ギャルゲー主人公Wが教える模範解答   作:井口 海斗

12 / 12
セーブ11.ワンマンアーミー愛栞

 5月16日水曜日6時30分、いつもの日常、いや主人公なってから初の朝が始まる。昨日アラームとしてセットしたアニソンをなんとか睡魔に抗いながらもなんとかスマホを開けアラームを止めた。そしてすぐに起きずに僕はまた眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 ~30分後~

 

 

「暁~!朝よ~!」

 

 

 7時。僕はいつものように母に起こされる。

 

 

「あと5分~」

 

 

 僕もいつもの決まり文句を寝起きのテンションで声もまともに出すことができないが力を振り絞って精一杯の声で言う。一昨日は騙され、昨日は宇宙人に主人公にしてもらって、僕はもう疲れたよ。

 

 

「い~っつも!い~~~っつも!そればっかり。もう!早く起きてきなさい!」

 

 

 といつもよりもヒステリックに叫ぶ母の高い声に跳ね起きて眠気が吹っ飛んで、僕は自分の部屋のある2階から降り、母が用意した朝ごはんを食べながら昨日放送していたアニメを見ることを必死で耐えながらも何よりも僕は朝ご飯を食べることに集中した。

 

 

「はあ、食った食った。ああ!今日の朝は楽しみにしていたアニメがあったのになぁ」

 

 

 せつなさ炸裂だよ。

 

 

 

 え、なんでさっきから自己紹介をしているのか?もう日課をする必要が無いのに自己紹介するのかって?

 

 決まってるだろ。そんなの主人公になったんだから、物語が始まるのだからその為に自己紹介しないといけないでしょ。

 

 気を取り直して。ちなみにさっき起こしてくれたのは僕の母の潤子(じゅんこ)

 

 この自己紹介は、本当は主人公気分を味わうための物だった。現実は物語のように単純ではない。 僕は成績身長も全て普通。だから頭の中だけ主人公気分を味わいたいだけだった。

 

 しかし、昨日を境にどこにでもいる男子高校生Wから主人公に成り上がったのだ。

 

 だからこの自己紹介はもう日課では無い。これは主人公に課せられた義務、使命、特権だ。

 

 そんな成り上がり主人公と宇宙人による模範的ラブコメが今、始まろうとしている。

 

 そして僕は、主人公としての最初で最後の読者達に聞かせていた自己紹介も脳内で言い終わると同じくらいのタイミングで朝の支度が出来た。

 

 

「それじゃ、学校行ってきます」

 

 

「え⁉2日連続で暁がこんな早く行くなんてどうかしてるわ!」

 

 

 確かにこれまでの僕からしたら考えられないかもな。だが、お母さん、昨日から僕は違うんだよ。お母さんよ、(昨日)とは違うのだよ(昨日)とは!

 

 

「最近いろいろあってね。じゃあ」

 

 

「はいはい。行ってらっしゃい」

 

 

 いつもより25分早く支度することが出来た。僕はコツコツと数回ほど地面を蹴り、中々はまらない靴をなんとか足にはめる。

 

 そして、玄関を開けてすぐには学校に向かわずに玄関の前でそのまま僕は誰かを待っているようにその場にしばらく立っていた。

 

 

「時間か。同調(トレース)開始(オン)

 

 

 僕はマウスカーソルを視界に表示させた。僕はマウスカーソルをまだつたない動きだが、

 

 少しずつ動かしてカチカチとクリックしていく。クリックしていくごとに僕の視界や聴覚は研ぎ澄まされていった。

 

 イメージするのは常に最強の自分。

 

 全てクリックし終わると僕は昨日の状態に戻った。そう、ARRGGSを最大展開させたのだ。

 

 僕はあまり大きく未来を変えてしまわないように、BGMで心が擦りきれないためにこれからはなるべく使わないようにと、昨日の夜決めたのだ。

 

 僕はこの状態になった事で、ちょっと確かめてみたいことが出来た。

 

 それは昨日の夜に遡る。

 

 …………僕って、回想してばっかりだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰ったらもう時刻は8時30分を過ぎていて、僕はついさっき買ってきた本を読んでいるところだった。

 

 

 

「ふむふむ……」

 

 

 ペラペラ。

 

 

「ふむふむふむ…………」

 

 

 ペラペラペラ。

 

 

 

 

 

 一つ、読んでいてふと思ったことがある。

 

 

「愛栞の本………あの、あれだな……滅茶苦茶くせが…もう………すんごい」

 

 え、なんで?なんでなの?愛栞さん良い作品や隠れた作品を見つける才能があるのになんでこんなにもくせが強い作品を選ぶの?

