ヤクザとマフィアと探偵のニセコイ物語   作:七草空斗

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期日内投稿余裕でした。どうも投稿者です。
暇な時間にちょこちょこ書いてたら意外に早く上げることが出来ました。
このペースで投稿していきたい(願望)

それでは本編どうぞ。


第8話 テキタイ

朝、欠伸を噛み殺しながら学校の階段を登り廊下を曲がる。胸元に何かがぶつかった感覚を覚え下を向くと他の高校(多分東京23区外)の制服を着た生徒が目の前に居る

 

「悪ぃ、大丈夫か?」

 

パッと、1歩後ろに下がり謝罪をする

 

「こちらこそ注意力が散漫だった、申し訳ない」

 

目の前に居たのは、やや蒼に近い黒髪でやや中性的な顔立ちをしている男っぽい、多分転校生。見た所男にしては身長は160ちょっととやや小柄。だがかなり鍛え上げられたであろう。細身ながら筋肉質な体

 

「どうした?私の体をじっと見て」

 

目の前の転校生は首を傾げながらこちらを見返してる

 

「いや、怪我はしてないかと思ってな。大丈夫そうだな」

 

「あぁ大丈夫だ。ぶつかってしまって済まなかった。それじゃあ失礼する」

 

転校生がこちらを半身で避ける。その際に左胸辺りが少し変に膨らんでいるのを見つける。これが職業病という奴か。膨らみが何か何となく察する

 

「あぁ、あと一つ。言い忘れてた」

 

転校生は足を止める。振り向きこちらを見ているのを確認し自分左肩をトントンと叩き

 

「そんな物騒な物はきちんと気付かれないようにしないと」

 

指を銃の形にしバンッと撃つ真似をする

 

「貴様ッ!?」

 

1歩後退し学生服の胸元から何かを取り出そうとする転校生

 

「ストップストップ。ここでそんな物を取り出すなよ」

 

左手で動きを静止させ1歩近づく

 

「貴様、何者だ?」

 

転校生は胸元から手を抜かずに質問をしてくる

 

「しがない高校生。最近してるアルバイトでよくそういう代物見てる関係で少し気になってね。別にあんたとドンパチやりたい訳じゃないから。教育機関でそんな物を打っ放すのはやめて欲しいしね、今どきに珍しい勉強熱心な高校生としては。あと周りの目も気になるし」

 

転校生は周りを見渡し注目の的になってる事に気付き胸元から手を離す

 

「うん、宜しい。んじゃ俺はこれから授業があるから。また会ったらその時はそんなギラギラした目じゃなくてもうチョット笑顔で話したいもんだね」

 

転校生に背中を向け教室に歩き出す

 

「あ、そうそう。多分俺以外誰も気付いていないから。気にしなくていいよ」

 

それじゃ。と手を振りながら教室に向かって行く

 

教室

 

「うーっす。オハヨー」

 

教室へ入ると楽たちが気付いたようでこちらへ挨拶を返してくる

 

「おはよう、テツ。今日転校生くるらしいぜ」

 

「あぁ、転校生ならさっき会ったぜ。中々にイケメンだった」

 

見た目等の容姿をババっと伝える。集はその話を聞くといつにも無くテンションが下がってく。伝えて間もなくチャイムが鳴り席に着く

 

「よーしお前ら。突然だが転校生を紹介するぞー。鶫さん入って」

 

「はい。初めまして。鶫 誠士郎と申します。どうぞよろしく」

 

先ほど会った転校生が教壇に立つ。転校生が挨拶を終えクラスの女子が一斉に転校生の評論会を始める

 

「・・・んん??」

 

さっきまで美男子の転校生とかテンション下がるわーとか言っていた集が何か気付いたような感じ

 

「どうした?転校生に惚れたか?」

 

「いや惚れてはないけど。ちょっと気になる事があってよー」

 

何が気になっているのかを集に聞こうと口を開く。瞬間に周りのざわめきが歓声に変わっていく。そのざわめきへ目を向けると

 

「おー。こりゃまた大胆に」

 

目の前には桐崎さんに抱きつく転校生の姿が。クラス中が騒ぐのも無理はない。各地で「修羅場!?修羅場!?」なんて騒ぐ女子や「これ一条勝ち目ないだろ」なんてからかう男子等で騒然としたままホームルームが終わる

