更新の間隔が広いから、毎回書き方が変わってる気がする……。
定期考査。
かく言う自分も、現代文の勉強という建前で図書室で読書をしている。そうすれば罪悪感とか一切無い。因みに俺はたまに独りで読書をして帰ったりする。別に陰キャじゃないぞ。うん、全然違う。
まあ、そんな学園生活を送っていると『読書におススメな校内スポットランキング‼︎』なんてものが出来てしまった。
1位は図書室。
2位は屋上のベンチ。
3位はグラウンドの端のベンチ。
2位と3位の差は周囲の人口密度、砂埃等による妨害、靴の履き替え等のロスタイムにより算出した。
そんな1位の図書室もテスト週間に入れば満席である。羽丘学園ってそれなりの進学校だから仕方ない。恨むのはテストの存在だ。テストは悪だ。と、悪態を吐いたが、俺はしっかりと席を確保している。
しかし後から来る勉強目的の人達の視線が痛いのだ。もうね、背中に刺さりまくり。出血多量で死ぬ。
え?何々?「勉強しない奴は他所行けよ」、「この時期に読書?あいつ終わったな」、等々。
……君達の嫌味で死にそうだよ。
「はあ、移るか……」
友人との3〜5人グループで勉強するんだろ?なら俺一人分のスペースが空いたところで意味無くないか?そう言ってやりたいが、そろそろ憎む視線が俺の心臓にまで届きそうなのも事実。ならば、俺が席を譲ろう。
俺が立つと、コンマ1秒も経たない内に1人が座る。座れなかった人達は少し悔しそうだ。椅子取りゲームかよ。
図書室を出るも、まだ帰る気分にはなれないので俺は新たな読書スペースを確保するため、校内を歩き始める。外から射す夕日の光が眩しく、目を細めた。
テスト勉強なんてものは夜にやればいい。俺の苦手科目は数学で、後は大体適当にやればできる。現代文と古典は教科書とワークのものから出題するのが主なので暗記、地歴公民も暗記、理科科目も計算は範囲外なので暗記、英語も単語・熟語・文法・教科書の長文を全部暗記。
しかし、数学には暗記が効かない。テレビで塾講師が「数学は暗記です」って言うのを聞くと「は?」ってなる。なので俺のテスト週間は数学漬けの夜である。一度理解すればこっちのものなので、理解する為にひたすら解く。
「それが俺のやり方。これで中学の頃は学年1位をキープしてたんだから凄いよな……」
自画自賛の言葉が漏れる。
しばらくボーッと歩いていると声をかけられた。ここは1年生のフロアなので知り合いがいてもおかしくない。他クラスに知り合いとかいないけど。
「あっ、和人だ〜。やっほ〜」
うわ。この低速ボイスは聞き覚えがある。そう、俺の天敵こと青葉さんだ。青葉さんは1年B組の教室内から廊下を歩いていた俺を呼んだのだ。だが問題はそこじゃない。青葉さん以外にもう2人いることだ。1人は美竹、もう1人は恐らく幼馴染みの人だろう。
というか、美竹の目が凄いことになってる。俺の喉元を掻っ切ってやろうかと言わんばかりの殺意。まあいい、あいつの威嚇には慣れた。
取り敢えず呼ばれたからには挨拶ぐらいしておこう。無視すると青葉さんが何を言うかわからない。
重い足取りで教室に入る。3人以外には誰もいない。
「こんちは青葉さん、蘭。後は、……こうして挨拶するのは初めてですね。初めまして深山和人です」
なんだか自然に美竹のことを「蘭」と呼べた事が今の関係とか状況に慣れつつあることを実感させ、悲しくなる。
「あっ、初めまして!羽沢つぐみです!いつも蘭ちゃんにはお世話になってます!」
俺は美竹の保護者じゃないんだがな。
「つぐみ、そいつはあたしの保護者じゃないから」
全く同じ事を考えていたなんて、なんか癪に触る。
しかし、なるべく美竹の友人とは関わりを持ちたく無かったのだが、この女の子はなんと言うか、しっかりしてそうだ。
ここで俺の中に一種の疑問が生まれた。それはごく単純なもので。
「なっ、なんでこんな真面目そうな子が蘭の友達なんだ⁉︎」
身体が恐怖に似た何かを覚え、思わず唾を飲む。
「和人、あたしのことを不真面目な奴だって思ってたんだね。殴っていい?」
声は怒り成分が多く、右手をグーにしている事から本気だと察する。だが、そんな事はどうでもいいのだ。
「いや、少なくともお前は真面目な部類では無いだろ。父親に反抗してるわけだし」
少し嫌味っぽく言ってみた。
「うっ。それは確かにそうだけど……」
俺を狩ろうとしていたオーラは何処かへ去って行った。返す言葉を失った美竹に代わって言葉を発したのは羽沢さんだった。
「そんな事ないよ!蘭ちゃんは真面目だよ!自主練欠かさないし、最近は授業もサボってないし!」
前まではサボってたんだ。美竹にも過去に色々あったのだろう。一々踏み込む気は無いが。興味も無いし。
「それに、今だってこうやってテスト勉強してるんだよ!」
とてもいい笑顔で羽沢さんが言った。可愛い。
しかし今ので、なぜ美竹と羽沢さんがずっと友達でいられるのかがわかった気がする。彼女達、幼馴染み5人は切っても切れない絆というやつがあるのだろう。そこら辺の上辺だけの友情を語っている青臭いリア充共とは違うのだろう。
「成る程ね。何の教科をしてたんだ?」
「数学」
美竹め、必要最低限の文字数で返して来やがる。そんなに俺と言葉を交わすのは嫌か。
「和人も一緒にやる〜?」
「いや、俺は本読みたいし遠慮しとーー」
「うっかり口が滑るかも〜」
「よしやろう。集中していこう」
最悪のカードを出してくるな青葉さんは!大体俺をここに残して何の意味がある!でも、俺と美竹の関係がバレたらクラスとかに居づらくなる!レイジ前に言ってたけど、美竹はファンも多いらしいので俺が刺される可能性だってある!そもそも、こいつにファンがいるってのが怪奇現象なんですけど!