 

 いちよう全ての本の冒頭を読んで確認するとなんだかこの本だけがくせが強いというわけではなかった。なんだかもうすべての本が、もう……すんごいのである。

 

 例えば、

 

 

 

 

『いっけない!遅刻遅刻!?』

 

 

 

 

 なんでママは萌花のこと、起こしてくれなかったのよ!

 

 

 

 

 

 私の名前は萌崎萌花。どこにでもいる普通のちょっぴりオチャメ女の子❤️この春高校1年生になっちゃいました!えっへん!

 

 でも入学早々萌花、人生最大の大ピ~ンチ!

 

 このままじゃ学校に遅れちゃうよ!うえ~ん(>_<)

 

 

 

『萌花、朝ご飯くらい食べていきなさいよ』

 

 

 

『もおそんな時間なんてないよ~走りながら食べてく!』

 

 

 

 

『萌香忘れものよ!』

 

 

 

 

『いっけない、忘れてた~』

 

 

 

 

『もう、うっかりさんなんだから~』

 

 

 

 

『てへっ☆』

 

 

 

 私はママからカジキを貰って家を出た。

 

 

 

 これが無いと今日過ごせないとこだったよ(-_-;)

 

 

 

 

『じゃあいってきま~す!』

 

 

 

 

『は~い、いってらっしゃい』

 

 

 

 本当に遅れちゃいそうだよ~萌香、ダーッシュ!

 

 

 

 

『きゃっ!』

 

 

 

 

『うわっ』

 

 

 

 ブスッ!

 

 

 

 私、誰かとぶつかっちゃった。もうバカバカ!私のうっかりさんっ!カジキが道路に刺さっちゃってるよ~(-_-;)

 

 

 

『あの、大丈夫でしたか?』

 

 

 

 

 あれ?なにも反応が無いよ。どうしちゃったんだろう。なんだか心配!

 

 

 

『あいたた……大丈夫です』

 

 

 

 

『あっ!それなら良かったです……けど本当に大丈夫ですか?』

 

 

 

 やっと反応してくれた。でもなんだか口が動いてなかったように見えたんだけど、というか体が動いてないしずっと寝転がったままだけど大丈夫かな?

 

 

 

『あ、やっぱり大丈夫じゃないと思います』

 

 

 

 

『やっぱりどこか痛むんですか?』

 

 

 

 

『いや、そうじゃないんですけど僕の視界に僕が移ってるんです』

 

 

 

 

『えええええええ!』

 

 

 

 

 それはなんと萌香びっくり私のカジキに今ぶつかった人の魂が何故か入っちゃった!

 

 

 

 こんな出会いから始まった私のちょっと不思議な1週間の初恋の思い出、初まってしまったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………パタン。

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 なんだか今まで愛栞が人に選んであげた本がなぜ不評だったのかわかった気がするぞ。

 

 何だろうこのご都合主義な感じ。

 

 まずなんでカジキを学校に持っていくの?銀魂か?銀魂からインスパイアされたのか?

 

 なんで入れ替わっちゃうの?君の名は。か?君の名は。からインスパイアされたのか?

 

 どちらにしてもカオスすぎる。よくこんな本出版されたな!

 

 後、ヒロインがウザい。すんごくウザい、これが最初から最後まで続くのか………君たちは耐えられる?

 

 

 

 

 

「なんで僕は貰う時、気が付かなかったのだろうか。」

 

 

 

 

『いや、気づいてたでしょ。』

 

 

 

 

「あ、あたし知らない!「出会って5秒でカジキ」なんてタイトルの本、あたし知らない!」

 

 

 

 

『暁って嘘下手だよね。』

 

 

 

「う、嘘なんてついてねえし!」

 

 

 

 

『君、がっつりと帰る道中で表紙だけでは飽き足らず、待ちきれずにあらすじまで読んでいたよね』

 

 

 

 

「…………すいませんでした!ちゃんとあらすじまで読んじゃってました!