 

この後。楽が桐崎さんの彼氏(偽)として転校生に挨拶に行った時にビーハイブという単語が聞こえる。あの転校生は多分ギャング関係の人間なんじゃねーかなーとか思いながら、話してる3人をパックのコーヒー牛乳を吸いながら見ていると。話が終わったのか転校生がこっちに向かってくる

 

「先ほどはどうも」

 

転校生はさっきよりは優しい目をこちらに向けてくる。

 

「こりゃご丁寧にどうも」

 

胸元を確認する。あれの位置を直したのだろう。触るまでは分からない様に左胸にあったものが隠されてる

 

「教壇の前でも言いましたが改めて。鶫 誠士郎です。」

 

右手を前に出し礼儀正しくお辞儀をする

 

「重ね重ねご丁寧に。冴島 徹と申します。いやー、にしても上手く隠したねぇ」

 

左肩の方を指さす。あぁ、というような顔をして

 

「先ほどは助かりました。お嬢と会えることに少し高揚してしまい。貴方が指摘してくれなければ他の人に気づかれたかも知れません」

 

もう1度ペコリとお辞儀をする転校生

 

「いや。お礼を言われるような事じゃないしな。それよりアメリカンギャングのメンバーだったとはね」

 

「お嬢とその恋人との会話をお聞かれになったのですね」

 

「盗み聞きをするつもりは無かったんだけどね。話の中からアメリカンギャングの組織名が聞こえちゃったもんで。ここに来た理由は桐崎さんの警護とか?」

 

「ええ。まぁ、そんな所でしょう」

 

「ふーん。まぁ、これから1年よろしくな」

 

 

「はい、よろしくお願いします。冴島さん」

 

 

 

食事も終わりパックのコーヒー牛乳を吸いながらバイクのキーを手元で遊ばせる。横では楽がお茶を盛大に吹き出し集の顔と制服に思いっきりぶちまける

 

「大丈夫か?」

 

手にタオルを持ちながら集の元に寄っていく

 

「あれ?楽と転校生は?」

 

集にタオルを渡しながら聞く

 

「なんか場所変えて話があるってよ」

 

集の話を聞き屋上に向かう。何も無いとは思うが拳銃を持ってるやつと楽を二人っきりにするのはボディーガードとしては見過ごせない。屋上に辿り着き扉を開けようと手を伸ばす。ドアノブを回し扉を少し開ける為、力を込める。少し開けた扉の先に見えたのは屋上の柵へと突き出され銃器を喉元に構えられてる楽と構えてる転校生

 

「吐け、目的はなんだ。ビーハイブの直轄区か?それとも組織の乗っ取りでもするつもりか」

 

扉を一旦閉め手から力を抜きノブを元に戻す。今、屋上は「よう、いい天気だな」なんてヘラヘラしながら入れそうに無い雰囲気。一旦どうするべきかと考える。相手は銃を所持してる。そうなると先ず第一に考えるべきは楽の身の安全の確保。少しの考察時間後、楽がヘマを犯さなければ死なんだろうという考えに。結果ドアノブに手を掛けたまま待機という事で2人の出方を見る

 

「あいつはオレの恋人だ!!誰にも渡さねぇ!!」

 

楽が高らかに宣言をする。その言葉に反応し

 

「ほう・・・恋人だと?お嬢に相応しいのはお前の方だと・・・」

 

転校生が殺気立った声を出す。流石にこのままでは楽が死にかねんと判断し出て行こうと扉を開く。扉の先に向かおうと歩を進めるも背後から誰かに肩を掴まれ階段の方に押し込まれる

 

「ちょっ・・・2人ともストップ、ストップ!!

ほらほら何やってんのよつぐみもダーリンも〜。仲良くしなきゃダメでしょ?」

 

桐崎さんに吹っ飛ばされた拍子にぶつけた腰を擦りながら失った出るタイミングを探る

 

「お嬢・・・止めないでください」

 

「え・・・」

 

「お嬢には申し訳ないのですが。私はやはりこの男をお嬢のパートナーとして認める事は出来ない!

