最近チュウニズムにハマってしまいました。一ヶ月プレイヤーです。
「さて、どうしたものか……」
と、呟けないほどに焦った状況。そんな場面は誰にだって人生に一回は訪れる。そのジャンルは人それぞれだろうが、俺のを例として、今後の参考としてくれ。
俺の場合は、『同じ学校の同じクラスに婚約者がいる事を隠していたが、それがバレそう』だ。今の状況は、目の前に婚約者(仮)の美竹蘭がいる。しかもその周りには幼馴染であり、バンドメンバーの少女達がいるからだ。そして場所は美竹家玄関前。
俺と美竹蘭は婚約関係を学校では一切口にしない。なので、それがバレたら俺の高校生活がヒューヒュー言われるだけの話になってしまう。
いや、それの方がマシだ。
なぜなら、美竹の幼馴染達は俺を不審な目で見ている。俺を泥棒かなんかだと思っているに違いない。
しかし、美竹蘭は違う。今にも俺の肋骨を折りに来そうなオーラだ。それ程の嫌悪と悪意の視線を彼女から感じた。
というか、先陣切って俺に「あんた誰だ?」と言って来た女子の圧がすごい。俺と身長大して変わんねーし。イケメンだし。なんの拷問だよ。
「その制服って、
「あっ、ああ。そうだ」
「じゃあ蘭の知り合いなのか?」
「…………」
知り合いというのは認められても、どういう関係かは教えられない。
という意味を含めた視線を美竹に送る。
『おい、どうすればいいんだ⁉︎』
『…………』
『おい!なんとか言え!』
『…………』
『わかった!今回は俺が悪い!謝るから助けてくれ!』
本心は全く悪いと思ってないけど、とりあえず言っておいた。だって俺は家に帰ってきただけだから。
『……肋骨の折り方を教えてくれるなら』
この野郎、マジで折ろうとしてたよ。
だが、俺との関係がバレて困るのは美竹も一緒なはずだ。
『おい、婚約のことが知られたら困るのはお前もだろ。なら協力してくれよ』
『……いやだ』
『はあ⁉︎なんでだよ!』
『…………』
どうやら、いくら言っても無駄だとわかった。
『わかったよ。俺1人でどうにかすればいいんだろ!』
そこで思考内会話を終了した。
「えっと、俺はそこにいる美竹蘭のクラスメイトです」
自分で言っておいてあれだが、ツッコませてくれ。なんなんだこの自己紹介は。
「それがなんで蘭の家にいるんだ?」
ま、そうなるよな。そして、相変わらずこの人の威圧がすごい。取り調べ受けてる空き巣犯の気分。
「それは……ほら、あれですよ……」
やばい。なんて言えばいいんだろう。
迷った末に、俺は3つの案を思いついた。
①[何も無かったのように迅速に立ち去り、美竹の幼馴染が帰るのを物陰から隠れて観察する。]
これこそ取り調べコース確定のストーカー行為だな。それに彼女たちに何の説明もしなかったら、明日から変な目で見られることは不可避だ。よって却下。
②[親族だと嘘をつく。]
これが一番無難だと思うが、美竹蘭が一人っ子だという事実は恐らく知っているだろう。よって却下。
③[真実、つまりは婚約関係にあると話す。]
よって却下。
③の案を上げた2秒前の自分をぶん殴ってやりたい。
「あんた、名は」
俺の思考をその言葉が中断させた。なんか絶妙に「君の名は」みたいだったのは気のせいか。
「深山和人です」
内心汗ダラダラだが、そんな表情は見せないよう務めた。ただ、声が少し震えていたのはナシだ。
「深山和人って、編入生の?」
イケメン女子ではなく、ピンク色の髪をした少女が俺に聞いた。
「なんで知ってるんだ?ストーカーか?」
俺もストーカーだと思われてる最中だけど。
「そりゃあ深山君、女子からの人気が高いんだよ!なんかこう、チャラチャラしてないし、颯爽としてるし。顔も1年生の間じゃ1・2を争ってるんだから!」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ俺はこれで」
俺は立ち去ろうとする。そこら辺のコンビニで時間を潰そう。
なんてことは出来るわけもなく、左肩を後方から鷲掴みにされた。その時のみ、俺はこの事態の打開策を考えていなかった。なぜかって。痛いからだ。
それでも、脳を再起動し打開案を模索する。こうなったら②の改善案。通称②αを起用しよう。そろそろ通報されそうだし。
「お、俺は美竹蘭の従兄弟です!」
左肩の痛みと戦いながらその言葉を振り絞る。
「蘭、そうなの〜?」
先程から眠そうだった子が、漸く初めて口を開いた。というか、ホントに寝てた気がした。まるで俺達のやり取りに興味を示してなかった。
補足だが、あと1人の幼馴染ちゃんはずっと、スマホを持って待機している。やめろ、通報するなよ。どっかの芸人の「押すなよ!」とかいう前振りじゃなくて、ガチで通話ボタンは押すなよ。
「まあ、そうだけど」
美竹がそう言ったので、俺は犯罪者にならなくて済んだ。万歳。
「でも、なんで平日のこんな時間に蘭ちゃんの家にいるんですか?」
未だ右手にスマホを握ったままの茶髪の子がもっともなご意見を聞かせてくれた。やめろ、押すなよ。
「俺の実家が京都にあってさ、それでこっちの学校に通うのに下宿させてもらってるだけ」
十分すぎる理由だろ。だから、見逃してくれ、頼むから!
