彼らの青春には確かに夕日があった   作:桶狭間

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すっごい久しぶりに書いてる。なんか、和人君の喋り方とかどんな感じだったっけって考えながら手探りで書いた気がします。

更新が遅れた分は取り戻します(多分)!


8話「赤の悪魔と天敵」

 林間学校も終わり、新一年生、特に俺のような編入生も学校生活に慣れたある日のこと。

 

「ねえ深山」

 

 休憩時間になると、前の席の美竹蘭が立ち上がった。すると、こちらを向いて、俺を呼びかけてきたのだ。

 

「なんだ美竹」

 

「ちょっと話があるから屋上に来て」

 

「嫌だ。お前が俺を呼び出すなんて、怪しすぎる」

 

「そんな理由で断るんなら、あたしも強行策をとらせてもらうから」

 

「は?強行策っていった、いった!」

 

 俺が「何をするつもりだ」と聞く前にこいつはその策を実行に移す。それは俺の耳を引っ張る事だ。容赦なく掴まれたので俺は思わず大声を出してしまい、それがクラスの注目を集めてしまった。目立ったのが嫌なのか美竹はまだ俺の右耳を引く力を強くする。

 

「わかった!大人しく着いて行くから放せ」

 

 すると、彼女は意外にもあっさり開放してくれた。

 

 ここで逃げたら家に帰った時に嫌な予感がするので、俺は大人しく屋上まで美竹と向かう。

 

「で、話ってなんなの?早くしないと次の授業始まるぞ」

 

「わかってる」

 

 すると、美竹は俺を屋上に無理矢理連れて来させた理由を語り始めた。しかし、それは俺にも関係なくもない事だった。

 

「なるほど。結婚記念日のプレゼントを買いに行くから着いてこいってわけか」

 

「うん。ちょっと事情があって」

 

 これは願っても無い申し出だ。俺も普段から美竹夫妻には大変お世話になっているし、よくしてもらっているので俺も何らかの贈り物をせねばと思っていたのだ。しかし何を買えばいいのか迷っていて今日まで引き延ばしていたのだ。

 

「まあいいけど。ていうかさ、そういう事は家で言っておいてくれよ。変に注目を集めるだろ」

 

「なかなか言い出せなかったの。深山にこういう頼み事するのはなんかこそばゆいから」

 

「成る程。それは美竹らしい理由だな。で、どういう物を贈るかは決まってるのか?」

 

「花にしようかなって思ってる」

 

「華道を継ぐ気の無い娘から贈られる花って、どんな気持ちで受け取ればいいんだよ」

 

 俺はそう、笑って言ってやった。勿論皮肉の意味を孕ませて。

 

「別にあたしだって何でもいいかなっておもったけど、他に何も思い浮かばなくて」

 

 全体的に何か言い訳をしているような口調。そこには怒っているという様子はない。

 

「ま、いいんじゃないのか。その不器用らしさも美竹っぽいっていうか」

 

 小馬鹿にしながら俺は言う。

 

「は?あんたにあたしの何がわかるっていうの?」

 

「実際お前は不器用だろ。それより」

 

 このまま喧嘩しても無駄に体力を浪費し、疲れるだけだとわかったのでとりあえず本題に戻しておこう。

 

「なんで俺を誘ったんだ?幼馴染みでも誘えば着いて来てくれるだろ?」

 

 実際、彼女ら5人はそれぐらい仲が良いのだろう。

 

「もう誘ってみた。深山を誘うよりも先に」

 

「それで4人共に断られたと」

 

 なんか、可哀想に思えてきた。4人全員から断られるとか寂しすぎるでしょ。

 

「ううん。巴とつぐみは用事とか家の手伝いがあるって言ってたけど」

 

 名前言われても誰かわからないのでやめて下さい。などと言える訳もなく、彼女の話を聞き続けることにする。

 

「で、モカとひまりが……」

 

 美竹は不自然に言葉を切った。彼女の口は何故かモゴモゴしている。何か言いたいけど、言いづらいといった状況だろうか。

 

「待て、その2人は用事が無いならどうなるんだ?」

 

 この答えによって、俺は買い物に付き合わなくなる可能性が高い。美竹はとうとう視線を逸らし始めた。

 

「嫌な予感がするんだけど、頼むから気のせいだと言ってくれ。いや、言ってください」

 

「多分深山が今予想してる事、だいたい当たってると思う」

 

 美竹の態度は申し訳なさそうになっている。こいつが俺に対して『申し訳ない』と思うのなら、それは本当に面倒くさい事なのだ。

 

「やっぱり、行かなくていいか?」

 

「『まあいいけど。』ってさっき言ったよね」

 