「な、何急にやる気出してんの。本読みたいなら別の所に行けばいいじゃん。赤点取っても知らないけど」
この赤メッシュめ、今どういう立場か分かってるのか?俺とお前は運命共同体なんだぞ。……いや、流石に運命共同体ってのはキモいな。
「万が一にも赤点は取らないから。もし取ったら自殺を図るね」
「言ったね」
「何だよ。その『言質とった』みたいな言い草は。自殺は冗談だからな?」
「わかってるし。少しからかっただけじゃん。何ムキになってんの?」
「なってねーよ、バーカ」
「は?あんたこそ馬鹿でしょ!」
「俺は勉強できるから馬鹿じゃない!」
「自分で言うとかキモ。ナルシスト?」
「キモいって言うな。俺だって泣くんだぞ?」
「泣くんなら他所で泣いてよね」
青葉さんの脅しのせいで他所に行けない状況なんだろうが。
これから更に口喧嘩がヒートアップしようとしたその時、羽沢さんが笑い始めたのだ。そのおかげで俺たちのやり取りは終わった。
「面白いね、深山君って」
「そうか?俺はいつもこんな感じだぞ」
「うん。蘭ちゃんと深山君が話してると漫才みたいだね!」
褒め言葉なのだろうが、全くもって嬉しくない。
「こんな奴と漫才するわけないから」
その言い方だと他の人となら漫才をしてもいいという意味になるぞ。まあ、そこはツッコまないでおく。
「そんな事より、勉強するんだろ?」
さっき勉強できるなんて言ったから、数学が苦手な事は何としても隠さねば。バレないように上手くやろう。
「そうだった」
「すっかり忘れてたね」
美竹も羽沢さんもどうやら勉強の集まりである事が脳から抜け落ちてたらしい。
「ほらさっきから黙ってやってる青葉さんを見習って……。なんで、寝てるんだ?」
青葉さんは机に突っ伏していた。なんだか猫みたいだ。
「ん〜〜?いいBGMがあったから」
「俺たちの口喧嘩は子守唄程度の迫力かよ。悲しくなる」
「まあ、喧嘩の理由も内容も全部が小さいからね〜。幼稚園児の喧嘩みたいで微笑ましかったよ〜?」
そう言われて思い返すと、確かにガキだな。俺と美竹は毎回こんなに偏差値の低い喧嘩をしてたのか。
「というかさ、俺って勉強会はこれが初めてなんだけど」
「へぇ、中学の頃は友達いなかったんだ」
美竹は見下すような笑みを向ける。俺の心情はというと、超ウゼェ。
「おい蘭、最後に?マークを付け忘れてるぞ。なんで疑問じゃなくて断定なんだよ」
「そ、そうだよ蘭ちゃん。決めつけちゃダメだよ」
「そーそー。蘭だってあたし達以外に友達いないじゃん」
「ちょっと、モカっ!」
美竹の口からは否定の言葉はでない。ははーん、図星か。クラスでの様子見てたら嫌でも分かるけど。
「確かに俺は中学の時、友人はいなかった。ぼっちだった。カッコよく言えば一匹狼だった。でも成績良かったから、リアル充実させてる愚民共を心の中で見下しにしてて、それなりに楽しい中学校生活だった」
「「「…………」」」
「引くなよ!3人揃って絶句とかダメージ大きいから!というか、見下してたのは嘘ですから!だから、そんな屑を見る目はやめてくれ!」
こんな嘘をついても何の得にもならなければ、誰も幸せにはならない。ただ俺が傷ついただけだった。
「まあその、なんだ。俺の話はもういいから勉強をしよう」
「でもでも、蘭はあたし達と別クラスになっただけで授業をサボるようになったんだよ〜」
まだ続けるのかよ……。あと、なんで美竹の話になったし。弱みが握れるかもだから一応聴くけどさ。
「あたしの話はしなくてもいいでしょ!今関係無いじゃん!」
「いやぁ、蘭のサボりからAfterglowが生まれたと言っても過言では無いんだよ〜」
え、なんでだ?と思わず聞き返しそうになる。クソぅ、少し気になってしまった。
