塙麒放浪記(仮)   作:カラミナト

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再会

宗嗣と義衡は馬車の荷台の空いてるスペースに乗って悠悠自適な馬車の旅を楽しんでいた。

 

二人は現在慶国へ向かっているのだという朱旌の商隊に混じって途中の淳州州都柯柊まで送ってもらっていた。

 

何故こうして二人はこの商隊に混じって柯柊へと向かっているのか。

端的に言うと、義衡がその医術によって急に倒れてしまった商隊の一員の者を通りがかった県城で助けたのである。

それによって商隊一行の長が義衡に礼をさせてくれと共に柯柊まで向かうこととなったのである。

宗嗣と義衡は治療代として悠悠自適な馬車の旅を送っているのである。

もちろん、旅の間は義衡診察は元論だがは薬の類も無料で提供している。

 

これは、義衡がタダ同然の薬代だけでで柯柊まで送ってもらうのは悪いと思ってのことである。

 

もちろん、この治療には出来る限りは宗嗣も手伝っている。

 

一行は順調に柯柊へと進んでいた。

今朝の早い時間に柯柊まであと一日というところの昨晩泊まらせてもらった里から出発してもう昼も回った。

恐らく今日の夕暮れ前には十分に柯柊まで間に合うだろうとのことだった。

 

柯柊の街に着いたら何をしようか?

やはり、宿をとるのは当たり前として義衡と一緒だから真っすぐ州城に行って俺が簡単に州候に会えるようなことはしたくはないのだが・・・

しかし、義衡はこの世界の何かを州候に会ってでも知りたいようだった。

 

一体何を知りたいというのだろうか。

既に義衡が日本に帰ることに関して執着しているような節は見当たらない。

 

でも、手助けはしてあげるべきだろうな。

せっかく俺は州候である椁夭を知っているのだ。

義衡と一緒に州城へと向かうとしようか。

それで俺が麒麟であるとバレても問題ないだろう。

恥じるものでもないしな。

 

「襲撃だーっ!」

「匪賊だ、多いぞ!」

 

そう宗嗣が考えているときだった。

突然、前方の方から悲鳴が聞こえてきた。

 

匪賊と言ったか?

ということは相手は人なのか?

 

「匪賊です!お二人も逃げてください!」

 

悲鳴を聞いて馬車から立ち上がろうとしたところで馬車の外から商隊に所属する一人が顔を覗かせた。

 

「匪賊、ということは妖魔じゃなくて人間・・・」

 

「そうだろう。

こういう場合は食うに食えなくて仕方なくという理由の人が多いだろう。」

 

宗嗣の独り言に義衡が答える。

この世界において妖魔に襲われることはあっても今まで人に襲われるということは運よくなかった。

しかし、現在宗嗣たちは匪賊の集団に襲われている。

どれもこれも王を見つけていない自分のせいなのだという思いに駆られた。

 

「ほら、行くよ!」

 

宗嗣は義衡に引っ張られて馬車から飛び降りた。

 

その瞬間に濃厚な血の匂いが麒麟である宗嗣を襲った。

その匂いに酷く酔ってしまってその場に膝をつく。

どうにか顔を上げることで精一杯であった。

 

「大丈夫か!?」

 

周囲は悲惨の一言だ。

周囲を30人以上の匪賊に囲まれてしまった宗嗣たち商隊の一行の逃げ場はない。

護衛に雇っていた5人はすでに死んでいて血に濡れた地面に倒れ伏している。

義衡の問いかけに宗嗣は気付かない。

 

その怨嗟にまみれた血に酔った宗嗣はそのままその場に倒れ伏してしまった。

すぐ近くで虐殺が為されたのだ。

そして、その殺意は今ただの朱旌の商人に向けられている。

 

「・・・シャク、ホ・・」

 

薄れゆく視線の先には後頭部に矢を受けて倒れる匪賊の一人と真紅の旗を靡かせた一軍の姿であった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

絢仁がこの世界にやってきてから二年半の歳月が過ぎた。

時は日本の暦でいうところの一月の初旬、正月である。

 

絢仁はこの二年半の間に、最初は州候によってこの淳州という州の軍である州師の左軍を任されている左将軍と出会い、実力を試されることとなった。

最初にその左将軍に会った時に実力を試されたものの殺人の武術でなくただの武道である剣道の研鑽をしていた絢仁は手も足も出なかった。

他の何の長でもない一兵卒でさえそうであった。

 

その時、絢仁は州師に一兵士として配属されることはなかった。

しかし、周囲の兵たちに武道の剣道ではなく殺人の剣術を教えてもらってからは違った。

絢仁のその剣の才能はすぐに州師に配属されるほどまでになり、更にはそこから半年で伍長を、そして一年半で現在の両司馬つまり、25人の上に立つ者となったのである。

 

州候椁夭の考えである実力主義はまともに会話もできない絢仁を剣の実力でこの両司馬の地位にまで押し上げたのである。

日本で中学校までの学問を難なくこなした絢仁であれば時間があれば将軍の座まで近づくことが出来るだろう。

 

そして、現在絢仁は彼の一両含む四両100兵での行軍訓練という柯柊の街周辺の警邏に当たっていた。

 

絢仁はすでに柯柊の街周辺の秩序の維持のために何度も警邏に赴き、そして賊を討伐してきた。

だから、目の前の馬車を囲む匪賊の集団を見てもいつものように討伐するだけだとそう思った。

絢仁は人を殺すことなどとうに体験していた。

今更

人を殺すことにためらいはない。

 

実際に絢仁たち州師100兵は簡単に匪賊を殲滅せしめた。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

ん?日本語?

 

絢仁はこの二年半でどうにか生活できるくらいにはここの言語を学んできたつもりである。

しかし、今聞こえたのは明らかに自身の母国語である日本語に聞こえた。

絢仁は自分の指揮下にある伍長たちに商隊の救援に向かわせて自分も四人の兵士を引き連れてその日本語が聞こえた方へと向かった。

 

「大丈夫ですか?

もしかして、日本人では?」

 

絢仁はこの30代後半くらいの日本人と思しき人物に声をかけた。

 

「ん?

もしかして君も日本人か?

っと、それより彼を頼む。」

 

そこにいたのは神秘的な赤に金色の混じったような髪を持つ自分よりも幾つか年下だろう青年が顔色を悪くして気を失っているようだった。

 

「だいじょう、ぶ・・・」

 

その顔に絢仁は見覚えがあった。

 

「どうしたんだ?」

 

日本人の男性が問い掛けてくる。

 

「・・・彼の名前は?」

 

絢仁はこの青年の名前を日本人の男性に尋ねる。

 

「一条宗嗣と言ったが・・・

それがどうかしたのか?」

 

その名前は絢仁がこの地球ではない世界で探していた友人の名前だった。

名前が同じだけの他人とは思えない。

 

髪の色はともかくどう見ても顔の造形はほとんど同じなのだから。

 

絢仁はついに探し続けていた友人を見つけることが出来たのだ。

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