お嬢、覚えておいでですか。10年前の。あの日の約束を・・・」

 

「へ?」

 

「!?」

 

「私はあの日。お嬢をこの手で守れるように強くなろうと決めました。

それ以来私はあらゆる訓練試練に耐え!!強くなったのです!それこそ血のにじむ様な努力をして!!

なぜ今お嬢を守るべきはずの男が・・・こんな脆弱で貧弱なもやし男なのですか!」

 

凄い言われようだな。まぁ、片や第一線で活躍し続けてるギャング。もう片方はただの高校生だしな。第一線で活躍してる奴から見たら楽はただのもやしだしな。そこまで自分の主人を思っていたら「こんな奴!」って怒りを覚えるのも無理はないな

 

「お嬢を守れると言うなら。相応の力を見せて貰わねば認められない!!」

 

「一条楽!!お前にお嬢を賭けて決闘を申し込む!!!」

 

「・・・はあ!!?」

 

「私に勝てる実力があるのなら貴様の事は認めよう。だが!私に勝てないようならば。

貴様には地獄以上の苦しみを与えた上で殺す!!」

 

・・・殺すなんて単語が出ちゃったらボディガードとしては出るしかない。扉を蹴飛ばし屋上へと歩みを進める

 

「へいギャング。それは聞けない話だな」

 

突然と開いた扉に皆が目を向け。ギャングの転校生はギロりとこちらを睨み付ける

 

「冴島さん。貴方には関係の無い事だと思いますが」

 

流石ギャング、言葉に圧がある。

 

「いいや、それが残念ながら有るんだな。雇われの身ではあるが一応2人のボディガードをやってる者でね。護衛対象が殺されるなんて聞いたらウチとしても黙ってられんだろ」

 

何かを理解したのだろうあぁ、と呟く

 

「貴方が最近しているアルバイトとはこの事だったのですね」

 

「Exactly。そういう事。だからこっちとしても穏便に行っちゃくれないか?あんまり殺し合いとかは好きじゃないし」

 

「確かにこの日本という国で無闇に銃器を使用すべきでは無いですね」

 

こっちの条件を呑んでくれたのか。ノーゲームの宣言と思われる発言をする

 

「それじゃ・・・」

 

「ですがソレはソレ、コレはコレです。お嬢は大ギャング組織ビーハイブの御令嬢。ビーハイブ(ウチ)としてもこれは死活問題。ここは譲れません。」

 

交渉決裂。どうもあっちとしては意地でも楽と殺り合いたいらしい

 

「そっか・・・なら仕方ねぇな」

 

はぁ、と溜息を付き空を見上げる

空を見上げたまま背伸びやストレッチを少ししてから

 

「しょうがねぇな。おいギャング、お互い譲れねぇもんが有るならそっちが言ってたみたいに互いに決闘で蹴りつけようじゃねえか。その方がはっきりするだろ。もしこれで俺が負けたら後は2人で決闘でも殺し合いでも何でもすればいいさ」

 

「・・・分かった。時間は今日の放課後。場所は校庭だ。一条楽、もし逃げれば殺す」

 

言うことを言い切ると脇目も振らずに扉から出ていく

 

「ど、どうしよう・・・」

 

「あーーもう!やっぱりこうなったか!」

 

「桐崎さん。一つ質問良いかな?」

 

「ん、何?」

 

「あいつってクロードさんの差し金?」

 

「多分。つぐみは小さい頃にクロードが拾った孤児でね。特殊訓練と英才教育を受けて育てられた優秀なヒットマンなの」

 

「ヒ、ヒットマン!?」

 

「因みに昔私にちょっかいかけてきたゴロツキを組織ごと壊滅させた程の超凄腕」

 

「き、聞いてねーぞ!!大丈夫かよテツ!!そんな奴と決闘するのか!?」

 

「んー。まぁ、大丈夫だろ。お前こそ俺が負けたら決闘するんだから気ぃ引き締めて行けよ。んじゃ教室戻るわ」

 

昼間の暖かい日差しにやられたのか眠くなってきた脳を起こし欠伸をしながら教室に戻る。日常と非日常。二つが混ざりあったこんな日には現実逃避にタバコの1本でも吸いたいものだ

 


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