塙麒放浪記(仮)   作:カラミナト

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道程

宗嗣と義衡は毫州の北東部から淳州の中央部に位置する州都柯柊へと向かっていた。

 

宗嗣は義衡と出会って一緒に柯柊へ向かおうと誘われてからそれに賛成の意を伝えて、その翌日にはその宿を出て目的地である柯柊へと向かうこととなった。

宗嗣一人で外に朝食を摂りに行った後に道具を纏めて宿の外に出ればそこには大きな箱のようなものを担いだ義衡が待っていた。

聞けばこの十年間は漢方の知識を使って患者の病気を癒してきたのだという。

 

それを聞いて宗嗣も納得した。

 

確かに普通に考えればこんな十二国の世界では麻酔薬もまともに入手しようにもできないし、器具なんてものもそろっていないわけだから外科的手術が出来ないのは当たり前だろう。

 

と、宗嗣は思っていたのだが、最初の頃は救命に向かう途中で突然この世界に流れ着いてしまったがために医療器具一式は揃っていたのだという。

それで、外科手術も最初の頃は行っていたのだという。

 

今は、使い捨ての器具はもうないのだから使えないのだが、それ以外のメスなどといったものは未だに手入れをしており実際に使えるのだとか。

実際に応急処置ならば一年ほど前にも行ったことがあるのだという。

 

また、漢方に関しては元々漢方医になるには薬剤師ではなく医師免許が必要な資格であり、義衡は授業として大学で学んでいたこともあってにわか知識ではあるものの生きるためにとその知識も使ってきたのだ。

薬草などに関してはこの十二国の世界は基本的には地球と同じ動植物が存在しているために、非常に苦労はしたもののそれらを集めることは出来るのだという。

 

実際に各里ではそれぞれ使用用途が違ったりしたものの病気に効く薬を作っていたためそれらの材料は集めるのが難しくなかったようだ。

 

「君は血が苦手なようだね。

昔からなのか?」

 

「まあ、そうだな。

血の匂いだけでも駄目だ。」

 

「そうか、出来れば手伝って欲しかったのだが。」

 

「諦めてくれ。」

 

この州都柯柊までの道程で二人は多くの都市に訪れてはその郷城以上の街では医療を欲する人々に対して銭を対価に義衡がその医術をその街の人々に施すというようにしてここまで進んできたのである。

 

そして、基本的には義衡が無料で診察して有料の薬を渡すといったようなことを行ってきたが、その道程ではついさっきのように妖魔に襲われた人々に対しても応急処置として外科的な処置を街道や里を問わずに積極的に義衡は医療に取り組んできた。

 

宗嗣は義衡の治療に関しては積極的に手伝ってきたものの、麒麟である宗嗣は血を嫌うため今回のような出血している患者にたいしては出来るだけ離れたところで義衡の治療を待っているのである。

 

「それにしても、胎果というのは不思議なもんだな。

この世界の言語を翻訳しているかのようにしてこの世界の人たちと会話をすることが出来るんだから。

僕には日本語に聞こえるのに相手にはこの世界の言語として聞こえるとは・・・」

 

「・・・またか。」

 

義衡は常にいろいろなことに興味を持つのだ。

確かに、このような未知の世界に流れ着いたのだというのならばその好奇心も分からなくはないのだが、義衡はこの世界での出来事に関して面白がっている節があるのだ。

まるで、好奇心旺盛な子供のように。

 

宗嗣もそののんきな義衡に対して面倒だと思いはするのだが、面白くもあるため気を許していた。

宗嗣にとって劉麟が天真爛漫な妹ならば義衡はのんきな年上の友人と言ったところだ。

やはり宗嗣は周囲に振り回されるのだった。

 

宗嗣も好奇心の強い方だとは思うものの義衡ほどではない。

前に詳しく知らなかったらしいので義衡にこの世界の仕組みともいえる王と麒麟のことについて話したときはそれはもうすごかった。

一人でブツブツと考えているその様子のまま何時間も経ってしまったのだ。

 

元々は義衡は研究者気質なのだろうと宗嗣はそう思った。

 

後で聞いてみるとそれは大体当たっているようで、元々義衡が医者を目指したのはバリバリの外科医を目指してではなくて医療の研究などの研究にあこがれていたらしくてどちらかと言うと内科を目指していたのだという。

 

義衡の謎を探求するその姿勢には敬意を表するが、いちいち面倒くさいと正直思っている。

三十路を超えているというのにその子供のようなありかたは面白いには面白いのだが。

 

もしかしたら、この淳州の州候である椁夭と合うのではないか?

あの人も海客とその海客の知識に対して異様なまでの好奇心を持つような男だった。

 

しかし、そのような性格でありながら俺のことに対して訝しく思いながらも何も問いただしてこないのはありがたいと思っている。

 

宗嗣と義衡は柯柊の街まであと少しというところにある郷城の今夜泊まる予定の宿屋を確保しようとしていた。

 

宗嗣は適当な宿屋を見つけてその宿屋に入って比較的高級な宿屋故か身分証明のための旌券を出すように言われたために宗嗣は鷹恂に裏書きしてもらったそれを店主に見せる。

 

店主はその裏書きを見て慌てたように部屋を準備するように言った。

 

「前から思っていたが君のその旌券には誰の名前がが書かれているんだ?」

 

「ちょっと名の通った知り合いだよ。」

 

「そうか・・・」

 

「俺も聞いていいか?

義衡はどうして州候に会ってまでこの世界のことを知ろうとしているんだ?」

 

宗嗣は宿屋の店員に部屋まで案内されながら前まで疑問に思っていたことを聞いてみる。

 

「日本に帰った時に小説のネタにでもなるかなと思ってね。」

 

帰るつもりもないいというのにそんなことを言ってぬらりくらりと返されてしまった。

 

「まあ、いいか。

それで、この後はどうするんだ?

やっぱり数日はこの街に滞在していつものように診察をするのか?」

 

「いや、もう州都までもうすぐだ。

真っすぐ向かうとしよう。

こちらは君のおかげで宿屋に医療を無料で提供する必要もないしね。」

 

「どうも。」

 

宗嗣と義衡はこの後その宿で一泊してから州都柯柊へと向かった。

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