 

 だって良い感じに愛栞ちゃんとも仲良くなったし、心開いてくれたし、“愛栞さんだけはその作品の味方でいるそれだけで良いじゃないですか”って自分でも僕、一世一代の名言来た!って思ったんですもん。

 

 別に愛栞さんだけがその作品の味方って言ったのは、ちょっと比喩表現とか、ifとか、そういう感じで言ったつもりだったのに…………その名言出した後に開けてびっくり!ワンマンアーミーじゃねえか!多勢に無勢じゃねえか!周り敵しかいねえじゃねえか!何かの軍事記にでも載ってんのか⁉

 

 もうあそこは無かったことにして良い感じに締めくくりたいでしょうよ!」

 

 

 

 

『だから暁は“僕は大事に、消えないようにそっとこの灯を鞄に入れず体で抱えて家まで持ち帰った。5月の夜の肌寒い風も今夜は寒くなかった“みたいな雰囲気出して帰ってたの?』

 

 

 

 

「いや、なんで椿は僕の心の地の文一言一句間違えずに言えるんだよ!………………ってん?椿?」

 

 

 

 

「椿」、おかしくない?だってここ僕の家の中だぞ。何で椿の声が聞こえるんだ?

 

 僕は恐る恐る辺りを確認したが、やはり居ない。

 

 

 

 

『やっとそれにツッコんでくれたね』

 

 

 

 

「じゃあこの脳に直接訴えてくるかんじは」

 

 

 

 

『ARRGGSを通じてこういう事も出来たんだよ』

 

 

 

 

「個人のプライベートとは何なんだろうか……」

 

 

 

 

『あ、大丈夫。これARRGGS最大展開させないと視覚共有もテレパシーも使えないから』

 

 

 

 

「視覚まで共有してるの!」

 

 

 

 

『うん』

 

 

 

 

「改めて、個人のパーソナルスペースとは何なんだろうか…………」

 

 

 

 

『だから、最大展開しなきゃ良いんだよ。それにこれの方が学びやすいでしょ』

 

 

 

 

「まあそうか、最大展開させなきゃ良いだけだからな」

 

 

 

 

『そういうこと。で、今日はこれからについてやっぱりちょっと話しておこうと思って、家に帰ってから連絡しようかなと思ってたんだけど、なんだかいきなり最大展開させて本屋に入って行ったからびっくりしたよ』

 

 

 

 

「え? 僕、最大展開させてた?」

 

 

 

 

『うん、だって今もBGM流れてるでしょ。』

 

 

 

 

「…………本当だ!よく考えたらBGMちょっとかすかにだけど流れてる!」

 

 

 

 

 1日中ずっと流れていたBGMはどうやら僕は気付けなくなっていたらしい。

 

 人間の適応力って怖いな。

 

 

 

 

「そうかあの時マウスカーソルを動かす練習の時、BGMのボリュームのバーをいじってたっけ」

 

 

 

 

『でも、これからの事はもう心配ないね』

 

 

 

 

「ん?何が?」

 

 

 

 

『だって、暁もう普通に見ず知らずの女の子としゃべられてたよね』

 

 

 

 

「ああああああああ!」

 

 

 

 

『気付いてなかったの?』

 

 

 

 

「気付かなかった!そうだよ!なんで僕は女の子としゃべられているんだよ!」

 

 

 

 

『私が思うにARRGGSを最大開放した時暁って、主人公みたいな気分になれるわけだよね』

 

 

 

 

「まあ、そうだな。いつも、机の上でやってるようなギャルゲー主人公になった気分……

 

 あ!そうか」

 

 

 

『そう。ARRGGSを最大展開させた暁はどこにでもいる男子高校生Wからギャルゲー主人公に変わることが出来る。という事は、それはいつもモニター越しに会話していたヒロイン達がただモニターの枠をこえて飛び出してきただけの事、暁は無意識にだけど普通にしゃべられるんじゃないのかな』

 

 

 

 

「でもちょっと待って、たしか椿に最初に出会った時、僕はちょっとだけ緊張して会話をしていたような気がする」

 

 

 

『確かにあの時は、しゃべり方がちょっと詰まってたけど、でもあれは私は緊張というよりも、不思議なギャルゲーを持っていたのか聞きたいけど、もし違っていたらどうしようみたいな事考えてなかった?』

