塙麒放浪記(仮)   作:カラミナト

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冢宰

昇山者たちの進香のために甫渡宮が開かれてから数日が経ったが未だに王は見つからない。

 

宗嗣は毎日、朝早くに日課の素振りをしてその後に汗を流すために沐浴をし、着替えて劉麟と朝食を摂る。

その後に女仙たちを伴って甫渡宮へと向かって昇山者たちが進香するのを御簾の奥で見て、露茜宮で劉麟と一緒に昼食を食べ、また甫渡宮へ行って日が暮れる頃になってようやっと露茜宮に帰るといった日々を送っていた。

 

宗嗣は自らの王になる存在に会うことに関して覚悟がなかったりといろいろと面倒なことを考えていたのだがそもそも王がいないのであれば宗嗣の悩みなど解決のしようもない。

 

最初の一日は王となる存在に会った時にはどうしようかと昇山者たちが進香するのを半ばぼんやりと見ながら考えていてそのままいつの間にやら日が暮れていたなんてことになったのだが、今回の昇山者は千人近くいるのだからしょうがないのだが、宗嗣は考えても仕方のないことを考えながら一日が過ぎていたというのが馬鹿らしく思えて二日目からは頻繁に甫渡宮の外に出て昇山者たちに会うようになった。

 

そもそも宗嗣はこの世界に漂着したときにもう帰れないのだと知らされた時は、世界の中心である黄海の蓬山に登り、世界をぐるっと見てみたいと思っていたのだ。

 

今回のこの行事は昇山者たちにとっては塙麒に王を選んでもらう非常に大事な行事なのだが、宗嗣はどうせ昇山者たちに皆を見て王気があるかどうかを確かめるものなのだというのならば皆から黄海の外の世界について聞こうじゃないかと黄海の中の黄朱の里や蓬蘆宮のことしか知らない宗嗣にとってこの行事は巧国の民から自分の生国である巧州国のことやこの十二国のことについて知るための場所に取って代わった。

 

そもそも宗嗣は王気というものがどういうものなのかが分からない。

 

女仙に聞いても分からないし、劉麟においても未だ王に出会っていないのだから分からない。

 

宗嗣は王は麒麟が天意によって選ぶのだというのならばわざわざ探さずとも会って話をした方が効率が良いのではないだろうかと思った。

 

宗嗣は三日目に鄭楽と衒笙に会ってからはほとんど甫渡宮にて昇山者の進香を見ることなく昇山者たちと対面して蓬蘆宮の書籍では決して得られることのできないいろいろなことを聞くことが出来た。

 

昇山者たちが進香するのを見ている合間の暇つぶしに昇山者たちと会話をするのは衒笙に出会ってからこれから障害を共にする巧国という国を知るには非常に効率的であることに気付いたのだ。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

宗嗣はいつものように朝食を食べ終わった後に甫渡宮に向かい、昇山者たちが進香しているのを見てしばらくしてから昇山者たちがいる外へ出た。

 

流石に甫渡宮に一日に一度も入らないのはどうかと思い一応、形だけでもと思って朝だけはこのようにしているのだ。

 

「蓬山公。」

 

宗嗣と女仙たちが進む石畳の先に後ろに幾人もの人たちを連れた一人の灰色の髪をした壮年の男性が現れた。

周囲の視線が一気に宗嗣達の方を向く。

 

随分と有名や人のようだが・・・

 

「誰だ?」

 

「姓名を杜耀、字を鷹恂と申します。」

 

杜耀、鷹恂。

宗嗣はその名に聞き覚えがあった。

 

あれは確か、衒笙と巧国の政についてを聞いていた時だ・・・

 

「そうか!

あなたが仮王である鷹恂か!」

 

「公はよくご存じでいらっしゃる。」

 

「ああ、この機会に巧国についてを知ろうと思ってな。

昇山者たちにいろいろと話を聞かせてもらった。」

 

「なるほど。そういうことでございましたか。」

 

・・・鷹恂はまるで何かを期待しているかのように宗嗣に力強い視線を向けてくる。

ああ、そうか。

 

「中日までご無事で。」

 

「・・・ありがとうございます。」

 

「鷹恂のことは昇山者たちから色々と聞いている。

あなたが王でないとすると今回の昇山者には王はいないようだな。」

 

「そのようなお言葉をかけて頂き喜ばしいばかり。

しかし、私の認めた者たちも見てほしいのですが・・・」

 

「ああ、構わない。」

 

宗嗣は鷹恂の後ろにいる人たち一人一人をゆっくりと見ていくが、特に何も感じなかった。

 

しかし、唯一一人だけは違った。

青い髪が特徴的な男性だ。

 

他の人たちとは違ってどこか上の空といった風であった。

 

「如何なさいました?」

 

表情に出ていたのだろう。

宗嗣は鷹恂に問われた。

 

「え?ああ。

王は、いないようだ。

しかし、少しそこの青い髪の者が気になってな。」

 

「椁夭ですか。

しかし、どうして気になったので?」

 

「自分でいうのもなんだが目の前に麒麟がいるというのに特に興味がなさそうだったのでな。

少し気になったのだ。」

 

「も、申し訳ございません。」

 

「構わない。

それで、彼は?」

 

宗嗣は青い髪の男性を誰何する。

さっきから彼は興味がなさそうにしていたが、鷹恂に急かされて渋々といった様子で答えた。

 

「姓名は玄珀。字は椁夭と申します。」

 

「それで、あなたは興味がないとでもいう風だったがもしかして昇山すらしたくはなかったのでなないか?」

 

「そうです!

よくお分かりにって、イテッ!」

 

よくぞ分かってくれたとでもいうかのように先程までとは違って勢いよく答えた。

しかし、それが鷹恂の怒りに触れたらしく椁夭は拳骨を頂いていた。

 

「蓬山公の前でその様に言うなどと。

お主は真性の阿呆か。」

 

「いや、気にしていない。

それよりも俺は椁夭に興味がある。」

 

「私もです、塙麒。

私は海客の知識を得ることが趣味でしてね。

つい最近も一人私の治める淳州に現れまして出来れば海客や彼らの知識について知りたいのです。

塙麒も胎果なのだとか。

どうか蓬莱のことをお教え願いたいっ!」

 

椁夭は海客の話になると急に人が変わったように喋り倒し始めた。

宗嗣が彼のその勢いに少し引いたところで同じく鷹恂の後ろに控えていた者が三人がかりで椁夭を後ろに引きずるようにしてさげた。

 

「申し訳ございません、蓬山公。

椁夭はあれさえなければ優れた官吏なのですが・・・」

 

「いや、あれはあれで面白いではないか。

まあ、度が過ぎると言えばそうなのだがな・・・

ところで椁夭の話にもあったが半獣はどうにか対応しているようだが海客のことは巧国はどうしているのだ?」

 

宗嗣は話を変えて政治的な話に移った。

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