1つ賢くなった僕である

 

 

「ただ」

 

 

ふと真剣味が足された顔でカバのお姉さんが言う

 

「ジャパリパークの掟は自分の力で生きること、自分の身は自分で守るんですのよ」

 

 

やはりこのフレンズは大人な感じがする、フレンズはただ"動物になった女の子"というだけの存在じゃなさそうだと思える雰囲気が、このカバのお姉さんにはあった

 

 

「サーバル任せじゃダメよ?」

 

 

「はい」

 

 

ここまで来るにあたってあったことを思い返して、これから何かあったときにはできれば僕が何とかしたいなと思う

 

 

「じゃあ わたしたちいくね!」

 

 

さて、カバのお姉さんにお別れを告げ─・・・

 

 

「あ、セルリアンと遭ったら基本逃げるんですのよ?どーしてもたたかうときはちゃんと石を狙いなさい」

 

 

「うん!」

 

 

──・・・

 

 

「あと、暑さに気をつけるんですのよー?特にサーバル あなたほとんど汗をかかないんだからぁ 今のうちに水も沢山取っていきなさい」

 

「はぁーい」

 

 

──・・・・

 

「それにね 上り坂や下り坂で足をくじかないように気をつけるんですのよ」

 

「大丈夫だよー!」

 

 

さきほどのしたたかさがあった言葉が嘘みたいなほどに、世話焼きなフレンズだった

 




さて、このサバンナの出口まで、あとどれほどなのだろうか

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