ああ、またか。また俺はこんなことをしなければならないのか。そんな事を考えながらまた任務に赴く。
まぁ、あいつを戦わせない為にも俺があいつの代わりに戦うしかないんだ。
俺は今日の任務をこなすため施設の入り口へと向かう。
「レン!」
入り口の扉をくくろうとした途端、後ろから誰かが俺に声を掛けてくる。
「アトラス....。」
俺に声を掛けてきたのは俺の幼なじみであり、ライブメタル モデルH の適合者のアトラスだ。
「なぁ、もしかしてレンが戦うのって....私の、」
「違う!」
アトラスには俺とは違う世界で生きて欲しい。だから俺は"あの男"と"契約"をした。アトラスの代わりに俺が戦う。だからアトラスには何も知らせない、何もさせないでくれ。と、だからアトラスには何も言ってない。
傷ついて倒れるのは俺だけでいい。アトラスには血の味なんて覚えて欲しくない。
「....俺が勝手にやってるだけだ。アトラスよりも俺の方が強い。だから俺が戦う。....それだけだ。」
だから俺は戦う。例えアトラスに嫌われようとも、俺は最後までアトラスの代わりとして戦い、散って行くんだ。
俺はあの時、モデルEの適合者になった時から決めたんだ。アトラスの代わりに俺が戦うと。だから例え、アトラスの代わりだとしても俺に悔いは無い。
俺は施設の入り口から逃げるようにして飛び出した。
「....レン。」
アトラスの心配するような声を無視して。
─────────
「さて、今回の任務はっと。」
そういえばまだ確認してなかったな。
「なんだったっけな?...モデルE?」
俺は自分の相棒でもあるモデルEに聞く。
『今回はとある施設の調査だった筈だ。覚えておけ。』
「ああ。済まない。」
何故モデルEは俺と会話が出来るのか疑問に思うだろう。なにしろ俺以外のライブメタル適合者達のライブメタルは、皆意識を封印されているからな。
俺のモデルEは何故か、意識を封印させる事が出来なかったらしくてな。だから適合者の俺と会話が出来る。
と言うか俺だって最初はこいつと会話するのだって大変だったんだからな。
会話しようとするも無視はされるわ、何処かへ行こうとするわで話なんて出来なかったからな。でもまぁ、色々あってこうして俺はモデルEの適合者となり。モデルEも俺を適合者と認めてくれたからこそ今、俺がこうしていられるんだ。
『ところでレン。....お前、まだレンに伝えてないのか?』
モデルEが急に話しかけてきた。
「ああ。まだだ。」
"あの話"だけはあいつには言いたくない。あいつには何も知らずにただ、平和に生きて欲しいんだ。
「あいつには知らせないでおいた方がいいと思ったんだ。....だから....いいんだ。あいつも俺なんかとは関わらない方がいいだろうしな。」
『...まさか...まだ気付いてないのか....アトラスも大変だな。』
モデルEが何か言ってたみたいだが気にしないでおこう。
そうこうしてる内に目的の施設へとたどり着いた。
「随分古い施設だな。」
周りを見回しても警備も何も無い。どうやらこの施設は数年前から活動を停止してるようだ。
『今回はこのとある研究所の調査だ。気を抜くなよ。』
「ああ。分かった。」
確か目的の場所は...この先か。
「先に進もう。」
俺は急いで任務を終わらせるべく走って次の部屋へと向かう。
───────────
「あれ?これ...だよな?」
俺は目的の物が入ってるであろう水槽を見るも、中には何も無い。やはりパンドラが言っていたことは正しかったんだ。
「これは戻って報告だな。...よし!そうと決まれば戻るぞモデルE。」
「ああ。分かった。」
さて、帰って報告したら何をしようか。なにしろあの施設には何もない。手配されてる部屋にも何も無いからな。
「どうしようか。」
取り敢えず、それは報告してから考えるとしよう。
─────────────
施設に戻り、任務を報告した。その後、ひとり自室で何をするでもなくただひとり、窓の外を眺めていた。
すると突然。
コンコン「私だ。」
アトラスが部屋に来た。
「空いている。入れ。」
俺は特にすることもなかった為、アトラスを部屋に招き入れた。
アトラスは部屋に入り、俺の前まで来ると
「なぁ、レン。そろそろ本当の事を教えてくれ。」
「何だアトラス?人の部屋に来るなり唐突に。本当のこと?...あっ!もしかして前にお前の分のプリン食べたことか?」
「違う!というかあれレンだったのか!あの時はテティスだと思ってあいつの事を問い詰めたな。」
それはテティスに悪いことしてしまったな。
(済まないテティス。今度何か奢ってやるからな。)
「って違う!私が聞きたいのはそんな事じゃない。」
「じゃあなんだよ。」
俺がそう聞くと、アトラスは真剣な表情で俺の前に立ちはだかる。
「レンが戦うのは私を戦わせない為かどうかだ。」
やはりその話か。それには触れて欲しくないんだけどなぁ。
「で?どうなんだレン?」
「.....お前は関係ない。俺がお前よりも戦える。そう思ったから俺が戦ってるんだ。」
「じゃあなんで私には何もすることが無いんだ!」
「お前にやらせるよりも、俺がやる方が手っ取り早く済ませるからだ。」
「またそう言って!....」
「話は以上か?.......なら帰りな。俺は明日も任務だ。」
俺はわざとアトラスに向かってそう言い放つ。
すると、
パァン、といい音を出しながら俺の左頬に痛みが走った。どうやらアトラスに殴られたらしい。
「馬鹿!!!」
アトラスは俺にそう言い残して部屋を飛び出していった。
アトラスが遠くへ走っていくのを確認してから隠していたモデルEを呼ぶ。
「もういいぞ。出てきても。」
『やれやれ。君は相変わらずだな。』
モデルEはベッドの中から飛び出ると俺にそう言った。
『アトラスにあんな言い方して。君、もしかしてわざと嫌われようとしてないか?』
やれやれ。モデルEにはお見通しか。
「ああ。アトラスにはこれ以上、俺なんかと関わらない方がいいと思ったからな。これでいいんだよ。」
『しかしだな....!!』
「其れよりも明日も任務だ。俺は寝る。じゃ、お休み。」
『おい!私の話はまだ終わってないんだぞ。寝るな!』
そうだ。アトラスはモデルHの適合者じゃなければただの女の子だ。あいつはこのまま何一つ不自由なく過ごしてもらえればそれでいい。あいつは俺を犠牲にすればそれでいいんだ。
さて、明日も本当に任務がある。早いとこ寝てしまおう。
例えこの先。俺は何があろうとアトラスを守る。それだけは何があっても変わらない。変えるつもりもない。俺がロックマンになった理由はそれだけでいい。
俺はそう考えを改めて、意識を手放した。