塙麒放浪記(仮)   作:カラミナト

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州都

宗嗣たち朱旌の商隊の一行は柯柊周辺の警戒を行っていた絢仁を含む州師の兵を伴って、背後に州城が頂上にある凌雲山を控える淳州州都柯柊の街を目の当たりにしていた。

 

昨晩、野木の下で一夜を過ごした一行は朝起きて食事を摂ってしばらくしてから柯柊へ向けて出発した。

 

そもそも昨日の日が暮れる前には柯柊の街に到着している予定だったのが匪賊の騒ぎのせいで野宿を強いられていただけなのである。

州候の兵も含めた商隊の一行は朝に野木を出発して昼前には到着した。

 

宗嗣はこの柯柊へ向かう間は軍役に就いている絢仁と話をするわけにもいかず、さりとて義衡と話をするでもなく柯柊に着いてからのことについて考えていた。

 

元々は自分の正体のことは義衡にそこまでして隠す必要もないからその身分でもって義衡が望んでいる淳州州候との会合のためにそのまま州城へと向かおうかと考えていたが、恐らくは宗嗣が蓬山へと帰還するためにこの十二国の世界と日本とが繋がってしまったがために絢仁はその空間の乱れによって生じたであろう蝕によって流されたのだろうということが分かった。

つまりは、絢仁がこの世界に流れ着いてしまったのは宗嗣のせいであるためにどうにか絢仁を日本に返せないだろうかと考えていたのだ。

 

しかし、宗嗣は蝕を起こして日本へと渡ることのできる麒麟なのだがそのやり方が分からない。

 

これは柳国までいって劉麟にお願いするべきだろうか。

それとも、劉麟から聞いた話では俺と同じ胎果でよく日本に渡るのだという雁国の麒麟である延麒にでも頼もうか。

 

このように、道中どうにかして絢仁を日本に帰そうと考えていたのだ。

 

そうやって辿り着いた柯柊の街は正面にある午門のその向こう柯柊の街の北の方に凌雲山がドンと聳え立っている。

その存在感は左手に凌雲山のあった傲霜のそれよりも迫力を感じた。

 

「おお!これが凌雲山か!

なるほど天地を貫く山とはよく言ったものだ。

知識としては知っていたがこんなものがこの世界には存在するのとは。」

 

初めて凌雲山を見た義衡は柯柊に着く前のこの凌雲山が見え始めた頃から興奮しっぱなしである。

今、目の前に聳え立つそれを見てその興奮は抑えが効かない。

 

こうなってしまっては止めるのが面倒だからと特に気にせずに宗嗣たちは午門の方まで向かっていった。

 

正面からは午門の門衛がその100にもなる軍に気付いてこちらまで走ってくる。

 

「もしや、昨日の左軍の警邏隊か?」

 

「いかにも。

昨日偶々匪賊に襲われるこの商隊を見かけたもので応戦いたした。

故に帰りが遅くなってしまった。

早馬は送ったものの迷惑をかけた。」

 

この軍隊の長である卒長がその門衛と軽く話をする。

それから、宗嗣たち含む商隊はこの街に入るために簡単に手続きを始める。

 

「宗嗣、これからどうするつもりだ?」

 

絢仁が声をかけてきた。

 

「そうだな、取り敢えず義衡としばらく厄介になる宿を探すつもりだ。

今日、時間はないか?」

 

まずは宿の確保だが、絢仁の今後のことを話さなくてはならない。

絢仁自身もそもそも宗嗣を探すためにこの柯柊の街に武人として滞在していたのだというのだから取り敢えず話をするべきだ。

宗嗣は実際に日本に帰る方法を知っており、それを実行するだけの力はあるつもりだ。

 

「もしや、一条宗嗣様ですか?」

 

そこに門衛の一人が宗嗣に問いかけてきた。

 

「ん?

そうだが・・・それがどうかしたのか?」

 

「そうですか。

失礼ですが旌券をお見せいただけますか?」

 

宗嗣は言われたとおりにその門衛に旌券を渡す。

周囲から怪訝な視線を向けられる。

しかし、それは宗嗣もそうだ。

何がどうしたのか分からない。

 

「・・・やはりそうですか。」

 

旌券を見せた門衛は一人何かを納得しているようだ。

 

「どうしたんですか?」

 

「赤い髪に青い目の青年がこの柯柊に訪れることがあれば名前を問い、旌券を確かめて、もしも名前が一条宗嗣で仮王の裏書きがあればその青年を賓客として州城までお招きしろと、州候椁夭様が仰せになられていました。」

 

周囲がその門衛の緊張して早口な言葉に驚きの視線を宗嗣に向ける。

義衡も驚いているようだが何か納得した風な表情をしている。

絢仁に関しては未だにヒヤリングはまだまだなのか何がどうしたのか分かっていないようだ。

 

対して、宗嗣は理解していた。

 

「なるほど・・・鷹恂か。」

 

恐らくは鷹恂が椁夭に宗嗣が柯柊の街に向かうのだということを伝えたのだろう。

宗嗣は自身の名前を以前翠篁宮にいた時に伝えていたし、容姿と普通はありえない仮王の裏書きの存在で椁夭は宗嗣の特定を門衛にさせていたのだろう。

 

「分かった。

案内されよう。

卒長殿、絢仁を連れて行っても構わないか?」

 

この椁夭との会合でどうせ義衡には知ってもらうつもりだったために一緒に絢仁も連れて行こうかと考えた。

もう既にこの状況で絢仁は理解しきれてはいないが宗嗣がこの世界においてただの胎果の海客ではないということは分かったはずだ。

態々隠すこともないだろう。

 

「分かりました。

どうぞお好きになさってください。

護衛の方は?」

 

「そこまで目立つつもりはない。

案内人のみで十分だ。」

 

流石に賓客である宗嗣の願いを断れないのか絢仁の上司である卒長は快く了承してくれた。

 

「というわけだ。

義衡、絢仁、州候椁夭に会いに行くぞ。」

 

「君が何者なのかは、教えてくれるんだろうね?」

 

「そうだな。

州候に会ったらその場で教えようか。」

 

「なあ、宗嗣、これはどうなっているんだ?」

 

「後で今後のことについてゆっくり話そう。

取り敢えずは待ち人のところへと行くとしよう。」

 

こうして宗嗣と義衡と絢仁のの三人は案内人を伴って中大経を通って州府の正面である皋門へと向かっていった。

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