 この野郎、申し訳なさそうな顔をしながらも容赦ない。これが人に物を頼む態度だろうか。そんな訳ない。でも、どうやら俺からは拒否権がなくなっている。

 

 さて、俺の嫌な予感というのを教えてやろう。それは、

 

「お前の幼馴染み2人が買い物に来るって事だよな?」

 

 美竹は無言だが頷きはした。要はその「モカ」さんと「ひまり」さんが、美竹の従兄弟(という設定)である俺とちゃんと話してみたいとかそういう理由なのだろう。

 

「言っとくけど、あたしも最初はちゃんと断ったから。でも、流れで……」

 

 ですよね。そんな理由でもないと、こいつが俺を買い物に誘う理由なんて見つからない。

 

「わかった行くよ。行きますよ。設定は従兄弟、絶対にボロ出すなよ」

 

「それを言うなら、あんたこそ気をつけてよ。絶対ひまりから質問攻めにされるから」

 

 お前はそこまでわかった上で、俺を誘ったのかよ。あー、面倒くさいな。すっぽかして帰ってやろうかな。

 

 

 

 

 

 HRが終わり、俺は士郎と共に教室を後にして下駄箱までの階段を降りる。その一歩一歩はとてつもなく重く感じ、地球の重力が倍になったのかと思った。それほどまでに俺の体は拒絶反応を起こしているのだろう。因みにレイジはチャイムと共に教室から颯爽と飛び出して部活に向かったのだ。

 

 すると、士郎が俺に問いを投げかける。

 

「和人、休み時間の美竹のアレ、何だったんだ?」

 

 気になっても仕方がないだろう。クラスメイトとは大して接点の無い美竹が、男子である俺に何の遠慮もない態度を取ってきたのだ。

 

「別に大した事じゃない。それより、変な噂でも流れてないか心配になってきた」

 

 靴を履き替えながら今後の事を考え始める。そういえば、何だかんだで美竹ってファンは多いんだったよな。そんなあいつと噂でも流れたら刺されそうだな。

 

「告白とか?」

 

 それは充分すぎるほど大した事だろ、とツッコミを入れてやりたくなった。そんな事は天と地がひっくり返ってもあり得ない。あいつは俺のことを嫌っている。

 

「あれが告白なら、俺にとっては死刑宣告になる」

 

 あれは告白ではなく脅迫だ。

 

「……何があったか知らんが、ご愁傷様」

 

「その一言が今は心に染みる」

 

 士郎は俺が嫌な目にあう事を理解してくれたのだろう。理解してくれる人がいるとはどれほど心強いか、それを実感できただけでも今日はいい日だ。そう思っていないと俺の精神は安定しない状況なのだ。

 

「じゃ、俺はここで」

 

 俺は校門を出てすぐに立ち止まり士郎にそう言ってやった。士郎は当然驚いている。

 

「頭でも打ったのか?まだ門出たばっかりだぞ?」

 

「待ち合わせしてるんだよ」

 

「へー、和人が誰かと待ち合わせなんて珍しいな」

 

 そういう言い方されると俺が士郎とレイジ以外友人がいないみたいに聞こえる。実のところ、他の男子と会話はするも意識的には『クラスメイト』と思っている。なので、俺の友人は2人だけになるな。

 

「ま、そういう訳だから。悪いな」

 

「いや、先約があるならしょうがないさ。また明日」

 

 くっそイケメンだなこいつ。ぼっちで帰らされることに何の文句も言わずに笑顔で「また明日」なんて言えるところが本当にイケメンだと思う。

 

 自分と友人の差を感じつつ、俺は1人で門の前に突っ立っている。

 

 なんだかこっちに来てからは毎日が疲れを伴っている気がする。確かに、実家に住んでいた頃よりも刺激的な生活ではあるが、少々スパイスが効きすぎである。楽しいこともあるからいいけど。

 

「わかりきったことだけど、今から起きる事はあんまり楽しくないんだろうな……」

 

 待たされた状態のまま溜息をつく。早く終わらせてさっさと帰ろう。万が一、お茶でもしようなんて言われたらダッシュで帰宅する。

 

「お待たせ」

 

 美竹が幼馴染み2人を連れてやってきた。一先ず嫌味を言っておく。

 

「ああ、本当に待たされた。百億年は待ってた気がする」

 

「何言ってんの。頭打った?」

 

 それを言われるのは本日二度目だ。

 

「打ってない。で、そっちの2人は?」

 

 なるべく面倒くさい人ではないことを祈る。こんな祈りは無駄になるだろうけど。

 

 すると、ブロンド(?)の髪の少女が右手を挙げて名乗りを上げた。

 

「青葉モカで〜す。よろしく〜」

 