「そういえば、深山君は私達のライブに来てくれた事ってあるのかな?」
羽沢さんが何故そんな事を聴いたのかは、決して深い意味は無いのだろう。何にせよ、俺の答えは一言で済む。
「無いよ」
「そ、即答するんだ」
「蘭がバンドやってる事を知ったのはこの春だからな」
ついでに美竹蘭という存在自体を知ったのもこの春。どうして知ってしまったのか。
「なら、今度ライブに来てよ!みんなカッコいいから!」
羽沢さんが自身満々に言う。可愛い。
別にライブがそこまで嫌な訳では無いのだが、美竹がだな……。
「俺が行ったら蘭が嫌がるだろうし、やめておく」
「別に、来たいなら来ればいいじゃん。あたしに止める権利無いし」
あれっ?思っていたより、というか全然拒否しないな。
それより、なんで俺も美竹のライブに行く事にそこまで抵抗が無いんだ?前にレイジに、ライブハウスに行こうと誘われた時は、あんなに嫌だったのに。
「なら、その予習として和人にAfterglowの軌跡を知って貰わないとね〜」
「モカ、お願いだからそれだけはやめて」
美竹は青葉さんに懇願する。なんだなんだ、そんなに恥ずかしい出来事もあるのか。
「大丈夫大丈夫〜。蘭が恥ずかしがるような事は言わないから〜」
「ほんとに?」
「もぉ〜、幼馴染みであり大親友のモカちゃんを信用出来ないの?えーんえーん」
「はぁ、わかった。信じてるからモカのこと」
そこからは青葉さんの語りが始まり、時々羽沢さんが補足をする。
美竹だけがクラスが別になり、授業をサボって詩を書いてた事も教えてもらった。確かにこれは恥ずかしい。ぶっちゃけ痛い。思わず声を上げて笑ってしまったよ。したら顔を真っ赤にした美竹にノートで頭を叩かられた。
それにしても青葉さん、信頼を直ぐに捨てたな。
そして、それなりに濃いストーリーが終わり、窓から外を見ると太陽がほぼ沈んでいた。上の方だけ陽の光が残る西の空と、すっかり闇に落ちた東の空を繋ぐグラデーションが綺麗だ。
そして、夕焼けにも負けないくらい、美竹の頬も赤い。まあ、思いをぶつけた詩を今では歌にしてるんだから、そこまで恥ずかしくないだろ。
「いやぁ、聴き入ってしまった。時間も忘れて引き込まれたよ」
悔しいが、確かに感動できる話だ。読書時間は奪われたが、いい話を聞けたから差し引きゼロってことで。
「あっ!本当だ!もうこんな時間!そろそろ帰らなきゃ!」
羽沢さんが慌て出した。可愛い。
「そうだね。なんか疲れたし」
美竹が伸びをしながら言った。そこで俺はふと思い出したのだ。俺がこの女子3人と一緒にいた理由は何だったのかと。
「勉強してないじゃん」
俺が数学が苦手だとバレないようにする心配は一切無かったのだった。
桶「はい、今回はお題提供したいと思います。和人くんは何故読書をして帰る事があるのでしょうか?シンキングタイムスタートッ!」
和人「いや、俺考える意味ないですよね?」
蘭「なんであたしがそんな事を……」
桶「ちょ、あ、あっれぇ?思ってたのとちがーう。もっと盛り上がる予定だったんですが」
和人「こんな微妙なお題でどう盛り上がれって言うんですか」
蘭「なんであたしがそんな事を……」
桶「さて蘭さん、考えは纏まりましたか?」
蘭「なんであたしがそんな事を……」
桶「……」
和人「美竹、お前はそれしか言えないのかよ」
桶「……はいっ。じゃあ和人くん、答えよろ」
和人「ちょっと!桶狭間さんまでやる気無くさないで下さい!」
蘭「いいから答え言いなよ。早く終わらせたいし」
和人「…………………………………………答えは、『士郎がバイトがあって俺が1人で帰らなきゃいけない日に読書する』でしたー」
蘭「それって他に帰る相手がーー」
和人「言わないでくれ、美竹」
桶「……すみません、辛い思いさせて」
ーー誰も幸せにはなれなかったーー