塙麒放浪記(仮)   作:カラミナト

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椁夭

宗嗣たち海客三人は門卒に案内されて午門から北にある皋門までを真っすぐな中大経を進んで午門の正面に見えていた柯柊の北に位置する凌雲山に続く州府へと入ってそこから州城のあるこの凌雲山の頂上までを呪の掛けられた階段を使って昇って行った。

 

そして、凌雲山の頂上にある州城はどこかの高校の時の教室ほどの部屋に案内された。

 

「お久しぶりでございます、蓬山公。」

 

そこには一年ほど前に鷹恂と一緒に蓬山に昇山してきた椁夭が膝をついて拱手の礼をとって宗嗣たちを迎えていた。

 

「久しぶり、椁夭。」

 

「・・・何がどうなっているんだ?」

 

後ろの方にいた絢仁が困惑したような声を上げた。

 

それもそうだろうな。

自分の上司の中でも特に偉いまさに読んで字のごとく雲上人であるこの淳州州候椁夭が自分の親友であり、ただ胎果だというだけの海客に膝をついて頭を下げているのだ。

 

まるで、自分よりも上位の者に対して礼をとるようにして。

 

「なあ、宗嗣。

これはどういうことなんだ?」

 

「ただものではないとは思っていたがまさかここまでとは・・・

僕が予想していた以上だ。」

 

困惑した様子で宗嗣に問いかける絢仁に対して、義衡はどこか納得した風であったがやはり驚愕の表情を浮かべていた。

 

「公よ。

その武人はこの州の兵士だがそこのもう一人は誰なのでしょうか?」

 

「海客だ。

しかも医者でもあるために医療の知識も豊富だ。」

 

「それはっ!?

おい!そこの者!俺の直属の医師とならんか?

金子は弾むぞ!仙にだってしてやろう。」

 

宗嗣が椁夭が疑問に思っていた人物である義衡の紹介を簡単にしたところで突然に椁夭は豹変したように麒麟である宗嗣の存在すらも忘れてしまったようで宗嗣を押しのけて後ろにいた義衡に勢い良く詰め寄ってきた。

 

流石の豹変ぶりに宗嗣も驚いた。

州宰だろう老齢の人物もまた勢い良く宗嗣に詰め寄って主である椁夭の無礼を州宰だろう老齢の人物が謝ってくる。

 

「それにしても、鷹恂が言っていたがここまでの執着とは・・・」

 

「申し訳ございません。

椁夭様は海客の知識に目がないのです。

それも巧国の未熟な医療技術であればこのように目の色を変えるのも当然かと。」

 

州宰の謝罪に対して許してから言葉に出た独り言に対して州宰が答える。

 

「しかし、義衡がかわいそうだな。」

 

いきなり詰め寄られた義衡は困惑してまともにしゃべることも出来てはいない。

いくら用があって州候に会いたかったとしてもこういうことではなかったはずだ。

 

何の反応も出来ない義衡に対してそれでも構わないとでもいうかのようにしゃべり倒している。

 

「椁夭!

取り敢えずは湯浴みをさせてはもらえないか?

その後は昼食だ。

二人には俺のことを言っていないんだ。

その後に落ち着いて話をさせてもらいたい。」

 

「そうですね。

元より蓬山公には用があったわけではないので。

では、それらの準備をさせましょう。

その後にそこの蓬莱の医者と話をすることが出来れば十分です。」

 

やっと宗嗣に向き直った椁夭は何事もなかったような表情をしていた。

 

・・・それにしても麒麟である俺に用はないだのと。

随分とぶっちゃけるものだな。

まあ、そこまで気にしないのだが。

 

「二人はどうする?

取り敢えず落ち着いてから話をした方がいいだろう?」

 

いきなり庶民では入ることのできない州城に足を踏み入れたのだ。

その混乱が続いている今はまともに話を聞けやしないだろうと宗嗣は二人にも提案した。

それに、もうすぐ昼なんだ。

朝から歩き詰めで腹が減っていることだろう。

 

「あ、ああ。そうだな。

よろしければお願いしたい。」

 

「・・・僕も腹が減ってたから。

遠慮なく・・・」

 

「良し決まりだな。」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「さて、まずは何から話そうか・・・」

 

久しぶりにお湯につかることが出来て三人とも落ち着いたところに昼食も食べ終えたので再び三人は州候のもとに訪れていた。

場所は応接室のようなところである。

 

服装に関しては宗嗣だけがやけに豪華なものを用意されていたが気にしない方がいいだろう。

仕方がないことだ。

 

「蓬山公ってのは何なんだ?」

 

最初に言葉を発したのは絢仁だった。

久しぶりのそれこそ日本からこの世界に流れ着いて以来のお湯に浸かってリラックスできたようだった絢仁が疑問をぶつけてきた。

 

「そういえばそうだ。

僕はこの十年間この世界で生きてきてその言葉は聞いたことがない。」

 

「蓬山公というのは世界の中心たる黄海は蓬山の蓬蘆宮の主であることを意味する。

つまりは麒麟だな。」

 

絢仁と義衡の疑問に対してこともなげに宗嗣はそのことを告げる。

それを聞いた二人は今まで見たことがないくらいに驚いていた。

 

「麒麟って!

胎果お前は日本で生まれた人間だろう!?

大層な存在であるはずの麒麟が胎果だなんてありえないだろう。」

 

「いや、聞いたことがある。

戴国も芳国もその麒麟は胎果であると。」

 

流石に言葉もあまり分からない絢仁でも麒麟については知っていたようだな。

絢仁の疑問に対して義衡が答えた。

 

「そういうことだ。

俺は日本に蝕によって卵果が流されたことによって生まれた胎果の麒麟なんだ。」

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