「……」

 

 これが……美竹の幼馴染みだというのか?こんなマイペースそうな子が、目があったら獅子の如く睨みつけてくるような奴(←ブーメラン)と、どうやって長年友人をやってこれたんだ⁉︎

 

 現実を受け止めきれず、俺は硬直してしまう。ようやく意識が戻ったのはよいが、その次は挙動不審になる。

 

「よっ、よろしく。前も言ったけど、深山和人です」

 

 思わず敬語が出ちゃったよ。

 

 俺の感覚としては、未知との遭遇を体験しているものに近しい。そして、お次にピンクの髪の少女が一歩前に出て、

 

「私は上原ひまりでーす!よろしくね深山和人君!」

 

 なんていうかこの子、俺の苦手なタイプの女子だ。こういうThe・女子校生みたいな子って嫌なんだよな。もっとおしとやかな子の方が好感持てる。

 

「よろしく」

 

「呼び方どうすればいい?和人君?それとも和人?」

 

 こういう男子でもグイグイ来る子とか本当に苦手だ。自称コミュ障の俺にそういう接し方はやめてほしい。

 

「普通に深山でいいよ。というか、それでお願いします」

 

「えー!つれないなー!じゃあじゃあ、私の事はひまりって呼んでいいからね!」

 

 なんかこの子、簡単に男に釣られそうで怖いな。

 

「わかった、上原さんな」

 

「何もわかってないよね!」

 

「ひまり、さっきからうるさい。み……和人だって嫌がってるでしょ」

 

 ここで思わぬ助け舟が出た。美竹としても俺とこの2人を長いこと一緒にしてボロが出るのが怖いのだろう。今だけは美竹の事が赤メッシュの悪魔じゃなくて赤メッシュの小悪魔ぐらいに見える。

 

「う……。ごめんなさい」

 

「いいって。それより、早く行って早く買っちまおう」

 

 そして早く帰りましょう!

 

「わかってるってば」

 

 美竹はそういうと歩き出した。俺もそれに着いて行く。目的地はどうやら近くにある商店街の花屋だそうだ。その道中、俺は上原さんから質問攻めに遭っていた。美竹と青葉さんは前方で会話をしている。どうやら、もう助け舟は出ないらしい。

 

 しかし花屋にはあっという間に到着し、3人は花屋に入って行った。俺が一緒に店に入らなかった理由は簡単で、美竹が花を贈るというのなら、それとは別の物にしたいからだ。なので、俺はこの後1人でワインでも見繕いに行こうと決めていた。

 

「俺、ここにいる意味あるのかな……」

 

 質問攻めタイムも終了した今、彼女ら3人からすれば俺はいなくても支障はない。

 

「もういいかな……」

 

 俺は静かにこの場を離れようか迷う。流石に一声かけてから離れるのは当然だが、JK3人の会話の中に割って入れる自信なんて1マイクロメートルもない。

 

 すると、青葉さんが店から出てきた。といっても、花屋なので入り口はシャッターが全開の状態で、姿は視認できていた。

 

「それにしても、蘭が蘭パパと蘭ママに花を贈るなんて、以外ですな〜」

 

「ああ。俺も聞いた時は驚いた。あの親子の間に何があったのかは全く知らないけど、みたっ……蘭が華道を継ぐ気がないらしいし」

 

「へー、蘭と蘭パパの喧嘩の理由を知らないんだ〜。従兄弟なら知ってると思ったんだけどな〜」

 

 うっ。墓穴を掘らないように気をつけていたはずなのに、中々鋭いな青葉さん。だが、まだ立て直せるぞ。この子が俺のことを詮索しようとはしているが、美竹の従兄弟という設定は疑ってないはず。

 

「べ、別に従兄弟でも知らない事は沢山ある。美竹の事は多分君達幼馴染みの方がよく知ってるだろうし」

 

 これが最もベストな返しだろう。俺と美竹があまり仲がよくないと思わせる事で、彼女たちも俺にはちょっかいをかけなくなるだろうという狙いだ。

 

 しかし、青葉さんは俺の予想を超えていった。

 

「2人って、ほんとに従兄弟同士なの?」

 

 訂正しよう、バリバリ疑っていた。そして俺は確信する。青葉モカは俺の天敵である……かもしれないと。




桶狭間「お、お久しぶりです!」

和人「なんかもう一周回って心配しましたよ、全く」

蘭「死んだかと思ってた」

桶「勝手に殺さないで下さい!」

和人「まあ、色々都合もあるだろうし、無理せず頑張って下さい」

蘭「そうそう。ただ、倒れたら元も子もないし」

桶「この子達、天使や。作中で悪魔なんて言ってごめんなさい!」
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