塙麒放浪記(仮)   作:カラミナト

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連行

絢仁は何かに揺られているのをボンヤリと感じる。

 

眠っていたのだろう。

夕方から明け方まで歩きっぱなし。

よく分からない野生の狼のようなものに襲われる。

それに、異世界に来てしまったということで肉体的にも精神的にも非常に参っていたのだろう。

 

絢仁は寝起きの頭で考える。

 

それによって徐々に理解できて来た。

 

自分がどれほど異常な状況下にいるのかということも。

 

そして、俺がこの異世界ともいえよう場所で人の住む集落に辿り着いて・・・

その後はどうした?

 

そう言う考えに至った絢仁は跳び起きた。

 

今まで横たわっていた状態から一気に身体を動かしたためにようやく自分が何故か身動きが取れない状態にあるのだということに気付いた。

 

よく見てみると身体にはぐるりと縄が三重四重にしっかりと巻きつけられていた。

そして周囲には古風な日本の着物とは違った東洋風の衣服を着た人物がいることにも気付く。

その中には絢仁が最後に見た記憶のある皮鎧に帯剣して武装した人物も見受けられる。

 

現在、絢仁は馬車というには非常に粗末な馬にひかれた荷台のようなところに寝かされている。

 

・・・どうやら俺はあの集落の門前で気を失ってそこの住人たちに拘束され、どこかに廉応されている途中のようだ。

 

陽は既に中天に差し掛かっている。

 

よくもまあ、こんな状態で寝られたものだと絢仁は自分自身に呆れつつも、あれだけ精神が参っている状態で知らぬ土地を歩き続けた自分を褒めた。

 

しかし、取り敢えずこの状況をどうにかしなければならない。

 

「・・・どこに連れて行く気だ?」

 

「ーー。(起きたか。しかし、何を言っているのやら・・・これだから海客は・・・)」

 

絢仁はすぐ目の前の人物に問いかけるも帰ってきたのは嘲りの表情と何かの音が連なったものでしかなかった。

 

まだ寝ぼけていたようだ。

この場所においては日本語も英語もましてや絢仁は話せないが中国語でさえも通じないのだということを忘れていた。

 

誤解を解こうと何を言っても言葉自体が通じないというのだから弁解しようと無駄なようだ。

それにそもそも何もしていないというのにこの俺に対するこの怒りの入り混じったような表情からどうやら俺は理不尽な敵対心を抱かれているようだ。

それに、この場から脱しようにも周囲には三人とは言え帯剣までして武装した者がおり、その上俺は木刀すらも取り上げれて唯一今着ているこの制服のみが俺の持ち物だ。

 

抵抗しようにもその手立ては既に取り上げられていた。

 

このままいけば何らかの濡れ衣を着せられてそのままこの訳の分からない場所に放られることになるのだろうか。

・・・そういえば、宗嗣はどうしたのだろうか?

あいつもこんな目にあっているのだろうか。

 

絢仁はどこか彼らに隙が生じないだろうかと注視しながらもそう思った。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

絢仁は逃げる隙を伺いながらもなんとなく荒れた土地の多い外の風景を見ながら馬車を揺られているといつの間にか目的地に到着してしまったようだ。

 

一度異様な他とは違う背の低い木の下で野宿して次の日、日が暮れ往く中、絢仁の正面に見えるのはさきほどの集落よりも大きく立派な石で造られた塀だった。

この大きさからこの中にあるのは大きな都市だろう。

 

絢仁はそのまま馬車に乗せられたまま一行によってその門の中へと入った。

 

絢仁は逃げそびれてしまったことを後悔しつつもこの風景に心を奪われた。

 

そこに広がるのは門の先に見えたあの小さな村などとは比べ物にならないほどの街が広がっていた。

 

大きな道を行く容姿や服装それに髪の色まで赤から青といったように様々な人々。

道の脇に広がる店の数々。

木製の大小様々な店舗に多くの露店。

 

絢仁はこの街の大きさには見合わない人の少なさを異様に思いながらもしかしその視線は言葉の通り日本や地球などとは違う異世界ともいえる風景に目を奪われてしまったのである。

 

そんな呆けている絢仁を放っておきながら絢仁を連れてきた一行は真っすぐに街の中に造られた塀の向こうにある府城のもとへと周囲の視線に気付きながらも近づいていた。

 

一行は絢仁が呆けているうちに府城へと続く門に辿り着く。

 

絢仁は疑問に思っていた。

どうしてこの者たちは自分をこんなところまで連れてきたというのか。

そして、どうしてこんないかにもこの街の政治の中枢ともいえるような場所に入ろうとしているのか。

 

そして、どうしてここの門衛は襤褸を纏った彼らをこんな場所に入れるのを許可したというのだろうか。

 

絢仁は分からない言語で話す彼らの様子を見ながらひたすらに考えた。

 

そして、それはすぐに分かった。

 

彼らは絢仁を乗せた馬車をで進み、この役所のようなところの入口のところで役人だろう人物と村人がちらちらと絢仁を見ながら話してしばらくすると、その役人が部下だろう人物に何かを頼んだのが分かった。

 

そして、しばらくすると何かがずっしりと入った麻布を抱えてその部下が戻ってくるとそれをさっきまで役人と話していた村人の代表にその麻布を渡した。

 

周囲の村人たちが俺の監視すらも忘れてものすごく喜んでいるのがよく見て取れる。

 

何が何だか分からなかった絢仁はその麻布の中身を確かめようと注視した。

 

そこには、昔のお金である穴の開いた銅銭のようなものが見て取れた。

 

そこでようやく理解した。

無理やり連れてこられた俺自身。

そして、お金を受け取る人々。

その経緯の中で俺はずっと役人と代表者にちらちら見られていた。

 

それが意味するのは・・・

 

「お前らっ!俺を売り飛ばしやがったな!?」

 

頭に浮かぶのは"奴隷"の二文字。

 

「ふざけるなっ!俺が何をしたっていうんだ!」

 

目の前の彼らは意味が分からないとでも言うかのように俺を見る。

言葉が通じていない。

 

「クソッ!」

 

こうなったら逃げるしかない。

幸い俺を縛っている縄を持っていた人物は既にその手から縄を放していた。

 

俺は一目散に縄で縛られたまま門の方へと逃げだした。

 

後ろの方で何か騒いでいるが関係ない。

 

俺は真っすぐ門へと向かう。

しかし、もう少しというところで俺の前に人が現れた。

 

「クソ!そこのお前、どけ・・・」

 

いつの間にか俺の目の前に剣が現れていた。

その剣を持っているのは目の前の茶髪の二十代中盤くらいの青年だ。

 

「そう慌てる必要はない。

君は誤解している。」

 

「ふざけるな!俺、は・・・」

 

そこで気付いた。

目の前の彼の話している内容が分かる。

日本語だ。日本語を話している。

 

そこでようやく俺が落ち着いたのを確認してその剣を下げて鞘の納めた。

 

「良し。それでいい。」

 

「あんたは・・・

どうして言葉が?」

 

「そのことは後で詳しく話そう。」

 

そう言って彼は俺に向き直ってこう言った。

 

「初めまして。

靜尚という。この淳州にて少司寇の地位にある、仙だ。」

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