「というわけで、俺はそろそろ退散させてもらうよ」
とだけ言い、彼女の有無を聴かずに美竹家に逃げ込んだ。
「ふー、振り切ったー」と、閉じたばかりの玄関に寄りかかりながら発した。
すると背中が擦れた。玄関が再び開かれたのだ。俺は後ろに倒れないように寄りかかった体重を前方に向け、直立する。
「「あっ」」
先の美竹だった。いや、こいつの家なので入ってくるのは当然だが、もう少しお喋りするものだと思っていた。
俺はとりあえず、なぜ先程協力しなかったのか聞くことにした。
「お前、なんで殆ど黙ってたんだよ」
「別に、あんたには関係ないことだから」
と言ってコイツは自分の部屋に戻ろうとした。
「おい待て!全然関係なくねーよ!危うく俺らの繋がりがバレるところだったんだぞ!」
しかし彼女はこちらを振り向かなかった。
俺は急ぎ気味に靴を脱ぎ、彼女を追いかけた。
「おい、美竹蘭!」
俺は自身の右手で美竹の手首を掴んで、こちらを振り向かせた。
しかし、俺は彼女の表情を見た瞬間に一気に気が変わった。美竹蘭は少し辛そうな顔をしていた。美竹のこんな顔、俺は今まで見たことがなかった。コイツが俺に寂しそうな表情を見せるなんてよっぽどだろう。だが、これで先程ずっと黙っていたのも納得がいった。それと同時に新たな謎ができた。
「……どうしたんだ?」
「……」
静寂の中、先に動いたのは美竹だった。彼女は再び自室の方へ向かい始めた。その際、「別に……」でもいいから声を出してほしいと期待した自分がいた。
「あいつが言い返してこないと調子狂うな……。ま、静かだからいいんだけど」
口ではそう言えても、若干心に何か引っかかったまま、俺も自室に向かった。
翌日。
今日は早起きをしてみた。いつも朝食を作ってもらっては悪いので、今日は俺が作ろうと思ったのだ。このことは昨夜話しておいた。
なぜ急に?と思いが、ただ単に美竹に「美味しい」って言わせてドヤ顔したいだけだ。
そうして、美竹夫妻が起きてきて、顔も洗ってきたようなので、
「おはようございます」
爽やかなつもりで挨拶をした。
俺はすかさず料理を食卓に並べた。
俺の得意料理は和食だ。深山家にいる料理長直々に教わった。また、深山家の分家では色々な事業があり、その中に料理部門があるので、京都の老舗の多くは深山家との深い関係があったりする。なので、沢山のプロから知識と技術は叩き込まれている。
ただ、あくまで和食
フレンチ、イタリアン、中華などは全く作ったことがない。だが、それは美竹家の奥さんに教えてもらうことにした。なぜなら料理がとてもお上手。
とまあ、長々とした説明はこれくらいにして、俺も朝食を取り始める。夫妻からはお褒めの言葉をもらえてよかった。
「そういえば、美竹蘭はまだ起きてないんですか?呼びに行きましょうか?」
いつも、この時間あたりに起きるので、少し不思議に思った。
「ああ、もう起きてると思うよ。今は制服に着替えてると思うから行かない方がいい」
「そうですね。なら俺はゆっくり食べますね」
「いただきます」と小さく呟いて、まずは漬物を口に運んだ。
「和人君、そんなに悠長にしてて時間は大丈夫なのかい?」
「ええ、時間はまだたっぷりありますから」
時計を見ると時刻は7時を少し過ぎた程度だ。俺は既に制服に着替えているし、今日の授業道具もリュックに入れてある。
「いや、今日から林間学校だろう?」
「…………へ?」
その声と同時に、俺の右手から箸がこぼれ落ちた。それが床に当たった音だけが響き、そして耳に残るのであった。
和人「ホント、更新ペースどうにかなりませんか?」
桶狭間「いやー、話のアイデアは浮かんでも上手く文章にできなくて。ほら、僕って理系じゃないですか」
蘭「その情報、初耳だし。それにどうでもいいんだけど」
和人「ていうか、次から林間学校なんですか?」
桶狭間「そうっスよ」
和人・蘭「「えぇ……」」
桶狭間「そんな露骨に嫌がらないでくださいよ」
和人「だってラブコメの林間学校の話といえば、主人公が女風呂に間違って入るのが王道じゃないですか。俺、犯罪者になりたくないです」
蘭「その前に生きて帰れると思ってるの。社会的に死ぬ前に、物理的に死ぬかもね」
和人「桶狭間さん!林間学校の話、やめましょう!」
桶狭間「ダメです。旅行系はラブコメのネタの宝庫なんですから(謎理論)」