塙麒放浪記(仮)   作:カラミナト

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邂逅

宗嗣と絢仁と義衡は現在州城を出て雲海下の路門の前の騎獣が容易に乗り降りできるようなちょっとした広場に三人揃って集まっていた。

 

宗嗣が特別に絢仁も義衡も一緒に凌雲山の頂上の州城の椁夭に招待されて数日の間を過ごした。

宗嗣にとってはこの巧国での放浪の旅の目的は基本的には塙王となり得る者を見つけるということなのだが、これについては会ってみないと分からないし何処にいるのかもはっきりと知ることは叶わないのだ。

 

というわけで宗嗣は柯柊にただ単にこの巧国の民の暮らしぶりが知りたいから蓬山を降りてきたようにこの世界に流れ着いてしまった日本人についてを知ろうと思って海客がいるのだというこの場所に来たわけだが、結果軍役に就いている海客に会うことは出来た。

しかも宗嗣が巻き込んでしまったがゆえにこの世界に流れ着いてしまった宗嗣の親友に。

 

まあ、この柯柊へと向かうまでに日本での親友も含めて二人の海客に会ってどういう状況にいるのかということについては知ることが出来た。

柯柊へときた大体の目的は達成してしまったのだ。

 

確かにこの柯柊の街で絢仁に会えたことは宗嗣にとっては申し訳なく思ったが嬉しくもあったわけでここにきて本当によかったと思っている。

 

しかし、この柯柊にやってきてから一番喜んだのはこの淳州の州候である椁夭なのだが。

 

はっきりと言ってこの柯柊に来て巧国の海客の存在を知ることが出来て、更には親友にも会って今後は何をしようかどこに行こうかと迷っていたのだ。

わざわざ王に会いに来たのだし、まだ一年も経っていないのだから王に会うまでは蓬山に帰るつもりはない。

流石に五年以上もこの巧国を放浪し続けるつもりはないのだが。

 

そんなわけで行先の決まらない宗嗣たちを見て椁夭はせっかくだからと義衡のもつ蓬莱の医療技術について知ろうとこの州城に努めている直属の医師たちを連れて医療の講義を聞いたりしていた。

今回の宗嗣たちの滞在で一番得をしているのは間違いなく椁夭だ。

 

そうして一週間もないくらいの期間をこの柯柊の州城で過ごして宗嗣はやっと次の目的地を港に定めた。

 

この巧国の豊かさを知るには海上の船の行き来を見れば分かりやすいのではないかと思ったのだ。

もう一つの人と物の動きの活発な街道に関しては巽城から首都への道のりで見てきたから今度は海を見に行こうと思ったのだ。

 

「じゃあ、行くぞ。

準備は良いか?」

 

宗嗣は爍繃にまたがって他の二人を見る。

絢仁は晧霍に、義衡は烈魁に恐る恐ると言った風にまたがっている。

まあ、騎獣ですら乗ったことのない二人なのだ。

そうやってびくつくのは分からないでもないが。

 

「宗嗣、本当に大丈夫なんだよな?

この晧霍だっけ?襲い掛かったりしないよな?」

 

『私は主の友人に襲い掛かるなどということはしない。』

 

「だってさ。」

 

絢仁は今までこの州の州師にて軍役に就ていたが、宗嗣に護衛としてついていくということで軍役を辞めたのだという。

宗嗣の気が変わらないうちはずっと付いてくるつもりのようだ。

 

「しばしの間妖魔にまたがっての珍妙な遊覧飛行を楽しむとしようじゃないか。」

 

義衡もしばらくの間は宗嗣に付いてくる予定なのだという。

とは言え、阿岸に着いたらそこで分かれて義衡は一人雁国へと向かうのだという。

 

それについて宗嗣は彼について雁国まで向かうのも面白いかもしれないとは思ったものの流石に王も選ばずに他国に遊びに行くなどということは気が引けたために義衡とは阿岸で別れることとなった。

まあ、ちょうど宗嗣が港町に行ってみたいと思ったのが幸いしてしばらくの間は一緒に行動することとなる。

 

「じゃあ、椁夭。

しばらくの間世話になった。」

 

そう言って宗嗣たちは各々椁夭に対して感謝の意を述べていく。

 

そして、三人を乗せた三体の宗嗣の使令は路門を飛び立った。

彼らは柯柊西方部の人の少ないところに降りる予定である。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

宗嗣たちは阿岸の港町を目指して西へと向かっていた。

既に淳州を越えて淳州の西隣の阿岸のある寧州に辿り着いていた。

 

この一月も暦の上ではもう終えようとしている頃、宗嗣たちは目の前に寧州の東部にある瑚斗というとある郡城にやってきていた。

流石に各州に幾つかしかない郡城なだけはある。

当然だが州都には及びもしないが今まで巽城から首都、首都から柯柊、柯柊からここまで来た中でも別格の大きさを誇っている。

 

「さて、まずは昼食を食べに行こうか。」

 

「そうだな。

もうお昼時もとうに過ぎてしまっているからな。

俺も流石に腹が減ってきた。」

 

ここまでの旅路で義衡が薬草も含めて医療用の道具の入った非常に大きな箱を背負って旅を続けてきたために今まで何度も匪賊が貴重品だと思ってか襲ってくることがあった。

それに、帯剣しているのは男三人の旅とはいえ絢仁一人だけだからカモと睨んで襲い掛かってくる者たちは何度かあった。

 

とは言え、相手が5人以上もいれば脅しのために宗嗣が爍繃に出てきてもらうとすぐに逃げ去ってしまうために危険はない。

2,3人のときはあまり目立ちすぎないようにと絢仁に対応してもらっているのだが。

 

「いや、やはり僕は宿を探す方がいいと思うのだが。

昼飯抜きよりも今晩泊まるところがない方が問題だろう。」

 

「・・・まあ、郡城だからな。

その可能性もないわけではないか。

じゃあ、そこの宿なんてのはどうだ?」

 

宗嗣は義衡の提案で宿を探そうということになり、倒れるんじゃないかというくらいに腹が減りすぎていたために適当にすぐそこの大通りに面していて高価なのだろうがいい宿屋を指して言った。

 

「いいんじゃないか?

俺達ってそんなに金に困っているわけでもないしな。」

 

宗嗣は元々教科書を売り払った時の金子があって、義衡は薬を売り歩いていることによる利益を上げているが、絢仁も軍役に就いていた時に小遣い程度に金子を得ていたのだ。

 

三人とも特に問題なかったためにsの宿屋に入った。

 

「あ・・・。」

 

宿屋に入って正面にいたのは知った顔の男性だった。

 

黒髪に琥珀色の瞳を持つ男性だ。

彼は宗嗣たちがこの郡城に向かう前に偶然出会ったのだ。

 

茂みから血の匂いを漂わせてガサガサと音を立てて妖魔か何かかと身を構えていたところに腰に捕えた獲物だろう野鳥などを提げたただの狩人だったから記憶に残っている。

まあ、ちらりとこちらを見て颯爽と郡城の方に消えていったのだが。

 

その血の匂いゆえかやけに気になったのも覚えている。

 

「ああ、さっきの。

うちの宿をご利用か?」

 

その目の前の二十代前半くらいの男性は素っ気なく客である宗嗣たちに尋ねる。

 

しかし、宗嗣にとってはそんなことはどうでもよかった。

 

宗嗣は今面と向かって対してからようやく気付いた。

この目の前の男性こそが自らの王つまりは次の塙王なのだということに。

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