 

 

 

「たしかに、考えていたかもしれない」

 

 

 

『でしょ』

 

 

 

 あの時はギャルゲーについてどうやって聞き出そうかと必死だった。

 

 

 

 

 

 

「本当に椿は洞察力がすごいな」

 

 

 

 

『自分に向けられる感情や人間の行動パターンは何千年も見てきてるからね』

 

 

 

 

「やっぱり宇宙人はハイスペックだな」

 

 

 

 

『まあね。それじゃあ、明日から動いてもらおうかな』

 

 

 

 

「まじすか」

 

 

 

 

『お、なんだかあまり苦だと思ってない感じだね。何か考えがあるの?』

 

 

 

 

「………まあ、無いでもない。やりたくは無いんだが、というかこれしかないとも思ってる」

 

 

 

『ふ~ん、それってどんなことかな?』

 

 

 

 

 椿は楽しそうに、興味深そうにして聞いてきた。

 

 

 

 

「それは…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあそんな続きががあった昨日の夜、まあ結論女と話せるようになりました。

 

 

 

 テッテレーン↑

 

 

 

 そうはいってもこれから澪ルートに入ろうとしているって思うとなんだかちょっと女と話す時とはまた違った緊張があるな。でも、あれをするしか澪ルートに入れないと思うしな~。

 

 ああ、胃が痛い。明日にしようかな。

 

 

 

 

 

「ガチャッ」

 

 

 

 言ってるそばからこの子は!

 

 

 

「あっ暁。お、おはよう!」

 

 

 

「おはよう」

 

 

 

 あ、確かに普通に言えた。

 

 

 

「今日も暁、は、早いね!あの一昨日の事は…………」

 

 

 

「ああ、僕が今日も早いのはそのことについてなんだけど、僕1日ずっと考えてたんだ」

 

 

 

「………うん」

 

 

 

「いや、やっぱり僕は澪と健人はお似合いで、付き合ってほしいって思った。だから僕は澪の恋を応援するよ。だから協力する」

 

 

 

「暁……!」

 

 

 

 澪はどこか嬉しそうに、申し訳なさそうに言った。

 

 

 

「ありがとう!」

 

 

 

 澪はいつもの、すごく嬉しそうな笑顔を僕に向けてきた。

 

 

 

「良いよ。あの時ちょっと荷が重いと思って逃げようと思ってしまった僕が悪かったんだ」

 

 

 

「でもあんな時、逃げようって思うのは仕方ないよ。私、ずっと暁に申し訳なかったって思ってたの。今も思ってるけど…………」」

 

 

 

「まあ一昨日の事はもう良いだろ。だからもうこの話はおしまい」

 

 

 

一昨日の事だけじゃないんだけどね

 

 

 

「ん?何か言った?」

 

 

 

 一瞬どこか悲しそうな笑顔になったような。

 

 

 

「じゃあ改めて、よろしくお願いします! 暁!」

 

 

 

 気のせいだな。

 

 

 

「ああ、よろしくな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕達は一緒に肩を並べ、これからの事を話しながら学校に向かった。

 

 

 

「それで暁はこれからどうすれば良いと思う?」

 

 

 

「………………」

 

 

 

「どうしたの?」

 

 

 

 やっぱりそうくるよな。別に僕はまあルートに入るためと思えば良いんだよ。でもあいつがどう思うか。

 

 まああいつの事を気にしてはいられない。

 

 

 

「一つだけ…………」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「一つだけ、良い案がある」

 

 

 

「それは!」

 

 澪がすごく期待を込めた眼差しで見てくる。

 

 

 

 ここまで来たら言うしかない。

 

 

 

 もう良いや!なるようになれ!

 

 

 

 

 

 

「僕が…………」

 

 

 

 

 

 

「僕が…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕が健人を誘ってソフトテニス部に入る事だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本当に遅れてすいません!

言い訳を言うと、頭がぶっ飛んだような小説の構成を考えろと言われて、皆さんはすぐに思いつくでしょうか?

いえ、生意気言ってすいません。

いつも待たせてしまっている読者の皆様に感謝しかないです。

さあ次回は暁、健人をテニスの王子様にプロデュースさせる回です。

それでは次回もお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。